こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

「しっとりふりかけ」自画自賛

 

前回に引き続き、「だしがらは素晴らしい」がテーマです。

 

こんぶ土居に「本格十倍出し」という製品があります。

 

昆布と鰹節の濃縮液体だしです。

この製品を作る際、当然だしがらが出るわけです。

そのだしがらを利用して製造しているのが「しっとりふりかけ」です。

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 写真の裏ラベルの説明文に「十倍出しの副産物を利用した ~ 」と書いているのは、その趣旨です。

 

「しっとりふりかけ」は、作っている側が申し上げるのは馬鹿みたいですが、こんなに素晴らしい製品はなかなか無いと思います。

ミネラル豊富、高タンパク低脂質、理想的な健康食品です。

当然製造に際しては、一切の食品添加物やうまみ調味料を含みません。

70gたっぷり入って、税込み価格250円です。

しかも、こんぶ土居店頭でお求めいただいた場合は、ひとつずつ無料のギフト包装まで承っています。

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おかげ様で大好評、こんぶ土居の大人気商品ですが、もっと人気になっているべきだとさえ思います。

 

「しっとりふりかけ」と、コンビニやスーパーで売っている大メーカーのふりかけを比較して、後者を選ぶ理由が見つかりません。

特に子供さんは、おかしな原材料で作られて栄養の乏しい一般的なふりかけなど、召し上がらない方が良いと思います。

蛇足ですが、昆布を大量に摂取するとヨウ素過多のリスクもありますが、昆布のヨウ素はだしに多くが溶け出るので、しっとりふりかけは子供さんにも安心です。

 

低価格で本物の味、そして栄養豊富、こんな製品を提供できていることを非常に嬉しく誇りに思います。

 

次回の投稿は、もうひとつのだしがら利用製品のご紹介です。

「だしがら」こそ栄養豊富

 

ご家庭でだしを取って、残るダシガラの処理にお困りのことはないでしょうか。

捨ててしまう場合もあるかと思いますが、できれば食べていただきたいです。

それは、「もったいないから」だけでなく、「だしがらこそ栄養豊富」だからです。

 

例えば、昆布と鰹節のだしを考えましょう。

昆布には、海からの栄養成分が豊富に含まれています。

ミネラルを例に取ると、昆布には、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など、健康に必要なものがたくさん含まれています。

文部科学省の食品成分データベース(https://fooddb.mext.go.jp/)を上手に利用すれば、各成分について、だしへの溶出量と、だしがらへの残存量を計算できます。

 

結果は、上記の全ミネラル成分、ほとんどがだしがらに残っている計算になります。

ナトリウムもミネラル成分ですが、日本人は塩分を取りすぎの傾向にありますので、ナトリウム摂取は控えめな方が良いです。

ナトリウムは、多くがだしに溶出し、ダシガラには多く残りません。

つまりだしがらは、不足しがちな栄養素ほど豊富で、不要なものは少ないということになります。

昆布は食物繊維も豊富ですが、だしがらに多く残ります。

こう考えると、だしがら昆布は実に理想的な栄養食品であると言えるわけです。

 

実はこれは、鰹節の成分でも似た傾向を見せます。

また、鰹節はタンパク質が豊富ですが、だしがらにほとんどが残留します。

 

総合的に考えますと、

『だしは主に美味しさに寄与し、いくらか栄養的価値もある。だしがらの栄養価値は、だしより遥かに強い』

といったところでしょうか。

 

このような結果ですので、是非ダシガラも美味しく調理していただければと思います。

昨日投稿しました拙著「土居家のレシピと昆布の話」には、ダシガラ活用レシピも掲載しています。

 

次回は、こんぶ土居で製造している、ダシガラ活用製品のお話です。

 

書籍『土居家のレシピと昆布の話』

 

こんぶ土居では、過去に書籍を出版しています。

「土居家のレシピと昆布の話」という本です。

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形式としては、レシピ本のようになっていますが、むしろその他にお伝えしたいことが多く、様々なことを書きました。「昆布の話」、の部分ですね。

 

現在刷り上がっている分は既にほぼ完売状態、出版社にも在庫がないようです。

そうなれば、通常は新しく刷るわけですが、特殊な製本にしましたので印刷会社さんが対応できないらしく、残念ながらその目途がついていません。

出版社さんでも、なんとかできないかと取り組んで下さっていますが、どうなるか分かりません。

 

実はこの本、中国語に翻訳されて、台湾と香港でも出版されています。

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翻訳発行された当時、台湾で出版記念イベントも開催して下さって、私が出向いてご説明したのも思い出深いです。

 

残数が少なくなっている本ですので、ネット書店などでも入手しづらいかも知れませんが、こんぶ土居では、まだ少し在庫を抱えています。

ご興味があれば、ご一読下さい。

店頭には、立ち読み用もご用意しています。

 

 

 

 

本物の梅干し

梅干しは、素晴らしい食品です。

そのままでは食べられない梅を、長い時間をかけて白いごはんと無敵の相性を見せる食品に変える。

古くからの日本人の知恵が生きた食卓に欠かせない伝統食ですね。

 

本来の梅干しの作り方は、シンプルです。

適切な量の塩を梅と合わせ、長い時間をかけてゆっくり熟成させます。

その後、土用干しをしてできあがりですね。

 

ですので、梅干しに必要な材料は、梅と塩と風味や色を付ける赤紫蘇だけです。

ただ、普通のスーパー等で市販されている梅干しは、ほとんどが伝統的な本物でない製品ばかりです。

 

ご興味があれば、スーパーやコンビニへ行って売られているものの原材料表示をご覧になって下さい。

謎の成分がたくさん表示されています。

例えば、ある製品の原材料表示は、下記のようになっていました。

 

『梅、しそ葉、漬け原材料(果糖ぶどう糖液糖、食塩、しそ液)、酸味料、清酒、調味料(アミノ酸等)、野菜色素、ビタミンB1、甘味料(スクラロース)』

 

恐らく、このような製品は、塩漬けの終わった梅を、塩抜きのために水に浸し、その後に混合調味料で味をつける、といった作り方なのではないかと思っています。

本来の美味しい梅干しの味を抜いてしまって、他の調味料で補うわけです。

なんとも変な話です。

 

 

減塩志向や、食事制限が必要な方もありますので、特殊な事情があるのは理解できます。

ただ、市販されるほとんどの製品がこんな感じで、本物が少ししかないというのは、なんとも嘆かわしいところです。

 

甘いとか酸っぱいとか、そんな単純な評価基準ではなく、昔ながらの梅干しの良さを理解して下さる方が多くなればと願っています。

 

昨日の投稿でお知らせした季節商品「青梅入り昆布」の原料の梅をご用意して下さった、和歌山の三幸農園さん。

素晴らしく美味しい梅干しを作っておられます。

こんぶ土居でも常時販売しております。

是非お試し下さい。

 

 

 

 

 

季節商品、青梅入り昆布

昆布屋は季節感に乏しい仕事ですが、少しだけ季節商品も製造しています。

春には竹の子、秋には柚子、そしてこの季節は青梅入りの昆布の佃煮を製造しています。

甘酸っぱい味ですので、他の佃煮製品とはかなり印象が変わりますが、梅雨時のじめじめした感じに、少し清涼感をもたらしてくれるような味かと思います。

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原料となる梅は、和歌山県で素晴らしい梅干し製品等を製造されている三幸農園さんに分けていただいています。

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今年は、青梅が大不作だそうです。

梅酒メーカーなどが、血眼になって原料集めをしているようです。

そんな中、三幸農園さんが私共のために原料をご用意いただけることは、非常にありがたいことです。

 

天然真昆布も連年の不作、梅まで不作。

たいへんです。

昆布の不作の事は、私共にとって本当に大切なテーマですので、改めて詳しく書く日を設けます。

 

今年の青梅入り昆布は6月19日の販売開始を予定しています。

次回は、三幸農園さんの梅干しの美味しさと、一般的な梅干しとの違いについて。

 

 

 

とろろ昆布③黒と白

前回の「とろろ昆布②」の続きです。

 

例えば、

「黒おぼろ」とか「白おぼろ」、

「黒とろろ」とか「白とろろ」。

言わずもがな色の違いですが、その色の違いはどこから生まれてくるのでしょう。

 

赤いリンゴをイメージして下さい。

赤く見えても、それは皮だけですね。

中身は白い。

昆布も、皮が黒いだけで中身は白に近い色合いです。

 

つまり、酢で柔らかくした昆布の表面を手加工で薄く削りだす際、最初に出てくるのは皮の部分であり、それが黒いのです。

「黒おぼろ」「黒とろろ」ですね。

 

昆布の裏表とも、刃物を数回動かして何回か削りだしたら、もう昆布には皮がなくなって白い状態になります。

そればかりを集めておいて、同じ仕事をすれば、白いものが削り出されます。

これが「白おぼろ」「白とろろ」です。

 

つまり、色が黒いのは皮の部分が含まれているから、色が白いのは皮の部分が含まれていないから、ということです。

 

味の傾向の違いは、下記の通りです。

「黒」

比較的昆布の味が濃い。

塩分やお酢の味も強い。

「白」

淡く上品な味。甘く感じる。

塩分も酢の味も穏やか。

 

 

手作業で削っていくと、昆布はどんどん薄くなっていきます。

そして、最後には薄い薄い「白板昆布」が残ります。

よく鯖寿司なんかに使われる昆布ですね。

 

つまり、手作業で削る昆布は、「黒」「白」「白板」の3つの部分に分かれるわけです。

 

機械で削った昆布は、手加工の「黒」「白」「白板」が全部一緒になって削りだされてきます。

こちらは、黒の部分が混じっているとは言え、全体としては白く見えます。

味も、三つの部分の平均的な味と言えるでしょうか。

機械とろろは、お酢の含有量は手加工に比べて少なめなので、酸味はそう感じないかと思います。

 

現在では、昆布の手加工の職人さんは、非常に少なくなりました。

こんぶ土居でも、削っていますが、たくさんは作れません。

 

特殊な用途でなければ、基本的には機械とろろでよろしいかと思います。

加工方法によって生まれる僅かな食感の違いより、昆布とお酢の品質の方が、よほど大切なのではないかと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とろろ昆布②古き良き道具

 

6月13日の、とろろ昆布①では、機械で削るとろろ昆布のことをご説明しました。

本日は、手作業で削るとろろ昆布のお話です。

 

古い時代に機械削りはないので、その頃のとろろは、全て手作業だったはずです。

その手作業自体は、13日に紹介したYouTube動画の「おぼろ昆布」の製造方法とほとんど変わりません。

酢で柔らかくした昆布を一枚ずつ専用の刃物で削っていくわけです。

大きな違いは、その刃物の先端です。

 

まず、「おぼろ昆布」と「とろろ昆布」の違いは何でしょうか。

それは、単に形状の違いです。

前者は「帯状」で、後者は「糸状」と言えば良いでしょうか。

http://www.konbudoi.info/main/shohin_tororo.html

 

機械で削るとろろ昆布は、昆布の表面ではなく断面を削るから、自然と糸状になるわけです。

 

では、手加工の「とろろ昆布」を作るには、どうすれば良いでしょうか。

答えは簡単。

手加工の「おぼろ昆布」で使う刃物を、先端をノコギリ状に細工すれば良いのです。

細かいノコギリ状の刃で削れば、縦に細かく裂けたような状態で昆布が削り出され、つまりそれは糸状であるわけです。

 

その、刃先をノコギリ状に加工する道具があるのですが、とても魅力的です。

これは、こんぶ土居が手作業でとろろ昆布を製造する際に使用している古い道具です。

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なんとも面白い構造です。

シンプルですが、堅牢で造形美を感じます。

この道具に刃をセットしてハンドルを回すだけで、細かく目が打たれノコギリ状になります。

 

youtu.be

 こんな道具は、今は日本中どこでも製造されていないと思います。

簡単に故障するものではないので、これからも大切に使い続けていきたいと思います。

 

次回は、とろろ昆布類の、白と黒の話。