こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

真昆布再生財源獲得プラン 2020年夏北海道出張レポート⑧

天然真昆布を復活させるための取り組み。

何をするのにも、お金は必ず必要になります。

今回の出張等の経費はこんぶ土居が支払っているもので、どこから何の支援があるわけでもありませんが、大きく物事を動かすためには何らかの財源が必ず必要です。

環境問題にも関わることですし、公的な補助金など利用できそうなものがあります。

そんな中でひとつ、財源獲得プランを思いつきました。

それは「ふるさと納税」です。

 

皆様、ふるさと納税は、しておられますでしょうか。

ふるさと納税とは、言ってみれば「返礼品つき税金前払いシステム」です。

トータルとしての支出金額が増えるわけでも減るわけでもありませんが、任意の市町村に寄付をすると、その金額分が翌年の市民税と所得税から減額されるものです。

そして、その寄付をした市町村から、返礼品がもらえるのです。

本当に数え切れないほどたくさんの返礼品の選択肢があり、自分の好きなものを選ぶことができますので、とても魅力的な制度です。

 

 

私共で使用する天然真昆布の産地は、以前は南茅部町という行政区域でした。

2004年に市町村合併があり、現在は函館市の一部になっています。

当然函館市にもふるさと納税の制度はあり、地元の海産物など返礼品もたくさん用意されています。

https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014030300762/

 

ふるさと納税には、寄付をする人が、そのお金の使途を指定できる場合があります。

例えば、函館市の例を挙げますと、

 

1 函館市全体のために

2 子どもたちの未来のために

3 美しい景観を守るために

4 活気と賑わいのあるまちのために

5 福祉の充実のために

6 大間原子力発電所の建設凍結のために

 

以上の6種類の中から、好きな使途を指定することができるのです。

この中から私が選ぶとしたら、6の大間原発でしょうか。

大間原発が稼働して、仮に福島のような事故が起きれば、道南地方の昆布は壊滅ですから。

 

このふるさと納税について、是非7番目の選択を設けてもらいたいと考えています。

その選択肢とはもちろん、「 7 危機に瀕する天然真昆布再生のために」です。

それをお願いするために、今回の出張で函館市議会の議員さんにお会いしてきました。

 

自然環境の回復のために、ふるさと納税の使途を設定している市町村は意外に多いので、前例もあります。

このプランが実現すれば、単年でなく継続的に財源が得られることと、昆布関係者を始めとして協力して下さる方からの寄付で函館市の税収増加も見込めることから、我ながら悪くない案だと思っています。

 

天然真昆布再生には、基本的に公的な財源を利用するつもりですが、クラウドファンディングも活用するかも知れません。

その際には、よろしくお願い致します。

 

それでも、お金の前に必要なのは再生のための具体的な道筋です。

継続して、良い結果を導き出せる方法を探ります。

 

縄文の希望 2020年夏北海道出張レポート⑦

 

天然真昆布が不作だと申し上げると、「温暖化のせいですか?」とよく言われます。

 

他の要因も複合的に関係して現在の状況になっているのですが、もちろん温暖化も無関係ではありません。

単純に気温が高いかどうかではなく、海流にも変化が起きたり、北海道特有の気象条件(梅雨がなかったり、台風が少なかったり)が少しずつ変わってきているのも、温暖化の間接的な影響だと言われます。

海水温も高い年が多い近年でした。

 

他にも、気温が高いことにより降雪量が減り、それは昆布の浜の背後の山の積雪量に直結し、雪解け水が減ることにもなります。

つまり、山からの昆布を育てる栄養供給にも影響するわけです。

 

天然真昆布を復活させようと取り組んでいますが、地球温暖化となればグローバルな問題ですので、私共では手の打ちようがありません。

ただ、「温暖=昆布が死滅する」、という単純な図式でないのかも知れないと思わせるのが、タイトルに書きました「縄文時代」です。

 

最高級の白口浜真昆布の産地である旧南茅部町は、実は遺跡の町でもあります。

縄文時代の遺跡がたくさん存在しています。

現在、北海道には国宝が一つしかありませんが、それが南茅部で出土した縄文時代土偶です。

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こんなお土地柄ですので、浜からすぐ近くに、縄文時代の資料を展示する「函館市縄文文化交流センター」があります。

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この施設では、縄文人の暮らしが展示されているのですが、その中に縄文人が昆布を干している模型があるのです。

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以前、職員の方に、「このような模型があるということは、縄文人が昆布を食べていたと認識しておられるのですか」と尋ねたところ、そう認識しているとのお答えでした。

 

縄文時代の気候は、今より遥かに温暖です。

海岸線も、かなり後退していました。

そんな時代でも昆布があったのなら、温暖化の状況であっても、昆布がすぐにだめになるというわけではないのでは、との期待を抱かせます。

 

私ほど、この展示を喜んでいる人物は他にいないと思います。

引き続き情報を収集し、このブログでも書きたいと思います。

 

「珈夢」の小林元昭さん 2020年夏北海道出張レポート⑥

 

こんぶ土居では、「焙煎昆布麺 麺戀」という商品を販売しています。

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私共が製造しているわけではないのですが、店頭で販売をしています。

この焙煎昆布麺をプロデュースされているのが、函館市臼尻町で喫茶店「珈夢」を営む小林元昭さんです。

昆布パウダー入り乾麺うどん「麺戀」完成 / 函館新聞電子版

 

小林さんとの出会いも、不思議なご縁でした。

 

天然真昆布が不作になって以来、海がどのような状況になっているのか、詳しく知りたいという思いは常にありました。

7月21日投稿の北海道南茅部高校。

過去にこの高校を訪問した際にも、校長先生に天然真昆布の不作のことはお話していました。

漁師さん以外で海の中を詳しく知っている人に、誰か心あたりはないかとお尋ねした際、ある方をご紹介して下さいました。

水中写真を撮影するダイバーです。

その方は、もともと東北でダイビングショップを経営しておられたのですが、東日本大震災で被災し、南茅部へ移住してこられたのです。

校長先生がその方をご紹介してくださるにあたり、間に入って下さったのが小林さんでした。

 

校長先生に、小林さんが営む喫茶店「珈夢」を訪ねるように言われ伺ったのですが、小林さんはお仕事中にも関わらずダイバーのお店へ車で送って下さいました。

ダイバーの方とのお話が終わり、お礼をお伝えするため「珈夢」に戻りました。

「珈夢」は、オーディオ趣味の小林さんがすごく立派な音響機器やスピーカーをお店に備え、本当に良いお店です。

 

その際に、お話している中で「焙煎昆布麺」のことも知り、地元の産品である真昆布の利用促進のために考えられた製品ですし、私共でも販売させていただければと思ったわけです。

ただ、製品に少し要望もありお伝えしました。

小林さんは、それを真剣に聞いて下さって、こんぶ土居特別版を作って下さったときは、本当に驚きました。

 

 

焙煎昆布麺は様々に使えますが、鍋物のシメとしての利用もおススメです。

乾麺ですが、そのまま煮込んでしまうことができます。

実は先日、ある高級料亭のお持ち帰り用商品の「鱧鍋セット」に焙煎昆布麺を使ってくださいました。

小林さんのお仕事が、一流の料亭でも認めてもらえたことが非常に嬉しかったです。

現在、北海道以外で販売しているのは、こんぶ土居だけだと思います。

 

先日の出張時に小林さんを訪問したのですが、残念ながら今年はお留守でした。

小林さんは、地域の子供たちへのための活動もされていたり、立派な方です。

私共にも、役立ちそうな方をたくさん紹介して下さいました。

こんぶ土居と南茅部の関りは長い年月続けていますが、まだまだ新しい広がりを見せています。

 

小林さんによる「珈夢のブログ」

https://ameblo.jp/koba-menkoihonpo/

川端翼君の思い出 2020年夏北海道出張レポート⑤

前回と前々回の投稿で、こんぶ土居と磨光小学校、南茅部高校との交流について書きました。

交流した子供さん達の中には、嬉しいことに実際に昆布漁師になった人もいます。

その中でも、将来の南茅部のリーダーになってくれることを期待した人がいます。

タイトルの川端翼君は、そんな一人でした。

川端家は、お兄さんと翼君が若い漁師として頑張って、なんとも良い雰囲気のご家族です。

 

磨光小学校の一日授業では、後日、児童の皆さんが感想文を書いて送って下さることもあります。

川端君も小学5年生当時に、作文を書いてくれました。

それは、一昨年HBC北海道放送で制作され、全国で放送された90分の昆布番組「ニッポン千年のだし」で紹介されました。

川端君に関係する部分を抜粋した動画をご覧いただけます。

www.youtube.com

 

動画にあるように、川端君は私共の話を本当に真面目に受け止めてくれて、良い漁師になるよう頑張っていたのです。

 

しかし、残念なことに翼君は、仕事中の事故によって若くして亡くなりました。

その一報を受けたときは非常に驚き、なんとも残念で悲しい喪失感でした。

今年の出張でも川端さん宅を訪問してご家族に会ってきましたが、皆さん一生懸命お仕事しておられる中に翼君の姿がないのが残念です。

 

動画に出てきた昆布は、私たちにとっては彼の形見です。

良い青年漁師がいたことを、ここに記録しておきたいと思います。

 

南茅部高校 2020年夏北海道出張レポート④

前回投稿しました、函館市立磨光小学校の児童との20年に亘る交流。

それには、続きがあります。

 

NHKが平成19年に、番組でこんぶ土居のことを大きく取り上げて下さいました。

毎年夏に浜へ行って漁師さんの手伝いをしている現場の姿など、非常に長い時間取材して放送してくれました。

この番組は全国放送でしたので、北海道でも見ることができたわけです。

 

偶然この番組を見ていた昆布産地の北海道南茅部高校の生徒さんの中で、こんぶ土居へ行ってみたいと思ってくれた人がいました。

ちょうど南茅部高校では、秋の修学旅行で関西へ来るのが恒例で、そのタイミングを利用して、わざわざ校長先生が将来昆布漁師を継ぐ意思のある生徒さんを4名引率して訪問して下さいました。

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来られた生徒さんの中には、小学校時代に三代目による磨光小学校での一日授業を聞いてくれていた人もいました。

 

それ以後、就学旅行時のこんぶ土居訪問は南茅部高校の恒例となり、毎年秋になれば高校生が来てくれます。 

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彼らは大阪で、自分の町で生産された昆布が大切にされ、人の生活に役立っていることを実感するのです。

浜で生活していれば昆布は見なれたものですが、それがどこに運ばれ、誰の何の役に立っているのかを知る機会はありません。

 

彼らが来てくれた時には、6年前の磨光小学校での一日授業のことも必ず尋ねます。

驚くべきことに、彼らは当時のことを例外なく記憶してくれているのです。

非常に嬉しいことです。

私共の取り組みも、無駄にはなっていないようです。

 

おかげで、南茅部へ行きますと、私共のことを知らない人はほとんどいなくなりました。

これこそが、長年の交流で得られた信頼関係だと思います。

今年の出張でも南茅部高校を訪問してきましたが、コロナウイルスの関係で秋の修学旅行自体が無くなってしまう可能性もあるようです。

感染が収束に向かい、今年も生徒さんに会えることを願っています。

 

天然真昆布が危機的な状況にある今、それを回復する取り組みが必要なわけですが、それは漁師さんの協力なしには絶対に成し遂げられません。

そのために、これまで培ってきた関係が非常に役に立っています。

 

下の写真は、美味しんぼ原作者の雁屋哲先生他、様々な方がご協力くださった二年目の様子です。

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この日のことは改めて別日に書きたいと思いますが、雁屋哲氏のブログ「雁屋哲の今日もまた」でも読んでいただけます。

http://kariyatetsu.com/blog/725.php

 

次回のブログの投稿は、磨光小学校でも南茅部高校でもこんぶ土居と関わってくれた、非常に真面目で良い青年漁師についての、嬉しくも悲しいお話です。 

 

 

函館市立磨光小学校 2020年夏北海道出張レポート③

 

白口浜天然真昆布の産地である、北海道函館市の旧南茅部町には、地元の子供たちが通う小学校があります。

磨光小学校です。

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こんぶ土居では、三代目の時代から生産者の方々との信頼関係の構築に努めてきました。

また同時に、次代を担う若者や子供たちにお伝えすべきこともあり、磨光小学校にて五年生を対象に一日授業を平成11年から毎年続けてきました。

 

白口浜天然真昆布は、「献上昆布」の別名が示す通り、江戸時代から最高級の昆布だと知られてきましたが、実は地元での消費は非常に少ないのです。

大部分は昆布文化の特に発達した大阪へ運ばれ、全国的な流通もなかったことから、地元では郷土の産物の価値が正しく理解されていません。

そんな中で、児童の父兄や地域の方々が担う昆布産業の価値を正しく知ってもらうために始めた取り組みです。

 

平成11年から始めましたので、もう21年間続けたことになります。

何でもそうですが、継続には大きな力があります。

初年度に5年生だった児童は、今32歳になっています。

つまり、地域の若年層全員に向けてお話してきたわけです。

 

今年はコロナウイルスの影響で、例年通りのことができるか分かりませんが、先日の出張の際にもご挨拶してきました。

学校の方でも、是非継続して欲しいと言っていただいています。

過去には、漫画「美味しんぼ」の原作者である雁屋哲氏が、私共の取り組みに賛同し、小学生に昆布の価値を話して下さったこともありました。

三代目の引退時には、感謝状をいただいたことも非常に嬉しい出来事でした。

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天然真昆布が危機的な状況にある今、このような取り組みは、必要性を増しているように思います。

一次産業では共通の課題である後継者不足。

後継者の育成にも私共の取り組みは貢献した自負もありますが、彼らが大人になったとき過去と同じように自然の恵みが十分に得られ、浜での生活に問題ないようにしなければなりません。

ある意味責任重大です。

時代と共に移り変わるテーマについて、子供さんと共に考え続けたいと思います。

 

原彰彦北海道大学名誉教授 2020年夏北海道出張レポート②

以前からお伝えしております天然真昆布の危機。

それを救う手立てを模索し、取り組んでおります。

今年の夏の北海道出張の主たる目的は、その道筋を探すためです。

多くの方が協力して下さっているので、それを記録するためにも、主に人物を軸として出張レポートを書きたいと思います。

 

今年は、不思議なご縁で北海道大学水産学部の原彰彦名誉教授とお知り合いになることができました。

大阪に住んでおられるお嬢さんを訪問するために来阪された際に、奇跡的なタイミングで接点を持つことができました。

原先生は魚の方がご専門ですので海藻は畑違いなのですが、他の研究者や行政機関、企業等を紹介して下さったり、本当に有難いことです。

 

今回の出張でも、私が宿泊しているホテルにわざわざ愛車のジムニーで迎えに来て下さって、役に立ちそうな場所を朝から一日かけて次々と案内していただいて、どうしてそこまでして下さるのか不思議なほどです。

特に伝手の無い状態ではなかなか話を聞いてもらえないようなところでも、原先生が間に入って下さると本当にスムースです。

他の方々の反応を見ていても、先生の人望が見て取れます。

 

環境が悪化する中で天然真昆布を救うことは、簡単なことではありません。

ある試みを実現するために多くの方のご協力が不可欠ですが、このような人脈は数珠つなぎです。

私欲のためでなく守るべきもののために動けば、それに賛同して協力して下さる方々は次々に現れます。

 

大変な取り組みではありますが、自分が動き出せば、周りも動くことを実感しています。

それが、やがて大きなうねりとなって物事を動かす力を持つようになることを期待しています。

 

始まったばかりの取り組みではありますが、もはや後ろには引けないような状況です。

協力して下さった方々の期待を裏切らないためにも、粘り強く取り組み、成果を上げたいと思います。