こんぶ土居で初めて養殖昆布を仕入れたのは、確か十年と少し前のことだったでしょうか(神仏のお供えに使う昆布を除く)。
当時は、天然真昆布が十分にあった時代です。
それなのに養殖昆布を仕入れようと思ったのは、漁業の現場に触れたからです。
平成16年に初めて昆布漁に参加し、寝食を共にして仕事をすれば、生産者への理解も当然深まります。
(2020年6月27日投稿、「平成16年夏、昆布漁のお手伝い」をご参照下さい)
https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/27/092818
昭和40年代に昆布養殖が実用化されて以後、道南地方の昆布漁師さんの収入源は主に養殖昆布です。
それなのに、天然ものだけが欲しい、養殖はいりません、というのもなんだか申し訳ないような気がして、少し養殖昆布を仕入れた経緯があります。
しかし昆布が大阪へ届き現物を見たときには、「これは困ったぞ」と思った記憶があります。
やはり天然真昆布との差は非常に大きかったのです。
仕入れてはみたけれど、この品質の昆布を一体どうやって利用すればいいのか、と非常に悩みました。
その悩みに答えが出ないまま月日は流れ、採取年の翌年の初秋になりました。
すると、その昆布の品質が一変しているのです。
天然昆布と同じとはいきませんが、非常に近いところまで来ています。
この時は、本当に驚きました。
これは言わずもがな、熟成の効果です。
天然昆布にも熟成の効果はありますが、養殖昆布の方が変化の度合いは強いように思います。
以前の投稿でも書いたように、梅雨を越えた時期に昆布は劇的に変化しています。
現在は、まさにそんな季節であるわけです。
(2020年6月27日投稿、「昆布の熟成について」をご参照下さい)
https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/27/093601
昨年収穫された養殖昆布も、こんぶ土居の倉庫で丸一年熟成され、品質が一変しました。
「昆布が、ようやく昆布になった」。
私には、そんな風に見えます。
今年も大きく変化した昆布を見て、初めて養殖昆布を仕入れた年の落胆と、その後の喜びを思い出しました。
天然昆布が採れない今、品質の良い養殖昆布の必要性は高まっています。
今後も少しでも良い状態でお届けできるよう、良い熟成状態と的確な選別で、ご期待に応えたいと思っています。