こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

シタール奏者、石濱匡雄

 

個人的なことですが、インド料理を習っています。

元から習いたいと思っていたわけではないのですが、偶然良い先生とお知り合いになったのがきっかけです。

 

数年前、ある方(※1)からお誘いをいただき、大阪で多方面で活躍する方々と一緒に食事をする機会がありました。

その日の参加者の一人が、北インドの古典民族楽器シタール演奏家、石濱匡雄さんでした。

 

その日に食事した場所は、インド料理に関係するお店だったのですが、遅い時間からだったのが災いして、お目当てにしていたカレーが売り切れてしまいました。

それを聞いた一名(※2)が大変残念がって、「ココイチでもいいからカレー食べたい」などと言い出しました。

 

それを聞いた石濱さんから、驚きの一言が出ます。

   『よかったら、今からウチでカレー作りましょうか?』

この一言によって、一同が驚愕の体験をすることになります。

 

 

 石濱さんの提案は渡りに船。

全員で、お店からそう遠くない石濱さんのご自宅へ向かうことになりました。

ただ、時間が非常に遅かったので、もうスーパーや食料品店は開いていません。

材料の調達に困ります。

そんな状況で、石濱さんはなんとコンビニで使えそうなもの(たまご、ツナ缶など)を調達し、ご自宅にあった乾物などと合わせて料理してくれました。

そうして出来上がったものを頂いたのですが、それが本当に素晴らしく美味しくて、とても驚きました。

 

 

石濱さんは、シタール修行でインドに滞在する過程でインド料理(主にベンガル地方の)を身につけています。

これほど出自の確かなものはありません。

たまに料理教室のようなものも開催しておられるので、何度か参加させていただき、自分でもインド料理を作るようになりました。

 

そうこうしている間に石濱さんの料理の腕は、新しい展開を見せます。

ミュージシャンなのにレシピ本を出版したり、レトルトカレーの監修をしたり。

石濱さんの料理の魅力に取りつかれる人は、少なくないようです。

シタール奏者としての本業に素晴らしい能力を持っているのは当然ですが、音楽と料理以外の分野でも見事に多才です。

 

その石濱さんの力をお借りし、近々なんと、こんぶ土居新製品が生まれます。

これまでの製品とは全く違う異色ですが、とても良いものになると思います。

販売を開始した際には、ブログで改めて書かせて頂きます。

 

 

(蛇足)

前述の登場人物は

(※1)D&Department取締役、相馬夕輝氏

(※2)graf代表、服部滋樹氏

です。

石濱さんと関わることになったのは、招いて下さった相馬さんと、「ココイチでもいいからカレー」とゴネてくれた服部さんのおかげです(笑)。

ありがとうございました。

www.tadao.in

 

 

買い付け、ではない

 

こんぶ土居では、三代目の時代から北海道の昆布産地を度々訪れてきました。

北海道出張の予定をお話すると、「買い付けですか?」と仰る方が多々おられます。

そうお考えになるのも、無理のないことです。

「昆布屋が昆布産地へ出向く」、やはり買い付けのイメージでしょう。

 

しかし、三代目も私も、決して買い付けに行っているのではありません。

そもそも、私共の主原料である白口浜天然真昆布は、昆布生産者による自由な流通が認められていません。流通ルートは、下記の通りです。

 

〇昆布生産者(漁師さん)

〇漁業協同組合

〇本州の、ある一社の一次問屋(基本的に毎年固定)

 

水揚げされた天然真昆布は全量が、上記のように取り扱われるように決められており、その先に私共や二次問屋に昆布が移っていきます。

ですので、そもそも現地での「買い付け」など無いのです。

 

 

では、何をしに北海道へ行くかと言えば、三代目の頃は「品質向上のため」でした。

漁業者の方々と信頼関係を構築し、北海道で生産される昆布の品質を少しでも高める取り組みを続けてきたわけです。

昭和57年から続けた活動は、初期はなかなかうまくいかない事の連続だったそうです。

(詳細は9月1日のブログをご覧ください)

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/09/01/073302

 

時が進み私の代になって、当初は三代目と同じような目的で浜へ通っていました。

しかし、現在は全く状況が変わりました。

新テーマは、以前から書いておりますように「危機的状況の天然真昆布を救う」です。

 

天然真昆布の再生への道筋は、言わば前例のない暗中模索です。

大変な仕事です。

ただ、前述のように、三代目も最初からうまく物事が運んだわけではありません。

やはり何事も、動き出し、それを諦めず継続することが成果につながるのでしょう。

 

今年も10月3日から再び北海道出張ですが、「買い付け」などより遥かに大切なテーマが待っています。

またレポート致します。

 

龍光院と小堀南嶺師

暑い季節もようやく終わり、過ごしやすい季節になりました。

こんぶ土居店内には、軸を掛けている場所があります。

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現在は、柿の画賛です。

これを書いて下さったのは、大徳寺塔頭龍光院」の先代、小堀南嶺師でした。

龍光院は、国宝や重要文化財の建物や美術品を多数所有する素晴らしい塔頭ですが、一般の拝観を一切受けない「拝観謝絶の寺院」として知られています。

 

こんぶ土居の三代目は、若い頃に南嶺師に大変お世話になったようで、私共の昆布も気に入って使って下さっていたようです。

そのようなご縁で、前述の書を頂戴したようです。

 

つい先日、あるご縁で龍光院の中に入らせていただく機会を得ました。

子供の頃に父親に連れられて見ているはずの景色、残念ながら何も覚えてはいませんが、今再び入らせていただくことになったご縁にも、不思議な感じが致します。

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10月中は、南嶺師の軸を掛けておりますので、店頭へお出での際には、是非ご覧ください。

 

 

丸正酢醸造元

 
こんぶ土居製品で、お酢を使うものがあります。
例えば、とろろ昆布や、おやつ昆布などです。
 
 
こんぶ土居ウェブサイトには、使用する原材料についての考え方をまとめたページがあり、「酢」については、以下のように記しました。
 
 
【米酢】 酢は、酒のアルコール分が発酵により酢酸に変化したものですから、考え方は基本的には酒と同じです。伝統的な酢づくりは静置発酵と呼ばれ、仕込み桶の上面のみで酢酸発酵が進みます。これに対し、好気性菌である酢酸菌を活発にするため、強制的に空気を吹き込んで短期間で醸造するものもありますが、時間をかけて醸すものの良さは出ないように思います。自然な甘さを加えるために甘酒が使用されることもあります。酒粕を使用したものも、その質がよければよいのですが、酒粕の品質もさまざまですので注意が必要です。増量のために醸造用アルコールを使用したものは本来の酢とはいえません。
 
 
 
端的に表現しますと、「静置発酵の純米酢」ということになるでしょうか。
 
私共で販売しているとろろ昆布類は、全商品について、原材料は昆布と酢だけです。
他の副原料は一切使用しません。
これほどシンプルになると、原料の特徴がそのまま製品に現れますので、当然その品質が問われます。
つまり、良い酢を醸造して下さる生産者さんが必要であるわけです。
 
これまで、こんぶ土居製品に使用する酢は、和歌山県の丸正酢醸造元様に作っていただいていたものです。
こんぶ土居別注品として、長い間製造して下さいました。
 
別注品になる理由は、「酸度」です。
お酢の酸味は、とろろ昆布等の製品の品質を保つために非常に役立ちます。
酸度が低くなれば、夏場などにカビが生えたりするリスクも高まります。
一般的に販売されている酢は、酸度が4%ぐらいのものがほとんどです。
ただ、それではとろろ昆布に使用するには低すぎますので、丸正酢さんに別注で作っていただいていた次第です。
しかし、前述の静置発酵の純米酢で酸度6%のものを作るのは、どうやら大変なことであるようです。
高い技術が求められます。
私共で使用する酢の量などたかが知れているのですが、わざわざ別注品で対応して下さる丸正酢さんには頭が下がります。
 
ただ、丸正さんを取り巻く環境も、時代と共に大きく変わっているようです。
まず、長い間名物社長として働いてこられた小坂晴次さんが、昨年亡くなりました。
また、丸正さんは和歌山の勝浦にありますが、地方が抱える共通の悩み、人口減少に伴う働き手不足の問題があるようです。
このような背景で、これまで通りのお仕事を続けるのが厳しくなり、業務の再編に取り組んでおられます。
簡単に言えば、これまでの多品種少量生産から少し変えて、商品点数も減らしてシンプルな仕事にしていかれるようです。
 
こういう背景ですので、私共のお願いしてきた特殊なお酢づくりは、続けるのが難しいとのご判断になったようで、先日わざわざ私共へ説明に訪問して下さいました。
 
これまで、「全商品に静置発酵の純米酢だけを使っている昆布屋なんて、日本中でこんぶ土居ぐらいなものだろう」などと傲慢に考えていた部分もありましたが、それは丸正さんのように特殊な協力をして下さった方があったからこそです。
 
今後は、また別の醸造家さんに同じようなお仕事をお願いできないか模索することになりますが、これまで私共の仕事を支えて下さった丸正酢さんと先代の小坂社長には、ただ感謝です。
 
在りし日の小坂社長が書いた「酢づくりの職人として」という文章は、個人的に大好きです。
こちらも、ご興味あればご一読下さい。
 
 

塀の向こうからのお便り

先日こんぶ土居へ、ある方から封書が届きました。

パンフレットのご請求です。

ここまでは珍しくないのですが、書いて下さっていた内容に興味深い部分がありました。

 

以下、その抜粋です。

『恐縮ながら私自身が今現在は刑事施設に入っている為にこんぶ土居様の商品を購入やお取り寄せする事ができませんので、私が自由に行動する時には、是非とも料理する際使用させて頂きます』

 

上記の通りです。

封書に書かれていたパンフレットのお届け先住所は、調べてみると京都刑務所でした。

 

書かれていた内容は非常に前向きなもので、こんぶ土居への新型コロナウイルス感染症の影響を心配して下さったり、私共へのお気遣いの言葉もたくさん記されていました。

どのような事情で罪を犯し服役されているのかは分かりませんが、出所後の楽しみのひとつとして私共の製品を使うことを考えて下さっていることは、非常に嬉しく思います。

おそらく今日あたり、この方へパンフレットが届きます。

 

様々なお客様がおられますが、すべての方々が生活の中で、こんぶ土居製品に何らかの期待をして購入して下さるのだと思います。

そのご期待を裏切らないよう、喜んで頂ける良い製品づくりに励みたいと思います。

たこりきの「だしチキンカレー」

 

こんぶ土居から歩いて数分のところに、「たこりき」というたこ焼き屋さんがあります。

https://www.takoriki.jp/

素晴らしく美味しいたこ焼きを提供するお店です。

あのミシュランガイドにも、最新2020年版に、たこ焼き部門で唯一掲載されているお店です(5年連続)。

 

たこりきのご主人の今吉さんは、過去にこんぶ土居に特別な協力をして下さいました。

例えば、真昆布の産地の函館市立磨光小学校で20年来続けている、5年生に向けた一日授業。

(2020年7月20日投稿「函館市立磨光小学校 2020年夏北海道出張レポート③」をご参照下さい。)

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/07/20/102352

 

これは三代目の時代に始めたものですが、当時は小学生への楽しさの要素も含めるため、児童の皆さんと真昆布のだしの活きたお好み焼きを作ったりしていたのです。

その趣旨に賛同して、今吉さんはレシピを惜しげもなく教えて下さいました。

そこには、言わば「プロのコツ」も含まれており、その作り方に少し驚きました。

このレシピは今吉さんの許可を得て、拙著「土居家のレシピと昆布の話」にも掲載しています。

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/20/094208

 

 また、2020年7月21日のブログ記事「南茅部高校 2020年夏北海道出張レポート④」でも書きましたように、毎年昆布産地の高校生が、こんぶ土居を訪問して下さっています。

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/07/21/093413

ある年、今吉さんは、業務用の大きく重い機械を、わざわざこんぶ土居まで搬入し、生徒の皆さんにたこ焼きづくり体験をさせてあげてくれました。

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こんぶ土居で高校生にたこ焼きづくり実演を見せる今吉さん(たこ焼き器の前の白いシャツの腕まくりの男性)。

 

このように、良いことだと思ったものには、惜しげもなく協力をして下さる方です。

 

そして今年「たこりき」が、飲食店としてのお仕事以外に、レトルトカレーをプロデュースして発売されました。

一般的なレトルトカレーは、よくわからない原材料で作られるものがほとんどで、あまりお勧めできないようなものばかりです。

たこりきのレトルト「だしチキンカレー」は、食品添加物やうまみ調味料を一切使わず、非常に良心的な材料でつくられています。

表面的な美味しさではなく、体にスムースに入っていくような爽やかな食後感が特徴です。

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そして、この製品の原材料として、私共の製品「十倍出し」を使用して頂いています。

パッケージにも十倍出しのイラストと共に、その旨が書かれています。

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十倍出しが、このような製品の原材料としてお役に立っていることを、非常に嬉しく思います。

こんぶ土居の店頭でもこのカレーは販売していますが、たこりきさんのお店は、こんぶ土居から歩いて数分ですので訪れてみて下さい。

カレーと共に、たこりきさんの素晴らしく美味しいたこ焼きもどうぞ。

お店の中に入れば、たこ焼き以外の様々なお料理やお酒も提供されています。

 

 

無濾過バンザイ!

 

先日、こんぶ土居製品を販売して下さっているお取引様販売店から、ご指摘を受けました。

私共の製品「本格十倍出し」に浮遊物があるとのことでした。

販売にご不便をおかけしたような状況ですので、申し訳のないところです。

 

実は、過去にも何度か同様の事が起きています。

当然ながら、十倍出しを瓶詰めして発送した時点では、浮遊物などないのです。

ただそれが、時間の経過で昆布の微細な成分が凝集して、固まりを形成してしまうことがあるようです。

 

この問題を解決する方法は、非常に単純です。

高度な濾過をすれば良いのです。

目の非常に細かいフィルターを通したり、活性炭ろ過をすれば、このような問題は起きません。

しかし、こんぶ土居では、簡単なろ紙を通しただけで製品化しています。

 

その理由は簡単。

濾過によって味が痩せるからです。

 

ただ、このようなことは、消費者の方へのご説明が必要ですので、製品の二か所に注意書きを書かせていただいています。

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無濾過の良さを、こんぶ土居製品に使用する他の原料にも見て取れる場合があります。

私共の製品の「ミネラルいりこん」に使用している圧搾ごま油は、言わば無濾過に近いものです。

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一般的に、品質を安定させるために油脂精製時に水溶性の物質を取り除きます。

「湯洗い」と呼ばれる工程で、油に湯を混ぜて攪拌し、水溶性の物質を溶かし出すのです。

これは特に問題のある工程ではありませんが、湯洗いによって少しおいしさも抜けてしまうようです。

湯洗い以外にも、加工助剤と呼ばれる薬品を用いて不純物を取り除くことも多いですが、表示義務がありませんし、特に必要のない濾過はしない方が良いと思います。

前述のごま油は湯洗いをせず、絞ったまんま。品質は素晴らしく、なんとも豊かな味と香りです。

 

ただ、この油を使って揚げ物をすると、異常な量の泡が出ます。

ちょっと危険です。

決して扱いやすいものではありませんが、それを引き受けてでも使いたくなる魅力があります。

 

 

お酢に関しても、現在お酢メーカーさんと相談して、無濾過に近いお酢をこんぶ土居製品に使用できないか検討しています。

確認しなければならない事がまだまだありますので、使用できるかどうかは未定ですが、面白いものができるかも知れません。

 

見た目が澄んで美しいものは、それはそれで良いのですけれど、濁りのあるものを毛嫌いするのは、本当の自然な美味しさを遠ざけてしまうことになるのではないかと危惧しています。

 

多くの消費者の方にもご理解をいただけると非常に嬉しいです。