こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

劇的美味!昆布バター

 

これまで、あまりレシピのようなものはご紹介して来ませんでしたが、今回は面白い昆布の使い方と、それを知るに至った経緯についてのお話。

 

タイトルの通り「昆布バター」、使うのは昆布粉末です。

 

 

 

大阪の淀屋橋に「コホロエルマーズグリーンコーヒーカウンター 」というお店があります。

 

 

 

数年前に、そちらの店長さんが私共を訪問され、「業務用で昆布の粉末を購入できないか」とご相談下さったのです。

その際、「何にお使いですか」とお尋ねしたところ、バターと混ぜるとのこと。

そんな使い方をしたことがなかったので、とても驚きました。

後日、有難いことに、わざわざ昆布粉バターを使ったタマゴサンドを持って来て下さったのですが、味を見て本当に美味しくて驚きました。

不思議なほどの好相性です。

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ただ、自分でも迂闊だったと思うのは、過去に類似のものは経験していたのです。

私の友人の料理人が、フランスで仕事をしていたとき、帰国時にバターをお土産にくれていました。

なにしろフランスのバターの品質は素晴らしいです。

日本のものと何が違うのか分かりませんが、やはり本場はすごいのです。

そんなお国柄ですので、フレーバーバターも多く販売されています。

お土産で頂いたものの中には「海藻バター」もありました。

その海藻に昆布が含まれているかどうかは分かりませんが、その時に、昆布とバターの相性について気づくべきだったと思うので、悔しいものです。

 

 

 

前述の「コホロエルマーズグリーンコーヒーカウンター」さんでは、一昨年「だしの取り方教室」を開催させていただいたり、現在でも有難いお取引が続いています。

 

昆布粉バターは、柔らかくしたバターと昆布粉を混ぜるだけですので、とても簡単です。

「コホロエルマーズグリーンコーヒーカウンター」さんは、レシピを公開しておられます。

下記ご参照いただき、是非その不思議な美味しさを体験してみて下さい。

驚かれると思います。

 

(とは言え、乳製品の取りすぎにはお気をつけ下さい(特に女性)。 そんなお話は、また後日に投稿致します。)

 

info.envelope.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

(学び)昆布の佃煮を炊いてみて下さい

 

 

こんぶ土居の店頭では、量り売りで3センチ角ほどの四角形に切った昆布を販売しています。(オンラインストアでは販売していません)

お客様から、「これは何に使うのですか」とお尋ねいただくことが、多々あります。

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大阪では古くから昆布の佃煮が名物でした。

昆布自体の産地は北海道なのに、「大阪名物」なのです。

今は下火になりましたが、特にご高齢の方には大阪土産の定番と認識されているのは間違いありません。

いかに昆布文化が大阪に深く根差したかが、分かる事例です。

こんな土地柄ですので、家庭で昆布の佃煮を炊く方も多かったのです。

つまり、前述の角切りの昆布は、ご自宅で昆布の佃煮を炊くための材料としてご用意しているものです。

 

 

家庭の鍋と熱源で、何の問題もなく炊くことができます。

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調味料の配合などは、お好みで変えていただければ良いのですが、家庭の鍋で作りやすい量でシンプルなものを載せておきます。

 

昆布 200g

濃口醤油 200cc

みりん 50cc

水 800cc

(醤油もみりんも、ぜひ伝統製法の本物をご用意ください。)

 

だいたい昆布の5倍量の調味液で炊くとお考えいただければ良いと思いますが、鍋のフタの密閉性や、火の強さで変わります。

 

炊き方は、とても簡単

①角切りの昆布をさっと洗ってざるにあげておく。

②水と調味料を全て鍋に入れて、沸騰させる。

③沸騰後、アクが出てきたら、取り除く。

④昆布を投入し、強火のまま再沸騰させる。

⑤火力を、なんとか沸騰を維持できる程度の極弱火に落として、蓋をして約二時間ほど加熱する。(たまに、底から混ぜて下さい。味見をして固ければ時間を延長して下さい)

⑥調味液のほとんどが昆布に吸い込まれたらできあがり。

 

これだけのことです。何も難しいことはありませんね。

 

タイトルに、「昆布の佃煮を炊いてみて下さい」と書きましたが、理由はかんたん。

本当に素晴らしくおいしいからです。

甘さに頼ることなく、ほとんど醤油だけで炊いているにも関わらず、しみじみと力強い美味しさを感じていただけるはずです。

改めて昆布は、すごい海藻です。

 

上記の分量でも、けっこうたくさんできますから、おすそ分けも良いと思いますし、冷蔵庫では長期間保存することができます。

あまり少ない量で炊くと、上手に仕上げるのが難しくなるかもしれません。

 

 

そして、ここから得られる「学び」がひとつ。

ご自分で最高の原料を揃えて炊いた自家製昆布佃煮と、市販品との味が、全く異質なことにお気づきになるはずです。

美味しいとかまずいとか、そういった話ではなく、『異質の味』なのです。

例えばデパートなどで、贈答品として高級そうに売られているものとて同じです。

 

これはつまり、市販品は「原材料の何かが違う」ということです。

原材料表示には抜け道がありますから、人工的なものが何も入っていないように見える製品があるかも知れません。

しかし、隠れている物の存在を、味の違いが示してくれます。

(原材料表示の抜け道に関しては過去投稿をご参照ください)

2020-05-27投稿 表示を免除されるもの① 原材料の原材料

2020-05-28投稿 表示を免除されるもの② キャリーオーバー

2020-05-29投稿 表示を免除されるもの③ 加工助剤

2020-05-30投稿 表示を免除されるもの④ 栄養強化目的

 

 

その一方で、もしよろしければ、こんぶ土居がつくる昆布の佃煮の味も見て下さい。

(昆布佃煮、ふりかけ等 - こんぶ土居オンラインストア)

家庭で上手に炊けたものと、同じ傾向の味がするはずです。

こうなる理由を、ぜひ想像して頂きたいところです。

 

 

やはり、自分で料理することは本物を知るために、とても大切です。

昆布の佃煮を炊いて体験することで、食品業界にありがちな裏側も、なんとなくご理解いただけるようになるかと思います。

 

 

 

だしの用途だけでなく、天然真昆布は、佃煮にしても最高です。

天然物と養殖物は、味だけでなく食感も大きく違うのです。

だしをとる際には、味の違いは感じても食感の違いはわかりませんね。

不作続きの天然真昆布。

本当においしい昆布の佃煮が食べられるのは、今のうちかも知れませんよ。

是非お試し下さい。

 

 

(余談)

昆布の佃煮は、大阪では「塩昆布」と呼ばれます。

しかし今は、細切りになって乾燥した状態のものを、そう呼ぶことが多いようです。

これは私共の認識では「塩ふき昆布」です。

つまり、濡れている状態の佃煮が「塩昆布」であり、乾燥して表面に粉が浮き上がっているものが「塩ふき昆布」です。

この本来の呼び方を続けたいですが、世間の認識が変わってきているので、少し悩みます。

 

しおふき昆布 - こんぶ土居オンラインストア

 

 

 

 

「KONBU」でなく「KOMBU」?

予防線を張るようですが、今日の投稿は、どうでも良いような話です。

 

前回のブログでご紹介しました、ローカルカルチャースクール.jpの「だし文化プロジェクト」。

https://localcultureschool.jp/products/movie02

 

動画には、海外の方にもご理解いただけるように、英語字幕がついていました。

その中で、昆布は「KOMBU」と表記されています。

個人的には、「こ・ん・ぶ」なのですから、「KO・N・BU」でないのかと思うのですが、NでなくMが使われています。

 

どうしてこうなるのか、少し理由を調べてみますと、ローマ字表記には「ヘボン式」と呼ばれる方法があり、その中で「撥音:B、M、Pの前の「ん」は、NではなくMで表記する」決まりがあるようです。

 

こうなる背景には、発音に関する話があるようで、色々と読んでみましたが、よく分かりません。

英語の単語では、必ずしも「撥音の前ではNでなくM」というわけではありません。

例えば、「INPUT」と「IMPORTANT」。

INPUTは、撥音である「P」の前に「N」が来ていますね。

 

ヘボン式の記載ルールはあるにしても

「こ・ん・ぶ」の「ん」は、ひらがな50音の「ん」

「KO・M・BU」になるのは

個人的には違和感があります。

 

こんぶ土居は、これからも「KONBU DOI」 です。

 

 

【お知らせ】Dashi Culture Project だし文化プロジェクト

地域文化の魅力の再発見、継承のためのウェブサイト「ローカルカルチャースクール.jp」。
文化庁の委託事業の第一弾として「だし文化」について、5本の動画が制作されました。
こんぶ土居は、大阪の昆布文化や現在の海産物が抱える課題についてお話させていただいています。
宜しければ、下記サイトから動画をご覧ください。

《大阪昆布文化と未来の話》localcultureschool.jp


動画視聴にあたり寄付金を募っていますが、0円を選んでカートに入れていただければ、無料で視聴することもできます。

 

 

改めて、ヴィナイオータのワイン

前回のブログ投稿で、味を正しく評価することの難しさについて書きました。

今日のお話も、それと少し関係しています。

 

味覚上の判断をしなければならないものはたくさんありますが、その中でもワインは「味の評価軸」が比較的明確になっている分野であるように思います。

ソムリエさんは、分析的にワインの味を表現しますし、ワインコンクールでの評価などもありますから。

しかしそれとて「ひとつの権威が設定した物の見方」に過ぎないのかも知れません。

  

2020年11月7日に「燃えるワインインポーター『ヴィナイオータ』」というタイトルで、ブログを投稿しています。


本日は改めて、良いイタリアワインのインポーターであるヴィナイオータさんのお話です。

 

 

まず私はかなりアルコールが弱い体質ですし、日常的にお酒は飲みません。

ですので、ワインについての知識も皆無に等しいでしょう。

詳しくない人間は、ワインを選ぼうにも何を基準にして良いのやらさっぱり分からないものです。

 

 

それが最近では、良いワインを販売しておられるお店へ行って、イタリアコーナーに進み、輸入者が「ヴィナイオータ」となっているものを選んでばかりです。

そうして何種類か試飲させていただいた結果の感想ですが、新しい世界が開かれたように感じています。

どれを飲んでも、素晴らしく楽しい体験をすることになるのです。

 

 

これは、カルチャーショックに近いものです。

今までワインだと思っていた世界のものから逸脱するような味に、度々触れることになります。

恐らくヴィナイオータさんで輸入されているワインは、権威のあるワインコンクールで賞を取ったり、そういったことと無縁のワイナリーのものが多いのではないでしょうか。

むしろ、一部のワインずきの方からは酷評されそうな味のものもあります。

 

しかしそんなワインの味が、なんとも不思議なもので、一瞬違和感を覚え当惑させられるようでありながら、同時に滋味深く、余韻に浸りながら飲み進めてしまうような、不思議な魅力に溢れています。

  

 

また、酒が弱い人間にはよく分かるのですが、体に優しいのです。

所謂ナチュラルワインと呼ばれる世界ですので、ぶどうの栽培方法や醸造方法も非常に自然で、そんなところが関係しているのだと思います。

明確な理屈は分かりませんが、質の悪いお酒ほど体にダメージを与えることは間違いないでしょう。

 

 

改めて、味の評価軸の設定も難しいものです。

前回のブログで、「歴史を伴った、その道の人たちの評価」が大切だなどと書きましたけれど、それとて万全でないことを示しています。

これまでの一般的なワインの味の見方が、悪いと言うことではないにしても、その価値観では評価されなかった世界にも素晴らしいものがあるのです。

 

 

ヴィナイオータのワインに触れてみることは、おいしいとかまずいとか、そんなこと以上の、「食の学び」を与えてくれると思います。

近日こんぶ土居でも、ヴィナイオータさんが輸入された素晴らしいイタリア食材の販売を始めます。

あいにく酒販免許がないので、ワインは取り扱うことができませんが。

これらの食品も、本当に驚くべき品質のものばかりです。

店頭でもネットショップでも販売致しますので、ご期待下さい。

 

 

最後に、ヴィナイオータさんのウェブサイトのトップページに記載されている文章をご紹介したいと思います。

是非ご一読下さい。

やはりものづくりに哲学は必要ですし、作り手だけでなく、世に正しく伝える人の役割も大切だと、改めて思います。

 

 

ヴィナイオータとは

ヴィナイオータは…インポーターです。

同時にヴィナイオータは、僕オータの想いや考えを表現するための場でもあります。

ワインを中心に、生ハム、パスタ、穀類、オリーブオイル、バルサミコ酢やジャム等の保存食も扱っているのですが、それら物質的なモノだけにとどまらず、それらが生み出された背景にある、造り手の想い、哲学、理念さえもしっかり輸入したいと本気で考えているインポーターです。

自然に対して畏怖の念を抱いているのなら、自然環境に最大限の敬意を払った農業を心がけるでしょうし、ヴィンテージやテロワールなど、その年、その場所、その土壌の“自然”が余すことなく反映されたワインを理想とするのなら、醸造時に過剰な介入はしないでしょう。

不思議なことに、このように造り手が“我”を捨てて、その時、その瞬間の良心に従ってできたプロダクトには、唯一無二の個性が付与されます。

年の個性、土地の個性、品種の個性、そしてヒトの個性…

ヴィナイオータは、そういった造り手の良心、覚悟、情熱などが詰まったプロダクトがもたらす感動を皆さんと共有すべく、熱苦しくご紹介することをモットーとしているインポーターです。

ヴィナイオータ代表 太田 久人 

味の評価軸(昆布の粉末のはなし、後編)

 

 

前回の投稿で、臆面もなく「こんぶ土居の昆布粉は品質が素晴らしい」などと自画自賛しておりましたが、「味覚の面で品質が高い」と、何を以て言うのでしょうか。

これは、実は難しいところです。

そう感じさせる事例に、先日遭遇しました。

 

 

こんぶ土居は「良い食品づくりの会」という、食品生産者の研修の集まりの会員です。

http://yoisyoku.org/

 

この会で共に学ぶ会員さんはたくさんおられますが、鰹節屋さんの会員もあります。

私共のネットショップでも小売り用の鰹節を販売しておりますが、その作り手である東京の「タイコウ」さんです。

 

 

良い食品づくりの会には「認定品」というシステムがあり、他の会員によって、ある生産者会員の製品が認定品にふさわしいか審査されます。

先日、この認定審査にタイコウさんの新製品が出品されました。

「いつものだし粉」という製品です。

製品としては非常にシンプルで、鰹節と煮干しと昆布の粉末をブレンドしただけのものです。

だしを取るのがめんどくさければ粉のまま入れてしまってはどうか、というコンセプトですね。

 

 

 

前述の良い食品づくりの会の審査方法は多岐に亘りますが、当然味も見るわけです。

会では「官能検査部会」と呼んでいますが、同カテゴリーに属する他社製品を用意し、比較しながら味が優れているかを確認しています。

 

 

私も味を見せていただいたのですが、比較品とは驚くほどの差がありました。

実は私が比較品を選定したのですが、メーカーによって公表されている素性を参考に、良いと思われる比較品を選んだつもりです。

しかし、タイコウさんの製品は、圧倒的に高品質でした。

おいしさの理由はおそらく単純なことで、良い原料を集めてきたというだけのことだと思います。

昆布の粉は私共で製造したものをお使いいただいております。

煮干しについても非常に高品質なものをご用意され、それを一尾ずつ手で割り、内臓とエラを取り除いて粉末化しているとのことです。

鰹節についてはご専門ですし、そんな原料を使えば美味しくなって当然です。

 

 

「美味しい」と簡単に書きましたが、では、だしの粉末がどんな味であれば「おいしい」と呼べるのでしょうか。

私が「いつものだし粉」を高品質であると申し上げた理由は単純です。

「含まれているべき良い味や香りが強く、同時に雑味が少ない」ということでしょうか。

 

味覚と嗅覚に分けて考えますと。

味覚については、だしには「苦み」や「酸味」「渋味」などは少ない方が良いですね。 

それに対して、所謂うまみ成分は、当然多い方が良いでしょう。

嗅覚から考えると、粗悪な原料を使えば、いやなにおいがあるものです。

例えば、鰹節や煮干しについては原料魚の鮮度が影響し、魚くささや酸化臭があると高品質だとは言えないでしょう。

昆布も同様で、昆布の素性によっては、海藻臭いような特殊な風味が気になるものです。

良い味や香りは歓迎だが、不要な要素は少ない方がいいということです。

 

 

 しかし、不要な要素を、それが「不要」であると、どのように認定するのでしょうか。

雑味と呼べそうなものでも、その風味が好きだという方がいた場合、どう考えれば良いのでしょうか。

こういった状況では、「所詮、味なんて、人それぞれの好みじゃないか」という話が出てくる場合があります。

 

 

 

 

実は、前述の良い食品づくりの会の官能検査時にも、少し評価が分かれたのです。

私ならタイコウさんの製品に良い評価をしますが、そうでない部会員もいたということです。

私は昆布屋ですから、言ってみれば「その道の人」ですが、だしそのものの味を見慣れている人など、実は世間では少数派なのかも知れません。

そんな方には、そもそもどんな評価軸で考えれば良いのか、悩んでしまうのかも知れません。

結果、「なんとなく」の評価がされる場合があるように思います。

 

 

 

 

 こんな一件から、今回のブログは「味の優劣」と「味の好み」について書いてみることにしました。

少し難しくデリケートなテーマですが。

 

結論から申しますと、完全な「優劣の線引き」は簡単では無いと思います。

しかし、「好み」と片付けてしまうことには、やはり賛同できません。

 キーになってくるのは、「歴史を伴った、その道の人たちの評価」でしょうか。

 

 

他の分野を考え合わせると理解しやすいかと思います。

私は食の業界に居ますので、主に動員するのは味覚と嗅覚ですが、他の感覚で判断する分野もありますね。

例えば、美術品を目で見たり、音楽を耳で聞いたり。

私は美術や音楽に関して知識も無ければ才能もありませんので、そういったものを正しく判断する能力を残念ながら持ち合わせていません。

音楽の演奏に良いものとそうでないものがあり、美術品に優れたものとそうでないものがあるのなら、食品についても同じでしょう。

ですので、食べ物の味を『好み』で片づけてしまうのは、やはり正しくないと思います。

食に関しては、健康にも関わってきますから、尚更です。

 

 

また、「多数決でもない」と考えています。

非常に失礼な言い方になって甚だ恐縮ですが、「味の分からない方」は相当数おられますので、品質の高くない物が好評を博すことは考えられないことではありません。

特に食べ慣れないものに関しては、そうなるリスクは高いように思います。

 

 

 

 

前回の投稿で、私共の昆布粉を「圧倒的にに高品質だ」等と書きましたが、その一方で、売れに売れているわけではないのです。

これはひょっとすると、そう感じておられない方も多いということかも知れません。

もちろん価格のことも関係するかとは思いますが。

 こう考えると、良い食品を作る生産者には「適正規模」があって、そもそも売れまくるような状態を望むべきでないとも思います。

 

 食品製造者の本分として、一人でも多くの方に喜んでいただけるものを作ることは大切でしょう。

しかし、基本的にこんぶ土居では、最大公約数を狙ったような製品は作りません。

ひとりよがりなようで甚だ恐縮ですが、根拠を伴って私が良いと思ったものをご提供します。

それが結果として、買って下さった方の喜びにつながることを望んでいます。

 

 

 

世間には、「あるべき原料とあるべき製法」から逸脱した、イミテーションと呼べそうな食品も存在し、意外にそんな製品が売れていたりもしますので、それについては特に注意が必要かと思います。

 しかし幸い、昆布の粉にはイミテーションは無いでしょう。

さほど高品質でない原料を使って作った昆布粉が、用途によっては問題なく使えたり、一部の場面では、そのようなものの方が適していることさえ起こり得ます。

 ですので、私共以外の昆布粉製品を「悪く」言うつもりはありませんし、それにはそれの存在意義があるわけです。

ただ、本当に良い原料をつかってコストもかけて作っていますから、その違いが理解されて欲しいとは思います。

こんぶ土居店頭で販売している昆布粉は、献上昆布たる白口浜天然真昆布100%です。

こんな明確な素性の高品質な原料でつくったものはないと自負しています。

 

今回の投稿内容は、一部に私の「愚痴」や「嘆き」が含まれているようで申し訳ありません。

 

 

 

味を判別することについても、昔の人は優秀だったのかも知れません。

古い時代から昆布に格付けが存在したことは、改めてすごいことだと思います。

昆布の品種もたくさんある中で、真昆布だけには地名を冠することなく「真」という文字をつけたり、同じ真昆布エリアでも「浜格差」と呼ばれる採取地の格付けをしたわけです。

そんな「良いものを判別する感覚」が現代人に失われているのかも知れません。

 食の業界にも、食品自体に関心があるのでなく、そこから得られるお金のことばかりを見ている人が多いような気もします。

 

 

幸いにも私共の仕事は、「良い食品」を正しく判別できるお客様に支えられています。

その方々に向けた仕事は今後も変わりませんし、ご期待を裏切らないよう良い製品づくりに努力したいと思います。 

また、良いものを理解していただき易いように、情報や体験の機会の提供も充実させていければと考えています。

(構想あり)

 

 

 

 

昆布の粉末のはなし(前編)自社製品自慢

こんぶ土居の製品に「昆布粉」があります。

これは、類似品が他社にたくさん存在しますので、言ってみれば「ありふれたタイプの製品」です。f:id:konbudoi4th:20210303163851p:plain

かなり前になりますが、漫画「美味しんぼ」にも取り上げられました。

その際に、原作者の雁屋哲先生が書いて下さったことで嬉しかった内容が、下記ページに含まれています。

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小学館発行「美味しんぼ89巻」より引用)

 『健康食品売り場で売っている昆布粉を試しに使ってみましたが、土居のものとはまるで別物』

 

 

つまり、雁屋先生は、ちゃんと他社製品を手に入れて、味の比較をして下さっていたわけです。

その上で、私共の製品の良さを感じていただけたようでしたから、とても嬉しく思いました。

 

 

先日ある方が、他社の昆布粉に存在する欠点を次のように表現されました。 

●粘る(ついでにダマになる)

●臭い

●えぐい

●後口が悪い

●残り香が悪い

●酸っぱい

●だしが出ない

  

 

こう評された方によりますと、私共の昆布粉は上記のような欠点がないそうです。

昆布の粉末など、機械で粉砕すればできるわけですから、製造方法に大きな違いがあるとは思えません。

味に違いが出る理由は、ひとえに原料の違いでしょう。

粉にしてしまうと元の昆布の姿は見えませんし、できあがりの昆布粉末の見た目など、どんな原料を使っても大差はありませんので、粗悪な原料を使うのかもしれません。

 

 例えば、2020年12月17日の投稿「ウニと昆布の困った関係」でご紹介した昆布の「ガニアシ」。

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ウニの飼料としての活用を模索していることをご紹介しましたが、実は当初、このガニアシは食品としての利用が考えられていたのです。

かつて昆布産地の漁業協同組合が、私共にこの粉を送って来られ、何かに使えないとご相談いただいたことがありました。

そのときに初めて味をみたのですが、当時本当に驚きました。

私共の昆布粉と同じ産地のものです。

品種も同じ真昆布です。

それでも、完全に別物といって良い、圧倒的な味の違いがありました。

 

仮にこれを市販したら、商品プロフィールとしては、「南茅部産真昆布粉末」などと書かれ、私共の製品と大差無いように映るのかも知れません。

 

 

自慢のようになってしまいますが、やはり私共の昆布粉は、「圧倒的に高品質」だと思います。

ただ、当初はそれほど特別だとは思っていませんでした。

なにしろ、普通の仕事をしただけです。

普段使っている昆布を、機械にかけて粉にしただけなのです。

 

 

私共が当たり前の食品製造の在り方だと考えてきた

『品質の良い原料を用意して、普通に良いものを作る』

実はこれは当たり前でなく

世間一般的には、

『できるだけ安い原料を用意して、なんとかごまかして普通の品質に見せる』

なのかも知れません。

 

後者のような製品も、全く何の意義もないかと言えばそうではないかも知れませんが、良いものとの違いは理解されないと、作り手としては悲しいものです。

そもそも、粗悪な原料を使ったとしても、それを正直に言うメーカーなどあるはずがないので、欺瞞もいくらか含まれることでしょう。

 

 

もし私共の昆布粉をお使いいただく機会があれば、是非他社製品も手に入れて、味の違いが生まれる背景について、少し考えていただけると非常に嬉しく思います。

 

 (次回投稿、味の評価軸(昆布の粉末のはなし、後編)へ続きます)