こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

『表示』、品質を見分ける指標

 

  例えば加工食品のパッケージに、

『こだわりの厳選素材を使って』とか、

丁寧に心を込めて作っていますとか、

先祖伝来の秘伝の製法でとか、

 

こんな表現を目にしたとすれば、多くの方はどのようにお感じになるのでしょうか。

 

 

加工食品を製造するメーカーはどこの会社でも、自社製品を良く見せたいものです。

そのため、前述のような美辞麗句を並べたてがちです。

しかし多くの場合、その表現が具体的に何を意味したものなのか曖昧です。

 

例えば、「こだわり」「丁寧に心を込めて」「秘伝の製法」といった言葉なら、たいていの製品に関してこじつけて言ってしまえるはずです。

こんな表現は、言わば「書き放題」です(一部、表現方法の規制は存在しますが、抜け道はいくらでもあるものです)

 

 

私個人的には、そんな表現を見れば「やれやれ」と思ってしまうのですが、多くのメーカーがそんなアピールを続けるところを見ると、効果があるということでしょうか。

こんぶ土居の製品には、そんな意義に乏しい表現は使いたくありません。

もう少し、実のある情報提供をしたいと考えています。

 

 

「好きなように書き放題」、でない要素としては、行政によって加工食品に表示することが義務付けられている情報があります。

それは「一括表示」と呼ばれるものです。

パッケージの裏面にまとめて書かれている表示のことですね。

「一括表示」の、最も基本となる情報は下記の6つです。

 

●名称
●原材料名
●内容量
●消費期限または賞味期限
●保存方法
●製造者等の名称及び住所

(これ以外にも、栄養成分表示や主要原料の原産地表示なども、昨年猶予期間が過ぎて現在では表示が義務付けられています。)

 

この中で、製品の良し悪しを見分けるために最も注目すべき要素は「原材料名」だと思います。

 

メーカーが加工食品を作る際、その製品が本当に良い素材でつくられているのなら、それは「多くの消費者に伝えたい情報」でしょう。

逆に、ある製品が粗悪な原材料でつくられているとすれば、それはメーカーにとって「知られたくない情報」でしょう。

これは、非常に大きな違いです。

 

つまり、本当に厳選した素材で製品を作っているのであれば、それは進んで開示したくなるはずなのです。

ですので、ずっと昔からこんぶ土居では、表示義務のありなしに関わらず可能な限り詳細な原材料表示を書くようにしてきました。

 

しかし製品の表示は、例外的な場合を除き8ポイント以上のフォントサイズで書くことが決められていますから、載せられる情報量はラベルの面積的な理由によって制約があります。

しかし、オンラインストアであれば、文字数の制約はありません。

そのため、基本的に全ての原材料について産地(原産地または加工地)を表示し、複合原材料については、それが何で構成されているのかを書いています。

 

例えば、よくあるタイプの塩ふき昆布である「細切しおふき」を例に取ると、製品に貼り付けているラベルはこんな表記になっています。

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オンラインストアでは、更に詳細に下記の通りに記載しています。

【原材料の詳細】
真昆布(北海道函館市産)
丸大豆醤油(和歌山県東牟婁郡製造)(原材料:丸大豆、小麦、塩)
濃縮だし(大阪府製造)(原材料:真昆布、鰹節、鰯煮干し)
たまり醤油(三重県鈴鹿市製造)(原材料:丸大豆、塩)
伝統味醂岐阜県加茂郡製造)(原材料:もち米、米麹、米焼酎(乙類))
純米酒(長野県佐久市製造)(原材料:米、米麹)
和三盆糖徳島県製造)(原材料:さとうきび、砂糖)

 

 

自画自賛になりますが、こんな詳細な原材料表示は、他社に例を見ません。

前述の通り、こんぶ土居が詳細な表示をするのは、それが「知っていただきたい情報」であるからです。

仮に粗悪な原料で製品づくりをしているのであれば、そんな「知られたくない情報」を進んで書きはしないでしょう。

この事に、是非ご注目いただけるなら、製品づくりをしている者としては非常に嬉しく思います。

 

一括表示欄に義務付けられている要素だけでは、消費者に十分な情報が伝わらないものです。

本ブログの過去投稿では、表示を免除されるものについて詳細に書いています。

是非ご一読下さい。

表示を免除されるもの① 原材料の原材料 - こんぶ土居店主のブログ

表示を免除されるもの②キャリーオーバー - こんぶ土居店主のブログ

表示を免除されるもの③加工助剤 - こんぶ土居店主のブログ

表示を免除されるもの④栄養強化目的 - こんぶ土居店主のブログ

 

 

原材料表示への「姿勢」の違いから、こんぶ土居製品と一般的な製品との違いを推し量っていただけるなら、非常に嬉しく思います。

 

 

ラッコと昆布に夢想

 

先日、海外のネット記事に面白いものを見つけました。

カリフォルニアでの、ラッコと海藻の関わりについての記事です。

mobile.reuters.com

 

内容の趣旨は、カリフォルニアで海藻が減少する問題に、ラッコが役に立つかも知れない、といったものです。

海藻が減少して磯焼け状態になることは、世界的に問題視されていますが、磯焼けの海では岩盤が露出し、そこにウニばかりが目立つものです。

ウニは海藻を食べますから、その個体数が増えすぎることは、海藻にダメージを与えるわけです。

しかし、もしその海域にラッコがたくさんいれば、ウニを食べてくれますので個体数が調整されることになります。

 

 

 

とても面白い内容の記事でしたので、改めて少し調べてみると、なんと過去には北海道にもたくさんラッコがいたようです。

そもそも「ラッコ」という言葉は、アイヌ語に由来するということですから驚きです。

しかし、現在は日本に野生のラッコはほとんどいません。

理由は単純で、過去に乱獲されているのです。

 

18世紀から毛皮目的で乱獲され、20世紀の初頭には、絶滅の危機に瀕しています。

つまり、100年ほど前には、既に日本からラッコはほぼ姿を消しているのです。

私たちがラッコと北海道を結び付けるイメージを持てなくても無理はありません。

 

 

以前から、天然昆布の資源枯渇に関して何度も投稿していますが、やはり過去から少しずつ生態系のバランスを崩してきているのがよくわかる事例です。

ラッコが昆布不作の直接的な原因だと言うつもりはありませんが、とにかく人間が無茶なことをした過去のツケがまわってきているということは、間違いないように思います。

非常に根深い原因が、本当にたくさんありますから、私がずっと取り組んでいる天然真昆布の再生も、簡単に結果が出るようなことではないようです。

 

 

水族館の人気者のラッコ。

昔は北海道でも昆布に戯れるかわいらしい姿をたくさん見れたんだなぁ、と思うと、そんな光景が戻ってくることを期待し、夢に描いてしまいます。

 

天然真昆布の資源枯渇は乱獲によって起きている訳ではありませんので、ラッコと同列に語ることはできませんが、長い間自然にダメージを与えて続けてきた人間の営みを反省し、改善する必要性を改めて感じます。

 

 

自然塩のミネラルと、減塩の必要性

 

調味料としての塩にも様々なタイプがあり、味も大きく異なりますから、面白いものです。
どれを取っても悪いということは無いのですが、こんぶ土居ウェブサイト上の「原材料について」のページには、以下のように書いています。

 

食塩
製造方法は大きく分けると
1. 物理的な方法で海水から水分を蒸発させ、結晶させたもの
2. イオン交換膜で電気的にろ過したもの
に分類されます。
1の中では太陽や風の力で結晶させ、作り手の顔が見えるものが最高ですが、輸入天日塩を海水で溶かし不純物を除いて再結晶させたものも比較的安価でよいと思います。2はミネラルバランスがどうしても偏ります。専売制時代の名残の、ほぼ塩化ナトリウム100%の塩は、やはり食品として少し不自然であるように思いますし、味覚的にも健康面でも良いものでは無いでしょう。

 


所謂、「自然塩」と呼ばれるものが存在しますが、ほぼ塩化ナトリウム100%の塩との差別化の呼び方でしょう。
こんぶ土居でも、ずっと以前からお取引のある「土佐のあまみ屋」さんの完全天日塩を販売しています。


●土佐の海の天日塩 あまみ

 この塩に限らず、専売制の時代と違い今は良い塩づくりをしている方がたくさんおられますので、選択肢は豊富です。

自然塩と呼ばれるものの特徴のひとつに、ミネラル分の含有量があります。


前述の「あまみ」を例に取ると、パッケージには下記のような栄養成分表示が記載されていました。
マグネシウム:360mg
カリウム:100mg
カルシウム:720mg
(100gあたり)

 

所謂「精製塩」には、上記のようなミネラル分がほとんど入っていませんから、美味しさだけでなく栄養的観点から見ても自然塩は良いでしょう。
ただ、過信は禁物です。

 

まず、日本人は、そもそも食塩を摂りすぎています。
食塩の摂りすぎは、高血圧を引き起こすことがあり、その結果として腎不全や循環器の疾患につながります。
どこの国でも、一日の摂取推奨量を6gぐらいに設定していますが、多くの日本人は平均10gほど摂取していますから、大幅に摂りすぎているわけです。
つまり、減塩が必要なわけですね。


同じ食塩を摂取するにしても、「精製塩」と「自然塩と呼ばれるもの」は塩化ナトリウムの含有量が違いますから、そいういった意味でも自然塩が減塩につながるのかも知れません。
それはそうなのですが。
世間には不思議な説を唱える方が意外に多くいます。

 

それは、
「精製塩を使うから健康に問題が出るのであって、自然塩を使えば減塩は必要ない」といったものです。
普通にネット検索していただければ、この手の話はいくらでも出てきます。
結論から申しますと、この考えは誤りです。

 

 

こういった説を唱える方は、自然塩に含まれるミネラル分に言及されます。
例えば、「自然塩の中には塩化ナトリウムだけでなくカリウムなども含まれるから、カリウムの血圧を下げる作用によってバランスが取れて問題ない」と言ったものです。

確かにカリウムは体内でナトリウムを排出する作用がありますし、良い効果を見せるのは間違いありません。
しかし、自然塩の中に、どれぐらいのカリウムが含まれているのかを把握しなければなりません。

 

そもそも、私たちは一日に、どれぐらいのカリウムを摂取することが推奨されているのでしょうか。
厚生労働省の資料「日本人の食事摂取基準」では、現在の日本人の摂取量を考慮した、高血圧の一次予防のための目標量として、18歳以上の男性では、3,000㎎、18歳以上の女性では、2,600㎎が設定されています。

 

では、前述の「土佐の天日塩あまみ」の成分を振り返ってみましょう。
100g中のカリウム含有量は、100mgでした。
私たちの食生活で塩分(ナトリウム)はあらゆるものに含まれていますから、食塩ばかりから摂っているわけではありません。
ここでは仮に、日本人の一日の平均摂取量10gの半分、つまり5gを天日塩から摂取したと仮定しましょう。
前述の成分値から計算しますと、完全天日塩あまみ5g中のカリウム含有量は5mgになります。
男性の推奨量の3000mgと比較しますと、わずか0.16%にすぎません。
つまり、残りの99.8%は他の食品から摂るのです。
こんな状況で、自然塩に含まれるカリウムの健康効果を評価できるでしょうか。

 

 

「自然塩にはカリウムが含まれているんだ!」と言われれば、それ自体は誤っていません。

しかし、それによって減塩が不要だなんて、どう考えてもおかしな話です。

美味しさの面でもカリウム以外のミネラル分の観点からも、できれば良い塩を選ばれることをお勧めしたいですが、しかしその一方で「自然塩だから減塩不要」という誤情報に惑わされることなく、健康を保つために適切な減塩をしていただくのがよろしいかと思います。

 

昆布屋的に申しますと、たった1gの昆布にもカリウムは61mg含まれていますし、他のミネラルも多いので、前述の塩と比べると遥かに血圧を下げる効果は高いでしょう。

しかし、これとて過信は禁物だと思います。

そんな考えもあって、これまで私共では、昆布の降圧効果を強調した販売は一切してきませんでした。

 


塩の話に限らず、いい加減な健康情報は本当に多いものです。

流されることなく、正しく評価したいものです。

 

 

砂糖は悪者?精白された食べ物

 

さて、食品や食品添加物についての考え方は人それぞれですが、「どんなものでも食べ過ぎれば悪い」等と言う人が意外に多いものです。

 

それはそうなのですが、その前に

A「体を養う栄養素であるが、取りすぎると悪いもの」

B「そもそも体に不要であるもの」

を分けて考える必要があるかと思います。

 

 

前者の代表例は、塩などでしょうか。

塩分(塩化ナトリウム)は、人間が生きるために絶対に必要な栄養素です。

しかし、取りすぎると高血圧などの原因となり、健康を害することは多くの人の知るところでしょう。

砂糖も似た傾向を見せます。

取りすぎると肥満につながりますし、健康によくありません。

これは、言ってみればたいていの食品に当てはまるのではないかと思います。

何にでも「適正量」があるのは当然ですね。

 

 

私共の製品は、食品添加物を一切使わず自然なつくり方をしているので、それを評価して下さる方も多いです。

食品添加物を使用しない理由は、それが上記B「そもそも体に不要であるもの」だからです。

 

 

その一方で、例えば「砂糖」は、A「体を養う栄養素であるが、取りすぎると悪いもの」

ですから、製造原料として使用します。

 しかし世間には、砂糖を悪者扱いして、避ける方がけっこうおられるようです。

私共の製品についても、「砂糖が入っていなかったら良いのに」という反応を示す方がたまにおられるのです。

極端に砂糖を悪者扱いする方については、その理由が知りたくなります。

 

 

昔に比べて砂糖は安くなり、甘い食品が溢れています。

ですから、やはり砂糖を摂りすぎの傾向はあるのでしょう。

量の問題として「砂糖を控えたい」という意向は良くわかるのですが、「砂糖は体によくないものだ」と考えられるのであれば、それには少し疑問を感じます。

ただ、「白砂糖を避けたい」と考える方の理由なら想像はできます。

 

 

砂糖に限らず、白く精製されたものを避ける方は一定数おられます。

例えば、白砂糖を避けて粗糖や黒砂糖にしたり、白い小麦粉を避けて全粒粉を使ったり、また、玄米を常食する方も同じ考え方だと思います。

精製塩を避けて自然塩、も似た構造でしょうか。

これは、白く精製することによって大切な栄養素が抜けた状態になるので、それを問題視しているのだと思います。

例えば、不足しがちなミネラル類などの微量栄養素は、精白することで大きく減少することは間違いありません。

 

 

 私も個人的には真っ白に精白されたものをできるだけ避けたいと思い、特にパンに関しては全粒粉パンやライ麦パンなどを好んで食べます。

その一方で、お米に関しては、精白しすぎない「分づき米(糠や胚芽を残して精米する米)」なら良いのですが、玄米はやはり食べにくいと感じてしまいます。

また、たまに真っ白なごはんを食べると、「これはこれで美味しいなぁ」と思ってしまうのです。

砂糖についても、栄養の面では黒砂糖や粗糖が良く、料理を豊な味わいにしてくれので素晴らしいのですが、その一方で白砂糖の方が合う用途もあるので完全に避けているわけではありません。

 

以前も書きましたが、味覚はセンサーです。

必要なものを体内の取り入れ、不要なものを摂取しないようにするための仕組みです。

 砂糖が容易に手に入らない時代には特に、人間は甘いものに強い欲求を示してきたでしょう。

それは、体に必要な栄養素であるからこそです。

 

 

こんぶ土居では製造原料として、砂糖以外に、甘味を与えるものとして伝統製法の味醂麦芽水飴も使用しています。

極端に甘味を避けようとする方がいるのであれば、なんだか宗教的「信じ込み」のような気もしないでもないですし、A「体を養う栄養素であるが、取りすぎると悪いもの」については、あまり毛嫌いすることなく適切な距離感を保てば良いように感じています。

 

「砂糖を取り過ぎない」と「砂糖絶ち」の違い、「そもそも体に不要であるもの」と「食べ過ぎると悪いもの」の違い、このあたりの線引きが正しくされると良いと思います。

 

煮干しの頭は美味しいですよ

 

今日は、煮干しについての豆知識的な投稿です。

煮干しでダシを取るときに、やはり気になるのは、魚ならではの生臭さや内臓由来の苦み。

それ故、煮干しを敬遠する方も多く、とても残念に思います。

こんぶ土居では、煮干しの水出しをお勧めしていますが、それによって魚臭さや苦みが少ないだしが簡単にできます。

 

ポットなどに、冷水と昆布と煮干しを入れ、冷蔵庫で一晩放置して下さい。

加熱の必要はありません。

十分に時間が経過したら、底と表層で濃度の差ができていますので、底からかきまぜて下さい。

それだけで昆布と煮干しのだしの完成です。

(長く漬けすぎると良くないので、一晩経過したら昆布と煮干しは取りだして下さい。)

 

 

冷蔵庫で抽出するなら、頭やハラワタがついたままでも、生臭さなどはあまり気になりません。

急ぎでだしが必要な時は加熱するしかありませんが、時間があるのなら加熱するメリットはほとんど無いとお考え下さい。

 

 

更に上品なだしにしたい方は、一般に言われるように頭とハラワタを取り除くことになるでしょう。

しかしこれは、厳密に言えば少し違うのです。

臭いのは、「頭とハラワタ」ではなく「エラとハラワタ」です。

頭自体は、なかなかおいしいものです。

 

ですので、せっかくひと手間かけて「頭とハラワタ」を取り除こうと思う方は、そこから更に少し進んで「エラとハラワタ」を取り除いて、身と頭を活用することお試しいただければと思います。

 

【内臓の取り外し方】

これは簡単です。

①胴と頭を外す

②煮干しの背中に爪を立て、縦に半分に割る。

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③割った二つのどちらかの腹の部分に内臓がついているので取り除く。

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右の黒いのがハラワタです。

 

 

【エラの取り外し方】

頭の部分の内部にあるエラを取り除く。

下の写真の左のものがエラです。

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拡大すると、こんな感じです。エラは、血液に酸素を取り込むための器官ですから、やはり血生臭いようです。

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(煮干しの割り方などは、香川県の「いりこのやまくに」さんに教えていただきました。)

https://paripari-irico.jp/

 

 

 「頭と内臓」よりも、「エラと内臓」なら捨てる部分も少なくなり、より有効活用だと言えるのではないでしょうか。

 

その他、ダシを取る前に煮干しを煎ったり、更にクセを抑える方法もありますが、やはり簡単なのは冷水でゆっくり抽出することかと思います。

 

昆布と煮干しの水だし、間違いなく世界一簡単なダシでしょう。

是非お試し下さい。

(だしがらも、是非ご活用下さい。)

 

煮干しに関係する過去投稿も、併せてご一読下さい。

併用もアリ、鰹節と煮干しのだし - こんぶ土居店主のブログ

ミネラルいりこんの役割 - こんぶ土居店主のブログ

 

 

新しい昆布の可能性

 

昆布は日本独自の食文化ですが、今や世界に進出し、新しい世界が拓けてきています。

数年前、仕事でサンフランシスコを訪れた時は、一部の高級スーパーの海藻コーナーの充実ぶりに目を見張ったものです。

日本の普通のスーパーより海藻売場が広いようにすら感じました。

 

 

例えば、「あらめ」という海藻を、ご存じでしょうか。

 

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アメリカ西海岸では、こんな製品が普通に販売されていました。

 

多くの種類の海藻が売られていましたが、注目すべきは、そのパッケージの製品名です。

ご紹介した「あらめ」も「ARAME」と表記されていますし、「KONBU」「WAKAME」などと、ほとんどが日本語のアルファベット表記なのです。

昆布は英語では「KELP」という単語が当てられますが、「KONBU」として売られます。

これは、海藻食の世界では、日本がお手本であるということを示しているのではないでしょうか。

また、販売だけでなく、今や世界のたくさんの国で昆布類の養殖は始まっています。

当然ながら昆布の養殖は、日本で初めて実用化されたものです。

 

 

私の友人で台湾人がいるのですが、先日、あるスペインの海藻販売会社の情報を教えてくれました。

www.portomuinos.com

こちらの会社でも、本当に多様な海藻を販売されています。

この会社のサイトの興味深いところは、レシピが掲載されているところです。

スペインの会社ですので、当然日本料理のレシピではないのです。

海藻の特徴であるのですが、西洋料理にも全く問題なく利用可能です。

レシピを見ているだけで、新しい昆布の可能性を見るようで、楽しくなります。

 

私がサンフランシスコに行った際も、日本人とは全く違う昆布の利用法を見て、それがとても美味しかったのが印象的でした。

こんな実例を目にすると、まだまだ昆布には新しい可能性が秘められているように思います。

 

 

こんぶ土居製品でも、昨年、シタール奏者の石濱匡雄さんのご協力で製品化した「ミネラルいりこんスパイシー」。

「煮干し」と「大豆」と「昆布」をスパイスで味付けして合わせています。

その昆布には甘味を効かせてコリアンダーシードの香りを纏わせていますが、日本独自の使い方とは全く異質のものです。

しかし、伝統的な昆布の利用に軸足を置く私たちが食べても、本当に不思議と美味しいのです。

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日本人の悲しい傾向として、自国の素晴らしい文化の価値に気づかず、捨て去ってしまうことが多いように思います。

海藻食の世界の本場は、間違いなく日本です。

美味しさと共に、健康価値も強く評価されています。

その価値を世界が評価している今、日本人も、認識を新たにしていただきたいと思います。

 

 

こんぶ土居のウェブサイトのトップページには、下記のような一文を書いています。

「こんぶ土居では、伝統ある大阪の食文化を守り育て、本物を次代に伝えることが私どもの使命だと考えています。また、伝統を大切にしながら、時代に合った便利な製品の開発、お求め易い価格の新製品等、常にお客様の立場に立った食品づくりを心がけております。」

 

昆布の本場は日本ですが、狭い世界に留まることなく、新しい世界にも目を向けていきたいと思います。

 

 

 

煮汁など、無いのです (直火釜の煎り炊き)

 

来店されるお客様の中で、たまに「昆布の佃煮の煮汁は無いですか」とお尋ねになる方があります。

あいにく、こんぶ土居には煮汁はありません。

ただ、そういったものが販売されている事例があることは承知しています。

 

 

昆布を醤油や味醂などの調味料で煮込むのですから、煮汁があるはずだと思われるのも、よく分かります。

しかしこんぶ土居の煮汁は、最終的に全量が昆布に吸収されるのです。

炊いている途中の写真を見ていただければ、理解し易いかと思います。

 

まずは、炊き始めの状態は、こんな感じです。

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 最初はたっぷりの調味料の中で昆布は煮込まれていきます。

しかし煮込んでいけば、だんだん調味料は少なくなって。。。

 

最終的に、こんな状態になるのです。

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 昆布が完全に露出し、釜の底には僅かに調味液が残っているだけです。

 

 

大阪の伝統的な昆布佃煮のつくり方は基本的にこの方法で、業界では「煎り炊き」と呼ばれることがあります。

これとは別に、通称「浮かし炊き」と呼ばれる方法もあります。

これは文字通り、昆布が浮いたような状態で炊き上げる方法で、調味液にどっぷり浸して炊くので、最後に煮汁が残るわけです。

 

「浮かし炊き」が悪いと言うことはないのですが、昆布由来のおいしさが煮汁に残ってしまうということになります。

それを補うために、うまみ調味料が使われたり、といったことにもつながりやすいようにも思います。

 

メーカーが「浮かし炊き」を採用する理由は、作るのが簡単だからでしょう。

そもそも「煎り炊き」では、調理の終盤には調味液が少なくなりますから、焦げるリスクが出てきます。

「浮かし炊き」なら、最初から最後まで調味料がたくさんある状態ですので、焦げたりはしないかと思います。

また、「煎り炊き」では、火の通り具合や味の入り方を均一にするため、調理中の「天地返し」が必要になってきますが、「浮かし炊き」ではそれも必要ありません。

 

 

似たような構図を見せるものに、調理に使う釜があります。

釜に直接ガス火が当たる「直火釜」と、高温の蒸気を釜全体に当てて加熱する「蒸気釜」です。

「直火釜」であれば、焦げないよう微妙な火力の調整が必要ですが、蒸気釜なら誰が作っても失敗のリスクは一切ありません。

また、大量調理に適しているのは蒸気釜で、直火はあまり大規模にはできません。

 

 

「煎り炊き」「浮かし炊き」「直火釜」「蒸気釜」、どれでも特に問題は無いのですが、最も美味しいものができるのは、昔ながらの「直火釜で煎り炊き」ではないかと思っています。

このような事情ですので、こんぶ土居では煮汁は一切販売していません。

 

 「昔ながらの秘伝の製法で炊き上げました!!」などと特に謳っていませんが、今後も粛々と大阪の伝統製法を継承したいと思います。