こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

化学調味料は、健康に悪いのか

 

「あまり健康に良くないもの」とのイメージを持っておられる方も多い、味の素を代表格とする「化学調味料」。

グルタミン酸ナトリウムを主成分とする、うまみ調味料の一種です。

 

本日の投稿は、化学調味料が健康に悪いのかどうか。

また、悪いとするならば、どのような仕組みによるものかを考える試みです。

 

【本日の投稿の自己評価】 読みやすさ(★☆☆☆☆)、意義(★★★★★)、楽しさ(★☆☆☆☆)

 

以下の①~⑤の項目に分けて書いてみたいと思います。

 

①直接的な悪影響

②栄養摂取の機会を奪う

たんぱく質摂取に関する懸念

④味覚の麻痺

⑤食文化の衰退と健康の関係

 

①は「恐らく大丈夫、問題ないでしょう」と言う内容ですが、②~⑤は、やはり健康への悪影響を含んでいることをご説明するものです。

ではまず、

 

①直接的な影響

結論としては、WHO等の世界の保健機関は、グルタミン酸ナトリウムの安全性に問題が無いとしていますから、よほどの大量摂取で無いなら恐らく大丈夫だと思います。

しかし、海外でも「no MSG」「MSG Free」(MSGとは、(MonoSodium Glutamate)。グルタミン酸ナトリウムのこと)と書かれた製品は非常に多いものです。

中華圏の製品では「不含味精」と書かれているのをよく見ますが、同じ意味です。

このように、日本のみならず世界中で化学調味料を危険視してきたわけですし、その背景を、あまり軽視すべきで無いようにも思います。

実際に、「化学調味料入りの食品で体調が悪くなる」と言う方に、私は複数名お会いしたことがあります。

これは言わば、「体質差」ですね。

「火のないところに煙は立たぬ」と言うように、少し警戒心を持って見ても良いかとは思います。

それでも、大多数の方には、あまり大きな問題は無いでしょう。

 

 

②栄養摂取の機会を奪う

私は昆布屋ですから昆布を軸に話を進めますが、伝統の日本のだしを代替する形で、化学調味料を主成分とした顆粒だしのもと等が市販され、大きなシェアを獲得しています。

こんな背景で、ご自分でだしを取る人は、もはや少数派になってしまいました。

実際、この30年ほどで、昆布の消費量は4割ほどに急減しています。

 

 

 

自分で昆布や鰹節を使ってだしを取ったものと、顆粒だしを薄めたもの、栄養成分的に全く違うのです。

データ分析には、文部科学省が提供する、食品成分データベースが活用できます。

fooddb.mext.go.jp

 

このサイト内で、「顆粒和風だし」という項目がありますので、そちらを参照します。

不足しがちで有用なミネラル成分を抜粋し、数値をご紹介します。(100g中)


カリウム 180mg、カルシウム 42mg、マグネシウム 20mg

(※参考 ナトリウム 16000mg)

 

これに対しまして、「かつお・昆布だし」の成分は下記の通り。(上記サイトの顆粒だしの説明に、「通常、約150倍希釈したものが和風だしとして利用される」とあるので、顆粒100gの150倍、「かつお・昆布だし」15000gの成分です)

カリウム 9500mg、カルシウム 450mg、マグネシウム 600mg

(※参考 ナトリウム 5100mg)

 

両者を比較すれば、カリウムは約53倍、カルシウムは約11倍、マグネシウムは30倍と全く違った栄養成分になります。

逆に、塩分量については、顆粒だしの方が約3倍量含まれているところにも要注意です。

 

この結果は、顆粒だしが、自然の素材を僅かしか使わずに化学調味料を主成分にした製品であるからこそです。

伝統的なだし文化を捨て去って、化学調味料が主成分の顆粒だしで代替することが「②栄養摂取の機会を奪う」に繋がっていることがご理解いただけたかと思います。(顆粒だしに原料として使われる天然素材がいかに少ないかは、下記の過去投稿でご説明しています)

konbudoi4th.hatenablog.com

 

化学調味料に直接的な害が無いと仮定しても、その見方だけでは不十分です。

間接的にもたらされる結果を含めて、違いを是非ご理解頂きたいと思います。

手前味噌ですが、私共の製品であれば、うまみ調味料を一切含んでいませんから、栄養面で一切の遜色がありません。

konbudoi.shop-pro.jp

 

 

たんぱく質摂取に関する懸念

そもそも、人間がグルタミン酸等の「アミノ酸類の味」を呈する食品を欲する仕組みは、アミノ酸がタンパク質の構成要素であるからです。

タンパク質自体には味がなくとも、その分解物であるアミノ酸の味を呈する食品には、タンパク質の存在が予想されるわけです。

たんぱく質アミノ酸の関係については、下記のサイトが分かりやすく詳しいので、理解を深めたい方はご参照下さい。)

www.kamaboko.com

 

昔から日本人は様々な方法で「うまみ」を得ていました。

例えば、魚介類を干したものが強いうまみを発揮することは、多くの方が体験的に知っていると思います。

だしの素材として使われることも多い、「煮干し」「干し貝柱」「干しエビ」等でも、非常に強いうまみを感じますね。

このときの「うまみ」とは、含有するアミノ酸類の味や核酸系の味を、人間の舌が感知しているものです。

 

アミノ酸スコア」という言葉を御存知でしょうか。

食品に含まれるたんぱく質を構成する「必須アミノ酸」の含有バランスを評価する指標で、アミノ酸スコアが100に近いほど体内でたんぱく質が有効利用されます。

 

注目すべきは、化学調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウムの「グルタミン酸」は、「非必須アミノ酸」である点です。

食品から摂取しなくても、体内で合成できる成分です。

つまり、仮にグルタミン酸が体内で良い働きをしていたとしても、それを食品から取り入れることに大きな意味は無いのです。

グルタミン酸が欠乏状態にある人の話など、聞いたことがありません。

強いて言うなら、単独でのアミノ酸スコアはゼロです。

 

これに比して、先に例示した海産物であれば必須アミノ酸をバランス良く含み、アミノ酸スコアは100に近いものばかりです。

つまり、自然の海産物からうまみを感じたとすれば、それが私たちの体内でタンパク質合成の原料として活用できるわけですが、グルタミン酸ばかりを摂取しても効果が得られないわけです。

これは、うまみを呈する伝統調味料とて同じです。

魚醤のうまみは魚のタンパク質が熟成過程で分解されたものですし、醤油や味噌も、大豆のタンパク質が発酵によって分解され、様々なアミノ酸が生まれることにより美味しいわけです。

そして、そのアミノ酸類は、私たちの体内でタンパク質を合成するための原料として活きます。

 

「うまみ成分」がタンパク質の分解物である可能性が高いから人間が求めるという仕組み。

この「タンパク質の存在予想」を裏切り、アミノ酸スコアがゼロの化学調味料を多用して表面的に味覚を騙す行為は、とても危険です。

自然の食品から得られる「うまみ」の栄養価値と、化学調味料の「うまみ」との違いを、ぜひ理解していただきたいと思います。

日本人のたん白質摂取量は減少傾向とも言え、要注意です。

 

 

④味覚の麻痺

まず過去投稿をご紹介しますので、ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

この時の投稿では、「甘さ」を求める人間の味覚の欲求を、人口甘味料で満たしてしまうことの危険性について書きました。

特に、ダイエットで糖質制限をする方には、大問題を引き起こしかねません。

血糖値が下がりきったような状態になったとして、それが理由で強く甘さを欲したとして、その味覚的欲求が人口甘味料で満たされても栄養的充足に全くつながっていないわけです。

充足されない栄養状態を背景に、更なる甘さを欲して、際限なく人口甘味料を摂取することになってしまう可能性があります。

 

同様の仕組みが「うまみ」についても言えるように思うのです。

たんぱく質が必要だから「うまみ」を求めたとして、その味覚的欲求がアミノ酸スコアゼロの化学調味料で満たされてしまうことは、人口甘味料摂取と似た構造だと言えませんでしょうか。

これは、本来リンクしているはずの「栄養摂取と味覚的欲求」の関係性を断ち切って、身体の仕組みを騙している行為だと言えるかと思います。

 

また、別の観点として、私共は「味淡有真楽」を製品づくりの指標に掲げていますが、化学調味料の人工的で強烈なうまみが氾濫することによって、自然の味を薄く感じる人が多くなり、それが益々健康問題を悪化させることを危惧しています。

項目タイトルにした「味覚の麻痺」という言葉が適切かどうかは分かりませんが、うまみ調味料に慣らされて「自然のうまみ」を理解できない人が増えているようで、残念に思っています。

 

 

⑤食文化の衰退と健康の関係

古くから、自然の素材を利用して「うまみ」を得ていた日本人。

昆布は、その代表的素材ですし、発酵食品も同様です。

しかし、1908年には味の素が販売されて以後、自然素材や伝統食品に頼らずとも、化学調味料によって、どのようにでもうまみを付与できる時代になりました。

それが、『伝統食文化の衰退』をもたらします。

 

冒頭にも書いたように、昆布でだしを取る人が圧倒的少数派になった現状は、それを端的に示す事例です。

『伝統食文化の衰退』が健康悪化につながることを暗示するデータが、沖縄に存在しています。

沖縄の伝統食文化に昆布の果たした役割は大きく、昭和から平成初期までは、全国でもトップの消費量でした。


だしに使うことは意外に少ないですが、昆布自体を食べる料理が多いです。
クーブイリチーなどが代表的でしょうか。
「クーブ」とは「昆布」の沖縄訛りだと思われますが、細切りにした昆布を他の具材と共に炒め煮にしたものです。
結んだ昆布の煮物なども、よく食卓に上ります。

 

かつて沖縄は、世界でも有数の長寿地域として知られていました。
その長寿を支えた理由として必ず挙げられるのが、沖縄の伝統食です。
しかし、戦後のアメリカ占領時代から食の西洋化がいち早く進んだ結果でしょうか、あっという間にその名声は過去のものとなりました。
特に男性は、今では都道府県別ランキングを下から数えた方がよほど早い状態です。
沖縄の伝統食に昆布は欠かせませんが、1980年代までは昆布の購入量日本一でした。
ちょうどその頃まで、沖縄は長寿県だったのです。
その後、状況が一変するのですが、沖縄県民の昆布購入量と平均寿命順位は足並みを揃えるように低下していきます。

(データ:沖縄県統計資料WEBサイト、総務庁統計局「家計調査年報」、厚生労働省都道府県別生命表」より)

 

ここで注目すべきは「昆布の健康効果」ではありません。

「沖縄の伝統食文化の衰退」の一側面として見て頂くのが適切だと思います。


日本の伝統食文化の健康価値は世界でも高く評価され、疑いようがありません。

その一方で、日本全国的な伝統食の急速な衰退は、ご説明するまでも無いでしょう。

その衰退に、化学調味料が無関係であると言えるでしょうか。

うまみ調味料の発達が伝統食文化を衰退させ、それが人の健康を悪化させる、このような関係性だと思います。

 

海外でも、化学調味料に押されて伝統食文化が衰退している事例は多く、似たことが起きているのではないかと心配しています。

 

 

まとめ

どんなものにも功罪はありますし、化学調味料を絶対的な悪だと断じるつもりはありません。

しかし、うまみ調味料業界を筆頭に、問題点を覆い隠し、むしろ健康効果をアピールするような事例が非常に多いものです。

例えば、「うまみ調味料は減塩につながる」と言ったものも、その一つで、注意が必要です。(本投稿末尾の、過去投稿ご参照下さい)

下記のような行政機関のFAQでも「うま味調味料は体によくないのですか?」との問いに対して、「通常の使用であれば、健康への影響を心配する必要はありません。」と答えてしまうわけですが、これは本日の内容で言えば①を見ているだけです。

②〜⑤の間接的な視点が欠けています。また、これらの間接的な悪影響は『直ちに』結果が出ないところも、軽視されがち理由だと思います。

www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp

 

うまみ調味料を使うも避けるも自由であるわけですが、なんとなくで流されず、正しい理解の元に良い判断がされることを期待したいと思います。

(了)

konbudoi4th.hatenablog.com

 

(了)

ウソ情報を見破りたい、昆布の誤情報を紹介します

 

私は、昆布や食に関する正しい情報をお届けしたいと考えて、このブログを書いています。

わざわざ太字で正しい情報と書いたのは、世にウソ情報が溢れているからです。

情報の真偽を見分けるためには基礎知識が必要な場合が多いわけですが、例えば昆布について、一般の方が基礎知識を持っておられることは少ないでしょう。

それゆえに、「誤情報を誤情報だと判断できず信じてしまう」ということは、普通に起こり得ます。

これは非常に残念なことで、なんとかならないものかと頭を悩ませます。

 

 

本日のブログを書くきっかけになったのは、こんぶ土居も昔からお世話になっている東京の鰹節問屋「タイコウ」さんからのお問い合わせでした。

この↓サイトに載っている昆布の情報が正しいのかどうか、ということです。

inyoumarket.com

 

後半で説明しますが、結論から申しますと「ウソ情報、多し」ということになってしまいます。

このサイトを運営されている「IN YOU MARKET」さん。

「本物が見つかる」”日本で一番厳しい基準”を目指す「本物」が勢ぞろいする唯一無二のオーガニックマーケットプレイス

と謳い、食品や日用品を販売しておられるようです。

 

私は存じませんでしたが有名だそうで、調べてみると、自社YouTubeチャンネルの登録者は1万人以上、Instagramのフォロワー数3万人以上と、結構な影響力を持っておられます。

影響力が強ければ強いほど、正しい情報を出す必要があるのは当然ですね。

しかし先に書きましたように、このサイトで昆布に関して書かれている内容にウソが多いので、大変恐縮ながら「悪い事例」として紹介し、正しい理解を得て頂く一助になればと思います。

 

リンクを貼った販売サイトの商品、まず、名前がめちゃくちゃ長いです。

「自然栽培のナチュラル早煮こんぶ|農薬・添加物一切不使用!下茹で不要!スープやお料理良に「サッと加えるだけ」でおいしい出汁が味わえる!おでんや煮物にピッタリ!時短料理にも!神奈川の栄養豊富な海で養殖!すぐに煮出せる便利な昆布!」

これが商品名であるようです。

もう、この商品名だけでも、下記①~③のように3つも問題点があります。

 

①自然栽培

昆布の自然栽培とは何なのか、意味が分かりません。逆に自然栽培でない昆布とは何でしょうか。

②農薬・添加物一切不使用!

昆布の栽培時に農薬を使うなんて聞いたことがありませんし、だし昆布に添加物が使われる事例も、私は全く知りません。

「商品の特徴」のタブには「化学肥料不使用」とまで書かれていますが、海中で行う昆布養殖に、どうやって化学肥料をやるのでしょうか。

③下茹で不要!

「昆布の下茹で」とは何でしょうか。そんな調理方法を私は知りません。

 

商品名だけでも、これだけの問題が存在しています。

商品説明の本分に移れば、更にウソ情報がてんこ盛り。

誤情報が多すぎるので長くなってしまいますが、サイトからそのまま抜粋します。

 

だし昆布のうまみは「干し方」で決まります!

詳しく言いますと、以下2ポイントで決まります。

①干す前に下茹でするか、しないか

市販されているだし昆布の多くが、収穫後干す前に一度茹でられています。

グツグツというよりもサッと湯通しする程度ですが、少なくはないうまみがここで流れ出す可能性があります。

②丸ごと干すか、カットして干すか

市販されているだし昆布で、使いやすい大きさにカットされているものがありますよね。

その多くが、干す前にカットされているものです。

干す前にカットしてしまうと、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれてしまう可能性があります。

一方で、干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができるため、大企業ほどこの「カットしてから干す」方法を取りやすいといえるでしょう。

(以上、引用おわり)

 

『だし昆布のうまみは「干し方」で決まります!』

とありますが、もちろん干し方も品質に影響あるものの、昆布の品種や産地、天然か養殖かなど、そういった要素の方がより重要で、誤解を招きかねない表現です。

 

『市販されているだし昆布の多くが、収穫後干す前に一度茹でられています。』

とありますが、そんなことしません。サラダ昆布のような一部の用途を除き、ほとんどが海から水揚げしてそのまま干します。

 

『市販されているだし昆布で、使いやすい大きさにカットされているものがありますよね。その多くが、干す前にカットされているものです。』

とありますが、逆です。長い状態のまま干し、乾燥後にカットされています。

 

『干す前にカットしてしまうと、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれてしまう可能性があります。』

とありますが、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれる、とは一体なんでしょうか。意味がわかりません。

 

『一方で、干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができるため、大企業ほどこの「カットしてから干す」方法を取りやすいといえるでしょう。』

とありますが、カットして小さくなってしまった昆布を干すのと長いままの昆布を干すのを比較して、どちらが作業効率が良いかは想像つきませんか?「干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができる」なんて聞いたことがありません。

「大企業」などと書いてますが、昆布を干す作業をしているのは漁師さん方です。

企業でなく、皆さん個人経営です。

現場を何も知らずに書いているのが丸わかりです。

 

 

以上です。

少々の誤りは誰にでも起こり得るものですが、短い内容にこれだけウソ情報が詰め込まれた事例も珍しいです。

営業妨害をするわけではありませんが、「あまり信用できない販売業者」と見なされても文句は言えないように思います。

 

ついでに言えば、価格もまぁまぁ高いのです。

こんぶ土居オンラインストアで販売している下記製品と、「養殖昆布」という意味で同じカテゴリーであり、単価が非常に近いのですが、一度だしを取り比べてみていただければ、根本的に別物のクオリティであることは、どなたにもお分かりいただけるかと思います。

konbudoi.shop-pro.jp

 

冒頭に書きましたとおり、このサイトの存在を教えて下さったのは、東京の鰹節問屋「タイコウ」さんですが、「IN YOU MARKET」の鰹節情報も、似たような状態です。

以下の販売ページで「添加物・保存料・化学調味料不使用」などと書かれていますが、どこの鰹本枯節に保存料や化学調味料が使われていると言うのでしょうか。

inyoumarket.com

 

冒頭にも書きましたが、「正しい情報」と「正しく見せかけた情報」とが、見分けられることを私は期待するわけですが、さてさて、どうすれば良いのでしょうか。

なかなか難しい課題です。

「IN YOU MARKET」さん、発信力が強いゆえウソを信じてしまった人も多いんだろうなぁ、と思います。なんとも罪深いことです。

最後に、鰹節について、いい加減に「オーガニック」と謳うことの問題点をタイコウさんが書かれたもののリンクを貼っておきます。

「オーガニック」という言葉を振りかざして優良誤認を誘う業者には、是非お気をつけ下さい。

 

note.com

 

類似の投稿として、世に伝わる誤情報について以前に書いたブログもございます。

ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

(了)

 

「ほんだし」、昆布使用量100分の1の疑い

 

日本の伝統食文化としての昆布を守るべき立場に居る私は、家庭でだしを取る習慣が失われつつある現状を苦々しく思っています。

そんな現状が何に起因するのか考えたとき、「便利で安価な代用品」の存在も無関係ではありません。

所謂「だしのもと」です。

 


以前から、顆粒だしのもと等は、うまみ調味料が主成分であって、昆布や鰹節等の自然素材は僅かしか使われていないことをお伝えしてきました。

しかしそれが「どれぐらい僅かなのか」ということは、メーカーの内部事情を知る人しか分からないところです。

本日の投稿は、栄養成分の観点から、それを推定しようとする試みです。

鰹節と昆布で取っただしと、同カテゴリーの顆粒だし製品「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」を比較します。

 

注目する栄養素は「ヨウ素」です。

ヨウ素は海藻に豊富に含まれる成分で、逆に言えば、他の原材料から供給されることがほぼ無い成分です。

かつおだしに含まれるヨウ素は昆布だしの1000分の1以下ですし、増してや化学調味料等には含まれませんから、ほぼ全てが昆布由来だと考えて良いと思います。

そのため、両者のヨウ素含有量を比較することで、原材料として使用された昆布の量の推定に役立つはずです。

 

 

まず、顆粒だしの方から。

検査機関に前述の「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」を検体として送り、100g中に含まれるヨウ素含有量を分析してもらいました。

その結果は、下記の通りです。

 

ほんだし かつおとこんぶのあわせだし』( 100 g当たり):ヨウ素   2300 μg

(一般社団法人日本食品分析センター調べ)

 

比較対象の天然だしの方のデータは、文部科学省が提供している「食品成分データベース」のサイトが活用できます。

fooddb.mext.go.jp

この「食品成分データベース」に、『かつお・昆布だし』という項目があります。

実際に鰹節と真昆布から取っただしの成分です。

顆粒だしの説明には「約150倍希釈したものが和風だしとして利用される」との記載がありますので、前述の「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」100gの150倍、つまり15000gの『かつお・昆布だし』に含まれるヨウ素含有量を参照します。

結果は下記の通り。

 

かつお・昆布だし』(15000 g当たり):ヨウ素    230000 μg

 

いかがでしょうか。

かつお・昆布だし』230000に対して『ほんだし』2300です。

偶然にも分かりやすい数字になりましたが、含有量「100分の1」です。

 

つまり、「ほんだし」には、昆布は極々僅かしか使われていないのだと思います。

それなのに、なんとなく「だしっぽい」味になっているのは、うまみ調味料が代わりの役割を果たしているからです。

そもそも、普通にとった昆布だしを100倍に薄めれば、どんな味になるか想像できますね。

ほとんど味のない白湯のようなもので、味覚的効果など無いに等しいでしょう。

 

つまり、ほんだしに僅かに入っている昆布は「昆布の美味しさを得るため」でなく、「昆布を使っている!と書くため」のものでしょう。

 

実際にパッケージの最も目立つ前面を見れば、うまみ調味料のことになど一切触れることなく、

かつおと昆布の豊かなうま味」

だとか

「焼津・枕崎産かつお節と 北海道産真昆布のエキス使用」

といった文言が躍ります。イラストも、鰹と昆布が描かれていますね。

そもそも、こんな製品を「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」というネーミングで売って良いのでしょうか。

名前と実際が、かけ離れていますので。

ちなみに、原材料は下記の通り。

『食塩、砂糖類(砂糖、乳糖)、風味原料(かつおぶし粉末、こんぶエキス)、酵母エキス/調味料(アミノ酸等)』

(調味料(アミノ酸等)、が末尾に記載されていますが、これは最小配合割合であることを意味しません。食品添加物に該当するため、使用量に関わらず末尾に/で区切って記載するよう取り決められているためです。法改正前は、一番最初に書かれていましたから、化学調味料が配合割合最大だと考えて間違いありません。)

 

もちろん、消費者の方がほんだしを使うかどうかは、当然に個人の自由です。

しかし、パッケージから消費者にアピールされるイメージは、実情からかけ離れたものであるのは間違いありません。

これは「優良誤認」を誘っていることに他なりません。

 

更に、「ほんだし」のブランドサイトには、こんな言葉まで書かれています。

ほんのだしほんもののだし

という2つの意味を込めて名づけられました。

 

昆布を100分の1しか使わずに、果たしてこれが「ほんもののだし」なのか。

このブログを読んで下さった方が、よくお考えの上で、自分なりの結論を出していただければと思います。

私には「合法の範囲での消費者だまし」にしか見えませんが、さてさて皆様方は如何お考えでしょうか。

 

大手メーカーによる別の「合法だまし」「優良誤認誘導」の事例は、過去にも投稿しています。ご一読ください。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

(了)

 

昆布のイラスト、間違いだらけ

 

今回の投稿は、特に大事な内容というわけでもありません。

それでも、昆布に関わる者として、「よくもまぁ、これだけ尽く間違えてくれるなぁ」と思うので、お知らせします。

タイトルに書きました通り、昆布のイラストについてです。

 

まず、Googleで「昆布 イラスト」と画像検索して出てきた結果の、表示順位1~5の画像をご紹介します。

 

【第一位】

 

 


【第二位】

【第三位】

【第四位】

【第五位】

 

 

以上です。

 

これの何がおかしいんだ、とお感じの方が多いかも知れません。

ご注目いただくべき部分は、昆布の真ん中に走る一本の線です。

一位から五位まで、全てに描かれているのが見ていただけると思います。

 

しかし声を大にして言いたい。

昆布にこんな中心線は無いのです!

下の写真を見て下さい。

中心に線など走っていないでしょう。

書くとすれば「二本線」です。

 

 

わかめは、中心に葉脈のような線が走りますから、混同が起きているのだと思います。

それにしても、画像検索でほぼ正しくないイラストしか出てこないところは、なんとかならないものかと思います。

 

余談ですが、日本昆布協会のサイト「こんぶネット」で描かれたイラストまで間違ってたりします。

kombu.or.jp

 

やれやれ。

以上です。

重要度の低い「一昆布屋の嘆きブログ」、失礼しました。

 

(了)

「書くべきことがある」、それこそが肝心。ネットショップについて。

 

利用店舗数が50000を超える、日本最大級のネットショップ作成サービス『カラーミー』。

こんぶ土居オンラインストアも、こちらを利用して運用しています。

 

カラーミーさんでは、『カラーミーショップ大賞』と題し、最も優れたショップを表彰するコンテストを2014年から実施されています。

award.shop-pro.jp

 

この「カラーミーショップ大賞」。

2018年に大賞を受賞されたのが、こんぶ土居製品もお取り扱い頂いています長野県の「パンと日用品の店 わざわざ」さん。

wazawaza.shop-pro.jp

 

なにしろ、数万に及ぶカラーミー利用店舗の頂点ですから、本当に大したものです。

この「カラーミーショップ大賞」の一次審査は、各ショップがエントリーするのでなく、カラーミーさんが独自に審査し「ノミネートショップ」を選ぶところから始まります。

 

今年2023年は、5万以上のショップの中から800を抽出したようで、この段階で倍率60倍以上ですから、なかなか狭き門です。

先日、誠に意外なことに、「こんぶ土居オンラインストア」がノミネートショップに選ばれたと通知が来ました。

『意外なことに』と書いたのは、語弊のある言い方かも知れませんが「あまり力を入れて運営していないから」です。

 

 

私共には実店舗がありますし、そちらの方が売上的にもメインです。

オンラインストアを始めたのも非常に遅く、恥ずかしながらずっと消極的な態度でいたものです。

そんなものが「ノミネートショップ」に選ばれたわけですから、本当に不思議な気持ちでいます。

更新頻度も非常に低いですし、特にデザインに凝っているわけでもありません。

ただ、その理由を自分なりに考えた時、タイトルにした「書くべきことがある」ことを評価していただいたのかも知れないと思っています。

 

 

ネットショップを開設した当初から、自社製品でも、他社さんの製品を販売する際でも、できるだけ詳細な情報公開と、「なぜその商品を売るか」という考えを表現したいと思っていました。

商品紹介ページが、ひとつの「読みもの」であるようなイメージでしょうか。

 

前述の「パンと日用品の店 わざわざ」さんのサイトも、正にそんな感じです。

しかし、わざわざさんの代表の平田さんが弛まぬ努力を日々重ねて重ねて、その上での成果であることを以前から伺って知っていましたし、私共のオンラインストアとは熱量が違って、出来栄えも全く違います。

それでも今回、こんぶ土居オンラインストアが「ノミネートショップ」に選ばれたことで、「ウチのサイトも、まんざら悪くないのか?」との気持ちになりました。

と同時に、「たいした努力もしていないのに申し訳ない」とも思いますし、「路線としては誤っていないのなら、もっと力を入れる方が良いか、」とも思います。

 

今回の件で改めて、「書くべきことがある」ということは、非常に大切なことだと再認識しました。

一般的なネットショップの多くは、商品の基本的な情報だけが記載されているに過ぎず、結局は価格競争になっている場合が多いものです。

そんなネットショップが林立することは、「社会的に何の価値も無い!」と言い切ってしまって差し支えないように思います。

食品で言えば、原材料についての情報が無いことすら一般的で、本当にひどいものです。

 

今回のことを機に、「ネットショップとは、商品を軸に情報と考えをお伝えする場である」との気持ちを新たにし、更に充実した内容をお届けできるように改良して参ります。

「カラーミーショップ大賞」も、二次審査に進むことになりますが、7月11日から21日まで一般投票が行われ、その得票数を加味して30社が選ばれるようです。

「それまでに、色々と加筆しておこうかな」なんて思っています。

 

お手本になる「わざわざ」さんのことは、このブログでも訪問記を2020年に書いています。

ご興味あれば、こちらもご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

わざわざさんの軌跡とも言える、平田さんの近著「山の上のパン屋に人が集まるわけ」も面白いですよ。

こちら↓(Amazonのリンク)。

https://amzn.asia/d/7XC234A

 

 

(了)

 

木づかい運動

昨年開設しました、大阪の伝統昆布文化を伝える小さな小さな資料館「大阪昆布ミュージアム」。

内装には、国産の無垢板の木を、ふんだんに使用しています。

構造の強度の問題で骨組みについては木造では無いですし、外壁も消防法の関係で耐火建築物にする必要がありで木は使えませんでしたが、内装は木材だらけです。

1階から4階まで、壁面や天井は全て秋田杉。

階段の踏み板や4階の大テーブルは、楠です。

 

 

これは、こんぶ土居の環境への考え方を反映したものでもありますが、三代目の時代から同じ考え方です。

天然真昆布の常態化した大凶作。

林業の衰退は、その遠因とも言えなくもないように思います。

過去と比較すれば、明らかに国産の木材の需要は減少傾向です。

 

山ばかりの国土の日本で、木材利用が少なく、利用されたとしても輸入木材ばかりの現状は、おかしいと思われませんでしょうか。

植林しながら適切に利用すれば、木は完全に持続可能な素材で、環境保護につながります。

おうちや店舗に、国産の無垢板を使ってみませんか?

少し高いかも知れませんが、気持ちが良いものですよ。

 

以下に、三代目が平成20年当時に書いた、当時不定期で発行していた「こんぶ土居通信」を抜粋しておきます。

ご一読下さい。

 

 

こんぶ土居通信№18 平成20年3月発行木づかい運動
 地球温暖化や道南産真昆布の大凶作を目の当たりにして、私どもがかねてから唱えてきた「国産食材と国産木材の使用」の必要性を改めて強く感じます。国産食材のほうは最近の中国製餃子事件や輸入食材の高騰により少し目が向ようになったかに思われますが、国産木材のほうはまだ一部の人しか関心を示していません。では、なぜ国産木材を使用することが地球温暖化や道南真昆布と関係があるのでしょうか。
 林業を営む方々によって適切に管理された山林では、樹木の成長をよくするために間伐が行われ、日光が地表にまで降り注ぎます。そのため、背の高い樹木と共に、地表ちかくでは下草が日光を十分に浴びてバランスを保ちながら茂ることができます。雨が降れば、枯葉や下草がスポンジのように雨水をたっぷり含み、雨が止んでからもチョロチョロと小川に栄養豊富な水を注ぎ込み、水不足に悩まされることは少なくなります。雨水が一気に川に流れ込むのを防ぐ「緑のダム」です。この栄養たっぷりの水は、河川を伝って海へ流れ込み、昆布をはじめとする海藻類を育てます。また、プランクトンによって魚介類が育ち、漁業が栄えます。また、樹木は成長過程において、空気中から二酸化炭素を大量に吸い込みますので、植林をしながら持続的に林業を発展させることは、地球温暖化の防止にも効果的なのです。
 ところが、近年では木造建築が少なくなり、使ったとしても安い輸入木材がほとんどです。そのため日本の木材の価格は下落し、林業の経営が成り立たず山林が放置されていることが多くなっています。鹿児島大学の遠藤日雄教授(森林政策学 農学博士)のお話によると、かつて山林の所有者は子供の学費や結婚資金には木を切って、その費用をまかなっていたのですが、今では木を切って売ると逆に請求書が来るらしいのです。
 このような状況では、木を切らなくなったり、手入れをしなくなるのは当然のことです。手入れされず放置された山林では、木は密生し、日光が地表まで届かないため下草が生えず土が露出し、雨が降ると水は土砂とともに一気に川に流れ込みます。鉄砲水や洪水、又は水不足を引き起こし、結果として農業や漁業をだめにしてしまいます。
 私どもが建築に間伐材を使ったり、ギフト用の木箱に国産(主に秋田県産)杉の端材を使った25年位前はまだ地球温暖化などは、言われておらず単にベニヤ板など新建材が嫌いだっただけなのですが、最近はこのような事情で国産材の使用を強く勧めたいと考えるようになりました。
 微力ですが実行していることは、10年前から始めた昆布の産地の小学生への食育のなかで話す、こんぶ土居通信(№13平成17年8月)などで記述する、17回続けているだし教室で間伐材の割り箸を使用、店頭での販売、包装紙等を非木材紙から国産パルプ70%の紙(間伐ホワイト)への切り替え、燃料としての検討などです。
 また、私どもが参画している「良い食品づくりの会」第33回鹿児島フォーラムで前述の遠藤教授から研究者としてのご講演をお聴きし、自分の考えを検証させていただきました。お話の中で、この問題に事業として取り組んでおられる会社を具体的に教えていただいたり、鹿児島の郷土菓子「あくまき」(注)が木づかい菓子であることなど、いろいろ学んだことを今後の運動発展に繋げたいと思っています。
 結論としましては、私たちが国産木材を使うことにより、林業が経済的に成立つようにならなければなりません。植林のみが注目されていますが、木を使う(買う)ことにより、そこで出た利益でプロが植林をするという、持続可能なバランスの取れた行動が必要だと思われます。
 山梨県の「クリニックいのうえ」院長井上勝六先生が国産間伐材を使った割り箸を早速注文されたり、香川県の久保食品様、鹿児島県のスーパーマーケット タイヨー様が販売されるなどこれらの事柄に理解を示し、敏速に行動される方たちが身近におられるのは心強い限りです。
 今後は、森林ボランティアとして実際に山に入っていくことも考えています。
 
 (注)あくまきは、鰹節を燻すのに使った広葉樹(主に樫)の灰であく汁を作り、
   もち米を漬け、竹の皮に巻いて煮込んだもの。
木つながり 仏師(木彫仏像)久保田唯心先生→南木曾木材柴原薫社長→遠藤日雄教授

 

 

 

 

『健康と食文化を守る意志のありやなしや』 by 八巻元子氏

私共は、創業以来120年、大阪の地で昆布屋を続けてきました。

「昆布屋」ですので、私は大阪伝統の昆布文化を守り育てるべき役割に居るわけです。

しかし、残念ながら昆布文化は衰退の一途です。

その衰退の一因だと言えると思いますが、「うまみ」の観点から昆布の代替品として存在感を増し続ける「うまみ調味料」を、私は好ましく捉えておりません。

 

しかし一般の消費者が、うまみ調味料を使おうが避けようが、それは当然個人の自由です。

 

タイトルに書きました「どちらを選ぶも自由ですが、健康と食文化を守る意志のあるやなしやを問われていることは自明の理」とは、正統派料理雑誌「四季の味」(現在は休刊中)の編集長であった八巻元子さんの言葉です。

私共の製品「十倍出し」と、うまみ調味料入りの「一般的なだしの素」の比較について、このように表現して下さいました。

 

実はこの言葉、私の中で何度も頭を巡ります。

全てを集約したような表現で、結局はこれに尽きるのです。

ただ、「食文化」と「健康」という二つの言葉の意味を改めて咀嚼し、初めて真の理解に繋がると思います。

本日は、私なりに八巻さんの言葉から、昆布に関係する「食文化」と「健康」について書きたいと思います。

 

『文化を守る、とは』

冒頭にも書きましたように、私は、大阪の伝統昆布文化を守るべき立場に居ると自認しているわけですが、文化も時と共に移ります。

過去からのものを、そのまま続けることばかりが文化では無いでしょう。

しかし行政も教育機関も含め、「食育」やら、「食文化を守る」やらとお題目だけは唱えますから、やはり伝統食文化は社会的に大切なものだと認知されているのだと思います。

実際に、「だし」の価値を説く団体も、公的機関を含め、大小問わず無数にあります。

 

しかし、組織が大きく発信力の強い団体になればなるほど、そのバックには必ずと言っていいほど、うまみ調味料メーカーが関わっているのです。

役員名簿等を見ると名前が出ていますから、これは間違いありません。

そのくせに「伝統食文化」を語るわけです。

これは、矛盾していませんでしょうか。

うまみ調味料メーカーから、資金協力を得ている団体が、忖度なしに物を言えますでしょうか。

 

当然、うまみ調味料メーカー自体も、「だし文化」を含む食文化を強くアピールします。

私には、「うまみ」というキーワードを軸に、昆布とうまみ調味料のイメージの混同を誘導しているように見えます。

そういった団体と私では、発信力の違いは歴然で、非常に苦戦しますが、今後も「うま味調味料を使うも使わないも自由だが、伝統だし文化が衰退する要因になっている」ことだけは、強く訴え続けていきたいと思います。

 

八巻さんの言葉、「どちらを選ぶも自由ですが、食文化を守る意志のあるやなしやを問われていることは自明の理」とは、そういう意味だとご理解下さい。

逆に言えば、うまみ調味料を多用するのなら、だし文化を守る意志ナシ、ということでしょうか。

一般の方に、その意志があろうが無かろうが自由ですが、だし文化をアピールしている側にも該当する人が多いので、それはやはり困ったものです。

「本当に食文化を守っている人」と「守っているフリをしている人」、両者の違いに目を向けていただけると嬉しいです。

 

「UMAMI」の問題点については下記の過去投稿でご理解いただけるかと思います。是非ご一読を。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

続きまして、

『健康を守る、とは』

これとて、うまみ調味料を使うことと健康に、どのような因果関係があるのか、正確に理解している方は、ほとんどおられないと思います。

様々な事例を挙げてご説明したいので、これについては後日、別投稿として出します。

 

本日は、昆布を含む伝統食文化の衰退が、健康に大きな問題を引き起こしていることを推測させる事例を、お知らせしたいと思います。

 

昨年発行した拙著「捨てないレシピ だしがらから考える食の未来」の58ページのタイトルは「沖縄の伝統食文化から見えること」です。

かつては一人当たりの昆布消費量が最多であり、かつ、日本一の長寿県として知られた沖縄県

しかし伝統の沖縄食文化の衰退スピードが早く、昆布の消費量順位はあっというまに下降し、それと歩調を合わせるように平均寿命順位も急降下しました。

(本投稿の末尾に、書籍とほぼ同じ内容を載せますので、ご一読下さい。)

 

これは、伝統食文化が失われることで健康も失ってしまう、良い事例です。

これこそが、八巻さんの言葉、「どちらを選ぶも自由ですが、健康と食文化を守る意志のあるやなしやを問われていることは自明の理」の意味だと思います。

 

読み流してしまいそうな言葉の背後に、非常に大切なメッセージが込められています。

今後の私の役割のひとつは、そういったことを多くの方に分かりやすくお伝えすることではないかと、最近は考えています。

それによって、「健康と食文化を守る意志」を持つ方が増えるのであれば、何よりの本望です。

前述の通り、うまみ調味料が、より直接的に健康悪化につながる仕組みについては、改めて投稿致します。

今後も何卒お付き合いください。

 

(了)

(以下、拙著の抜粋)

 

 

  • 沖縄の伝統食文化から見えること

江戸時代の中頃に北前船の西廻り航路が開拓されると、以後「天下の台所」大阪が昆布の集散地としての役割を果たすようになりました。

北海道から日本海側を進み、関門海峡から瀬戸内海を進む「西廻り航路」は、昆布ロードと呼ばれることもあります。

この昆布ロードは、一部が枝分かれする形で更に西へ進み、鹿児島を経由して沖縄、そして台湾、更には中国(清)へも昆布が運ばれていました。

沖縄の伝統食文化に昆布の果たした役割は大きく、昭和から平成初期までは、全国でもトップレベルの消費量でした。

沖縄の昆布文化は少し独特で、あまりだしに使わないのです。

例えば沖縄そばも、削り節や豚骨が主です。

では、どう使うかと言えば、海の野菜のような感覚で、それ自体を食べるのです。

クーブイリチーという沖縄伝承料理があります。

「クーブ」とは「昆布」の沖縄訛りだと思われますが、細切りにした昆布を他の具材と共に炒め煮にしたものです。

結んだ昆布の煮物なども、よく食卓に上ります。

こういった食文化ですので、市場へ行くと乾物でなく生の昆布が売られているのを見かけることがあります。

これは、北海道から生のまま運ばれてきたというわけでなく、水で戻して販売されているのです。

水で戻す際には戻し汁が出て、それは昆布だしそのものですから、言ってみればだしがらを売っているようなものです。

しかし、これが沖縄の伝統料理には、とても適しています。

かつて沖縄は、世界でも有数の長寿地域として知られていました。

その長寿を支えた理由として必ず挙げられるのが、沖縄の伝統食です。

しかし、戦後のアメリカ占領時代から食の西洋化がいち早く進んだ結果でしょうか、あっという間にその名声は過去のものとなりました。

特に男性は、今では都道府県別ランキングを下から数えた方がよほど早い状態です。

沖縄の伝統食に昆布は欠かせませんが、1980年代までは昆布の購入量日本一でした。

ちょうどその頃まで、沖縄は長寿県だったのです。

その後、状況が一変するのですが、沖縄県民の昆布購入量と平均寿命順位は足並みを揃えるように低下していきます。

(データ:沖縄県統計資料WEBサイト、総務庁統計局「家計調査年報」、厚生労働省都道府県別生命表」より)

こんな歴史に、昆布ばかりが関係していると言うつもりはありませんが、とても面白い関係性だと思います。

 

(以上、抜粋おわり)