前回の「とろろ昆布②」の続きです。
例えば、
「黒おぼろ」とか「白おぼろ」、
「黒とろろ」とか「白とろろ」。
言わずもがな色の違いですが、その色の違いはどこから生まれてくるのでしょう。
赤いリンゴをイメージして下さい。
赤く見えても、それは皮だけですね。
中身は白い。
昆布も、皮が黒いだけで中身は白に近い色合いです。
つまり、酢で柔らかくした昆布の表面を手加工で薄く削りだす際、最初に出てくるのは皮の部分であり、それが黒いのです。
「黒おぼろ」「黒とろろ」ですね。
昆布の裏表とも、刃物を数回動かして何回か削りだしたら、もう昆布には皮がなくなって白い状態になります。
そればかりを集めておいて、同じ仕事をすれば、白いものが削り出されます。
これが「白おぼろ」「白とろろ」です。
つまり、色が黒いのは皮の部分が含まれているから、色が白いのは皮の部分が含まれていないから、ということです。
味の傾向の違いは、下記の通りです。
「黒」
比較的昆布の味が濃い。
塩分やお酢の味も強い。
「白」
淡く上品な味。甘く感じる。
塩分も酢の味も穏やか。
手作業で削っていくと、昆布はどんどん薄くなっていきます。
そして、最後には薄い薄い「白板昆布」が残ります。
よく鯖寿司なんかに使われる昆布ですね。
つまり、手作業で削る昆布は、「黒」「白」「白板」の3つの部分に分かれるわけです。
機械で削った昆布は、手加工の「黒」「白」「白板」が全部一緒になって削りだされてきます。
こちらは、黒の部分が混じっているとは言え、全体としては白く見えます。
味も、三つの部分の平均的な味と言えるでしょうか。
機械とろろは、お酢の含有量は手加工に比べて少なめなので、酸味はそう感じないかと思います。
現在では、昆布の手加工の職人さんは、非常に少なくなりました。
こんぶ土居でも、削っていますが、たくさんは作れません。
特殊な用途でなければ、基本的には機械とろろでよろしいかと思います。
加工方法によって生まれる僅かな食感の違いより、昆布とお酢の品質の方が、よほど大切なのではないかと思っています。