お客様から、よく質問をお受けします。
「昆布の表面の白い粉は、拭かなくて良いんでしょうか」と。
結論から申しますと、拭かなくて問題ありません。
よく言われるところですが、白い粉は昆布のおいしさの成分の一つが浮き出たものだからです。
塩のように見えるかも知れませんが、実はすごく甘いです。
そうであるならば、白い粉が出ている昆布の方が良いということでしょうか。
残念ながら、話はそれほど単純ではありません。
まず、おいしさの成分である粉が表面に吹き出ていないということは、おいしさの成分の含有量が少ないと思われるかもしれませんが、そうではないのです。
おいしさの成分は本来、昆布の内部に留保されているべきもので、簡単に表面に出てくるべきものではありません。
同じ浜で採れた同じ品種の昆布を二つ、下記①②として比較して考えましょう。
①あまり良くない個体が、恵まれない環境で育ち、水揚げされてから適切な処理がされなかった場合。
②良い個体が理想的な環境で強く育ち、水揚げしてから適切に処理された場合。
上記の①と②を「同条件下」で保管すれば、明らかに①の方に多く粉が出ます。
ここが難しいところです。
粉自体は、おいしさの成分なのですが、それが吹き出ている方が良いとは言えない。
また前述の①と②の比較も、「同条件下での保管」が条件ですので、異なる経過を辿った昆布を比較することにも意味がありません。
こんぶ土居では、あまり真っ白に粉が吹いたものが良いとは考えていません。
うっすら白いのは、むしろ良い状態であると思いますが、真っ白になるのであれば、保管時の湿度の変動が過剰であるように思います。
粉が吹きやすい状況とは、「一度昆布が湿度を吸い込み、後にそれが放出されたとき」です。
前回の昆布の熟成の話とも少し関係していますね。
(2020年6月27日投稿、「昆布の熟成について」)
https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/27/093601
前述のように同条件であれば、弱い昆布ほど簡単に粉が出ますが、その比較も、昆布の品種や産地、保管の状態や時間経過など、全て「同じ条件」でないと意味がありません。
ですので、ある昆布を取り上げて、白いとか白くないとか、表面的な現象だけを単純に見ても何も判断することはできないのです。
少し難しい話になりましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
(白い粉とカビの見分け方)
異常な高温、高湿度下ではカビが生えることも考えられないわけではありません。
赤カビ、青カビ、白カビ、なんでも生える可能性があります。
赤いものとか青いものであれば判別は容易ですが、白いものは紛らわしいかも知れません。
カビの胞子は、繁殖する際にコロニーと呼ばれる丸い固まりを構成することが多いです。
また、表面がふかふかとした質感になるものです。
当然ですが、においを嗅ぐとかび臭いです。
このような状態であれば、それは昆布の粉ではなくカビです。
廃棄して下さい。
通常の環境下では、容易にカビが生えることはありません。