こんぶ土居では、「御上り昆布(おあがりこんぶ)」という塩昆布(昆布の佃煮)を製造しています。
北海道の旧南茅部で産出する白口浜天然真昆布を厳選した調味料で炊き上げた製品です。
この名称は、古く江戸時代の史実から取っています。
そのストーリーをご紹介します。
現在の北海道函館市、旧南茅部町は、最高級の昆布が産出する場所として古くから知られていました。
江戸時代寛政年間の幕吏であった村上島之允は蝦夷地に駐在して、蝦夷地のアイヌの風俗を細かに記録した優れた著書や、絵図、屏風などを多く残しました。
そのひつと「蝦夷嶋奇観」は、寛政11年(一七九九)に成立したといわれています。
その一部を抜粋します。
蝦夷島奇観
百五十六 一 御上り昆布 一曰 天下昆布
汐首崎より東シカヘ
海濱迄産セリ 長壹丈
三四尺 幅五六寸 紅黄
緑色 採挙て清浄の
地をえらミ乾す 五十枚
を壹把とし また其上を
昆布にて包 十六所
結 廳に奉る 是昆布の
絶品とす
文中で、「絶品とす」と評された「御上り昆布、天下昆布」こそが、旧南茅部町で産出する白口浜天然真昆布なのです。
さらに「菓子昆布」についての記述も あり、そのまま食しても甘みがある真昆布は宮廷や将軍家においてお菓子として珍重されていたことが伺われます。
昭和になってからは、昭和一一年秋、天皇陛下の北海道行幸の際に御料品として差出すよう北海道庁から指定されました。
それ故「献上昆布」の別名もあります。
(当時の献上品乾燥の様子)
「白口浜真昆布」は遠く北前船の時代より上浜ものとして他産地昆布と区別されてきました。この名は昆布の身が厚くその切り口が白く見えることに由来します。
上品で清澄な出しが取れ、また高級塩昆布やおぼろ等の加工にも適していることから、高級昆布の代名詞として扱われてきました。
その多くが、この昆布を特に珍重する「天下の台所、大阪」へ出荷されました。
正に日本一の由緒正しい昆布だと申し上げられると思います。
この天然真昆布が、近年不作続きで大変なことになっています。
日本一の昆布ということは、それ即ち世界一の昆布ということです。
そんな大切なものが今、過去にない危機に瀕しています。
また日を改めて投稿致します。