こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

丸正酢醸造元

 
こんぶ土居製品で、お酢を使うものがあります。
例えば、とろろ昆布や、おやつ昆布などです。
 
 
こんぶ土居ウェブサイトには、使用する原材料についての考え方をまとめたページがあり、「酢」については、以下のように記しました。
 
 
【米酢】 酢は、酒のアルコール分が発酵により酢酸に変化したものですから、考え方は基本的には酒と同じです。伝統的な酢づくりは静置発酵と呼ばれ、仕込み桶の上面のみで酢酸発酵が進みます。これに対し、好気性菌である酢酸菌を活発にするため、強制的に空気を吹き込んで短期間で醸造するものもありますが、時間をかけて醸すものの良さは出ないように思います。自然な甘さを加えるために甘酒が使用されることもあります。酒粕を使用したものも、その質がよければよいのですが、酒粕の品質もさまざまですので注意が必要です。増量のために醸造用アルコールを使用したものは本来の酢とはいえません。
 
 
 
端的に表現しますと、「静置発酵の純米酢」ということになるでしょうか。
 
私共で販売しているとろろ昆布類は、全商品について、原材料は昆布と酢だけです。
他の副原料は一切使用しません。
これほどシンプルになると、原料の特徴がそのまま製品に現れますので、当然その品質が問われます。
つまり、良い酢を醸造して下さる生産者さんが必要であるわけです。
 
これまで、こんぶ土居製品に使用する酢は、和歌山県の丸正酢醸造元様に作っていただいていたものです。
こんぶ土居別注品として、長い間製造して下さいました。
 
別注品になる理由は、「酸度」です。
お酢の酸味は、とろろ昆布等の製品の品質を保つために非常に役立ちます。
酸度が低くなれば、夏場などにカビが生えたりするリスクも高まります。
一般的に販売されている酢は、酸度が4%ぐらいのものがほとんどです。
ただ、それではとろろ昆布に使用するには低すぎますので、丸正酢さんに別注で作っていただいていた次第です。
しかし、前述の静置発酵の純米酢で酸度6%のものを作るのは、どうやら大変なことであるようです。
高い技術が求められます。
私共で使用する酢の量などたかが知れているのですが、わざわざ別注品で対応して下さる丸正酢さんには頭が下がります。
 
ただ、丸正さんを取り巻く環境も、時代と共に大きく変わっているようです。
まず、長い間名物社長として働いてこられた小坂晴次さんが、昨年亡くなりました。
また、丸正さんは和歌山の勝浦にありますが、地方が抱える共通の悩み、人口減少に伴う働き手不足の問題があるようです。
このような背景で、これまで通りのお仕事を続けるのが厳しくなり、業務の再編に取り組んでおられます。
簡単に言えば、これまでの多品種少量生産から少し変えて、商品点数も減らしてシンプルな仕事にしていかれるようです。
 
こういう背景ですので、私共のお願いしてきた特殊なお酢づくりは、続けるのが難しいとのご判断になったようで、先日わざわざ私共へ説明に訪問して下さいました。
 
これまで、「全商品に静置発酵の純米酢だけを使っている昆布屋なんて、日本中でこんぶ土居ぐらいなものだろう」などと傲慢に考えていた部分もありましたが、それは丸正さんのように特殊な協力をして下さった方があったからこそです。
 
今後は、また別の醸造家さんに同じようなお仕事をお願いできないか模索することになりますが、これまで私共の仕事を支えて下さった丸正酢さんと先代の小坂社長には、ただ感謝です。
 
在りし日の小坂社長が書いた「酢づくりの職人として」という文章は、個人的に大好きです。
こちらも、ご興味あればご一読下さい。