こんぶ土居店主のブログ

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ヨウ素と海藻食

昆布は、健康的な食品だとのイメージを持って下さっている方が多いようです。

そのイメージは間違ってはいないと思います。逸話にも事欠きません。

 

例えば、沖縄はかつては長寿県として知られましたが、戦後のアメリカ占領時代から食の西洋化がいち早く進んだ結果でしょうか、あっという間にその名声は過去のものとなりました。

特に男性は、今では都道府県別ランキングを下から数えた方がよほど早い状態です。

 実は、沖縄の伝統食に昆布は欠かせません。

 

江戸時代の北前船は、北海道の産物を本州へ運び、それが最終的に沖縄にまで運ばれていたわけです。

消費量も非常に多く、1980年代までは沖縄県が昆布の購入量日本一でした。

ちょうどその頃まで、沖縄は長寿県だったのです。

その後、状況が一変するのですが、沖縄県民の昆布購入量と平均寿命順位は足並みを揃えるように低下していきます。

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(データ:沖縄県統計資料WEBサイト、総務庁統計局「家計調査年報」、厚生労働省都道府県別生命表」より)

 

これが昆布の影響だと断言するつもりはありませんが、とても面白い傾向を見せていますね。

 

実際に、昆布の健康効果を挙げ始めればキリがありません。

〇食物繊維が豊富で腸のアンチエイジングになるとか

〇豊富に含まれるカリウムが血圧を下げるだとか

〇フコイダンが免疫を高めるだとか

〇フコキサンチンが脂肪の蓄積を抑えて血糖値も下げるだとか

〇アルギン酸が脂質の吸収を抑えるだとか

〇うまみ成分のグルタミン酸に減塩効果があるだとか

 

私は研究者でもありませんし、それがどれほどの効果を見せるのかは分かりませんが、やはり体に良い成分が豊富であるのは間違いないのでしょう。

 

その他の良い成分の中に「ヨウ素(ヨード)」があります。

ヨウ素に関しても、昔の逸話があります。

秦の始皇帝が「東の国に不老長寿の妙薬あり」と日本まで探しに行かせたのが昆布だったと言うのは、昆布業界内でよく聞かれる話です。

これが本当なのかどうかは分かりませんが、次のようなストーリーかも知れません。

 

海に囲まれた日本に住む私たちには想像し難いですが、内陸国では海産物を食べる機会など、古い時代にはまずありません。

ご存じの通り中国は大国ですから、内陸地方に行けばそのような状況であったはずです。

そんな食生活で、必ずと言っていいほど不足する栄養素が、海産物に多く含まれる「ヨウ素」です。

ヨウ素が不足すると、ホルモン分泌を司る甲状腺の機能が正常に働きませんので、内陸国では甲状腺疾患を抱える人が非常に多かったのです。

昆布に含有するヨウ素の量は、他の食品と明確に一線を画すほどですから、患者に昆布を食べさせると症状がたちどころに改善したはずです。

そう考えると、秦の始皇帝の話も、まんざら嘘ではないのかも知れません。

 

実際に今でも多くの国では、ヨウ素不足に悩まされています。

そのため、食卓塩のようなものにヨウ素を混ぜたり、中には水道水に入れる国もあると聞きます。

私が過去にアメリカへ仕事へ行った際にも、複数の食品のパッケージに、ヨウ素の良い供給源になるとの謳い文句を見つけました。

このように、人間の健康に絶対に欠かすことのできない栄養素であるヨウ素ですが、一方で過剰摂取にも注意が必要かも知れません。

 

日本で暮らす人が伝統的な食生活をしていれば、ヨウ素不足になることは、ほぼありません。

しかし前述のように、昆布には他の食品とは比較にならないほどの量のヨウ素が含まれているので、たくさん食べると過剰摂取につながるリスクがあるのです。

その摂取量の目安となるものは、厚生労働省の資料「日本人の食事摂取基準」です。

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf

 

この資料の中に「2. 2 mg/日(3. 3 mg/日÷1. 5=2. 2 mg/日、2, 200 µg/日)を成人男女共通の耐容上限量とした」との一文があります。

つまり、厚生労働省は、これ以上の量のヨウ素を常時摂取することを勧めていないわけです。

 

ただ、日本では、ヨウ素の健康に及ぼす影響についての研究が非常に少ないようで、厚生労働省のデータも海外での研究に基づくものです。

ある成分が体にどのような影響をもたらすかは、人種民族によって大きく差が出ます。

古くから海産物に親しみ、ヨウ素を常時摂取してきた日本人は、海外の方々とは違う適応をしていると考えるのが普通かと思います。

 また、「脱出現象」と呼ばれる、過剰に摂取したものを体外に排出する機能もあるようです。

ただ数字で見れば、昆布が好きで毎日大量に召し上がる方であれば、前述の耐用量「2. 2 mg/日」は、簡単に突破してしまいます。

 

甲状腺に疾患がないなら過剰に反応する必要はないかも知れませんが、健康に良いとされる昆布であっても、食べすぎにはリスクがある可能性も頭に入れておくべきかと思います。

 特に、子供さんへの配慮は必要でしょう。

 

こんぶ土居オンラインストアで、子供に人気の「こんぶ飴」のページには、下記のご説明文を入れています。

 

『日本では海藻類を多く摂取する食習慣がありますので、ヨウ素が欠乏することはほとんどありません。ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能に影響を与える場合がありますので、特に子供さんは、1日あたり2、3個を目安に召し上がり下さい。』

 

製品ラベルは、このようになっています。

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過剰に反応する必要はないかも知れませんが、「何事も適量」を心掛けたいものですね。