こんぶ土居店主のブログ

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併用もアリ、鰹節と煮干しのだし

「合わせだし」という言葉があります。

単一の素材ではなく、傾向の違う素材を併用して取っただしのことですが、それが良い効果を生むことに、日本人は古くから気づいていました。

 

しかし、これは世界的に見れば、特殊なことかも知れません。

私は若い頃に、しばらくイタリアで暮らしたことがありますが、彼の地では、「肉のだし」「魚介のだし」「野菜のだし」といった分け方をしていました。

それを混ぜ合わせて使うということは、あまりなかったように思います。

中華料理では、チキンスープなどが一般的でしょうか。

 

日本での合わせだしの代表例は、料理店さんでは「昆布と鰹節」、家庭料理では「昆布と煮干し」、精進料理となれば「昆布と干椎茸」ですね。

 

合わせだしの効果を表現する際に、常に用いられるのが、うまみ成分の相乗効果の話です。

私は味を成分名で表現することが好きではありませんが、昆布に含まれるグルタミン酸と魚類に多いイノシン酸が合わされば、相乗効果が発揮されて単一の場合より遥かに効果的に満足感のある味が出ることは、多くの人の知るところです。

 

合わせ出しの組み合わせは様々ありますが、その軸になるのは常に昆布です。

ですので、前述のような組み合わせは普通に存在しますが、「鰹節と煮干し」「鰹節と干椎茸」「煮干しと干椎茸」といった合わせだしは、あまり聞きません。

 

特に鰹節と煮干しは、両方とも魚の素材ですので、合わせることに関してうまみの相乗効果はないはずです。

ですので、料理店さんの厨房でも、この併用の事例は非常に少ないです。

特に高級な日本料理店さんでは、煮干しだしを家庭料理の範疇と見なす場合が多く、鰹節を主に考えます。

 

しかし実際は、鰹節と煮干しの併用は、なかなか良い効果を生むのです。

 

鰹節でも煮干しでも、非常にに品質の良い素材を手に入れて昆布と共にだしを取れば、それだけでおいしいだしが用意できます。

しかし、そんなに特別な素材がありふれているわけでもありませんし、私たちの日常にいつも必要かと言われると、疑問もあります。

自然の産物なわけですから、少々難が出たりすることがあるのは当然です。

 

これは昆布とて同じですね。

特別に高級な昆布が美味しいのは当たり前。

しかし当然値段は高いですし、一部の経済的に余裕のある方を除き、そんな素材を常時使うことはできないでしょう。

 

ですから、日常の家庭料理には「特に高級でない『普通の品質の本物』の素材」でうまくだしが取ることが求められているように思うのです。

「本物」という言葉を使いましたが、対をなす「偽物」に該当するのは、酵母エキスなどの各種エキス類や化学調味料、その他のうまみ調味料の類ですね。

 

一級品でない鰹節や煮干しを使った場合、味に難が出たとして、両者の傾向はかなり違っています。

 

 

まず、鰹節のだしは、やはり味が少し薄っぺらいのです。

簡単に言えばコクが足りません。

それを補うのが昆布の役割であるのですが、削り節をたくさん使わないと少しものたりないだしになりがちです。

もう一つ、よくある問題が「酸味」です。

だしがすっぱくなるのです。

鰹節のだしに酸味が出る理由は、よく分かりません。

一説に、特に巻き網漁の原料魚が死ぬまでに暴れまわることによって、疲労物質の乳酸が溜まり、それが酸味として出るという話があります。

もちろんこの理由も無関係ではないかと思いますが、これはカツオに固有の話ではありませんので、他の理由もあるのではないかと考えています。

 

煮干しは、原料魚の鮮度にも関係しますが、だしが少し魚くさくなる場合があります。

また、内臓由来だと思いますが、苦みも出ます。

頭と内臓を取り除けばかなり解消されるのですが、それもまたひと手間ですね。

 

 

まとめると、両者の欠点は次のようになります。

【鰹節のだし】味に厚みがない、すっぱい

【煮干しのだし】苦い、魚くさい

(※超一級品の素材を使った場合、これらの欠点は非常に少ないです)

 

 

つまり、同じ魚の素材であるのにも関わらず、鰹節の味と煮干しの味の傾向が異なるのです。

 

この問題を解決してくれるのが、両方使うことです。

使用量を半分にして、両方使えば良いのです。

これによって、「味に厚みがない」「すっぱい」「苦い」「魚くさい」の四つの問題点が共存してしまうことにはなりますが、度合いが半分になっているので気にならないのです。

 

一般的に合わせだしは、うまみの相乗効果を狙ったものですが、鰹節と煮干しの組み合わせは意味が違い、好ましくない要素の低減です。

特に煮干しの魚くささなどは、鰹節の良い香りでマスキングされているようにも感じます。

逆に、かつおだしの「味に厚みがない」ところは、力強い煮干しの味が補ってくれます。

 

一度「昆布、鰹節、煮干し」の、三種の合わせ出しを取ってみて下さい。

私がご説明した内容に納得していただけるのではないかと思います。

量は三等分ずつで良いと思います。

 

 また日を改めて、だしの取り方についての基本の考え方をご説明します。

ご一読いただき、おいしいだしを味わって下さい。