前回の投稿で、2025年の大阪・関西万博に向けた話を書きました。
万博と言えば6年前、2015年の開催地はイタリアのミラノでしたが、大阪市から依頼を受け私が現地で昆布のお話をさせていただきました。
少し個人的な内容も含みますが、当時の思い出話を書きたいと思います。
事の発端は、こんぶ土居でイタリア人の学生を受け入れたことでした。
イタリアのピエモンテ州に「食科学大学(Università degli Studi di Scienze Gastronomiche)」という大学があります。
食科学大学では、学生の海外研修を頻繁に実施しているようですが、研修先として日本も含まれています。
その受け入れには、京都の立命館大学が窓口になっていました。
その際、立命館大学の井澤裕司教授が「イタリア人の学生に日本の食文化としての昆布の説明をしてほしい」と私共に依頼して下さったのです。
食を専門に学ぶ海外の学生に、日本の伝統食文化を理解していただくのは、意義のあることだと思い、ご協力させていただいた経緯がございます。
そんなご縁もあり、後日、在大阪イタリア総領事館で開催されたイタリア共和国記念日を祝うレセプションにお招きいただいたのです。
ご参加された方々とお話する中で、大阪市の担当者からミラノ万博の事を軽く打診されました。
行政でも、外部に発信すべき大阪の食文化が昆布であることをご理解いただけているのは、とても嬉しいことです。
その後、大阪市より「大阪ミラノ姉妹都市交流親善大使」として正式な依頼を受け、現地へ出向くこととなりました。
ミラノ万博にはパビリオンとしての「日本館」があり、来場者に日本の文化を伝える役割を果たしていました。
この日本館は、ミラノ万博の全パビリオン内で圧倒的な一番人気で、入館に長い行列ができて、なんと最長で6時間待ちになっていたほどです。
日本館にはステージが常設されており、週替わりで日本全国の市町村が、地域の文化を紹介していました。
私に与えられた役割は、「大阪ウィーク」にてイタリア人に、大阪の昆布の文化を伝えることです。
(大阪ウィーク開催の記念式典の様子)
実は私は若い頃に、しばらくイタリアで暮らした経験があり、簡単なイタリア語が話せます。
ミラノ万博でも、拙いイタリア語で通訳なしでプレゼンしたのですが、これが本当に効きました。
冒頭に、「イタリアが好きでイタリア語を勉強しました。決して流暢ではないが、今日は通訳なしでやります。」と言うと、もうその段階で拍手喝采なのです。
そういったことを喜びがちなイタリア人気質もありますが、ダイレクトに伝えることの大切さを改めて感じました。
実際にステージ上でだしを取って味を見ていただいたり、様々なことをご説明しました。
それを大阪ウィーク中、何回も繰り返したわけですが、若いころに自分がイタリアから多くのことを学んだお返しができたようで、とても嬉しい経験でした。
私がイタリアにいた頃のイタリア人は、良い意味で保守的で、海外の文化への関心が薄い印象がありました。
それこそがイタリアの伝統文化が良い形で続いた原動力であるわけですが、逆に言えば日本の昆布文化に関心を示してもらえないのではないかという心配がありました。
しかし、現場でそれは見事に裏切られます。
時代が進んだのもあるでしょうが、昆布を知っているイタリア人も多く、だしの味も非常に好意的に受け入れられたことが印象的でした。
過去にも様々な経験から得た結論ですが、昆布の良さを理解するのは日本人ばかりではないのです。
今や、その価値は世界的に認められています。
帰国後には大阪市役所へお招きいただき、橋下徹市長(当時)から感謝状を頂きました。
少しでも大阪に貢献できたのであれば、本望です。
新聞でも、ご紹介いただきました。
取材を受けていましたので、掲載されることは事前に知っていましたが、一面で大きな記事でしたので驚きました。
この新聞記事を改めて見ると、当時から「国内産 供給は減少傾向」というタイトルが見えますね。
ちょうどこの年から、天然真昆布は大減産の期間に突入していきます。
今後も大阪の伝統食文化としての昆布を国内外へ発信していきたいと考えていますが、それは北海道で良い昆布が生産されてこそ意味を持ちます。
過去の取り組みが未来に続くように、北海道の昆布生産に良い結果を導きたいと思います。