たまにお尋ねいただくご質問の定番
「だしを取るとき、昆布に切れ目を入れた方が良いんでしょうか」。
切れ目を入れた方が良い気がするのは、ハサミを入れた断面からだしが出るイメージによるものでしょう。
お気持ちはわからないでもありません。
しかし、昆布のだしは断面のみならず表面全体から出ますので、特に切れ目は必要ありません。
切れ目があるものと無いものの味の差を確かめるには、良い方法があります。
仮に切断面からだしが出るのだとすれば、断面が多ければ多いほど有利だということになります。
それなら、ハサミで昆布に切れ目を入れる際、できるだけ細かくするとよいですね。
その細かさを極限まで突き詰めると、昆布は粉末状になるはずです。
つまり、切れ目を入れていない昆布と同重量の昆布粉末を用意し、それぞれのだしの味を比べればよいわけです。
実際に昆布の粉末を煮出し、沈殿している粉末を濾しとったものを見ると、少しドロドロした感じの見た目で、いかにも強い味が出ているように見えるかも知れません。
しかし切れ目なしの澄んだだしと比較して、特にうまみが強いようには感じません。
不思議なものです。
むしろ、おいしさに関わるもの以外の成分がたくさん出ているように思います。
ご興味あれば、実験してみて下さい。
つまり、「切れ目を入れなくても良い」ではなく、むしろ「切れ目は入れない方が良い」であるように思います。
事実、プロの料理人で、一生懸命切れ目を入れた昆布でだしを取っている方に、全くお目にかかったことがありません。
普通にだしを取ったとしても、水に溶けだす昆布のエキス分は非常に多いのです。
驚かれるかもしれませんが、水に溶け出すものが約4割だとお考えください。
6割がダシガラです。
だしは透明な液体ですから、ほとんどの成分がダシガラに残存しているように見えるかも知れませんが、半分近くのものが溶出しているわけです。
別の観点で、ダシガラに残る水溶性でない栄養成分があります。
ダシガラも上手に調理すれば美味しくいただくこともできますし、何より栄養豊富です。
そんなことについて書いた過去投稿もありますので、ご興味あればご一読下さい。
2020-06-23投稿
2020-12-21投稿
名に恥じぬ「PFCミネラルいりこん」 - こんぶ土居店主のブログ