以前から、料理のレシピに「昆布茶」を使うものをお見受けすることが多々あります。
使っている方は、昆布の味わいを利用しているように考えておられるのでしょう。
「昆布のうま味で美味しくなります」などと説明されることも多々あって。
しかし一般的な昆布茶製品を使って、所謂「うま味」を感じたとするならば、それは昆布の「うま味」ではなく、ほとんどが「うまみ調味料」によるものです。
本日の投稿は、それをご説明するものです。
流れとしましては、以下の通りで。
【昆布茶の一般的認識は、ほとんどが誤り】
【一般的な製品の原材料構成】
【成分の配合割合の推定】
【まとめ】
と順に書きたいと思います。ではまず。
【昆布茶の一般的認識は、ほとんどが誤り】
そもそも昆布茶とは何であるか、ということの確認のために、Wikipediaのリンクを貼っておきます。
こちらには以下のように書かれています。
昆布茶(こぶちゃ、こんぶちゃ)は、コンブを乾燥させ細かく刻むか粉末状にしたものに湯をそそいで飲む飲料[1]。
他の辞書を当たってみても、どれも同じようなことが書かれています。
であれば当然、多くの消費者もこういった認識でいるのでしょう。
しかし、この説明は正しいとは言えません。
その理由を次の段でご説明します。
〇一般的な製品の原材料構成
様々なメーカーから昆布茶製品は販売されていますが、サンプルとして、アマゾンの「昆布茶」カテゴリーのランキングの最上位に表示されたものを取り上げます。
(梅昆布茶が一位でしたので、二位の製品です。)
この製品の原材料名の欄には、以下のように表示されていました。
原材料名:食塩、砂糖、昆布粉末(北海道産) / 調味料(アミノ酸等)
この原材料構成は、多くのメーカーの製品で、ほとんど同じです。
前段で、一般的な認識が正しくないと書きましたが、それが既に表れてきています。
上記のような原材料構成ですから、Wikipediaが説明するところの、
昆布茶(こぶちゃ、こんぶちゃ)は、コンブを乾燥させ細かく刻むか粉末状にしたものに湯をそそいで飲む飲料[1]。
は、やはり正確さを欠くと言わざるを得ません。
そして更に、これらの各成分の割合配合を、次の段で推定してみたいと思います。
〇成分の配合割合の推定
まず『食塩、砂糖、昆布粉末(北海道産)/調味料(アミノ酸等)』の詳細な配合割合は、結局のところメーカーの内部事情を知る人でなければ分かりません。
しかし、推定は可能なのです。
このブログでは過去に何度となく、成分分析にために文部科学省が提供する「食品成分データベース」を活用しています。
今回もこちらを利用します。
推定に際し、注目する成分は「ヨウ素」です。
原材料は『食塩、砂糖、昆布粉末(北海道産)/調味料(アミノ酸等)』でしたが、このうちヨウ素を含有するのは『昆布粉末(北海道産)』のみです。
他の3素材にヨウ素は含まれませんので、昆布茶製品に含有するヨウ素は、そのすべてが昆布由来であると考えられるはずです。
ではまず、食品成分データベース上で「昆布茶」100g中に含まれるヨウ素の量を参照してみましょう。
食品番号: 16051 食品群名/食品名: し好飲料類/<その他>/昆布茶
ヨウ素 26000㎍ (100g中)
とのことでした。
これが昆布に由来するわけです。
この26000㎍が、どれぐらいの量の昆布に相当するかを参照するのですが。
今回は、平凡社発行の百科事典「マイペディア」の昆布茶の説明文に、
【コンブを乾燥して細切りまたは粉末にし,熱湯を注いだもので,茶のように飲用する。かおりが高く風味のよいマコンブが使用される。】
と書かれていますので、真昆布のデータを参照しています。
食品番号: 09017 食品群名/食品名: 藻類/(こんぶ類)/まこんぶ/素干し/乾
ヨウ素 200000㎍ (100g中)
真昆布100g中には200000㎍で、昆布茶100g中にヨウ素が26000㎍含有ですので、それは真昆布13g相当だという計算になります。
ちなみに少々話は戻りますが、「食塩、砂糖、昆布粉末(北海道産)/調味料(アミノ酸等)」が原材料であったわけですが、多いものから順に書くことが定められていますので、昆布粉末より食塩や砂糖が先に表示されているということは、そちらの方が含有量が多いという意味です。
しかし、最後の「調味料(アミノ酸等)」は/で区切られ、末尾に書かれているわけですが、これはこの原材料が食品原料でなく食品添加物のカテゴリーに入るからであって、末尾に書かれていても、必ずしも最小配合割合であることを意味しません。
ここで、この「調味料(アミノ酸等)」がどれぐらいの配合割合であるのかも、併せて推定してみましょう。手法は前段と同じです。
注目する成分は、所謂うまみ成分の「グルタミン酸」。
原材料として使用されている「食塩」や「砂糖」にはグルタミン酸が含有しませんから、昆布茶製品に含まれるグルタミン酸は「昆布」か「調味料(アミノ酸等)」のどちらかに由来することになります。
まず、昆布茶製品100g中に含まれるグルタミン酸量は、以下の通り。
食品番号: 16051 食品群名/食品名: し好飲料類/<その他>/昆布茶
グルタミン酸 8300㎎ (100g中)
そして前述の通り、食品成分データベースに掲載されている昆布茶製品の昆布使用量は13gであると計算されましたから、そこに含有するグルタミン酸量も参照してみましょう。
食品番号: 09017 食品群名/食品名: 藻類/(こんぶ類)/まこんぶ/素干し/乾
グルタミン酸 200㎎ (13g中)
製品に含有する総グルタミン酸量8300に対し、昆布に由来するものは、たったの200ですから、所謂「うま味成分」ほとんどが「調味料(アミノ酸等)」に由来するものということになります。
この「調味料(アミノ酸等)」は、味の素に代表されるような化学調味料のことです。
この8300と200の差、8100㎎のグルタミン酸は、うまみ調味料としての重量で換算すると11gほどになりますから、かろうじて昆布の配合割合の方が多いということになりますでしょうか。(※下記)
しかし、所謂「うまみ成分」と呼ばれるグルタミン酸がどこに由来するかなれば、約97%が昆布でなく「うまみ調味料」由来という計算になります。
(※ うまみ調味料は、グルタミン酸のナトリウム塩の形で使用されますので、ナトリウムが結合した状態での換算という意味です)
これでも尚、
昆布茶(こぶちゃ、こんぶちゃ)は、コンブを乾燥させ細かく刻むか粉末状にしたものに湯をそそいで飲む飲料[1]。
という説明が適切だと思われますでしょうか。
【まとめ】
今回、栄養成分の観点から分析を進めましたが、データを参照した文部科学省の食品成分データベース。
残念ながら、こちらにまで正しくない情報が記載されていまして。
昆布茶についての「詳しい内容はこちら」と書かれた部分を見ると、以下のように説明されていました。
「昆布茶」はこんぶを乾燥させ粉末状にしたものであり、食塩、砂糖等が添加され、販売されている。湯をそそいで飲むほか、最近では調味料として用いられる場合もある。成分値は、市販加工品(粉末)を試料として、分析値に基づき決定した。ヨウ素量がまこんぶと大きく異なるが、昆布茶用の昆布は、だし用の市販こんぶと使用する部位が異なるためである。
いやはや、こんなのは全く正しいとは言えません。
これまでを読んでいただいた方なら、両者のヨウ素含有量が違う理由は『昆布茶用の昆布は、だし用の市販こんぶと使用する部位が異なるためである。』などではなく、少量しか昆布が使われていないからだということがご理解いただけるでしょう。
文部科学省、こんな何の根拠もないことを言うのは、行政機関として大問題だと思います。
ちなみに、辞書が説明している通りの『昆布茶(こぶちゃ、こんぶちゃ)は、コンブを乾燥させ細かく刻むか粉末状にしたものに湯をそそいで飲む飲料』、が必要なら、それは昆布の粉末製品でしょう。
しかし、この昆布粉を水で溶いても、多くの方のイメージする昆布茶の味わいとは異なります。
塩と砂糖を加えれば、近づきはするのですが。
ちなみに我田引水で恐縮ですが、私共で製造している別の昆布茶も辞書の説明とは違う形にはなりますが、うまみ調味料は一切含みません。
その代わりに、自然素材で取った「だし」を加えています。
昆布が主原料であるかのような誤認が生まれやすい製品については、過去に類似の投稿をしています。
こちらは更に僅かしか昆布が使われていない事例ですので、ぜひお目通し下さい。
たまに、味の素を使うのは嫌だから昆布茶を使う、なんて方もおられますが、これは意味が分かりません。
塩と砂糖と昆布粉末と味の素、の混合物なのですから。
やはり、自分が食べているものが何でできているか、正しく認識したいものです。
今回ご提示した内容のように、少なくとも原材料表示を読んで、様々な情報を駆使すれば、真の姿が炙り出されてきます。
これこそが、食のリテラシーだと思います。
(了)