過去にもこのブログでご紹介した、私共の新しい製品として開発中の「純植物性十倍出し」。
長い名前ですので、「野菜だし」と呼ぶ方もあります。
世にそういった製品が多いので無理もありませんが、この製品は野菜が主ではありません。
昆布屋がつくる製品ですから、当然に昆布が最大配合割合を占め、次に多いのが干し椎茸です。
野菜は、昆布や干し椎茸の比較すると、ほんの少ししか使用していません。
そもそも、「だし」は所謂、「うまみ」を得るためのものでしょう。
私は、味を成分名で語るのがあまり好きではありませんが、各だし素材に、どんなうまみ成分が含まれているのかは知られており、以下の通りです。
昆布:グルタミン酸
鰹節、煮干し:イノシン酸
干し椎茸:グアニル酸
貝類:コハク酸
各うまみ成分は、混ぜ合わせることで『相乗効果』も期待できます。
では、「野菜」のうまみ成分とは、何でしょうか。
白菜、トマト、アスパラ、ブロッコリー、トマトなどには、グルタミン酸が含まれていることが知られています。
それでも、昆布に比べれば圧倒的に低濃度です。
そもそも私共は昆布屋ですから、グルタミン酸の供給源として野菜に期待するものはありません。
野菜の『甘み』は強いです。
しかし『うまみ』は薄いと感じます。
このように考えると、ダシという観点からは、野菜の果たす役割は大きくないと考えています。
家庭で料理をする際に野菜の皮を剥いたとして、それを有効活用ために煮出してダシとして利用する、といったことは素晴らしいですが、昔から日本人が広く使ってきた昆布や鰹節や煮干し等と同等に考えるのは無理があるでしょう。
誤解を恐れずに書けば、野菜だしって、それほど美味しいものでは無いのでは?ということです(使う料理にもよりますが)。
それでも、時代の要請として「野菜だし」が注目され、多くのメーカーが製品を出すようになりました。
しかし、前述のように、そもそも野菜にはうまみ成分が豊富なわけではないので、本来さほど美味しくないはずです。
にも関わらず製品が成立するのは、やはりうまみ調味料によるところが大かと思います。
必ずと言って良いほど使われるのが、うまみ調味料の一種『酵母エキス』です。
『うまみ』を得るための『だし』。
その、主役たる『うまみ』を、野菜でなくうまみ調味料で得ておきながら『野菜だし』と呼ぶのが相応しいのか、そこにも疑問が残ります。
我田引水になりますが、やっぱり昆布ってすごいなぁ、と思います。
植物性のダシ製品、他社製品もたくさん試しましたが、うまみ調味料入りの製品は、当然に強烈な『うまみ』を発揮します。
しかし、自然素材のみで構成され、様々な料理に広く使えるのは、私共の製品が断然に優れていると自負しています。
これは間違いなく昆布の力です。
ちなみに、こんぶ土居製品『純植物性十倍出し』に、少量とは言え野菜類を使っている理由は、風味のバランスを取るためです。
簡単に言えば『干し椎茸の香りを抑えたい』のです。
昆布と干し椎茸だけで製造すると、やはり椎茸の香りが前面に出ます。
そこで、適切な割合で野菜だしを併用すると、うまく調和の取れた香りになり、あらゆる料理に汎用性のある、良い意味で『特徴のない味』にすることができます。
椎茸ぎらいの方も少なくないですが、そんな方にもお試し頂きたいです。
改めて、昆布の果たす役割は素敵。
出しゃばらず、縁の下の力持ち。
味の底支えで、あらゆるジャンルの料理に使える。
世界に誇る、唯一無二の食材です。
(了)