こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

『文化を守る人』>『美味しいものをつくる人』、と言いたい。

本ブログでも、何度も取り上げている天然真昆布の大凶作。

特に、大阪の料理人さん方は、たいへん困っておられます。

なにしろ、真昆布のだしは大阪料理の要。

良い昆布が手に入らないということは、その要が揺らぐことであるわけです。

 

こんな背景で、料理人の皆さん方も、様々に工夫をされます。

手に入る素材の中で、食べる方の最大の満足を得るための工夫ですので、素晴らしいことだと思います。

 

例えばこの料理。

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どこからどう見ても日本料理のお椀ですが、実は、だしに鰹節も昆布も一切使われていません。

その名も「コンソメ椀」です。

 

私は食べていませんが、美味しいそうです。

そりゃそうでしょう。

一流の料理人さんが、工夫を凝らして用意したダシですから。

しかし、私は少し釈然としないものを感じるのです。

 

 

 

私たちは日本に暮らす日本人ですから、私たちこそが日本文化の担い手です。

とは言え私自身も、毎日そんなことを意識して生活しているわけではありません。

日々洋服を着て生活していますし、外国料理を食べる機会も非常に多いです。

 

しかしだからこそ「文化の担い手」となる人が必要であって、日本料理の料理人さんは、「伝統食文化の担い手」だと自認して欲しいと個人的に考えています。

特に一流の日本料理人さんは、そうあって欲しいです。

 

日本料理の献立の中でも、何と言っても花形は、昆布と鰹節で引いた一番だしの「お椀」です。

その日本料理の「花形」までもが、伝統素材を背景とした『独自性』を失いつつあるのなら、本当に悲しいことです。

この『独自性』こそが、文化であるわけですから。

ただそれは、良い昆布が手に入らないことに起因するものですから、「しょうがない」とも言えそうです。

 

しかししかし。

いつの時代も、問題が発生したときに「その問題を回避する人」と「問題を解決する人」の両方がいるものです。

どちらかと言えばコンソメ椀は「前者」かと思いますが、後者の料理人さんもいるのです。

 

 

さて、本年2023年の10月。

最高級の真昆布産地の、北海道の旧南茅部町域にてイベントを開催します。

会場は北海道南茅部高校。

対象者は、南茅部高校の全生徒と、南茅部中学校の全生徒、保護者、漁業関係者、行政、教育機関等々です。

私が最初に、産地の方々へ向けて、いかに南茅部の昆布が日本の食文化に大切なものであるか、また未来へ向けた問題点や展望についてお話します。

そして後半には、料理人さんの力をお借りし、別の角度からのお話しと、昆布だしの活きた料理の試食会も開催します。

 

協力してくださるのはミシュランガイドの三ツ星料亭「柏屋」のご主人の松尾英明さん。

jp-kashiwaya.com

 

松尾さんには、過去から何度となく、お世話になっています。

まだ、世に天然真昆布の問題を報じるメディアが少なかった時代に、いち早く取り上げて下さった、産経新聞の北村博子記者の記事。

こちらでも、松尾さんにコメントをお願いしています。

改めて振り返ってみても、当時の一面でこの記事が出た意義は非常に大きく、松尾さんが協力して下さったからだとも言えます。

その他、昨年の南茅部高校の生徒が大阪への修学旅行時に、私共を訪問して下さった際にも、お忙しい中を駆けつけて生徒を激励して下さいました。

 

 

そして、もうお一方。

こちらも同じくミシュラン料理人「雲鶴」の島村雅晴さんです。

www.unkaku.jp

料理人さんのお仕事は、当然「おいしい料理を提供すること」です。

しかし、これだけ環境が厳しくなれば、それを越えた役割を果たそうとする素晴らしい方々が生まれてくるわけです。

 

昆布だけのことではありません。

「問題を回避」することが悪いことだとは言いませんが、「問題の解決のために働きたい」と考える人が一人でも多くなれば、世界は良い方向へ向かうのではないでしょうか。

雲鶴の島村さんは正にそんな方で、過去にもブログで書きました。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

この過去投稿の中で、核になる部分を再度抜粋します。

天然真昆布は大阪の味の決め手だが、ないなら仕方がない、他の食材を探そうと考える料理人も少なくない。他の産地の昆布に代えるという人もいる中で、島村さんは釈然としないものを感じていたと言う。

「『これまで昆布のうま味に頼りすぎていた』と皆さん口々に仰るのですが…。でも、ほうっておいて昆布は育つものではない。里山再生と同じく、海の中を人の手で育てていかないと復活は難しい」と島村さん。

「函館の産地に再生をして欲しいと願うなら、料理人は真昆布が必要だと伝えなければいけない。そのためには、他の食材で代用するのではなく、真昆布を使い続けることが大事だと思う」と話す島村さん。穏やかな口調ながら、揺るぎない思いが伝わってくる。

 

このようにに言っておられたわけですが、言うだけでなく早くも行動に移す島村さん。

自ら、今回の産地訪問への参加を買って出て下さいました。

 

「良い昆布が採れない」という現状を受け、その解決策を昆布以外のところに求めるならば、状況は加速度的に悪くなるようにも思えて心配で、島村さんのようなお考えの方は本当に有り難いです。

 

「文化の担い手」。

大変なところもありますが、とても素敵な役割だと思いませんか?

私共に関しても、昆布屋のような斜陽業界、経済的な利益のみを求めてやれるようなものでは決してありません。

こんぶ土居ウェブサイトのトップページにも、以下のように書いています。

こんぶ土居では、伝統ある大阪の食文化を守り育て、本物を次代に伝えることが私どもの使命だと考えています。

www.konbudoi.jp

 

10月の産地イベントについては、また事後報告を、このブログでしたいと考えています。

 

(了)

「十倍出し」の浮遊物について

 

さて、過日も書きましたように、「十倍出し」シリーズの新製品を開発中です。

konbudoi4th.hatenablog.com

一切の動物性原料を使用しない「純植物性十倍出し」ですが、この製品は従来のものに比べて浮遊物が出やすいようです。

干し椎茸を多く使っていることが理由でしょうか。

 

本日の投稿のテーマは、液体の製品に発生することがある浮遊物や沈殿物についてです。

 

まず、写真をご覧下さい。

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試作品を撮影したものですが、多くの浮遊物が見えます。

人によっては、異物混入のように見えるかもしれません。

しかし、瓶詰時には濾過をしていますので、その段階では一切浮遊物などないのです。

最も近い存在はは、赤ワインの「澱(おり)」でしょうか。

瓶詰時には見えない微細な成分が、時間の経過と共に凝集し、徐々に目に見える浮遊物となるわけです。

 

 

こういった浮遊物が、消費者の方々に、視覚的に良い印象を与えないことは重々承知しております。

しかし、このままの状態で販売します。

 

多くの他社製品で、こういった浮遊物や沈殿がないのは、高度な濾過をしているためでしょう。

時には食品添加物を使用して、浮遊物の発生を防ぐようです。

この場合でも、「加工助剤」との認識で、表示義務がありません。

(詳細は、下記の過去投稿をご参照下さい。)

konbudoi4th.hatenablog.com

 

こんぶ土居製品には、表示義務の有無にかかわらず一切の食品添加物を使用しませんし、良い味わいの豊かさを保つためにこのままの状態で販売を続けます。

幸いにしてこの浮遊物、振れば分散して見えなくなります。

瓶の上部に貼り付けたシールでご説明しております通り、よく振ってお使いいただけると幸いです。

 

高度な濾過をすることで、見た目はクリアになりますが、味は確実に痩せるのです。

こう考えると、美しいとは言えない見た目も、なんだか好ましいもののように感じませんか?

趣旨をご理解いただき、できるだけ多くの方に賛同していただけると嬉しいです。

 

実は、今回のテーマは、過去にも書いております。

一部重複する内容もありますが、下記、ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

(了)

『純植物性十倍出し』開発の経緯

販売を開始して40年近くが経過し、ロングセラー商品となった「十倍出し」。

世間に多く流通する所謂「だしのもと」に「本物」と呼べそうなものが無い当時の背景で、三代目が「便利な本物」というキーワードの元に開発したものです。

以後、改良を続けながら現在までつくり続けてきたわけで、ある意味私共の看板商品的でもあります。

konbudoi.shop-pro.jp

しかし近年、この製品をつくり続けるにあたり、どんどん逆風が強くなってきています。

その解決策の一つとして「純植物性十倍出し」の開発を始めたわけですが、本日はその動機について、書き記します。

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段落としましては、【現在の原料調達状況】、【できるだけ価格を上げたくない理由】、【伝統的精進だし】、【ヴィーガン対応、昆布の価値】、【まとめ】

と続きます。

 

それでは、

【現在の原料調達状況】

現在、「十倍出し」は二種類の製品をご用意しています。

高級版の「本格十倍出し」と廉価版「標準十倍出し」です。

前者は昆布と鰹節を原料に、後者は昆布と鰹節と煮干しを使用しています。

つまり、原材料の全ては海産物なのです。

 

北前船の昔から大阪の昆布文化を支え、最高級品とされた「真昆布」。

このブログでも、天然真昆布の常態化した大凶作は、何度もお伝えしている通りです。

今年に至っては二年養殖の真昆布すら大変な希少品と言える状況で、世間に流通する真昆布は一年養殖(促成)ばかりになってしまいました。

こうなると、良い原料昆布の入手にも大きな問題が出てきます。当然価格も高騰します。

 

この状況は鰹節でも煮干しでも同じで、徐々に入手困難、価格高騰が進んでいます。

特に今年は、カタクチイワシの漁獲量が激減し、煮干しが大幅に高騰しました。

 

「環境悪化」と「一次生産者の人口減少」、この二つの時流の中で、こんな傾向は今後益々厳しくなっていくように思います。

 

原材料の調達コストが上がれば、私共で「値上げ」をする必要が出てきます。

思えば「十倍出し」も、昔と比べると高くなりました。

 

 

【できるだけ価格を上げたくない理由】

前述のように、原料が大きく高騰すれば、製品価格を上げる他ないわけです。

しかし、経済が停滞する日本でこれ以上値段が上がると、もはやそれは「特に経済的に恵まれた一部の方への製品」となってしまうように思います。

 

先日、キャビアの生産者の方にお会いしましたが、キャビアなど庶民が日常に食べるものではありません。

お金に余裕があって食べたい方が食べれば良いのだと思います。

こういった製品は、価格が高くても特に問題ないでしょう。

 

しかし、「だし」を同様に考えて良いのでしょうか。

一昔前までは、ほとんどの一般家庭に「本物のだし」があったわけです。

それが失われていくことを、私はできるだけ避けたいと考えているわけです。

ずっと昔から、こんぶ土居がウェブサイトや印刷物で、以下のように書いてきました。

 

『こんぶ土居では、伝統ある大阪の食文化を守り育て、本物を次代に伝えることが私どもの使命だと考えています。』

 

伝統的食文化を守ることが私共のミッションです。

一人でも多くの方に、うまみ調味料に依存しない「伝統的な本物のだし」を使っていただくために、できるだけ価格を抑えたいと思っています。

 

 

【伝統的精進だし】

前述のように、海産物の高騰によって原料価格が上がっているわけですが、日本には昔から植物性のだしがあったはずです。

主に仏門の方々に利用されてきた「精進料理のだし」です。

当然、動物性素材は一切使われません。

精進料理のだしの素材として大活躍なのは、昆布と干椎茸です。

つまり、開発中の「純植物性十倍出し」は、伝統的な精進料理に長く使われてきたものに立脚していると言って良いと思います。

 

この場合、鰹節と煮干しは使いませんので、そちらの価格高騰の影響は受けません。

椎茸も良いものは非常に高価格ですが、こちらには簡単な解決策があるのです。

 

それは「椎茸軸」です。

椎茸そのものを食べるのでなく、美味しい「椎茸だし」が必要であるのなら、軸でも問題ありません。

そして、「軸は市場で余りがち」です。

それは価格が証明しています。

軸の部分も食べられないわけではないのですが、原木栽培の場合は特に硬く、あまり人気は無いものです。

だからこそ価格が安いのです。

この、利用価値の低い原木椎茸の軸を使って製品を作れば、社会的にも良いことのように思います。

 

できるだけ多くの方にお使い頂けるようにするため、可能な限りの低価格を目指しているわけですが、そこに椎茸軸が大いに活躍してくれます。

 

 

ヴィーガン対応、昆布の価値】

健康に関することだったり、環境問題や、世界人口の増加を踏まえた社会課題、理由は様々ですが、世界的にヴィーガン人口が急増しています。

私も、持続可能性の観点からは、これまで同様の動物性食品の利用には限界が来ると考えています。

 

そんな背景も関係しているのでしょうか。

実は今、「野菜だし」が大流行です。

「べジブロス」などとも呼ばれます。

製品としても、本当に多くのメーカーが作るようになりました。

 

昆布屋である私共がつくる「純植物性十倍出し」ですから、当然味のベースは昆布であり、原材料の最大配合割合を占めます。

そこに、干し椎茸と野菜の味を補うことでの製品化を目指しています。

言うなれば、「伝統の精進だし」と「現代のべジブロス」の融合、でしょうか。

 

開発の過程で、改めて強く感じたのは、「昆布の力」です。

他社の「野菜だし」製品も、たくさん購入して参考にしましたが、私は多くの他社製品を「おいしい」とは思えませんでした。

大変失礼ながら、逆に「よくこんなものを売ってるな」と思う製品が非常に多かったです。

その差を生んでいるものが、やはり「良い昆布の味」の有無だと感じています。

 

やはり伝統の力は偉大です。

なにしろ日本人は昔から煮干しや鰹節でだしをとってきたわけです。

それは、「おいしいから」でしょう。

宗教的禁忌のある仏門におられる方は、精進だしとして「昆布と干椎茸」を長い間使ってきたわけです。

それを簡単に「野菜」だけで代替してしまおうというのは、なかなか無理があるように思います。

 

【まとめ】

「昆布ってすごいなぁ」と、改めて感じます。

まだまだ開発段階であり、これから微調整や改良を続けますが、現状でもなかなか良い品質に仕上がってきています。

時代の要請に合う良い製品になるよう、引き続き努力します。

なんとか、多くの方に支持される良い製品になると良いのですが。

ご期待下さい。

 

(了)

昆布に除草剤?昆布漁師オカヤマジュンヤさん

 

過日、私共の店舗に北海道からの訪問客がありました。

当日は私が不在だったため、店舗スタッフが対応させて頂いたのですが。

それが、タイトルに書いた、黒口浜真昆布の産地、北海道の椴法華にて昆布の漁師さんをされている「オカヤマジュンヤ」さんの奥様でした。

(ご自分で「オカヤマジュンヤ」とカタカナ表記されていることが多いですが、以後「岡山さん」で)

 

実は、昆布業界において、岡山さんはちょっとした有名人。

私も存じ上げていました。

知っていたどころか、今年の北海道出張時に、訪ねて行くつもりにしていた方です。

そんな方が、向こうから来て下さったわけですから、面白いものです。

 

岡山さんが、他の漁師さんと何が違うか。

まずは、こちらのウェブサイトを見ていただければ分かるかと思います。

www.junya-okayama.jp

昆布漁師さんが自分で商品をプロデュースして販売する事例は、まだまだ少ないものですが、「千切りビストロ昆布」と名付けられた、細切りのサラダ昆布のような製品が看板商品。

岡山さんのサイトの説明によれば、

『通常の生育期間の半分以下で水揚げした身の柔らかな若い昆布を使っています。
茹でて細く麺状に刻みシート状にして乾燥させたものを調理に使いやすいようコンパクトにカットしました。サラダやお刺身、パスタ、味噌汁など、さまざまなお料理にお使いいただけます。』

とのことです。

函館空港売店で撮影した、岡山さんの製品「千切りビストロ昆布」の写真)

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こういうジャンルの製品は、大阪の伝統的な昆布文化とは違いますが、新しい食べ方として、とても魅力的なものです。

 

岡山さんと言えば、もうひとつ大切なことは「干場への除草剤不使用」のお取組みです。

これについては、正しい理解をしていただく必要がありますので、次の段で詳しくご説明します。

 

『除草剤不使用の目的』

昔ながらの昆布の天日乾燥の際、砕石や砂利を引いた「干場(かんば)」に昆布を敷き並べます。

ちょうど、こんな風景ですね。

この砕石の下は、土だったりします。

雑草の種などが風に乗って運ばれ、砕石の隙間から下へ入り込むと、芽を出して雑草が生えることもあるわけです。

せっかく砕石を敷いたのに、雑草が伸びては困りますので、漁師さんが除草剤を撒く場合があります。

 

岡山さんは、それを問題視され、一切除草剤を使わずにお仕事をしておられるのです。

除草剤を使用することの最も大きな問題点は、海洋環境を汚染するリスクです。

撒かれた除草剤は、雨などで最終的に海に流れ込むこともあるでしょう。

こういった可能性には、当然注意が払われるべきであって、岡山さんのお取組みは本当に素晴らしいと思います。

 

それとは別の観点として。

消費者の方々のご心配として「その除草剤成分が昆布に付着して、安全性に問題が出るんじゃないか」とのお声もあるでしょう。

これについては、まず「天日乾燥」と「機械乾燥」に分けて考える必要があるかと思います。

前述のように「干場」に昆布を敷き並べるのは、天日乾燥の場合です。

機械乾燥では、このように昆布を吊るして乾燥室に入れる場合が多いので、干場に昆布が触れることはありません。

 

では、天日乾燥なら、どうでしょうか。

「そんなリスクは全くない」とは申し上げられませんが、基本的には心配する必要はあまり無いかと思います。

 

当然ですが、干場が数日で雑草まみれになるようなことはありません。

ですので、夏の昆布漁の時期に除草剤を撒く漁師さんなど誰もいないと思います。

撒くとしたら、「シーズンオフに」です。

「シーズンオフに撒かれた除草剤成分が干場の表面に残留し、天日乾燥時に昆布に成分が移る」というリスクも、皆無だとは言えないでしょう。

ただ現場を見ている私の感覚で言えば、「農作物に使用する農薬などに比べると、遥かにリスクは少ない」ということだけは申し上げられると思います。

一方、理解が足りず過度に不安がったり、「一般的な昆布は除草剤で汚染されているリスクがあって危険なんだ!!」と言った、除草剤ネタを利用した奇妙なマーケティングに走る業者も出てくることが予想されますし、冷静なご判断を頂けると嬉しいです。

 

古い時代には、海水を撒くことで雑草が生えるのを防いだそうです。

人力でこの作業をするのは、なかなか骨が折れますが、多くの漁師さんが取り入れてくれると嬉しいです。

 

岡山さん方でも砕石を敷いたスペースはありますが、昆布を機械乾燥されますから、そもそも昆布が干場に触れることはありません。

更に岡山さんは、「昔ながらの天日乾燥にする、意味が分からない」とまで仰います。

だいたい、私も同じ考えです。

岡山さんがそう考える最大の理由は、「衛生面」です。

干場に敷き並べる場合には、様々な外的なリスクがあるのはご理解いただけるかと思います。

例えば、あまり言いたくないですが、空に鳥が飛んでいるのならば、何か落とすこともあるでしょう。

こんぶ土居で販売している昆布も、ほとんどは機械乾燥されたものです。

 

食品衛生に求められるものがどんどん厳しくなる時代背景です。

「昔ながらの天日干し」というイメージだけを表面的に捉えず、「良し悪し」のところがあることは、多くの方にご理解いただきたいです。

 

昆布の天日乾燥と機械乾燥については、過去投稿でまとめています。

ご興味あれば、こちらもご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

まぁなにしろ岡山さん、面白い方です。

作業風景も見せていただきましたが、私が過去に見たどの漁師さんよりも丁寧なお仕事ぶりかと思います。

ご自身の仕事への誇りが滲み出ています。

こんな方が増えると、昆布漁業も良い方向に変わっていくんでしょうけど、岡山さんは「良い意味で異端児」です。

ただ、昆布再生の取り組みも一緒で、ひとりでは動かないわけですから、大きな輪にしていく必要があります。

岡山さんの考えに賛同する漁師さんが増えると良いですね。

 

余談ですが、岡山さんのサイトには、

『香害対策のため、普段の洗濯時に香り付き柔軟剤不使用。(環境のため柔軟剤自体も不使用です)』

なんて書いてあります。

こんなのは、個人的に大いにツボにはまり、面白くてしょうがないです。

私も全く同感で、奇妙なケミカルな香りを纏って平気な人が多い昨今、なんとかならないものかと思います。

 

 

岡山さんのお考えと同じ趣旨に立って、私が書いた2020年10月17日の過去投稿「石けんを売る昆布屋」も、是非ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

少数であっても、共通の価値観で理解し合える漁師さんがいて下さるのは、本当に有難いものです。

(了)

共立女子大学の川上浩教授を救いたい

 

(下記の、前回投稿の続きです)

konbudoi4th.hatenablog.com

 

さて、前回のブログ投稿でお知らせしました、共立女子大学の川上浩教授との一悶着。非常にめんどくさいトラブルが舞い込んだわけですが、多くの方から応援のコメントをいただきました。ありがとうございます。とても心強いです。

 

 

最初に川上教授について書いた5月1日の投稿も、前回7月26日の投稿も、私は言わば「怒りの感情」と共にブログを書いたのです。

5月の投稿の際には、大学教授という権威ある立場でありながら、不正確な情報を出したことに対する怒り。

前回投稿では、指摘されたことに真摯に向き合うことなく、言わば「逆ギレ」に近い形で、抗議文を送りつけてきたことに対する怒りです。

しかし、「怒り」の感情というものは、時と共に収まるものです。

 

本日の投稿では、前半部分として私の感情の変化を。

後半では、この一件の着地点の模索について書きたいと思います。

何の生産性も無いブログ投稿で甚だ申し訳ありませんが、興味を持って下さっている方も多いので、書き記しておきます。

 

 

『私の感情の変化』

冒頭で書きました通り、怒りに満ちていた私の感情にも変化が出てきました。

簡単に言えば、なんだか川上教授が「かわいそう」になってきたのです。

 

ご興味あれば、「共立女子大学」「川上浩」という二つのキーワードでGoogle検索してみて下さい。

まぁまぁ上位に、私の例のブログ記事が来るのです。

その少し下には、私の投稿を読んで同じ想いを抱いてくれた別の昆布屋さんのブログも出てきます。

これは大学の研究者にとって非常に「不名誉」なことであり、目障りなのは間違い無いでしょう。

今後の学者としての活動に、何らかの支障が出てくることも考えられるかも知れません。

 

そうなれば、それをなんとかして排除したいという願望を持たれたとしても、一切の不思議のないところです。

しかも、共立女子大学の公式サイト上に出ていた記事の事ですから、言ってみれば大学へも不名誉な影響が及んだと考えるなら、尚の事でしょう。

こんな現状を川上教授の立場になって考えれば、「ちょっとかわいそうだなぁ」という気持ちにもなっています。

 

 

『この件の落としどころ』

なにしろ川上教授は、私のブログを読んで、記事の修正や削除、謝罪文の掲載を要求してきたわけですから、引き続き私のブログをチェックしていると考えるのが普通でしょう。

そこで、川上教授も本日の投稿を読まれるという前提で、解決策の提示をしておきたいと思います。

 

まず、私は個人攻撃をしたいわけでは決してありません。

また、私が取り上げた共立女子大学のウェブサイトは既に削除されているわけですから、今後の誤情報の拡散のリスクはありません。

 

そこで、ある条件が満たされれば、私の5月1日のブログ記事を、川上教授の個人名や大学名を伏せる形で、書き換えたいと思っています。

そうなれば、以後、川上教授に関する不名誉な記事が公衆の目に触れることはなくなります。

しかしそれは、「下記の条件が満たされれば」です。

 

『必要条件』

まずは何より、問題のある記事を世に出したことを反省していただくことです。

更にその記事を「削除」して証拠隠滅のような方法を取ったことも、大いに反省していただく必要があるかと思います(繰り返しますが、私は魚拓を取っていますから、そんなことで逃げられはしません)。

その上で、私への「逆ギレ抗議文」を取り下げる旨を記載した書面を、私宛に送付することも必要条件としておきます。

 

『推奨条件』 

川上先生のご専門は「応用生物化学,食品生化学,食品機能,食品安全性,食生活と健康」、こういった領域であるようです。

昆布の専門家ではありません。

どうせ例の記事も、どこかで聞きかじってきたものを、たいした検証もしないまま書いてしまったものでしょう。

川上教授が少しでも謙虚さを持ち合わせているのであれば、私に昆布の話を聞きに来るべきだと思います。

まだまだ私も「分からないことだらけ」ではありますが、20年以上昆布とひたすら毎日向き合ってきた者として、川上教授とは比較にならない深さで、昆布の事を語れる自負はあります。

これは、家政学の教授としての川上先生の今後を考えても、間違いなくプラスになることで、つまらないプライドを捨てさえすれば、失うことなど何も無いのです。

 

 

『まとめ』

現状のように、自らの問題点を省みることなく勝手な抗議文を送りつけてくるような態度を続けるのであれば、ますます傷口が広がり、恥の上塗り、不名誉な情報が追加されて墓穴を掘り続ける結果となることでしょう。

繰り返しますが、私は川上教授の個人攻撃をしたいわけでは決してありません。

本日の投稿を読んだ川上教授が、いつか私を訪問して下さって、十分な理解を得ていただき、笑顔で握手ができる未来を夢想しています。

 

最後に、私の知人の料理人さんが、「抗議文送り付け」の件について書いてくれたコメントを紹介しておきます。川上教授に、しっかりと読んでいただきたい。

 

ほんと最高学府にて人を指導する方の行いとは悲しいものです。
批判と賛同とか、テレビの討論番組のことくディベートではないのですから、、、。
そもそも議論とは意見の異なる内容をお互いに精査してより良い結果を求める、というのが大前提だと私は思います。
なので賛同すると批判そのものが意味のないことで、今回もここまで行動を起こすのならまずは当人が直接より真理にちかづくために議論すべきなのはないでしょうか。
学問を探求するならば、個人の名誉より良い探求を優先すべきでしょうに、、。

 

(了)

共立女子大学の川上浩教授より抗議文が届く

 

『誰かを批判する』という行為は往々にして、『その人を敵に回す』という残念な結果に繋がるものです。

敵が多いのと、敵が少ないの、その両者を比較すれば、後者の方が得をすると普通は考えられるでしょう。

そんなことも関係してか、今は『誰かを悪く言わない』世相かと思います。

 

しかし、この『こんぶ土居店主のブログ』、軋轢を生みそうなことばかり書いています。

私だって、敵なんか作りたくありません。

それでも、やはり世に広がる誤情報を正すことも自分の役目だと考え、少々の摩擦が生じることを恐れず情報発信を続けてきました。

 

過去投稿の中で最も妙な物議を醸したのが、下記のものです。

konbudoi4th.hatenablog.com

この投稿では、一部の界隈で耳にする『昆布も発酵食品だ』との説に対して、異論を書きました。

 

その中で、引用する形で問題を指摘したのが、今日の投稿のタイトルの共立女子大学の川上浩教授です。

この川上教授から先だって、私宛に配達証明郵便で抗議文が届いたのです。

 

その具体的な中身に触れる前に、本日は抗議文の概要をご紹介します。

要約すれば、私が書いた内容に対し、川上教授の反論が展開されており、私のブログ記事の修正や削除と共に謝罪を求めるものでした。

応じない場合には、「公的機関における対応に移る」と脅されています。

 

それはさておき。

過去投稿で私がリンクを貼った共立女子大学のサイト、見たくないですか?

内容を確認したいですよね。

しかし残念ながら、それはもうできません。

削除されているからです。

 

内容に恥じるところが無いなら、削除などする必要は無いはずです。

現に私のブログは、敢えて1文字たりとも修正を加えることなく、現在も読んで頂ける状態にしています。

こちらにブログ記事の削除を要求しておきながら、『実は削除したのは自分の方だった』というオチですから、これはもう笑い話以外の何物でもありません。

 

しかししかし。

こんなことは、当初から想定の範囲内

削除して逃げられることなど想像してましたので、共立女子大学の当該サイトは完全保存して手元にデータを持っています。

所謂『魚拓』ですね。

 

まぁ、具体的な中身に触れるまでもなく、こんな対応を見れば、『お察し』がつくでしょう。

ちなみに、今回こんなことを書けば、恣意的に修正を加えた上で再アップしてくることも考えられますので、本日2023年7月26日現在、リンク先が削除されている証拠も残しておきます。

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さてさて、今後どんな展開になるのでしょうか。

お楽しみに。

改めて共立女子大学に電話して、川上教授とお話する方向で進めます。

それとて、先方が受けてくれれば、のハナシですが。

やれやれ。

 

人とは仲良くしたいものですね。

ヘンな摩擦は、できるだけ少ない方が嬉しいです。

それでもやはり、今後も書くべきことは書くようにしますよ。

 

(了)

もはや二年養殖でも貴重品(ほぼ昨年のコピペ)

昨年の同時期に書いた以下のブログと、今年もほぼ同じ内容です。

konbudoi4th.hatenablog.com

引き続き海の環境は良くありませんで、真昆布の生産は大問題を抱えています。

7月は昆布漁のシーズンですので、産地からの生産量予想情報が出て参りました。

天然物の真昆布が採れないのは、ここ数年同じなのですが、養殖真昆布の生産は比較的安定しています。

しかしそれは、一年養殖(促成)が安定しているだけの話で、天然昆布同様に二年かけて育てる二年養殖昆布は非常に少ないのです。

献上昆布たる、旧南茅部町域の真昆布に限って言えば、以下のような衝撃的内訳(概算値)です。

天然昆布 0.5%

二年養殖昆布 1.2%

一年養殖昆布(促成) 98.3%!!

 

(ちなみに昨年のブログに書いたは数字は下記の通り。今年とほぼ同じでしたね。)

天然昆布 0.3%

二年養殖昆布 1.6%

一年養殖昆布(促成) 98.1%!!

 

こんぶ土居の店頭で、だし昆布として販売している真昆布製品は、天然物と二年養殖ですが、もはや二年養殖でも非常に希少品だと言うことがお分かりいただけるかと思います。

逆風に晒されるのがデフォルトの昆布業界。

しかし、なんとかするつもりではいるのです。

 

(了)