こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

嘆かわしい報道

画像は、本日7月16日付の北海道新聞の記事です。

何か誤ったことが書かれているわけではありませんが、本当に残念な記事です。

タイトルからして、「天然マコンブ大きい」、ですので。

こんな記事、豊漁をイメージさせませんでしょうか。

取り上げられている南茅部地区では、以前は数百トンの天然真昆布の水揚げがあったものが、現在は数トンに激減しているわけです。

そんな危機的状況が、この記事から読み取れますでしょうか。

新聞記者さんも、悪気がある訳ではなく、単純に過去からの推移と背景を御存知ないのだと思います。

それなら、取材を受けている漁業者が正しく説明しないといけないわけですが、残念ながら未来を考えない人が多いのでしょう。

悲しい現実です。

 

もはや二年養殖でも貴重品

あまり暗いことばかり書きたくないので、今回のブログは短くします。

引き続き海の環境は良くありませんで、真昆布の生産は大問題を抱えています。

 

7月は昆布漁のシーズンですので、生産量予想が出て参りました。

天然物の真昆布が採れないのは、ここ数年同じなのですが、天然昆布同様に二年かけて育てる養殖昆布ですら難しくなっている今年の漁獲量予想。

献上昆布たる、旧南茅部町域の真昆布に限って言えば、以下のような衝撃的内訳(概算値)です。

天然昆布 0.3%

二年養殖昆布 1.6%

一年養殖昆布(促成) 98.1%!!

 

こんぶ土居の店頭で、だし昆布として販売している真昆布製品は、天然物と二年養殖ですが、もはや二年養殖でも非常に希少品だと言うことがお分かりいただけるかと思います。

逆風は、強さを増すばかり。

さてさて、困ったものです。

 

(了)

 

のり佃煮、原材料表示のナゾを解説

 

 

私共は昆布屋ですが、海苔の製品も販売しています。

「無酸処理焼海苔」がそれに当たりますが、「酸処理」は環境問題が関係します。

もしご興味あれば、過去投稿をご参照下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

海苔の佃煮も製造しているのですが、そちらも同様に酸処理していない海苔を使用していますが、世間を見渡しても同様の製品がほぼ皆無ですので、少し自慢です。

konbudoi.shop-pro.jp

 

 

この海苔の佃煮の原材料は下記の通りです。オンラインストア上で詳細を公開しています。

麦芽水飴(大阪府東大阪市製造)(原材料:甘薯澱粉麦芽
丸大豆醤油(和歌山県東牟婁郡製造)(原材料:丸大豆、小麦、塩)
たまり醤油(三重県鈴鹿市製造)(原材料:丸大豆、塩)
干海苔(伊勢湾産)
濃縮だし(大阪府製造)(原材料:真昆布、鰹節、鰯煮干し)
純米酒(長野県佐久市製造)(原材料:米、米麹)
伝統味醂岐阜県加茂郡製造)(原材料:もち米、米麹、米焼酎(乙類))

 

 

それに対して、近所のコンビニで比較対象として買ってきた製品の原材料表示は、下記の通りでした。

のり(国産)
しょうゆ(小麦、大豆を含む)
水飴
砂糖混合ぶどう糖果糖液糖
魚介エキス(かつお、ほたて)
寒天
/ 
調味料(アミノ酸等)
安定剤(タマリンド
カラメル色素

 

ご注目いただきたいのは、原材料表示の中の海苔の登場順位です。

使用量の多い物から順に記載する決まりになっていますが、こんぶ土居製品では海苔は4番目、コンビニの製品ではトップに出てきます。

これは、こんぶ土居製品は、少ししか海苔を使っていないということでしょうか。

そんな風にも読み取れなくも無いように思います。

これには、ある「からくり」が関係しています。

 

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms101_210317_12.pdf

消費者庁の上記サイト「食品表示基準Q&A」の43ページに、下のような記載があります。

 

(加工-57)原材料の表示順は、製造時の原材料配合割合に従って決定するので
すか。

(答)

~ ~ ~

原料の入手時には濃縮又は乾燥した形であっても、製造の際に還元される原材料について、内容物を誤認させないよう注意しつつ 還元した状態又は乾燥前の状態に換算 、 した重量順で表示することができます。

 

 

こんな制度が存在するのです。

つまり、のり佃煮で言えば、使用しているのは乾燥している海苔であっても、水分を含んだ状態に換算して良いということです。

この制度によって、コンビニの海苔佃煮が、上記の表示順位になっているのでしょう。

実際に、干した海苔をそのまま使えば、醤油より多い海苔の量などで決して製造できませんので、私の推測に間違いはないと思います。

原材料名の中に寒天やタマリンドが出てきますが、両方とも「ゲル化」「増粘」の役割を果たしますから、少量の海苔しか使用せず製造することも可能なはずです。

昆布の佃煮等でも、同じ手法が使えそうですね。

 

 

こんな制度があることを、一般の方はご存知無いので、この表示方法が、消費者への情報提供の手段として適切であるのかは、少し疑問です。

そんな考えもあって、こんぶ土居製品には、「海苔」と書かずに「干海苔」と書いているわけです。

ささやかな抵抗の姿勢ですが、「干」という文字から、水分を含んでいない海苔であることが、ご理解いただけると嬉しいです。

 

 

ご紹介したコンビニの佃煮、せっかく買ってきましたので、開けてみました。

味をブログで書くのは難しいですから、見た目の違いを載せておきます。

違いが判別し易いよう同じ袋に詰め、透けるよう押し広げて、並べて写真を撮りました。

左がこんぶ土居製品、右がコンビニで買ってきたものです。

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海苔は海藻なのですから、完全に溶けてしまうはずは無いのです。

コンビニのものは完全なペースト状ですが、海苔を細かく粉砕してから製造しているのでしょうか。

それ自体は問題ありませんが、こんぶ土居製品は、特に「なめらかさ」を求めて作ってはいません。

少し食感に近いものが感じられた方が良いように思うからです。

同じように見える海苔の佃煮でも、意外に違うのをご理解いただけましたでしょうか。

 

 

原材料の話に戻りますと、こんぶ土居の海苔佃煮で使用割合が最も多いのは、上記の通り麦芽水飴です。

甘味をつける目的で使用しています。

水飴の業界も、なにやら怪しいものです。

そちらについては後日、基礎知識を改めて書きたいと思います。

ご興味あれば、ご一読下さい。

 

(了)

 

宮井一郎さんの料理に見る「食の正しさ」

 

先日、ある方からお誘いいただき、大阪の島本町にあるイタリア料理屋さんへ行きました。

ジビエ(狩猟によって捕獲された野生の鳥獣の肉)を専門に扱うお店です。

ご主人の宮井一郎さん(以下、一郎さん)は、料理人であり同時にハンターで、お店の近くの山に罠を仕掛け、シカやイノシシなどの獲物を調理しておられます。

 

一郎さんのことは、書くと長いので、ネット上の記事をご紹介しておきます。

下のインタビュー記事を、是非ご一読下さい。

cookbiz.jp

 

一郎さんの料理は、どれもこれも本当に美味しく、そこにはタイトルに書いたように「食の正しさ」のようなものを感じます。

所謂、軽薄なガストロノミーの世界が追求する「美食」とは明確に一線を画すものです。

 

ジビエはくさいもの、とお考えの方もあるかも知れませんが、「正しい処理」をしたものは、くさくなんて無いのです。

どの肉でも「香り」と「臭み」があるかと思いますが、一郎さんの料理に存在するのは前者です。

例えば、普通に市販される、牛肉、豚肉、鶏肉は、くさみが出にくいように品種改良されてきたものでしょう。

しかし、その一方で「正しくない飼育方法」によって、本来その動物が持っている個性とは違った「おかしな風味」が発生しているように思います。

 

例えば、普通のスーパーなどで安価に売られているブロイラーをシンプルに調理したものは、私はかなり抵抗があります。

いやな風味を感じるのです。

香りの強い副原料で味をつければ気にならないですが、例えば「塩をかけて焼いただけ」なら、かなり厳しいです。

先にご紹介したインタビュー記事内の一郎さんの言葉を借りれば、

『畜産はやっぱりどうしてもストレスがかかって臭くなるんです。人間でもそうやけど、牢屋に入れられて、好きなものを食べさせてもらえない、お風呂にも入れない、排泄と寝る場所が同じで、しかもいずれは殺されるということが分かっていたらストレスかからへん?

ストレスがかかると体臭が出ると言われているから、どうしても独特の肉の臭さを僕は感じるんです。だから僕の獲った肉を食べてもらったら分かるけど、全然臭くないんです。なんでかというと、死ぬ瞬間まで“生きようとしている”からね。それを経験したら、僕自身も生き方を変えたいと思います。死ぬ瞬間までストレスを抱えずに生きたいなあと。』

地球上に60億人がいる中で、全員が食べていくための方法として畜産は当然必要です。僕のようなやり方が、まかり通るとは思ってない。でも人間は生き物を殺すことでしか生きていけない、その事実を伝えていきたいとは思っています。コンビニでもスーパーでも全部殺されたものが並んでいるわけで、植物も生きているからどんな人も絶対に何かを殺しているわけで、それを猟やジビエを通して実感してほしいんです。

 

本来の食性と違った産業効率ばかりを考えた飼料で育ったり、飼育環境が悪いことに起因する病気を防ぐため投薬されたり、そんな理由によっても異常な臭気が発生するのでしょう。

 

食にも『正しさ』がある!

今回のブログでお伝えしたい内容は、これだけです。

地球人類を飢えさせないために、一般的な畜産や、農薬や化学肥料を大量に使う農業も必要でしょう。

それでも、少なくとも両者の違いだけは多くの方にご理解いただきたいです。

食にまつわる社会問題からヴィーガンになる方々も増えていますが、「命を考える」ことについても、一郎さんのお仕事から感じるところは大きいです。

頭の中だけで考えた話と、実際に山に入って「自らの手で殺生」して得た一郎さんの感覚、やはり後者の方が価値が高いと思います。

 

 

一度、島本町のお店まで出かけて一郎さんのジビエ料理を食べ、慣れ親しんだ大量生産の家畜の味との違いから、正しい食について考えてみて下さい。

www.ristorante-conte.jp

これは昆布屋としての私共の仕事にも同じことが言えます。

うま味調味料や食品添加物を駆使してつくった味ではない「正しい昆布製品」を追求したいと思います。

もはや、求めるべきものは、主観的な「美味しさ」などではないのです。

 

余談ですが、一郎さんのお店で出てきたワインは、過去にこのブログで何度となくご紹介した、イタリアのナチュラルワインのインポーター「ヴィナイオータ」のものばかりでした。

たまたまでしょうか?

いえいえ、恐らく一郎さんとヴィナイオータさんのお考えが近いのでしょう。

こちらにも、同じく「食の正しさ」を感じます。

以下の過去投稿も、是非ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

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真昆布偏愛

昆布は、産地がどこであっても品種が何でも、大切な海からの恵みですから、全てが素晴らしい食品だと思います。

ただ、他の農作物と同じように、「名産地」や「昔から特に珍重されてきた品種」があります。

本日の投稿は、そんな内容です。

 

前半は、史実を含む社会的、文化的なお話を。

そして後半には、食品としてのおいしさの分析を軸に書きたいと思います。

 

 

一般の方が、普通のスーパーや食料品店で見かける昆布の品種は「真昆布」「羅臼昆布」「利尻昆布」「日高昆布」の四種類が主でしょう。

これらには、「その品種を好む消費地域」が存在します。

 

例えば沖縄。

1980年代まで、一人あたりの昆布購入量は、沖縄県が一位でした。

しかし意外なことに、沖縄では昆布でダシはあまり取りません。

「海の野菜」として、それ自体を食べるのです。

代表的なメニューは、細切りにした昆布と他の具材を炒め煮にした「クーブイリチー」などでしょうか。

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他にも、豚肉を芯に巻いた昆布巻きなども良く食されるようです。

こういった利用法に適した昆布は、前述の4種の中では日高昆布になります。

その他、同じ適性のある長昆布なども沖縄ではよく利用されます。

実際に沖縄の市場へ行きますと、日高昆布や長昆布が大量に販売されています。

 

 

本州に目を移しまして、北陸の富山県

富山も昆布文化の色濃い地域で、現在では消費量データを見ると、全国一位です。

この富山で盛んに使われるのが「羅臼昆布」です。

これには史実も大きく関係しています。

羅臼地方の大規模開拓は、江戸末期の安永年間に始まるのですが、その際、富山県から5万戸以上が開拓移民として北海道に渡り、羅臼での昆布漁業の発展に大きく貢献しました。

なんと実に羅臼町民の7割以上が富山県にルーツを持つ方だと言われています。

こんな歴史もあって、現在でも富山県羅臼昆布の消費や流通に大きな役割を果たしています。

 

 

新旧の消費量1位県のエピソードをご紹介しましたが、こんな内容も踏まえまして。

大まかで乱暴な分け方ですが、昆布の各品種と、それを特に好む土地柄の関係は、ざっと次のような感じです。

●日高昆布と沖縄

羅臼昆布と富山

利尻昆布と京都

●真昆布と大阪

 

このような結びつきは、非常に興味深いものです。

各地の食文化と、それに合った品種の昆布が使われてきた面があるのでしょう。

しかし、前述の4品種。

名前に、少し違和感を感じられませんでしょうか。

羅臼」「利尻」「日高」、これらは全て地名です。

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この流れでいけば、函館近郊の道南地方で産出する真昆布は「函館昆布」とでも呼ばれるべきものでしょう。

しかし、なぜか先人は、そう呼ばずに「真昆布」と命名したわけです。

産地名を冠することなく「真(まこと)の昆布」と呼んだ、このあたりに、先人が真昆布を他品種と分けて別格視していたことが伺い知れませんでしょうか。

 

 

実際に、この真昆布への特別な評価は「献上品」にも見ることができます。

江戸時代から、蝦夷地を治めた松前藩が朝廷や将軍家に上納する際には、常に真昆布が指定されてきたのです。

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(昭和初期の、献上昆布乾燥の風景)

その真昆布を、江戸時代中期以後は、大阪が独占に近い形で流通させるのですが、これには、有名な北前船のストーリーが関係しています。

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この図は、「西廻り航路」と呼ばれる、江戸中期の北海道の産物を運んだ交易船の航路です。

ご覧の通り、言わば終着駅が大阪であったのです。

西廻り航路を、今では「昆布ロード」と呼ぶこともあり、「天下の台所の、だし文化」に大きな役割を果たすことになりました。

品質の良い真昆布が、ほとんど大阪で消費され、全国的な流通が無かったのには、こんな歴史が関係しているわけです。

北前船の影響は非常に大きく、現在でも昆布文化の色濃い地域を見れば、そのほとんどが北前船の寄港地であった場所です。

 

こうして、日本の昆布流通の中心地となった大阪ですが、その名残は現代にも見ることができます。

例えば、あらゆる業界団体の本部は、ほぼ必ず東京にあるものです。

しかし、日本唯一の昆布の業界団体「日本昆布協会」の所在地は大阪です。

また、私共のような「昆布専門業者」が無数に存在したのが大阪で、その数は他県と文字通り桁が違うほどです。

昆布文化が濃くない地域では、乾物を扱う業者が「昆布も」売っている、そんな場合が非常に多いものです。

 

 

 

さて、歴史のお話しや、社会的文化的なことについては、これぐらいにして、ここからは、食品としての味覚的な違いを軸に書きたいと思います。

 

味については、お好みも関係して難しいのですが、言わば「公的見解」をご紹介します。

 

前述の「日本昆布協会」発行の業界向け情報冊子「昆布手帳」には、代表的な4品種の特徴を、以下のように書かれています。

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(冊子記載の順に)

●真昆布(白口浜天然元揃)

表皮は褐色で切口は白い。

だし汁の清澄さ、味わいの上品さから、最高級の昆布といわれている。

(以下、土居の注釈)

本日のブログのタイトルは、「真昆布偏愛」で、私が大阪の昆布屋として真昆布の価値を多くの方にご理解いただきたく書いているわけですが、「昆布手帳」内でも、真昆布が「最高級の昆布」となっています。

他の銘柄には、この「最」の文字がありません。

説明にあるように、味の傾向としては「上品で強いうまみ」と言えるかと思います。

例えば、だしを取るときには、所謂うまみ成分が多く含まれている必要がありますが、主たるうまみ成分のグルタミン酸量を見ると、羅臼昆布に次ぐ含有量を誇ります。

また「だし汁の清澄さ」と記載されている通り、色がつかず透き通った美しいだしになるところも特筆すべきところでしょう。

うまみ成分が多くとも、同時に雑味が多いのであれば好ましくありませんが、それについても「味わいの上品さ」と表現されています。

 

●みついし昆布

色は濃緑に黒みを帯びている。

だし昆布として多く用いられ、コクのある味で広く知られている銘柄のひとつ。

(以下、土居の注釈)

みついし昆布とは、日高昆布の正式名称です。この品種が日高地方で多く産出することから、日高昆布とも呼ばれるわけです。日高昆布の説明では、特に高品質であることを謳った文言は読み取れないものの、前述のように野菜感覚でそれ自体を食べる際には、食感も良く、他の昆布に無い魅力を発揮します。私共でも、昆布巻製品の原料として使用しているのは日高昆布です。

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●りしり昆布

表皮は黒褐色で真昆布に比べ硬い感じがする。

だし汁は清澄で香り高く、特有の風味が喜ばれる高級品。

(以下、土居の注釈)

利尻昆布については「だし汁は清澄で香り高く」と記載されている通り、濁りのない美しいだしになる場合が多いものです。

風味もくせがなく、上品な味わいだと思います。

ただ、うまみ成分の含有量で見ますと、先の真昆布や次の羅臼昆布に比べると少なく、少し厚みが弱いだしになりがちです。

 

羅臼昆布

表皮の肌色から黒口と赤口に区分される。黒口は半島突端寄り、赤口は半島南端寄りに比較的多い。

味が濃く、香りがとても良く名品の誉れ高い品。

だし汁が濁る欠点があるも人気が高く、道南の元揃に匹敵する高級銘柄。

(以下、土居の注釈)

羅臼昆布の説明には、「味が濃く」と書かれている通り、最も素晴らしい点は味わいの濃厚さでしょう。

グルタミン酸含有量で見ますと、他の銘柄を凌ぎます。

記載されている通り、だし汁が濁りがちな欠点はあったとしても、料理によってはそれが気にならない場合も多々あるかと思います。

「道南の元揃に匹敵する」と書かれていますが、道南の元揃とは真昆布のことです。

実際に、古くから真昆布と羅臼昆布は高級昆布の双璧で、他の品種とは一線を画す同じような高価格帯で取引されてきました。

 

 

以上が、昆布手帳の情報を元にした、各品種の味覚的な違いです。

良い昆布が備えているべき強いうまみと、雑味の少なさ、濁りの無い美しさ、それらを兼ね備えた真昆布の価値が、なんとなくご理解いただけましたでしょうか。

 

ただ注意すべきことは、この名声が獲得されたのは、かなり古い時代のことである点です。

その時代と現代で大きく異なることは、養殖昆布の存在です。

献上品に指定されたり、「真」の昆布と名付けられたり、そんな時代には養殖昆布は存在しません。

日本で養殖技術が確立されたのは昭和40年代です。

残念ながら、今の時代の「真昆布」は、ほとんどが養殖物なのです。

養殖昆布が悪いということでは決してありません。

しかし、天然昆布と明確に品質は違います。

また、養殖昆布には、天然昆布同様に二年かけて育てる「二年養殖」と、一年で出荷する「一年養殖(促成栽培)」があることも注目すべきでしょう。

近年、環境の悪化から天然真昆布が採れなくなって、道南地方の真昆布の生産量内訳は、ざっと以下のような割合でしょうか。

●天然真昆布  ほぼゼロ

●二年養殖真昆布 5%以下

●一年養殖真昆布 95%以上

つまり、「真昆布」と言えば、一般市販品は、ほとんどが一年養殖真昆布なのです。

一年養殖の昆布も決して悪いものではないのですが、それを見て真昆布の真価を理解したことにはなりません。

二年養殖であれば、天然昆布と比較的近いと言えるかと思います。

 

また、同じ真昆布でも採取地によって、品質差が意外に大きいものです。

これは古くから「浜格差」という言葉で表現されてきました。

 

長々と書いて参りましたが、本日の投稿は、地元大阪でも正しく理解されているとは言い難い真昆布の価値を、改めて知っていただきたいと思ってご紹介するものです。

本年開設を予定している「大阪昆布ミュージアム」も、「昆布の一般的なこと」と言うより、その名の通り「北海道の昆布と"大阪の"伝統食文化の関り」についてご紹介し、体験して頂く場です。

かつては、大阪名物と言えば昆布であったことなど、地元でも高齢者以外はほとんど誰も知らない現状。

分かりやすく情報発信ができる場所にしたいと思います。

 

冒頭にも書きましたが、全ての産地の全ての品種が、各地域の食文化に根差した素晴らしい昆布であるわけですが、その中でも歴史的に特に珍重されてきた真昆布の価値を多くの方にご理解いただけることを願っています。

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(献上昆布たる最上品位の真昆布の産地、川汲浜と、大阪の業者の売買契約を示す古い証文。大阪昆布ミュージアムでも展示致します。)

(了)

 

栄養強調表示についての問題提起(問題事例も紹介)

前回の投稿で、「無添加」という言葉が食品パッケージなどに書かれる際、特に取り決めがないので問題が発生していることを書きました。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

これは、栄養成分に関しても同じです。

消費者へ誤った伝わり方にならないよう、制度に決められた方法で表記する必要があります。

例えば、特定の栄養成分について「◇◇含有」とか「〇〇たっぷり」等といった表現を書く場合、これは「栄養強調表示」と呼ばれます。

こういった文言を表記する場合には、消費者庁の取り決めが存在しています。

 

東京都福祉保健局のウェブサイトが分かりやすかったので、ご紹介しておきます。

www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp

 

 

栄養成分を強調する場合、以下の三つのカテゴリーに分けて取り決めが存在します。

〇高い旨(例: 高○○ △△豊富 □□たっぷり )

〇含む旨(例: ○○含有 △△源 □□入り)

〇強化された旨(例: ○○30%アップ △△2倍)

 

例えば、ある飲料水のパッケージに「ミネラル豊富」と書くなら、上記の「高い旨」に相当し、下記のミネラル全てが、次の基準値を超えて含有している必要があります。

 

(100gあたり)

亜鉛  1.32mg、カリウム  420mg、カルシウム  102mg、鉄   1.02mg、銅  0.14mg、マグネシウム  48mg

(下記のサイトが引用元です。)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_201009_1.pdf

 

以上のことを踏まえまして。

ひとつ事例をご紹介します。

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これは、サントリーの「やさしい麦茶」という製品のパッケージの一部です。

ご覧の通り、大きな文字で「ミネラル」と書かれています。

これを見れば、普通の消費者は、この製品にはたくさんのミネラルが含まれ、健康に良い効果を及ぼしてくれることを期待するのではないでしょうか。

「ミネラル」の文字の横には「650!」と同じフォント、同じ文字色で書かれていますから、この数字がミネラル含有量と何か関係があるのではないかと考える方があるかも知れません。

 

しかし実際には、この製品には必要なミネラルなど皆無と言って良いのです。

それは、この製品の栄養成分表示を参照すれば分かります。

前述のミネラル6種類のうち、製品ラベルに表記されているものはカリウム、カルシウム、マグネシウム、の三種でした。

 

この3成分の製品100g中の含有量を、前述の基準値(高い旨の場合)と併記します。

カリウム  製品含有量1~10mg  基準値420mg

カルシウム  製品含有量0~1.0mg  基準値102mg

マグネシウム  製品含有量0~1.0mg  基準値48mg

 

ご覧の通り、全く基準値に達していません。

達していないどころか、ほとんど皆無と言って良い含有量です。

しかし、これは法に違反しているわけではないのです。

それには、次のようなカラクリがあります。

 

 

前述のように、栄養強調表示では、

〇高い旨(例: 高○○ △△豊富 □□たっぷり )

〇含む旨(例: ○○含有 △△源 □□入り)

〇強化された旨(例: ○○30%アップ △△2倍)

の三種が規定されていました。

逆に言えば、上記のような表現例を用いない場合、規制の対象外なのです。

ご紹介した、サントリーの「やさしい麦茶」は、「ミネラル」と書いているだけですから、「高い旨」にも、「含む旨」にも、「強化された旨」にも該当しないということになります。

「ミネラル豊富」と書けば規制の対象です。

しかし「ミネラル」と書いているだけですから、規制の対象外なのです。

 

パッケージに「ミネラル」と大きく書かれていれば、普通の消費者はその製品がミネラル豊富だと考えてしまうのでは無いでしょうか。

実は、この部分についても、消費者庁から注意喚起はされているのです。

下記の資料の2ページ目の最下部に「ポイント」として次のような説明があります。

『高い、低いに言及せずに栄養成分名のみを目立たせて表示するものについては、栄養強調表示の基準は適用されないものであるが、消費者に誤認を与えないような表示をすること。』

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/business/pdf/food_labeling_cms206_20201001_01.pdf

 

「消費者に誤認を与えないような表示をすること」と記載されていますが、私には麦茶のパッケージが、むしろ「誤認」を誘っているようにしか見えません。

消費者庁が資料に、わざわざ「ポイント」として書くぐらいですから、何か取り決めなどがあるのかと思い、電話で問い合わせたのですが、特に何も無いそうです。

言ってみれば、食品事業者の自由です。

 

これを、どのようにお考えになりますでしょうか。

制度の網の目を通り抜けて、合法な範囲で消費者を騙している事例と考えられませんでしょうか。

 

日本中でこの製品をミネラルが多いものと認識して購入している消費者がたくさんいることでしょう。

実際にネット上で、この製品がミネラル補給に役立つとの趣旨で書かれたものを多数見かけます。

やはり消費者は、正しい情報を見抜く力が必要です。

また、製造メーカーも、このようなことはすべきでないと思います。

繰り返しますが、合法です。

何の規制にも抵触しません。

しかし、これは真っ当な食品企業のあるべき姿勢だと言えるでしょうか。

 

 

本日の投稿では、栄養強調表示について書きましたが、それ以外の要素についても隠れた問題点はたくさんあります。

消費者の方々には、是非「なんとなく」で商品を選ばず、その製造メーカーの「ものづくりの姿勢」のようなものを感じ取っていただき、商品選びに活かしていただければと思います。

 

手前味噌ですが、ミネラルに関して書いた下記投稿も、ご興味あればご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

「無添加」の問題点

 

意外に思われるかも知れませんが、こんぶ土居は自社の製品づくりに「こだわり」という言葉を一切使いません。

商品パッケージや印刷物、公式サイトやオンラインストア含め、この言葉は全く見当たらないはずです。

本来「こだわり」とは、誰かが何かに執着している状況を指すことばですから、優劣とは何の関係もありません。

私共では、手前勝手な「こだわり」などに執着するつもりは毛頭ありませんで、根拠を伴った「良い」食品づくりや、情報発信を続けていきたいと思います。

 

 

他にも、「うまみ」という言葉も、できるだけ使わないようにしています。

その理由は単純、昆布の味と「うまみ調味料」の味の線引きが曖昧になるように感じるからです。

単純に「うまみ」を増強したければ、昆布など使う必要は全くなく、うまみ調味料を入れれば解決する話です。

 

 

そしてもう一つ、一切使わない言葉。

それがタイトルの「無添加」です。

こんぶ土居では、全製品について食品添加物を一切使用していません。

それなのに、「無添加」と謳わないのは、この言葉の「使われ方」に大いに疑問を感じているからです。

 

 

実は、行政も似た問題意識を持っているようで、いずれ制度によって規制される見込みです。

食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」というもので、情報がまとめられています。

資料のリンクを貼っておきますので、ご一読いただければと思います。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000228347

 

こちらでも書かれている通り、「無添加」という言葉は、これまで使い方に取り決めがなく、食品事業者が好きなように書いているのが現状です。

それは、消費者の「優良誤認」を招きかねないと、消費者庁は考えているようです。

上の資料では、例として10の類型を挙げて説明しています。

 

類型1 単なる「無添加」の表示

類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示

類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示

類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示

類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示

類型6 健康、安全と関連付ける表示

類型7 健康、安全以外と関連付ける表示

類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示

類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示

類型 10 過度に強調された表示

 

 

私共の業界の製品にも、場合によっては良い影響が出るかもしれません。

例えばダシの世界。

これまでは「化学調味料無添加!!」とパッケージに大きく謳われた製品が多く存在しました。

その一方で、類似の効果をもたらす酵母エキスやたんぱく加水分解物、他のエキス類などのうま味調味料は使われている場合が多いものでした。

しかしこれは、上記の類型5に抵触するように思います。

実際に例として、『原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、化学調味料を使用していない旨を表示』と書かれています。

 

そもそも、現在は「化学調味料」という呼び方は、公的には存在しないことになっています。

代わりになる言葉は「うまみ調味料」です。

これは、類型2に関係します。

 

こんぶ土居でも「化学調味料」という言葉を使って何かを表現することがありますが、今後は「うまみ調味料」で統一する方向で進めたいと思います。

これによって、酵母エキスやたんぱく加水分解物、各種エキス類も包括的に表現することができますので。

 

上記の類型9では、加工助剤やキャリーオーバーについても記載されていますが、これについては、私の過去のブログでも書いています。

表示を免除されるもの②キャリーオーバー - こんぶ土居店主のブログ

表示を免除されるもの③加工助剤 - こんぶ土居店主のブログ

 

 

こういった制度変更は、言わば「制度の抜け道」「法の網目」を突いた製品への問題意識から始まっているのだと思います。

これまでも、そしてこれからも、狡賢い食品生産者は上手に消費者を欺きますから、注意が必要です。

実際に、そんな製品が溢れているのです。

次回の投稿では、具体的な製品事例を挙げ、注意が必要であることをご理解いただければと思います。

 

 

冒頭に、こんぶ土居が使用しない言葉について書きました。

ついでに申し上げますと「コンプライアンス」という言葉も、あまり好きではありません。

この言葉は「法令順守」と訳されますが、「法に合致していれば良い」という考えであるから、その抜け道を探すことになるのでしょう。

そんなことでなく、自らの良心に従って製品づくりをしているメーカーもたくさんありますから、違いをご理解いただける方が多くなれば嬉しいです。