こんぶ土居店主のブログ

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「昆布だし」と「かつおだし」、うまみ調味料での代替可能性比較

 

過去投稿で何度も書いておりますが、非常に残念なことに、日本のだし文化は衰退を続けています。(詳しくは、下記の過去投稿を)

konbudoi4th.hatenablog.com

 

もはや、自然素材からだしを取るご家庭は、明らかに「少数派」と言って良いでしょう。

理由は簡単、「代替品」があるからです。

代替品とは、だしの「うまみ」と呼ばれる役割を担う「うまみ調味料」、又は、それを含有する「だしのもと」や「だしパック」です。

 

本日の投稿は、自然素材でとった「だし」の味と、だしの「うまみ成分」だと評されてきたもの、その比較についてご紹介するものです。

流れとしては、以下の通り書きたいと思います。

 

1.【比較検証の動機】

2.【実験手法と、その目的】

3.【味を見た私の感想】

4.【その結果を踏まえての新たな実験】

5.【得られた結論】

6.【素材の「低品質化」が進む?】

7.【まとめ】

 

それではまず、最初の段落から。

 

1.【比較検証の動機】

「うまみ成分」ということが表現されるとき、代表的なだし素材に含まれる成分が紹介されることが多々あります。

「昆布のうまみ成分はグルタミン酸」「鰹節はイノシン酸」「干し椎茸はグアニル酸」といったものです。

また、これらには互いを引き立て合う「相乗効果」があると、よく説明されます。

 

その相乗効果を期待してのものでしょうか。

市販される「うまみ調味料」にも、複数の成分が併用されているのです。

実例として、代表的製品「味の素」の成分をご紹介しますと、以下の通り。

 

「味の素」の成分
グルタミン酸ナトリウム 97.5%、イノシン酸ナトリウム 1.25%、グアニル酸ナトリウム 1.25%

 

つまり、味の素自体が、所謂「相乗効果」を活かした製品だと言えるのでしょう。

しかし私は、この配合割合を不思議に感じたわけです。

イノシン酸ナトリウム とグアニル酸ナトリウムが、僅か1.25%の配合割合に過ぎないのに対し、グルタミン酸ナトリウムが実に97.5%を占めるわけです。

この大きな偏りは何を理由とするものか、不思議に思います。

 

私が考えた仮説としては、イノシン酸ナトリウム やグアニル酸ナトリウムに比べて、グルタミン酸ナトリウムが、より効果絶大なのでは無いかということです。

イノシン酸グアニル酸は、相乗効果を実現するための「補助的役割」に過ぎないのではないかということです。

仮にそうであれば、その絶大なるグルタミン酸ナトリウムの効果ゆえに、それと共通する成分を有する「昆布だし」を駆逐していっているのではないかと考えた訳です。

 

この仮説は、別の角度から見ても、あり得るように思えました。

例えば、過去に書いた以下のような投稿。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

この当時書いた通り、部屋の内装材等に使われる木質フローリングは、表面的には木のように見えても、内部が「木」でないことも多いわけです。

私達の目に見えるのは表面だけですから、その奥が何で構成されていても分かりません。

同じようなことが「だし」にも言えるのではないか考えた訳です。

 

昆布とかつおの合わせだしで言えば、立ち上る鰹節の風味は、「華やかな主役」。

表舞台です。

それに対して昆布は、主役を引き立てる名脇役「縁の下の力持ち」でしょうか。

「縁の下」にいる人が、別の人に差し変わっていてもすぐには気づかないのと同じように、昆布の味は鰹節の味に比べて、うまみ調味料に代替されやすいのではないかと考えた訳です。

これが、本日の投稿のタイトルにした

「昆布だし」と「かつおだし」、うまみ調味料での代替可能性比較

の趣旨です。

この仮説の検証のために、次のような実験手法を考えました。

 

 

2.【実験手法と、その目的】

方法としては非常にシンプルでして、用意するものは4つ

「昆布だし」「かつおだし」「グルタミン酸ナトリウム」「イノシン酸ナトリウム」です。

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左が昆布だしで、右がかつおだしです。

 

後者のうまみ調味料も、普通にネット通販で手に入りました。

まずは、グルタミン酸ナトリウム

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イノシン酸については、以下のような製品で、製品名は「リボヌクレオチド二ナトリウム」となっていますが、成分としては、「イノシン酸ナトリウム」と、椎茸のうまみ成分である「グアニル酸ナトリウム」を50%ずつ配合したものです。

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本当は、イノシン酸ナトリウムの単体の製品が良かったのですが、見つかりませんでしたので、今回の実験ではこれで代用し、以下「イノシン酸ナトリウム」と表現します。

 

 

まず、用意した昆布だしとかつおだしを混ぜ合わせれば、「昆布とかつおの合わせだし」になりますね。

その味を基準として、比較として以下のサンプル「P・Q・R」を用意します。

 

P「昆布だしにイノシン酸ナトリウムを混ぜたもの」

Q「かつおだしにグルタミン酸ナトリウムを混ぜたもの」

R「グルタミン酸ナトリウムイノシン酸ナトリウムを水に溶かしたもの」

 

私の本日の仮説で言えば、PではなくQが、本物の「昆布かつおだし」の味わいに近いのではないか、ということです。

Rは論外だと思いますが、参考までに用意しました。

さて、どんな結果になりましたでしょうか。

 

 

3.【味を見た私の感想】

長々と仮説を書いて参りましたが、結論から申しますと、私の予想は大きく裏切られました。

順にご説明します。

 

まず、「グルタミン酸ナトリウムイノシン酸ナトリウムを水に溶かしたもの」については、想像がつくでしょう。

論外です。

全く「昆布かつおだし」とは異質のもので、単に、なんとなくナゾの化学物質の味がするだけです。

「昆布かつおだし」の美味しさとは全くの別物です。

 

次に「昆布だし」を見ます。

これだけでも美味しいのですが、やはり「昆布かつおだし」と比べると、華やかさに欠け、捉えどころのない地味な味わいです。

これに、イノシン酸ナトリウムを加えたところで、それが鰹節の香りを発揮するわけではありませんし、「昆布かつおだし」にはならないのは、多くの方が想像できるところでしょう。

事実、そうなりました。

なんだかよく分からない味でした。

イノシン酸による「かつおだし」の代替可能性は低いこと、想像した通りでした。

 

 

次に、「かつおだし」を見ます。

かつおだしも素晴らしいのですが、やはり単体では味の厚みが足りないのです。

薄っぺらく、立体感がありません。

底支えをする昆布が欠落することで、大きく魅力を失います。

では、その効果を「グルタミン酸ナトリウム」に期待して加えてみましょう。

 

これについては私の当初の予想は裏切られました。

もう少し良い結果が出るかと思いましたが、全くと言って良いほど「昆布かつおだし」とは違った味になったのです。

昆布が発揮する、様々な自然の成分によるふくよかな味わいとは異質でした。

 

結局つまり、うまみ調味料では、昆布の代替にも鰹節の代替にも全然ならないと感じました。

言い方を変えれば、「うまみ成分」として代表される両成分以外の、他の自然素材に含まれる要素が大きく関係しているということでしょう。

 

 

4.【その結果を踏まえての新たな実験】

前段に書いた通り、所謂「うまみ成分」では、昆布の代替にも鰹節の代替にもならないと感じたわけです。

しかし、それでも世間を見渡せば、実際にうまみ調味料が加工食品に多用されているわけです。

効果の乏しいものが広く使用されるはずはありませんから、世間一般での実例と、私の感想が食い違うことになります。

このあたりを整理すべく、新たな実験を用意しました。

 

それは、こんぶ土居製品「十倍出し」の、「20倍出し」への変身計画です。

konbudoi.shop-pro.jp

 

この製品は、ネーミング通り原液を水で10倍で希釈してご利用いただくことを想定しています。

当然ながらそれを20倍に希釈してしまうと、味わいが薄く物足りなくなるわけです。

しかし、これにグルタミン酸ナトリウムを加えると、「物足りなさ」が解決され、もはや普通に成立するように感じます。(十倍出しに含まれる塩分も同時に薄くなりますので、塩も補います。)

むしろ10倍希釈のものよりも遥かに強い「うまみ」を呈する、「だしのようなもの」になりました。

 

更に、30倍希釈版の実験もしましたが、単に希釈した段階では、薄い薄い白湯のような味のものにしかなりません。

しかしこちらも、「うまみ調味料の添加と塩分調整」によって引き続き、「強いうまみを呈するだしのようなもの」になりました。。

いやはや、驚くべき効果!

この分だと、50倍希釈などでも同様の結果になるように思えます。

 

ただ、いつまでも舌に残り続けるうまみ調味料特有の傾向は、本物のだしとは「やはり異質」であったことも申し添えます。

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(左から、10倍希釈、20倍希釈、30倍希釈です。30倍は、色もほぼ無色になりました。)

 

 

5.【得られた結論】

以上の実験から得られた結論は、

 

当然ながら「だし」の代替にはならない。しかし、本物に似せた「水増し製品」の製造に、絶大な効果を発揮する。

 

でしょうか。

海外では、うまみ調味料を「Flavor Enhancer」と呼ぶことがあります。

例えば、下のリンクのような製品です。

これは、直訳すると「風味増強剤」です。

正に、「風味を増強する」効果があるということでしょう。

www.ebay.com

 

「20倍出し」「30倍出し」実験でご紹介したような、自然素材の部分的代替の行きつく先が、もはや「自然のだし素材」と「うまみ調味料」の主従が逆転した顆粒だしのような製品であり、こうして日本のだし文化は「まがいものばかり」の現状に至ったのでしょう。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

6.【素材の「低品質化」が進む?】

別の観点からのお話を少し。

私共は昆布屋ですので、品質の良い「だし昆布」を提供しようと努めるわけです。

良いだし昆布とは何かと言えば、「昆布の良い味わいは強く」、そして同時に「雑味は少なく」ということに集約されるかと思います。

これは鰹節や煮干しでも同じで、高品質な製品とは、しっかりとした味わいを確保しつつ、同時に「不要な味」をいかに含ませないかということです。

なにしろ「だし」は、そもそもそれ自体が主役ではなく、他の素材を引き立てる役割であるわけですから。

 

鰹節で言えば、良いカビの力を利用して仕上げる高級品「枯節」と、かびつけの工程のない「荒節」に大別されます。

鰹節の特徴的な風味が何に由来するかを考えると、「焙乾」の工程も大きく関係し、言ってみれば「かつおのスモークされた香り」でしょうか。

このスモーク感で言えば、枯節は荒節より穏やかであることが一般的です。

それは、かび付けの前に、燻製によって生じた荒節表面のタール分を削り落とすからです。

このスモーキーな香りは、鰹節特有の「個性」ではあるのですが、それが強すぎると下品な味わいになるものです。

鰹の魚体サイズで言えば、表面積と重量の関係で、小さな魚体で製造された鰹節ほど燻製香は強くなります。

 

昆布で言えば、昆布の品種による味わいの違いも関係しますし、同時に厚みについても同様の事が言えるのです。

「昆布っぽい風味」で言えば、ぶ厚い昆布より薄い昆布の方が明らかにその傾向が出ます。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

私共の製品の「本格十倍出し」で言えば、昆布も鰹枯節も品質の良いものをふんだんに使用します(使用量は製品ラベルやオンラインストアに明記しています)

それを、「薄い昆布」や「魚体サイズの小さな荒節」で代替したとするならば、「雑味」が強く出てしまって下品な味わいになってしまうわけです。

 

しかし、「ほんだし」等の原材料に使うのであれば、逆の事が言えるのかもしれません。

なにしろ、うまみ調味料が主成分であって、だし素材はごく少量しか使われないのですから。

それでいて、昆布や鰹節の風味を感じようとするならば、本格十倍出しと真逆の傾向の原料の方が適しているのではないかと思います。

つまり、「薄い昆布」や「魚体サイズの小さな荒節」がそれに当たるかと思います。

 

実際に、素材の製造現場においては、そんな傾向が出てきているのです。

昆布漁師さんでも鰹節の生産者でも、「ものづくり」をする人は、本当は良いものをつくりたいと願っているのではないでしょうか。

昆布で言えば、養殖物であったとしても、しっかりと厚みのある良い昆布を育てたいと。

かつお節で言えば、立派な魚体の鰹を使って、誇らしいような本枯節をつくりたいと、そう願っているのではないでしょうか。

しかし、実際は近年、昆布でも鰹節でも「質より量」の傾向が強く出ているように感じています。

こう考えると、うまみ調味料によって実現する「まがいもの」が増えることは、原料の生産現場の景色さえ変えているのかも知れません。

昆布の「質より量」への傾向は、以下の過去投稿でもご説明しています。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

7.【まとめ】

今回の投稿は、「味覚」の話を多分に含みますから、理解への近道は体験していただくことでしょう。

そんな体験イベントを、大阪昆布ミュージアムで開催したいと考えています。

ぜひ多くの方に、今回の私の実験を追体験していただきたいと思っています。

 

冒頭で書いたように、日本のだし文化は、どんどん衰退しているのです。

インスタントコーヒーを買っても、それがコーヒー豆以外から「苦み」や「香り」を得ているなんてことは無いでしょう。

言ってみれば「本物」なのです。

お酒の世界でも、醸造アルコールや調味料類をを加えて増量する「三増酒」等も、戦中戦後の米不足の時代から始まって以後長らく製造されてきましたが、現在ではほぼ一掃されています。

それなのに、日本の伝統食文化の核となる「だし」が、イミテーションにまみれた現状で良いのでしょうか。

グルタミン酸がどうだとか、イノシン酸がどうだとか、その相乗効果がどうだとか。

 

何よりも「うま味」「UMAMI」を喜々として発信することの「薄っぺらさ」がご理解いただけましたでしょうか。

 

ついでに書きますと、味が複雑だということは、栄養成分も複雑だということ。

そんな内容については、下記の過去投稿もご参照下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

日本人の健康と、日本の伝統文化を守るため、是非ご理解いただきたいと思います。

 

(了)

画期的!『十倍出しスプレー』

さて、製造開始から40年近く経過しました、こんぶ土居製品「十倍出し」。

高級版の「本格十倍出し」と廉価版「標準十倍出し」に加え、今年からは「純植物性十倍出し」も加わりました。

konbudoi.shop-pro.jp

 

最近、この製品の新たな活用方法を発見しました。

それが、「十倍出しスプレー」です。

十倍出しに食塩を加え、市販のスプレーボトルに入れるだけ。

様々な料理に吹きかけて使えば、新しい世界が拓けます。

イメージしていただき易いように、YouTube動画を作成しました。

ご覧ください。


www.youtube.com

このように様々な用途にお使いいただけます。

YouTubeの動画説明欄に書いたものは以下の通り。

 

「十倍出しスプレー」
十倍出しの新しい魅力。
醤油と同等の塩分量まで食塩を加え、スプレーボトルに入れるだけです。
様々な料理に吹きかければ、新しい味覚の扉が開きます。
使い方としては、食卓で使う醤油と同じように考えていただければ良いですが、醤油より上品かつ素材の味を引き立てます。
【用意するもの(100㏄分の場合)】
スプレーボトル
十倍出し 100 ㏄
塩 15g

【作り方】
十倍出しに食塩を混ぜ、溶かす。
スプレーボトルに詰めてできあがり。

 

この「十倍出しスプレー」には、具体的なメリットが存在しまして。

三点ほど挙げさせていただきます。

 

【メリット① 保存性の向上】

十倍出しは、決して保存性の良い製品ではありません。

開封後は、必ず冷蔵保管していただきたいですし、それでも徐々に味が落ちていきます。

これに対し、上記のレシピの通り調合していただければ、うす口醤油と同程度の塩分量になります。

醤油が簡単に腐らないのは、どなたも経験からご存知かと思いますが、それは塩分量が多いからです。

「十倍出しスプレー」も、そういった理由で、保存性が飛躍的に向上します。

常温でも簡単に悪くなりませんが、冷蔵庫で保管いただければ、かなりの長期間美味しさを保つことができます。

 

【メリット② 減塩の可能性】

塩分は、食品中に均等に入った状態より、やはり表面に局所的にある方が舌にダイレクトに当たりますから、効果を感じやすいようです。

スプレーワンプッシュで多量に出ることはありませんし、かけ過ぎも防ぐことができ、両方の意味で減塩になる可能性があります。

 

【メリット③ いつでもどこでも】

食卓で様々なものにスプレーしていただきたいのですが、最も活きるのは「家の外」なのではないかと思います。

ぜひ活用していただきたいのが、例えば入院患者さんの病院での食事。

一般論として、病院で出される食事は、本当においしくない場合が多いものです。

そんなとき、この「十倍出しスプレー」がお手元にあれば、どれだけ救われるでしょう!

味気ない料理が一気にグレードアップするはずです。

ご紹介した【作り方】の通りの塩分量にしていただければ、常温でも簡単には悪くならないところも、外での活躍の場を広げることにつながっています。

 

是非お試しください。

 

(了)

 

「養殖」が変えた昆布生産、その価値と未来への展望

 

さて前回の投稿で書きました、礼文島の昆布漁師、石原さん。

昆布漁師としてのお仕事と生活を楽しんでおられる、とても魅力的な方です。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

この前回投稿時に、続編を書くことを予告しておりましたが、以下の通りでした。

 

やはり石原さんのお仕事は素晴らしく、ある意味の理想形です。

しかしそれが未来へ続くためには、天然昆布やウニなどの自然の恵みが、今後も得られることが条件です。

そんな観点で見れば、実は「余計に分からなくなった」「より悩みが深くなった」というのが正直なところです。

そんなお話しは、また次回投稿として近日書きたいと思います。

 

 

つまり、私は心配しているのです。

現在の道南地方の天然真昆布の常態化した大凶作を踏まえれば、いずれ石原さんの住む礼文島にも同じことが起きないかと。

石原さんの生活の糧である天然昆布が、環境変化によって採れなくなる未来が来るのではないかと。

そんな状況でも「養殖」という選択肢は残されているわけですが、石原さんは昆布養殖業はしないお考えのようです。

であれば、天然昆布の枯渇が、昆布漁師を続けられなくなる可能性に直結するわけです。

 

石原さんが昆布養殖をしない理由については、直接お尋ねしたわけではありませんが、なんとなく想像はつくのです。

何事もメリットとデメリットがありますから、デメリット部分が合わないのでしょう。

 

日本で昆布養殖が実用化されて、実に半世紀以上が経過しました。

本日の投稿では、【昆布養殖によって得られたもの】と【未来の昆布養殖の課題】の両面から、昆布養殖の価値と未来への展望について書きたいと思います。

 

 

ではまず、【昆布養殖によって得られたもの】から。

 

【得たもの① 『漁業者の収入増、安定生産』】

さて、日本の昆布養殖は、昭和40年代に始まるのですが、そのことについては過去投稿で書いています。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

この当時の投稿でも書きましたが、養殖が必要であったのは、漁業者の生活安定のためでした。

収量が不安定な天然昆布だけでは、漁業者の生計が成り立たなかったのです。

漁業収入が安定しないのであれば、後継者が出にくいのは当然です。

そうならないため、この意義は大変に大きいのです。

 

 

【得たもの② 『昆布漁業の持続性』】

このポイントをご理解いただくため、『道南の真昆布生産地域』と、『日高地方や、根室・釧路地方』を比較してみましょう。

まず、両地域の大きな違いは、「昆布養殖をしているかどうか」です。

後者の地域は、日高昆布や長昆布の産地ですが、これらは養殖されていません。

天然昆布のみです。

 

これに対し真昆布は、天然昆布の枯渇が進み、今やほとんどが養殖物だと言って差し支えありません。

ここが大きな違いです。

 

天然真昆布の不作は常態化し、一過性のものではありません。

しかしそれでも、今も昆布産業自体は、普通に続いているのです。

それは、養殖昆布が採れているからこそです。

逆に言えば、天然昆布のみに依存していたとするならば、とっくの昔に真昆布産業は壊滅的打撃を受けていたということかと思います。

これは大変に大きな問題でして、昆布の町の主幹産業が失われるということであって、それは地域経済に甚大なダメージを与えます。

同時に、私共のような昆布屋にとっても、過去からの仕事を続けられなくなることを意味するわけです。

これは、文化の喪失そのものです。

そんな破滅的なシナリオから救ってくれたものこそ、養殖昆布だと言えそうです。

 

今年の真昆布の生産量内訳(天然、養殖)については、過去投稿で詳しく書いていますので、そちらをご参照下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

【得たもの③『環境的意義』】

さて、常態化した天然真昆布の大凶作。

私がこの要因を考えた時、養殖昆布が悪影響を及ぼしているのではないかと想像した時期がありました。

つまり、大量に昆布を養殖するということは、その海域の海の栄養を養殖昆布が吸収してしまって、天然昆布に行き渡っていないのではないということです。

そうであれば、昆布養殖が地域の海洋環境の悪化を招いていることになるわけです。

しかし今は、それはむしろ逆なのではないかとすら考えています。

 

仮に、養殖昆布の存在が天然昆布にダメージを与え、それを原因とする資源枯渇が起きているのだとすれば、前述の昆布養殖をしていない地域は、その悪影響が無いことになります。

しかし今年は、養殖をしていない日高地方や釧路地方でも天然昆布が不作なのです。

真昆布地域は北海道の中では南側に位置しますから、例えば温暖化の観点から言えば、先に問題が発生しただけなのかも知れません。

真昆布地域が日本で最大の昆布養殖の地であることは事実ですが、仮に養殖をしていなかったとしても、天然昆布の枯渇は進んでいたのではないかと、今年の他地域の状況からは思えるのです。

 

それどころか、養殖昆布が地域の海洋環境に良い影響をもたらすことすら想定されるのです。

それは、陸地で言えば「砂漠に木を植える」イメージでしょうか。

天然昆布も無い、他の海藻類も無い、そんな状況は「海の砂漠化」そのものなのです。

砂漠化した海は、生命の営みが乏しい「貧しい海」です。

これだけは避けなければなりません。

海藻養殖は、陸上の「植林」のようなものだと言えるのかもしれません。

 

実際に、昆布養殖の施設には、様々な生物の営みがあります。

例えば、小さなエビがたくさん生息していたり、養成綱に貝類がたくさん付着していたり。

そういったものを狙って魚が集まってきたり。

栽培中の養殖昆布そのものが、人の手による「海中林」のような役割を果たしているようにも見えます。

こういったことについては、現在調査が進み、好ましい観測データが得られ始めているようです。

そういった情報は今後、徐々に一般にも公開されてくると思いますから楽しみです。

(海中で栽培中の養殖昆布。正に人の手による「海中林」です。ここには他の海中生物の営みも付随するのです。「砂漠化」よりは遥かに良いはず。)

 

 

 

では続きまして後半、【未来の昆布養殖の課題】に話を進めます。

この内容につきましては、冒頭でご紹介した石原さんのお仕事との対比によって、理解が得られ易いかと思います。

 

 

【未来の昆布養殖の課題① 仕事が忙しい】 

真昆布の「天然」と「養殖」を比較すると、明らかに養殖の方が生産者の手間がかかります。

そもそも、養殖昆布とは海で行う農業のようなものですから、育てる必要があるわけです。

それに対して、天然昆布は野生ですから、人間の手によるものではなく「与えられた自然の恵み」です。

もう、この段階で大きく性質が異なります。

 

それだけでなく、水揚げ後の乾燥作業も大きく違うのです。

養殖真昆布は表面に付着物が多く、それを洗い落とす必要があり、一枚一枚作業しますので本当に大変な仕事です。

(養殖真昆布の洗浄作業。洗浄機だけでは取り切れず、並行して手作業もあります。一枚一枚タワシのようなもので擦り洗うのです。)

 

 

それに対して天然真昆布は、基本的には付着物など無い美しい状態で成長しますので、洗う仕事はありません。そのまま干すだけです。

(水揚げ直後の天然真昆布。ツルツルピカピカです。)

 

 

つまり、養殖昆布の実現によって水揚げ量が増加し、昆布漁家の収入は安定したわけですが、同時に非常に忙しくなったのです。

ずっと私も現場でお手伝いなどしてきましたから分かりますが、夏場の漁期だけは本当に大変です。

 

それに対して、礼文島の石原さんのお仕事を見ていると、やはり余裕が感じられて、「自然の恵みによる豊かな生活」といった風に私の目には映ります。

これは、石原さんのInstagramなどを見れば、よく伝わってきます。

https://www.instagram.com/ishihara_konbu?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=ZDNlZDc0MzIxNw==

 

「忙しすぎる」ことには、後継者問題にも関わってくると思いますし、少しでも改善されて欲しいです。

その「改善」とは、労働生産性の向上そのものであって、漁師さんの経済的利益にも直結するはずです。

具体的手法も描けるのですが、残念ながら現場では遅々として進まないのが現状です。

なにしろ、昆布生産をされているのは「企業」ではなく、「個人経営の漁師さん方」ですので。

しかし、新しい時代が拓かれるべきであるのは間違いありませんし、行政でも様々に取り組みを初めて下さっているようですので、「今後に期待」です。

 

 

【未来の昆布養殖の課題② 環境負荷

昆布は干さないと腐りますので、水揚げ後に乾燥されます。

昔ながらの天日干しなら、昆布を乾かしてくれるのは「風と太陽」でしょう。

100%の自然エネルギーで素晴らしいですね。

石原さんのお仕事は、正にこれです。

礼文島のメノウ石が広がる浜辺に並べられた昆布)

 

しかし、この方法の欠点は、天気が悪いと干せないことです。

養殖昆布とは、言わば「計画生産」です。

水温等の関係があるのでいつでも養殖できるわけではなく、季節が決まっています。

その、限られた「昆布に最も良い季節」に、一気に収穫する必要があります。

遅れると昆布の品質に問題が出るのです。

 

仮に、養殖昆布の水揚げの季節に雨が続いたとしたら、どうでしょうか。

育てた昆布の品質が、時期が遅れることで下がり、売り物にならなくなるのです。

こんなことを全力で避けたいのは、漁師さんにとって当たり前のことです。

そうならない「計画生産」を支えているのが、悪天候でも水揚げできる「機械乾燥」であるわけです。

 

石原さんが、天日乾燥だけで生産されることは本当に素晴らしく、美しいことですが、自分で育てたわけでない「天からの恵み」であることも無関係ではないでしょう。

自分で育てたものの品質が、晴天に恵まれないことで下がっていく辛さは、非常に大きいはずです。

 

「天日乾燥」と「機械乾燥」。

両者を比較すれば、前者が良いのは当たり前です。

しかし、その単純な見方は、やはり浅いのです。

機械乾燥には、それなりの意義があることも、広く理解されて欲しいと思います。

 

しかし、機械乾燥は「改善」されなければなりません。

そもそも、現在の天然昆布の不作が地球温暖化に起因するのであれば、温室効果ガスの削減が社会的に求められていることは誰もが知るところです。

昆布は生育中に光合成をしていますから、その過程で海中の二酸化炭素を吸収し、それ自体が温室効果ガスの削減につながる素晴らしい副次的意義も存在しています。

森林が陸上で吸収する二酸化炭素との対比で、これは「ブルーカーボン」と呼ばれます。

 

石原さんのようなお仕事であれば、収穫時にも乾燥時にも、ほとんど二酸化炭素の排出はありません。

その一方、今の昆布機械乾燥の設備は、ほどんどの場合に重油を燃料として使い、それによって乾燥室の室温を上げるのです。

さてこうなると、栽培中に昆布が吸収するブルーカーボンと、乾燥機が排出する二酸化炭素の両方を加味する必要があり、天日乾燥とは大きく事情が変わってしまいます。

 

前述のように、機械乾燥は否定されるべきものではありませんが、その手法については、改善が進むべきだと思います。

これとて、具体的手法の想定は存在しています。

詳細は今回は書きませんが、言ってみれば「天日乾燥」と「機械乾燥」のハイブリッドのようなイメージです。

 

昆布の機械乾燥については、過去投稿でも書いています。

ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

 

【未来の昆布養殖の課題③ 質より量】

養殖昆布は一般的に、取引価格が天然昆布より低くなります。

単価が低いとなれば、収入を確保するために必要なことは「増産」ですね。

増産自体は悪いことではないのですが、「品質を高くし、単価を上げる」と、「単価が安くても、大量に作る」、この二つを比較した場合、一般的に後者の方が漁家収入は高くなります。

こういった背景が、やはり「質より量」の傾向を生んでいるように思うのです。

 

天然昆布であれば、品質や漁獲量は自然の環境に依存しますので、「品質が低くても、大量に作る」なんてことは起きようがありません。

しかし養殖の場合は、例えば「二年養殖」と「一年養殖(促成)」を比較すれば、「量」のために、単価は低くても後者を選ぶという結果にも繋がるように思います。

また、単位面積あたりの栽培本数を増やせば収量は上がるわけですが、それは言わば「密植」であり、栄養や日光が不十分になり品質低下につながります。

 

現在は、昆布全体の生産量が激減しているので、必然的に平均単価は高止まりします。

一年養殖の真昆布も、過去に比べて品質が低下してきているように感じますが、今年は過去にない高値がつきます。

これは漁師さんの所得向上にもつながるので、それ自体は良いのですが、見方を変えると天然昆布への無関心に繋がるリスクがあります。

 

天然昆布は、食品としての品質の素晴らしさだけでなく、海中林の健全さと一体です。

また、種の多様性とも関係してきます。

産業としての短期的な収益などを遥かに超えた、環境的意義があります。

養殖昆布の安定生産によって、そこに正しい関心が寄せられないとすれば、大きな弊害だと言って良いでしょう。

 

実際に、「天然昆布が無くなったって、養殖が安定しているから別に自分たちは何も困っていない」という考え方の漁師さんもいるのです。

本当に難しいところです。

 

 

【未来の昆布養殖の課題④ 多様性】

今後の日本の一時生産を考えた時、農業でも漁業でも「担い手」の問題が必ず出ます。

ただでさえ高齢化する日本。

若い人が都会へ流出していく構造は、多くの地方が抱える共通の課題でしょう。

であるからこそ、農村漁村での「豊かな暮らし」が大切になるわけですが、この場合の「豊かさ」とは、金銭的な意味ではありません。

「生活の楽しさ」と言い換えると良いでしょうか。

 

礼文島の石原さんを私が訪問した最大の理由は、石原さんの暮らしが「楽しそう」に見えたからです。

昆布養殖をする漁師さん方は、都会の人と比べて所得が低いわけではないのです。

にもかかわらず、若い人が昆布漁業を継がないのだとすれば、それはつまり、浜での暮らしが「楽しそう」に見えていないのかも知れません。

 

誰しも、単調な仕事をこなすだけの日々には飽き飽きするものです。

昆布養殖によって生産量が安定し、かつてのように出稼ぎに出たりせずに済むようになったことは本当に素晴らしいのですが、言ってみればモノカルチャー型の経済だと言えなくもないように感じます。

そのような産業構造の地域に、より良い未来が拓けているかと言えば、私には少し違うようにも思えるのです。

もう少し、仕事にも暮らしにも多様性があるほうが、地域の魅力が増すのではないでしょうか。

 

例えば、こんぶ土居で主に取り扱う、旧南茅部町の真昆布地域で言えば、養殖が実用化するまでは、町が今のように「昆布一色」ではなかったと聞きます。

逆に言えば、そうしなければ生活できなかったということかも知れませんが、「基幹産業による経済の安定」は、言い換えれば「産業と暮らしの多様性がなくなる」ということなのかも知れません。

そういった状態は、あまり『楽しそう』には見えないものです。

なんとも難しいところです。

 

前述の南茅部は実は遺跡の町でして、縄文時代の「中空土偶」がこの地で出土し、2007年には北海道で初めての国宝として認定されました。

現在では、周辺地域と合わせ「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界遺産にも指定されています。

現在、函館市に「世界文化遺産拠点施設」の設置の検討がされており、地元の方々が南茅部への誘致に尽力されています。

 

こういった文化事業や、昆布や海産物に関係する食産業など。

複数の素晴らしい魅力が有機的に繋がり、シナジーが生まれるような「多様で豊かな昆布産地」になると良いのですが。

海外には、そんな事例が多いように感じています。

 

昆布養殖のメリットは十分に享受しつつ、その過程で失われてきた多様性を取り戻すことによって、浜の人達の暮らしがより豊かなものになり、町に活気が戻るのではないかとも考えています。

 

 

【まとめ】

さて、様々に書いて参りましたが、養殖の意義と課題について、ご理解いただけましたでしょうか。

仮に養殖昆布が無かったとすれば、既に昆布産業は壊滅的な打撃を受けていたはずです。

これは、日本の食文化の核となる要素を失うことを意味します。

 

また、日本では天然養殖問わず、海藻の産業は衰退を続けていますが、海外に目を向ければ大きな成果を挙げている国もあるのです。

例えば、中国における昆布養殖や、韓国の海苔養殖から、学ぶべきところも多いのです。

温暖化しているのは海外でも同じなわけで、日本でできない理由はありません。

こういった海外の事例は、全て「海藻の養殖」であって、天然物ではありません。

自給率が下がり続ける日本で、一次産業の振興という観点で見れば、養殖事業が本当に大切で、SDGs的観点からも、良い海藻養殖ほど「環境的に持続可能」なものはないのです。

そういった意味でも今、海藻食に世界が注目しています。

 

本日の投稿で書いた【昆布養殖によって得られたもの】を更に拡大しつつ、一方の【課題】の解決に向かえれば、『海藻養殖が未来の食を救う』とすら言えるように感じています。

 

今後の、自分自身の進むべき方向性の整理の意味でも、ブログに書いてみました。

多くの方に知っていただきたい現状です。

 

 (了)

礼文島、イシハラ昆布さん訪問記

 

過去に「こんぶ土居店主のブログ」では、ある昆布漁師さんについて触れています。

利尻昆布の産地、礼文島にて魅力的な昆布漁業をしておられる石原さんです。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

今年2024年の7月末、毎年恒例の北海道出張の際に、礼文島の石原さんを訪ねました。

今回の投稿は、その記録です。

礼文島で石原さんと過ごした時間の中での出来事をご紹介し、そこからお仕事への姿勢や人物像を浮かび上がらせることができればと考えています。

また次回の投稿では、石原さんの現在の生活の本質的な豊かさが未来へ続くことを願いつつ、その一方で、自然や社会の環境から生じる懸念についても書くつもりです。

 

 

先にご紹介した過去投稿の通り、過去に私と石原さんはSNSを通じて接点が生まれ、大阪でお会いしました。

お話を伺うだけでなく、実際に石原さんの礼文島での生活や昆布漁業を見せていただき、未来のより良い昆布漁業を考える材料にしたいと考えて、今回訪問しています。

希な出来事ですが、「昆布」という仕事の共通要素を軸に、互いにリスペクトできる関係があれば、そこから友情に近いものさえ生まれることがあるように感じています。

 

ちなみに、石原さんと私は商業上の関係はありません。

「昆布漁師さん」と「昆布屋」の関係ですが、売買も一切ありません。

私共は大阪の昆布屋であって、その歴史文化を継承した仕事をしたいと考えていますので、そういった意味でも真昆布を主に取り扱い、礼文島で採取される利尻昆布は基本的に販売していないのです。

もちろん石原さんが販売面で私共に何か期待することがあるのなら喜んで協力しますが、既に石原さんの仕事を評価する人の輪は広がってきていて、「自分の採った昆布を自らの手で販売する」という形が出来上がりつつあるようです。

ここで申し上げたいことは、私たちは「ビジネス上での関係」などでは無いということです。

 

 

ep.1 「メノウ輝く美しい昆布干場」

礼文島は離島ですから、行くのが大変です。

私の北海道出張は、道南の真昆布産地から始まっているのですが、稚内空港まで飛行機で行った後、礼文島までフェリーに乗ります。

今回は、同行者が三名いたのですが、夕方に到着した私たちを石原さんがフェリーターミナルまで迎えにきて下さいました。

その後、翌日からお仕事を見せていただくための事前説明のような意味合いで、様々な場所を案内してくれました。

「漁をする予定の場所」「船を出す漁港」「ウニ剥き小屋」などなど。

その中でも特筆すべきは、やはり昆布を天日干しする浜です。

現在では、礼文島でも機械乾燥の設備の導入が進み、全てが天日干しされるわけではありません。

機械乾燥でも、正しい設備を正しく使えば、天日にほとんど遜色ないものがつくれますが、それでも太陽の自然エネルギーだけで干すことができれば最善であるのは言うまでもないでしょう。

 

昆布の天日干し自体は、特に珍しいことでなく、例えば日高昆布の産地へ行けば、今だに全量が天日干しです。

しかし石原さんの干場が特別であるのは、それが白いメノウ原石を多く含んだ自然石の広がる浜辺であることです。

そこは実は一般人の立ち入りが制限されていて、なかなかの絶景でした。

こんな場所で昆布を干す人は、全道的に見ても非常に少ないのではないでしょうか。

 

以前は石原さんも、一般的な天日干しと同様に、砕石を敷き広げた干場で作業をしていたそうです。

しかしメノウ浜の環境に惚れ込み、場所を移したとのこと。

実際にそれが昆布の品質に影響があるのかどうかは分かりません。

しかし、「何か良さそう」な感じはするものです。

「良さそう」と感じるのなら、その美しい場所で昆布を干したいと石原さんは考えているのでしょう。

これは、「自分の仕事を愛する」ことの一側面だと言えそうです。

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ep.2「昆布を天日干し、つまり好天でのみ操業可能」

前段でも書いた天日干し。

これはある意味、自らハンデを背負い込むようなものなのです。

海況さえ悪くないなら、昆布採り自体は可能ですが、問題はその後。

機械乾燥の設備があれば、曇りでも雨でも問題なく干すことができる一方、天日干しを前提にするなら好天の日以外は出漁できないということになります。

実際に私たちの滞在中にも、小雨混じりの曇天の中、他の漁師さん達は天然昆布漁をしていたのです。

 

「天日干しに限定する」、これは水揚げ高の減少に直結することだとも言えそうですが、それでも石原さんは機械乾燥を導入するつもりはないようで、美しいメノウ浜での仕事を今後も続けるようです。

つまり、「経済面ばかりを追っているわけではない」ということでしょうか。

ちなみに一般論として、天日干しにしたからと言って、昆布の取引価格が高くなるというようなことはありません。

機械乾燥のものと同様に漁協が回収し、流通することになるのが通例です。

 

 

ep.3 「ウニ取りならできる」

残念なことに、私たちの滞在中はずっと天気に恵まれず、石原さんの天然昆布漁を見ることはできませんでした。

しかし、ウニ漁が同時期にありまして。

今回は昆布のために訪問しているわけですが、せっかくなので早朝から石原さんのウニ漁を見学しました。

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漁港から小舟を出し、柄付きの小さな網のような漁具でウニを採ります。

訪問した時期は、キタムラサキウニではなくバフンウニの漁期。

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2時間ほどかけて漁をされました。

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陸揚げされたウニは、そのままの状態で出荷されるわけで無く、身を取る作業も漁師さんのお仕事。

漁協への出荷はタイムリミットがあるとのことで、急ぎで作業をする必要があります。

私共が訪問していると、石原さんは様々なことを説明して下さるので、それは即ち作業の遅れにつながりますから、有難くも申し訳のないことです。

 

ウニ剥きの作業は、主に石原さんの奥様の出番。

熟練の手つきで小さなナイフを巧みに使って殻を割ります。

コロコロした姿のウニの中には、オレンジ色の身がぎっしり。

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それを小さなスプーンのような道具で取り出し、清浄な海水に漬けた状態で出荷されます。

私も、採ったばかりのバフンウニを頂いたのですが、なんとも贅沢な体験でした。

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しかし、今年はウニも不漁だとのこと。

未来が少し心配になります。

 

 

ep.4 「善意の拾い昆布」

前段のように早朝からのウニ取り、そして出荷するためのウニ剥き作業を見学した後、私たちは一旦解散しました。

夜に再び会って、食事をご一緒するまでの間です。

そんな午後、石原さんから私に電話がかかってきました。

「拾い昆布ができそうだから見に来ませんか」と。

 

拾い昆布とは、文字通り、浜辺を歩いて昆布を拾うのです。

例えば海が荒れると、生えていた昆布が抜けてしまうことがあります。

他にも、昆布採取をした漁師さんが海底から昆布を刈り取ったものの、船上への回収に失敗し、海中を漂う場合もあります。

そういった昆布が、時間の経過と共に浜辺に打ち上げられてくるのです。

 

地形や潮流などによって、昆布が打ち上げられやすい場所は決まっているのですが、そこへ行って石原さんは昆布を拾います。

私も手伝って拾いたいところですが、残念ながら漁業権の関係でできません。

石原さんがお仕事しやすいように、少し助手のような動きをしながら、石原さんと話しながらの拾い昆布見学でした。

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その後、干す作業が続くわけですが、例のメノウ浜へ移動です。

昆布でいっぱいのカゴを背負って、道なき道を進みます。

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干す作業には漁業権は関係ありませんので、私も手伝って浜に敷き並べました。

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実際に作業を体験するとよく理解できますが、採った場所から離れたメノウ浜へ、わざわざ昆布を運ばないといけないわけです。

干すときも、干しあがった昆布を回収するときも両方です。

雑草だらけの細道を上り下りするのですが、なかなかに大変なお仕事です。

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さてさて、浜辺に並べ終わった昆布。

しかしこの日は天気が芳しくありませんで。

こんな状態では乾燥しないのではないかと私は心配だったのですが、そこは天気の推移次第なので、見守るしかありません。

 

しかし残念ながら、その後雨脚が強まり、強風が吹いていた時間帯もあったのです。

ですので、私は昆布の状態が心配で、翌朝にこっそり浜を訪れました。

そこで私が目にしたものは、強風によって無残に散乱した昆布の姿でした。

雨にも打たれていますので、全く乾いていません。

こんな状態では、商品にはならないと思います。

 

普段から漁師さんのお仕事は天気との闘い。

石原さんが、こんな悪天候を予見できないはずはないのです。

時間をかけて昆布を拾い、それを運び、道なき道を進んでメノウ浜に敷き並べる。

天候を考えれば、こういった全ての仕事は、本来はしなくて良いものであったはず。

おそらくは無駄と知りながら、私に見せるためだけにやって下さったのでしょう。

 

私の経験としては本当に良いものを見せていただいたと有難いわけですが、なんとも申し訳ないことで。

石原さん、こういう人物です。

 

 

ep.5 「飲食店難民、石原家へ行く」

滞在2日目の夜に、私たちは石原さんと一緒に食事をすることになりました。

しかしこの日、タイミングが悪いことに、なぜか飲食店がどこも満席。

都会のように選択肢が多いわけでないので、非常に困りました。

どこのお店にも入ることができず、結局なんと石原さんのご自宅にお邪魔することになったのです。

今回の訪問は、私を含め4名だったのですが、そのうち2名は料理人さんです。

礼文島の海の幸や、食料品店で調達可能な食材を駆使し、石原さん宅のキッチンをお借りし、皆で料理をつくることになりました。

 

こんな顛末で急に石原家にやってきた4人組。

特に奥様には、たいへんご面倒なことかと思いますが、とても好意的に受け入れて下さったのが印象的です。

石原さんの子供さん達も、見知らぬ大人に物怖じすることなく、楽しそうに過ごしてくれました。

 

こんな感じで快く受け入れてくれた石原さんですが、私もそれに報いるため、昆布に関することでお役に立つことがあればと思っていました。

これまで20年以上昆布の専門家として仕事をしてきた経験から、お伝えできることがあるはずですから。

 

実は、これもまた、非常に印象的な出来事だったのです。

例えば収穫後の昆布の取り扱いについてだったり熟成についてのことだったり、石原さんと奥様は、メモ取りながら私の話を聞いて下さるのです。

これまで数多くの昆布漁師さんと接してきましたが、私の話をメモを取りながら聞いた人は初めてです。

これは、向学心以外の何物でも無いでしょう。

 

どの分野でも同じだと思います。

素晴らしいお仕事をしておられる人は、仕事に臨む姿勢が素晴らしいのです。

新たな事を吸収し、それによって自らを更に高めておられます。

 

 

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(天然、養殖、促成)真昆布生産量予想から、現状を読み解く2024

 

昆布の漁期は夏場です。

今は7月ですので、北海道の昆布の浜は最盛期を迎えつつあるのです。

昆布の生産量は、漁期が終わって出荷実績が出るまで分からないわけですが、生産量予想は既に出ています。

天然昆布であれば海底の繁茂状況を見れば予想は立ちますし、養殖昆布なら栽培されている量を集計すれば概算数値は出てくるわけです。

 

10年来、道南の真昆布産地では天然物の大凶作が起きているわけですが、今年も好転していません。

本日の投稿では、2024年の生産量予想の数字をご紹介すると共に、その数字から見えてくること、読み解き方をご説明したいと思います。

白口浜真昆布の産地、旧南茅部町域の6浜(大船 、臼尻 、安浦 、川汲 、尾札部 、木直 )の生産量予想データです。

 

真昆布には「天然昆布」「二年養殖昆布」「促成昆布(一年養殖)」の三種がありますので、データもそれぞれに分けられています。

それぞれのデータについて、ご説明するわけですが、注目すべきポイントはそれぞれに異なるのです。

【①天然真昆布のデータから見えること】

【②二年養殖真昆布のデータから見えること】

【③促成(一年養殖)真昆布のデータから見えること】

【④まとめ】

、と順に書きたいと思います。

 

 

 

【①天然真昆布のデータから見えること】

(2024年生産量予想 単位:トン)

【天然元揃真昆布】

大船 0、臼尻 2、安浦 0、川汲 0、尾札部 0、木直 0

【天然真昆布(加工用)】

大船 0、臼尻 4、安浦 0、川汲 0、尾札部 0、木直 0

合計:6トン

 

まず、上段の「元揃」というのは、仕立ての方法のことです。

昆布が製品として流通するためには、水揚げ後に様々な漁師さんの仕事があるわけですが、この「元揃」は高級昆布ならではの非常に手間のかかったものです。

一方、下に書いた「加工用」は、かつては「雑昆布」と呼ばれたもので、何らかの理由で「元揃」には適さない昆布が「加工用」として流通してきました。

こちらは「元揃」に比べれば漁師さんの仕事も簡単で、等級によっては、干しただけで特に何もせずそのまま出荷されるものもあります。

 

数字は、臼尻以外は全て「ゼロ予想」ですね。

なぜ臼尻地区だけ、少し採取できるのかと言えば、臼尻の漁師さん方が昆布の天敵であるウニの対策を頑張ったからだと、私には情報が届いています。

 

現在の天然真昆布の常態化した大凶作の原因は、ひとつではありません。

しかし、例えばそれが地球温暖化による海水温の上昇であるのならば、その水温自体を下げることはできないわけですから、対策が非常に難しいということになります。

また、山の環境が荒れていたり、海と山の繋がりが正常でなかったり、そんなことが理由だとするならば、取り組みから結果が出るまではに少なくとも数十年かかるでしょう。

並行して様々な対策を進める必要がありますが、まずは速効性のあるウニ対策を充実させることの大切さを、各浜の生産量データは示しているかと思います。

 

 

【②二年養殖真昆布のデータから見えること】

(2024年生産量予想 単位:トン)

【二年養殖元揃真昆布】

大船 0、臼尻 0、安浦 0、川汲 0、尾札部 0、木直 3

【二年養殖真昆布(加工用)】

大船 0、臼尻 0、安浦 0、川汲 0、尾札部 0、木直 5

合計:8トン

 

二年かけて栽培した養殖真昆布の生産量も、天然昆布と変わらないレベルの少なさです。

先にウニの問題について書きましたが、養殖昆布はウニの被害を受けません。

海底に生える天然昆布は、海底を移動してくるウニに食べられてしまうわけですが、「海中」に浮遊するような形で育てられる養殖昆布は、海底に接していませんのでウニが来ることがないのです。

つまり、二年養殖真昆布の激減は、前段で書いたウニ問題とは全く違った理由によるものだということです。

 

主な理由は、「漁師さんのメリットがない」ということでしょうか。

次の段で一年養殖昆布のデータもご紹介しますが、漁師さんが真昆布を栽培するにあたり、「二年養殖」と「一年養殖(促成)」のどちらかを選択するわけです。

当然にメリットの大きい方を選択するわけですが、現在の状況では、一年養殖の方がメリットが大きいと考える方がほとんどだということです。

その理由は、「リスク」「価格」です。

次の段の、一年養殖真昆布のデータと合わせてご説明します。

 

 

【③促成(一年養殖)真昆布のデータから見えること】

前段までと同様に、まずデータをご紹介します。

(2024年生産量予想 単位:トン)

【促成長折真昆布】

大船 36、臼尻 2、安浦 0、川汲 25、尾札部 20、木直 0

【促成真昆布(加工用)】

大船650、臼尻 400、安浦 130、川汲400、尾札部 530、木直 130

合計:2323トン

 

まず、この段階で、「天然」「二年養殖」「促成(一年養殖)」の生産量の提示が終わりましたので、内訳の割合を計算してみましょう。

〇天然 6トン 0.26%

〇二年養殖 8トン 0.34%

〇促成 2323トン 99.40%

(計100%)

このような内訳割合になります。

つまり、真昆布の最大生産地である旧南茅部町域の真昆布は今、99%以上が促成昆布になっているのです。

天然昆布が少ないのは、「生えていない」わけで、理由はシンプルです。

しかし二年養殖真昆布とて、天然と同水準の生産量しかありません。

この理由が、前段の『②二年養殖真昆布のデータから見えること』の末尾に書きました通り、「リスク」「価格」です。

つまり、二年養殖真昆布は漁師さんにとって「リスクが高く」「経済的メリットが無い」ことによって、栽培が敬遠されているということでしょう。

 

リスクとは、栽培の失敗です。

秋口から栽培を開始して翌年の夏に収穫される促成真昆布に対し、二年養殖真昆布は栽培期間が長いことも関係し、途中で枯れてしまうような事例があり、問題発生のリスクが高いのです。

漁師さんにとってみれば、これは大問題でしょう。

せっかく経費も労力もかけて栽培したのに、それが途中で枯れてしまうわけです。

そんなリスクを減らしたいと考えるのは言ってみれば当たり前のことで、リスクの低い促成を選ぶ人が増えるのは必然でしょう。

 

 

しかし仮に、二年養殖真昆布の取引価格が促成より圧倒的に高く、例えば二倍以上の値がついたりしたらどうでしょう。

トライしてくれる漁師さんも今よりは増えるのではないでしょうか。

しかし、今は促成と二年養殖の価格差は、それほど大きくないのです。

そもそも、二年養殖真昆布は二年に一回しか収穫できないのですから、毎年収穫できる促成昆布とは価格面で相当の差がついて良いと思うのですが。

 

背景には、市場に於いての理解が乏しいことも関係するように思っています。

そもそも、昆布に養殖が存在することを御存知ない方も多いのです。

その理由は「表示義務がない」ことです。

スーパー等のダシ昆布売場で真昆布を見つけたとしても、それが天然物でなさそうなことは、ご紹介したデータで明らかでしょう。

しかし製品のどこを見ても、それが養殖昆布であるということが読み取れる表示は為されていないはずです。

つまり、一般消費者は「天然」も「二年養殖」も「促成」も、その差異を認知せず、「ひとからげに真昆布」という風に見ていることでしょう。

こんな背景では、二年養殖の価値に見合った価格がつきにくいのは、当然だと言えるかも知れません。

 

ここで、「天然」「二年養殖」「促成」、この三者の断面写真をご紹介します。

上から「天然」「二年養殖」「促成」の順です。

ご覧の通り、厚みのある天然昆布と比べると、幾分は薄く感じられるかも知れませんが、二年養殖でも大きな遜色はないのです。

しかし促成になれば、同じような面積でも枚数が圧倒的に多いのが見て取れるかと思います。

つまり、一枚あたりの重量が軽いのです。

薄く、密度が詰まっていない感じです。

 

二年養殖の真昆布というのは、天然と本質的には同じです。

「勝手に生えている」のか「人間が植えた」かの違いです。

浅瀬の海底に生える天然と、沖合に張られた養成綱に根を張る養殖昆布では、生育環境に少々違いはありますが、本質的には同じものです。

しかし促成栽培の昆布は、そもそも生育期間が半分なわけですから、言ってみれば全く別物です。

この違いは、やはり正当に評価されて欲しいと思うのですが。

 

 

促成真昆布のデータを再び出します。

【促成長折真昆布】

大船 36、臼尻 2、安浦 0、川汲 25、尾札部 20、木直 0

【促成真昆布(加工用)】

大船650、臼尻 400、安浦 130、川汲400、尾札部 530、木直 130

 

ここから見えることが、もう一点ありまして。

上の「長折」は、天然物の「元揃」に比較的近い、手間の掛かる昆布の仕立て方法です。

昆布は平たく伸びています。

これに比べて加工用は、言ってみれば「干しただけ」に近く、手間のかからない仕立て方法です。

ざっと内訳割合を計算しますと、長折が約4%で、加工用が96%です。

当然に、「長折」の方が取引価格は高いのですが、それでも96%が加工用で出荷されることの理由は、産地の後継者不足と高齢化に伴う労働力の減少です。

価格が安くとも、手間の掛からない方を選択する人がほとんどだということです。

 

これは天然や二年養殖の背景とは全く異質で、環境問題ではなく「社会的要因」と言えるでしょう。

この労働力の不足は、今後更に顕著になるのは確実で、非常に大きな問題です。

これは私共の仕事にも影響が大きく、昆布を理想的な環境で熟成させるためにも、的確な選別のためにも、「加工用」では不都合が多いのです。

なんとも困ったことです。

 

 

【④まとめ】

前回投稿でご紹介した通り、日本の昆布生産量は長く3万トンの水準で安定していたのです。

konbudoi4th.hatenablog.com

それが、今年はなんと1万トンを割り込みます。

これは全品種の産出量のデータですが、真昆布については「量」が激減しているのと同時に、ご紹介した通り天然も二年養殖もほぼ無いので、「質」までもが悪化しているわけです。

 

昆布業界の惨憺たる現状、ご理解いただけましたでしょうか。

しかしこんな現状でも、私は諦めているわけではないのです。

天然真昆布の資源回復については、ご紹介した臼尻の事例で見えるように、ウニ対策を的確に為せば、ある程度は可能なのではないかと考えています。

二年養殖の減少については、実は研究機関に於いて、促成栽培と同様の栽培期間で二年養殖に近い品質の栽培技術が開発されつつあるようです。

これが実現すれば、品質の向上と漁師さんの経済的メリットが、同時に成し遂げられるかも知れません。

手間のかかる作業が敬遠される傾向については簡単な解決は見込めませんが、少しでも労働生産性の高い方法を模索することになります。

 

昆布屋の目の前には、本当に巨大な障壁が立ちはだかっているわけですが、業界は問題解決に向けて動き出したばかりです。

問題解決の意思を見せる人の輪は、確実に広がってきています。

これまでは、「あまり大きな問題が無かったから、昔ながらの方法から進歩が無かった」ということです。

「正しい努力が積み重なれば、良い未来も拓けてくるはずだ」との前提で、今後も対応したいと思っています。

 

以上、2024年の現在地のご報告でした。

新しい良い展開について、改めて投稿できる日が楽しみです。

 

(了)

過去の日本の昆布生産量、最大7万トン!の謎(豆知識)

本日は、マメ知識的な投稿ですが、過去の歴史について少し。

 

日本の昆布生産量は、平成初期から減り始め、今年は過去最低を更新するのが決定的です。

非常に辛い現状です。

しかし、平成の初期までは、ずっと平均して3万トンのレベルでした。

戦後からずっと安定的、大きな変動なく平成初期まで来たわけです。

 

それ以前の時代のデータについては、私はよく知りませんでしたが、先日「公益社団法人日本水産資源保護協会」のウェブサイトで、戦前の漁獲量データを見つけました。

https://www.fish-jfrca.jp/02/pdf/pamphlet/069.pdf

 

こちらの資料の4ページ目に掲載されているデータを見ますと、大正時代から、昭和初期まで、非常に生産量が多いのです。

なんと、最大の年には7万トンを超えています。

これには非常に驚きましたが、言ってみればその30年間ほどだけが異常に多く、どうしてこんな経緯であったのか、その理由に私は頭を悩ませていました。

 

この疑問に、先日答えを出して下さったのが、北海道大学名誉教授の安井肇先生です。

安井先生は、現在は北海道大学を定年後、北海道立工業技術センターのセンター長を務めておられますが、先日函館市役所の方々と共に私共を訪問して下さったのです。

その日は、昆布の問題についての意見交換の場であったのですが、話の中で生産量の一件について尋ねてみたのです。

安井先生は、私の疑問にあっさりと答えを出して下さいました。さすが!!

 

理由は、簡単に言えば「領土」です。

 

1875年(明治5年)の樺太千島交換条約によって、北方領土に加えて千島列島が全て日本の領土となりました。

更に、1905年(明治38年)から終戦までは、北緯50度線以南を「樺太」として日本が、領有していたわけです。

つまり、昆布の生産量が非常に多かった時代は、北海道や東北北部での漁獲だけでなく、千島列島と樺太で産する昆布も含まれていたわけです。

 

実はコロナ禍前に、北海道のある漁師さんと一緒に、私はサハリンに視察に行く予定にしていました。

パンデミックによって、そんな話は立ち消えとなったわけですが、北海道で天然昆布がどんどん枯渇する中でサハリンや千島列島では、今も良い昆布が繁茂しているようです。

いつか、機会があれば現地に行ってみたいものです。

 

実は、昆布業界の先人も同じようなことを考えて、過去にロシアにアプローチした人は多いのです。

しかし、一筋縄ではいかないお国柄ですから、ほとんどがうまくいかずに撤退する形になったようです。

 

昆布業界の歴史の1ページ、ロマンを掻き立てられる豆知識でした。

 

(了)

 

 

「うまみ調味料で減塩」を正しくないと考える理由(第二回)

 

さて、世に伝わる情報の真偽。

それを見極めるのは、本当に難しいものです。

特に大手企業による発信は、一般的に信用度が高いと見なされがちで、尚且つ拡散力も強いだけに、誤情報が伝わった場合の弊害も大きいでしょう。

 

例えば、「うまみ」が減塩に効果的だとの説は、うまみ調味料メーカーが主導して流布され、もはや一般的になったように思います。

下記ウェブサイトのような内容です。

www.umamikyo.gr.jp

 

しかし、私はこれに反対する投稿を2023年の2月に書いているのです。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

今日の投稿は新たな視点も加えまして、より深い内容になっています。

全ての食品カテゴリーについて「正しくない」と断言できるかどうかは分かりませんが、読んでいただければ納得していただけるかと思います。

 

段落としては、

①うまみ調味料業界が言うところには

②うまみ調味料の有無と塩分量の相関の例

③しょっぱくない塩

④塩とうまみ調味料は、相性が良い

⑤弊害「たん白質量の誤認」

⑥成立しない仮定に基づく主張

 

と順に書きたいと思います。

 

 

それでは、まず

①うまみ調味料業界が言うところには

まず、うまみ調味料業界は「うまみ調味料で減塩できる」と主張するわけですが、その仕組みを下記のウェブサイト内で説明されています。

www.ajinomoto.co.jp

 

抜粋しますと、

『うま味成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)のナトリウム含有量は、食塩の3分の1以下です。家庭での調理時、食塩を減らしてMSGを加えることで、例えば汁物ではおいしさはそのままに、約30%のナトリウムを減らすことができます。』

 

この表現方法は、非常に巧妙に仕組まれた罠でありまして。

それは、「食塩を減らし、それをうまみ調味料で代替する」との仮定の元に書かれている点です。

しかし多くの場合、そんな仮定は成立しないと私は考えています。

理由は簡単で、それでは美味しくないからです。

それを、具体的な事例を元に次の段でご説明します。

 

 

②うまみ調味料の有無と塩分量の相関の例

2023年2月の過去投稿では三つの食品を例に挙げ、「うまみ調味料で減塩」が疑わしいと感じる理由について書きました。

レトルトカレー」「ポテトチップス」「たまご豆腐」の三食品で、うまみ調味料入りの製品の方が、塩分量が高い傾向にあることをご説明しました。

しかし、我が事ながら非常に抜けた話ですが、自社製品の例を挙げる方がよほど適切だったようです。

 

それは、「塩ふき昆布」です。

昆布の同業者のことですからあまり悪く言いたくはないのですが、本日は下記の大手メーカー2社の製品と、こんぶ土居製品を比較します。

www.fujicco.co.jp

www.kurakon.jp

 

まず、比較品の原材料は以下の通りです。

〇『ふじっ子 塩こんぶ』

「昆布、しょうゆ、たんぱく加水分解物、砂糖、昆布エキス、食塩/調味料(アミノ酸等)」

〇『くらこん 塩こんぶ』

「昆布 (北海道産)、醤油 (大豆・小麦を含む)、食塩、醤油加工品 (大豆・小麦を含む)/調味料 (アミノ酸等)、甘味料 (ソルビトール、甘草)、増粘多糖類」

 

調味料(アミノ酸等)、が読み取れるので、共にうまみ調味料を含んでいます。

 

また栄養成分表示から読み取れる製品100g中の「食塩相当量」は、それぞれ以下の通り。

フジッコ 塩こんぶ

 食塩相当量22.5g

◆くらこん 塩こんぶ

 食塩相当量23.9g

 

これに対しまして。

こんぶ土居の「細切しおふき」。

konbudoi.shop-pro.jp

原材料は下記の通りです。

真昆布(北海道函館市産)
丸大豆醤油(和歌山県東牟婁郡製造)(原材料:丸大豆、小麦、塩)
濃縮だし(大阪府製造)(原材料:真昆布、鰹節、鰯煮干し)
たまり醤油(三重県鈴鹿市製造)(原材料:丸大豆、塩)
伝統味醂岐阜県加茂郡製造)(原材料:もち米、米麹、米焼酎(乙類))
純米酒(長野県佐久市製造)(原材料:米、米麹)
和三盆糖徳島県製造)(原材料:さとうきび、砂糖)

 

ご覧いただける通り、うまみ調味料は一切含んでいません。

そしてこの製品100gに含有する「食塩相当量」は、たったの「8.9gです。(株式会社食品微生物センター調べ)

先にご紹介した他社2製品は「22.5g」と「23.9g」でしたから、半分以下です。

 

 

ちなみに、前述の他社製品には減塩バージョンも存在するようで、そちらも比較に用います。

www.kurakon.jp

原材料は以下の通りで、たんぱく加水分解物や酵母エキス等のうまみ調味料は含まれていますが、所謂化学調味料と呼ばれる「アミノ酸等」は含まれていないのが見て取れます。

原材料名   :昆布(北海道産)、醤油(大豆・小麦を含む)、砂糖、水あめ、たんぱく加水分解物(大豆を含む)、乳糖、醸造酢、食塩、酵母エキス、寒天、かつおエキス、でんぷん

 

また栄養成分については、食塩相当量 2.8g(1袋27gあたり)と公開されていますので

他の製品と同様に製品100gあたりで換算しますと、食塩相当量10.4gという数字になります。

 

整理しますと。

フジッコ 塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」入り)

 食塩相当量22.5g

◆くらこん 塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」入り)

 食塩相当量23.9g

◆くらこん 減塩塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」なし) 酵母エキスは入っています》

 食塩相当量10.4g

◆こんぶ土居 細切しおふき(すべてのうまみ調味料なし)

 食塩相当量8.9g

 

これを見れば、「うまみ調味料の使用」と「含有する食塩相当量」には、正の相関関係がありそうなのは、誰の目にも明らかでしょう。

うまみ調味料業界が主張する「うまみ調味料で減塩」の真逆です。

なぜこんな結果になるか。

その理由について、次の段落でご説明したいと思います。

 

 

③しょっぱくない塩

「塩味」という味覚は、裏腹の要素を含んでいます。

塩分は人体に欠くことのできない栄養素ですし、つまり『塩は間違いなく美味しい』でしょう。

しかしその一方、舌を刺すような刺激も含みます。

その刺激があるからこそ、多いと「しょっぱすぎる」という嫌な感覚につながるわけです。

適切な濃度が大切です。

 

では仮に、「しょっぱすぎない塩」が存在したとしたら、どうなりますでしょうか。

「しょっぱすぎる」という嫌な感覚に繋がりにくいわけですから、必然的に使いすぎが起きやすいでしょう。

実際に「しょっぱすぎない塩」をつくることは簡単で、うまみ調味料を混ぜれば良いのです。

製品で言えば「アジシオ(味の素株式会社が製造する、食塩とグルタミン酸ナトリウムの混合品)」などは、正にそれに当たります。

普通の塩とアジシオ、両者の味比較をしていただければ、私が申し上げていることを感覚から理解していただけるかと思います。

 

そもそも、「塩カドを感じること」や「しょっぱ過ぎると感じること」は、塩分を取り過ぎないようにするために、人体に備わっている防御作用なのだと思います。

アジシオの例の通り、うまみ調味料がその防御反応を麻痺させ、「しょっぱすぎない塩分」「塩味を感じにくい塩分」が実現するわけですから、過剰に使うことになるのは当たり前でしょう。

それを、「塩ふき昆布」の事例は示しているのではないでしょうか。

 

私共の製品は、減塩を追求したものではありません。

たいしてレシピも変えず数十年、私共が考える「おいしさ」を追求してつくってきました。

例えば、この製品の製造時に醤油を増量したり、比較品のように食塩を併用すれば、当然に含有塩分量は増します。

しかし、そんなことをすれば「しょっぱすぎる」製品になります。

その一方、大手2メーカーの製品は私共の製品の2倍以上の塩分量が含まれているわけですが、それでいて尚「しょっぱすぎない」のです。

こんなパラドックスを成立させてしまうのが、うまみ調味料です。

 

 

④塩とうまみ調味料は、相性が良い

食べ物には、相性があります。

それは、うまみ調味料でも同じで、合うものと合わないものがあるのです。

今や、スーパー等で売られている加工食品には、ほとんどの場合「調味料(アミノ酸等)」と表記される、うまみ調味料が含まれています。

化学調味料不使用」を謳う製品であっても、類似の効果の「たん白加水分解物」や「酵母エキス」等が入っているものです。

 

しかし一方、甘い物にうまみ調味料が入ることは、ほとんど無いと言って良いでしょう。

和洋問わず、砂糖が使われる菓子の類の原材料表示欄に「調味料(アミノ酸等)」の表記を見ることは、ほとんどありません。

つまり、うまみ調味料は、「塩分を含む食品と相性がよく、甘い食品と相性が悪い」のだと思います。

多くの方に、体験として納得していただけるでしょう。

これについては、うまみ調味料の産みの親である池田菊苗氏も言及しているところであって、1912年の報告書にて「食塩と組み合わせると特に味が良くなる」と書いています。

(「グルタミン酸塩の味について」 (1912年 東京帝国大学理学部 池田菊苗) より)

 

「食塩とうまみ調味料が、味覚的相性が良い」。

この事実を見れば、「うまみ調味料を使うことによって減塩につながる」なんてはずがなく、お互いに引き合って、共に使うことに繋がりやすいのは、当然だと思われませんでしょうか。

 

 

⑤弊害「たん白質量の誤認」

さて前述のように、ご紹介した他社のしおふき昆布にはうまみ調味料が含まれているわけですが、その量は、どうやら非常に多いようです。

それは前述の『②うまみ調味料の有無と塩分量の相関関係』と同様、栄養成分の分析によって見えてきます。

公開されているデータから、食塩相当量と共にたんぱく質量を併記します。(製品100g中)

 

製品① フジッコ 塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」入り)

 たんぱく質 24.6g、食塩相当量22.5g

製品② くらこん 塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」入り)

 たんぱく質 27.1g、食塩相当量23.9g

製品③ くらこん 減塩塩こんぶ(「調味料 (アミノ酸等)」なし) 酵母エキスは入っています》

 たんぱく質 8.5g、食塩相当量10.4g

製品④ こんぶ土居 細切しおふき(すべてのうまみ調味料なし)

 たんぱく質 11.9g、食塩相当量8.9g

 

所謂化学調味料「調味料(アミノ酸等)」を含む①と②が、圧倒的にたん白質量が多いです。

この差こそが要注意なのですが、何故たん白質量とうまみ調味料が関係するのでしょうか。

 

以下の文部科学省のサイトに詳しいですが、食品に含有する「たん白質量」を計算する際の手法としては、「アミノ酸量」又は「窒素量」が使われています。

www.mext.go.jp

 

そして、表示上で調味料(アミノ酸等)と書かれるうまみ調味料は、主成分が「グルタミン酸ナトリウム」であり、グルタミン酸アミノ酸の一種です。

つまり、「調味料(アミノ酸等)」を多量に使うということは、それ即ち「アミノ酸含有量が多い」ということに繋がり、同時に栄養成分表示上での「たん白質量の数値が増える」ことも意味するのです。

 

そもそも、しおふき昆布は、昆布を醤油や味醂などの調味料で煮て乾燥させた製品ですから、本来は特にたん白質が豊富ではありません。

 

それでいて、「調味料(アミノ酸等)」無しの

製品③ くらこん 減塩塩こんぶ「たん白質含有量、8.5g」

製品④ こんぶ土居 細切しおふき、「たん白質含有量11.9g」

 

に比べて、「調味料(アミノ酸等)」ありの

製品① フジッコ 塩こんぶ、「たん白質含有量、24.6g」

製品② くらこん 塩こんぶ、「たん白質含有量、27.1g」

 

が圧倒的にたん白質含有量の多いこと。

それは、「調味料(アミノ酸等)」に由来すると考えるのが妥当で、含有量の差の分だけ化学調味料が使われているのだとすれば、こういった製品には本当に多量のうまみ調味料が含まれているのだと思います。

表示上、見かけのたん白質含有量が多くなっているのは、こんな仕組みだと考えています。

 

これは現在の栄養成分表示の欠陥のひとつであって、「非必須アミノ酸」である食品添加物グルタミン酸ナトリウムであれ、アミノ酸スコアの高い自然のたん白質であれ、とにかくアミノ酸が多ければ即ち「たん白質豊富」と見えてしまうわけです。

肉や魚、大豆など、自然のたん白質豊富な食品でなくても、うまみ調味料を多量に含めば、表面的に「タンパク質豊富な食品に映る」、これは大変に大きな問題だと思います。

アミノ酸スコアの大切さについては、過去投稿でも書いていますので、是非ご参照下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

更に、たん白質量から含まれるうまみ調味料の多寡を推定する試みは、本日のメインテーマである「減塩になどつながらない」という私の主張の補強にもつながるのです。

2023年2月の投稿で例として取り上げた「レトルトカレー」「ポテトチップス」「たまご豆腐」の三食品では、「どちらかと言えば、うまみ調味料入りの製品が塩分量も多い傾向にある」といった程度の差でした。

しかし今回のしおふき昆布の例は、そんなレベルで無いのはご紹介した通り。

たんぱく質量に影響を及ぼすほど多量に使えば使うほど、それに伴って塩分含有量も大きく増えてくるわけです。

どの角度から見ても、うまみ調味料業界の主張と真逆の現実が見えてきます。

 

 

⑥成立しない仮定に基づく主張

冒頭に書いた通り、うまみ調味料メーカーが主張する減塩効果とは、「食塩を減らし、それをうまみ調味料で代替する」ということを条件にしています。

そんなことが実際に成立する食品も、中にはあるのかも知れません。

しかし、今回の事例で見える通り、多くの場合代替などされません。

むしろ逆で、

『うまみ調味料を入れたら、その分塩分も多めに入れないと味のバランスが取れない。』

が正解でしょう。

 

ある仮定の元に話を進めておきながら、その仮定が現実に広く成立しているかどうかの検証が全く不十分です。

どんな実験データに基づいて主張されているのかは分かりませんが、市販製品という何よりの「現実」「実例」と食い違うわけで、不適切だと言わざるを得ません。

是非是非、お気をつけください。

 

『まとめ』

繰り返しになりますが、下記の過去投稿でも、うまみ調味料の問題点は指摘しました。

konbudoi4th.hatenablog.com

私もうまみ調味料の存在を全否定するつもりはありません。

しかし、「文化を破壊し」「健康を害する」、この2点だけは間違いないかと思います。

「うまみ調味料が減塩に効果的」などという誤った健康イメージを植え付けることは、是非やめるべきだと思うのですが。

さてさて皆様方、いかがお考えでしょうか。

 

(了)

 

(2024年7月16日追記)

本日、こんぶ土居スタッフにて、他社製品の比較試食会をしました。

お味の感想はひとまず、栄養成分表示の食塩相当量を記録しておきます。(製品100gあたり)

K 社13.6g、W社16.4g、M社15.7g でした。

 

 

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