「異物混入」。
これは、食品関係の事業者が常に頭を悩ませる問題です。
新聞やテレビ等の報道でも、加工食品メーカーや外食産業での異物混入事故のニュースを、たまに耳にします。
私共も、食品を扱う者として他人事ではありません。
納入されてくる昆布にも異物が含まれていることがあり、お恥ずかしながら、過去にこんぶ土居製品でもご指摘を受けたことがございます。
昆布だけを例に取っても、様々なリスクがあります。
海中に生えているものですから、他の様々な生物と共棲しているわけで、例えば表面に他の海藻が貼りついていたり、海底の砂が付着していたり、エビの赤ちゃんのようなものが付着していたり。
エビの類は、甲殻類にはアレルギーをお持ちの方も多いので、特に気になります。
しかしこれらの生物は、昆布の海域にいるわけですから、付着リスクが存在するのは当然のことです。
天然昆布は、水揚げ後に水洗いすることは通常ありませんで、そのまま干します。
自然のもの以外では、やはり近年マイクロプラスチックの付着も多くなっているような気がします。
マイクロプラスチックとは5ミリ以下のプラスチック片のことを指すようですが、昆布の表面についていることがあります。
これとて、海中に浮遊しているものですから、昆布に付着リスクがあるのは当然で、防ぎようがありません。
私共での昆布の選別時に、注意して目視で取り除くしかありません。
更には、「タバコシバンムシ」という虫の幼虫がいることもあります。
こちらも、昔より増えたような気がします。
暖かい環境を好む虫なので、昆布産地の北海道では少ないはずなのですが、温暖化で状況も変わってきているのでしょう。
水分も無い、食べるものも昆布だけ、こんな状況ですので繁殖することはないのですが、昆布の表面でしぶとく生きています。
この虫は、冷凍すると死ぬようですから、昆布をケースごと冷凍する対応などもあるようですが、これは結局死骸が残るわけですし、根本的には意味が無いようにも思います。
様々な異物混入リスクの事例をご紹介しましたが、これらを完全に排除する方法は、ありません。
当然私共は、消費者の方々が不快に感じられないよう努力するわけですが、難しさを痛感します。
昨年も、ある大手昆布製品メーカーにて、だし昆布に「チャタテムシ」という虫が混入していたとのことで、製品回収のニュースがありました。
こんなニュースを目にするにあたり、「回収」が正しい対応であるのか、疑問に思うところもあります。
語弊があるかも知れませんが、完全にリスク排除はできないわけですから「入っていることもある」ということをご理解いただくことは難しいのでしょうか。
幸いにして、「チャタテムシ」にしても「タバコシバンムシ」にしても、病原菌を媒介したりすることは無いようで、健康問題を引き起こすリスクはありません。
問題のある製品を手にされた方には、お詫びと良品との交換をするのは当然のことですが、「該当製品を全量回収にかかる」というスタンスが正しいのかどうか。
無農薬栽培のキャベツにアオムシがいる、といったような事例は、言わば当たり前のことです。。
それを防ぐには、薬品まみれにするしかないでしょう。
そんなことが、本当に消費者のためでしょうか。
他メーカーの製品回収について触れましたが、仮にこんぶ土居製品で同様のことが起きた場合、個別の対応は当然させていただきます。
しかし健康に問題を起こすリスクが無いのなら、全量回収はしないつもりです。
前述のメーカーが回収した昆布、どうなるのでしょうか。
問題があるとして回収したものですから、廃棄する他ないようにも思いますが、そんなことが本当に社会的に正しいのでしょうか。
食品は「自然の産物」。
その背景をご理解いただけますと、非常に助かります。
(了)