前回のブログ投稿で、海苔のことを書きました。
その中で、海苔の酸処理について、こんな一文を書いています。
『また、見かけは黒々と美しい海苔ができますが、本来の味と香りは損なわれがちです。』
やはり海苔も、黒いものがなんとなく高級に見えがちなようです。
実は、これは昆布でも似たようなことが言えます。
写真を見て頂きたいと思います。
この2枚の天然真昆布、どちらが品質の良い昆布でしょう。
右のものは黒く、左の昆布は茶色いですね。
なんとなく右の黒いほうが高級そうに見えませんでしょうか。
しかし、昆布の状態として良いのは左の昆布です。
昆布の品種によっても微妙な違いがあるので、一概には言えませんが、良い状態の昆布は通常「飴色」をしています。
平たく言えば茶色っぽいのです。
しかし、例えばスーパーの棚に黒い昆布と飴色の昆布が並んでいたら、確実に黒い昆布のほうがよく売れます。
こんな背景があるので、昆布を黒く仕上げたいという販売業者の思惑が出ることがあります。
色を黒く仕上げるために、人為的にアプローチできる要素としては、乾燥の方法があります。
昔は、昆布も天日乾燥しかありませんでしたから、温度が上がってしまうことなどありませんでした。
しかし、今は乾燥機も使われる時代ですので、その温度を変えることができるわけです。
改めて天日乾燥と機械乾燥については投稿しますが、一概に機械が悪いと言うことでもありません。
しかし、本来の温度帯から離れた高温で乾燥されたり、そんなことがあれば品質に問題が起きるのは当然のことです。
この高温乾燥をすると、昆布は黒っぽく仕上がる傾向にあります。
そうなれば、漁師さんも高温で昆布が乾きやすいので仕事が早く終わる、販売する側は黒っぽい昆布で売れ行きが良い。
言ってみれば好ましい状況であるわけですが、美味しさの面では問題です。
皮肉なことですね。
消費者の方が見た目で昆布を選ばれるのは自然なことだと思いますし、無理もありませんが、少し認識を変えていただければ嬉しいです。
こんぶ土居で販売しているだし昆布は、黒くありません。
「昆布は飴色」、「黒すぎる昆布は本来でない」とご理解いただければと思います。
(余談)
下の画像のような、まだら模様になった昆布を、業界では「虎昆布」と呼びます。
虎の模様のようですね。
消費者の方からすれば、何らかの異常が起きているように見えることでしょう。
しかしこの虎昆布、何の問題もありません。
むしろ、良い昆布に限ってこんな色合いに乾くようにさえ感じます。
見た目で物を選ぶことは簡単ではないですね。