過去投稿で、ある納豆工房のことを書いています。
先日、この「らくだ坂納豆工房」さんが、ある方から依頼を受けて、納豆をつくられました。
その依頼とは、「自家栽培の大豆で納豆を仕込んで欲しい」というものです。
そんな依頼をされたのが、こんぶ土居から徒歩10分少々の場所で、『maemuki suit! | マエムキスーツ』というブランド名でアパレルのお仕事をしておられる小西宏和さんです。
過去には、天然真昆布の色素で染めたタオル生地を使ったシャツを作っていただいたこともあります。
小西さんは、服飾業界の方なのですが、食品にも強い関心をお持ちで、非常に面白い取り組みをされています。
本日のテーマの「大豆」も、そのひとつ。
素性を、ご説明致します。
その前に、まず日本では農家の数がどんどん減少し、未来の食糧確保に大きな懸念が出ています。
過去の景気の良かった日本であればともかく、経済的に停滞している現代日本では特に、海外から食品を輸入すれば良いという考えは如何にも危険でしょう。
しかし、近い将来に食糧自給率が上がりそうな予想は、なかなか難しいものです。
日本では後継者不足を理由に、「耕作放棄地」がどんどん増えています。
なんとかこの問題を解決する道があれば良いのですが。
小西さんの大豆は、愛媛県西条市にある御祖父が所有しておられた農地で栽培されたものですが、残念ながら農業の後継ぎがなかったそうです。
小西さんは、この土地を使って、実験的な試みを様々にしておられます。
そのひとつが、大豆栽培であったわけですが、手法が非常に興味深いのです。
簡単に言えば、「放置して、自然に育つのを待つだけ」の栽培方法です。
小西さんからお預かりした写真で、大豆の育ってきた過程をご覧ください。
2022/5/11 畑の現場調査
2022/6/18 播種
2022/6/26 発芽
2022/7/16 雑草整理
2022/8/30 雑草整理
2022/9/24、10/8 枝豆収穫
2022/12/3 大豆収穫
2022/12/4 大豆収穫、脱穀
2022/12/15 大豆脱穀
小西さんは、大阪在住です。
当然、愛媛の農地を頻繁に訪れることはできません。
つまり、本当に放置に近いのです。
たまに雑草の整理に行かれただけです。
肥料も農薬もやっていません。
手作業での脱穀は現実的でないようですが、そこさえ機械化できれば、後は難しくないとのことです。
この話をお伺いしたときは「こんなことが可能なのか!」と非常に驚きました。
この大豆でつくった納豆も分けて頂いて食べましたが、とても美味しい納豆でした。
私は昆布屋の家に生まれ、大阪生まれ大阪育ちですので、農業の現場など何も知らないわけですが、「常に農家の方が手間をかけて栽培する」というのは、必要条件ではないのかも知れません。
できるだけ効率的な農業を目指すのであれば、手をかける必要があるのかも知れませんが、仮に非効率な農業であっても、仮に作物の品質に難があったとしても、耕作放棄地になるよりは、よほど良いはずです。
「手間がかからない」「放置でOK」
継続のために、これほど素晴らしいことは無いように思います。
社会に実装するには、まだまだハードルも多いのかも知れませんが、小西さんの大豆栽培には、未来の食糧事情を改善する可能性を感じます。
日本の大豆の自給率は、1割以下です。
遺伝子組み換えの農薬まみれの大豆が大量に入っている今。
小西さんが示された「放置型オーガニック農業」によって、日本の大豆の自給率が高まるのであれば、本当に素晴らしいことだと思います。
引き続き、お取組みに注目したいと思います。
いつか、小西さんの栽培された大豆で、こんぶ土居製品をつくれたら面白いなぁ、と夢想中です。
(了)