私は、昆布や食に関する正しい情報をお届けしたいと考えて、このブログを書いています。
わざわざ太字で正しい情報と書いたのは、世にウソ情報が溢れているからです。
情報の真偽を見分けるためには基礎知識が必要な場合が多いわけですが、例えば昆布について、一般の方が基礎知識を持っておられることは少ないでしょう。
それゆえに、「誤情報を誤情報だと判断できず信じてしまう」ということは、普通に起こり得ます。
これは非常に残念なことで、なんとかならないものかと頭を悩ませます。
本日のブログを書くきっかけになったのは、こんぶ土居も昔からお世話になっている東京の鰹節問屋「タイコウ」さんからのお問い合わせでした。
この↓サイトに載っている昆布の情報が正しいのかどうか、ということです。
後半で説明しますが、結論から申しますと「ウソ情報、多し」ということになってしまいます。
このサイトを運営されている「IN YOU MARKET」さん。
「本物が見つかる」”日本で一番厳しい基準”を目指す「本物」が勢ぞろいする唯一無二のオーガニックマーケットプレイス
と謳い、食品や日用品を販売しておられるようです。
私は存じませんでしたが有名だそうで、調べてみると、自社YouTubeチャンネルの登録者は1万人以上、Instagramのフォロワー数3万人以上と、結構な影響力を持っておられます。
影響力が強ければ強いほど、正しい情報を出す必要があるのは当然ですね。
しかし先に書きましたように、このサイトで昆布に関して書かれている内容にウソが多いので、大変恐縮ながら「悪い事例」として紹介し、正しい理解を得て頂く一助になればと思います。
リンクを貼った販売サイトの商品、まず、名前がめちゃくちゃ長いです。
「自然栽培のナチュラル早煮こんぶ|農薬・添加物一切不使用!下茹で不要!スープやお料理良に「サッと加えるだけ」でおいしい出汁が味わえる!おでんや煮物にピッタリ!時短料理にも!神奈川の栄養豊富な海で養殖!すぐに煮出せる便利な昆布!」
これが商品名であるようです。
もう、この商品名だけでも、下記①~③のように3つも問題点があります。
①自然栽培
昆布の自然栽培とは何なのか、意味が分かりません。逆に自然栽培でない昆布とは何でしょうか。
②農薬・添加物一切不使用!
昆布の栽培時に農薬を使うなんて聞いたことがありませんし、だし昆布に添加物が使われる事例も、私は全く知りません。
「商品の特徴」のタブには「化学肥料不使用」とまで書かれていますが、海中で行う昆布養殖に、どうやって化学肥料をやるのでしょうか。
③下茹で不要!
「昆布の下茹で」とは何でしょうか。そんな調理方法を私は知りません。
商品名だけでも、これだけの問題が存在しています。
商品説明の本分に移れば、更にウソ情報がてんこ盛り。
誤情報が多すぎるので長くなってしまいますが、サイトからそのまま抜粋します。
だし昆布のうまみは「干し方」で決まります!
詳しく言いますと、以下2ポイントで決まります。
①干す前に下茹でするか、しないか
市販されているだし昆布の多くが、収穫後干す前に一度茹でられています。
グツグツというよりもサッと湯通しする程度ですが、少なくはないうまみがここで流れ出す可能性があります。
②丸ごと干すか、カットして干すか
市販されているだし昆布で、使いやすい大きさにカットされているものがありますよね。
その多くが、干す前にカットされているものです。
干す前にカットしてしまうと、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれてしまう可能性があります。
一方で、干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができるため、大企業ほどこの「カットしてから干す」方法を取りやすいといえるでしょう。
(以上、引用おわり)
『だし昆布のうまみは「干し方」で決まります!』
とありますが、もちろん干し方も品質に影響あるものの、昆布の品種や産地、天然か養殖かなど、そういった要素の方がより重要で、誤解を招きかねない表現です。
『市販されているだし昆布の多くが、収穫後干す前に一度茹でられています。』
とありますが、そんなことしません。サラダ昆布のような一部の用途を除き、ほとんどが海から水揚げしてそのまま干します。
『市販されているだし昆布で、使いやすい大きさにカットされているものがありますよね。その多くが、干す前にカットされているものです。』
とありますが、逆です。長い状態のまま干し、乾燥後にカットされています。
『干す前にカットしてしまうと、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれてしまう可能性があります。』
とありますが、昆布のうまみ成分が乾燥中に抜けもれる、とは一体なんでしょうか。意味がわかりません。
『一方で、干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができるため、大企業ほどこの「カットしてから干す」方法を取りやすいといえるでしょう。』
とありますが、カットして小さくなってしまった昆布を干すのと長いままの昆布を干すのを比較して、どちらが作業効率が良いかは想像つきませんか?「干す前にカットすることで、干し時間が短くなり、効率的にだし昆布を作ることができる」なんて聞いたことがありません。
「大企業」などと書いてますが、昆布を干す作業をしているのは漁師さん方です。
企業でなく、皆さん個人経営です。
現場を何も知らずに書いているのが丸わかりです。
以上です。
少々の誤りは誰にでも起こり得るものですが、短い内容にこれだけウソ情報が詰め込まれた事例も珍しいです。
営業妨害をするわけではありませんが、「あまり信用できない販売業者」と見なされても文句は言えないように思います。
ついでに言えば、価格もまぁまぁ高いのです。
こんぶ土居オンラインストアで販売している下記製品と、「養殖昆布」という意味で同じカテゴリーであり、単価が非常に近いのですが、一度だしを取り比べてみていただければ、根本的に別物のクオリティであることは、どなたにもお分かりいただけるかと思います。
冒頭に書きましたとおり、このサイトの存在を教えて下さったのは、東京の鰹節問屋「タイコウ」さんですが、「IN YOU MARKET」の鰹節情報も、似たような状態です。
以下の販売ページで「添加物・保存料・化学調味料不使用」などと書かれていますが、どこの鰹本枯節に保存料や化学調味料が使われていると言うのでしょうか。
冒頭にも書きましたが、「正しい情報」と「正しく見せかけた情報」とが、見分けられることを私は期待するわけですが、さてさて、どうすれば良いのでしょうか。
なかなか難しい課題です。
「IN YOU MARKET」さん、発信力が強いゆえウソを信じてしまった人も多いんだろうなぁ、と思います。なんとも罪深いことです。
最後に、鰹節について、いい加減に「オーガニック」と謳うことの問題点をタイコウさんが書かれたもののリンクを貼っておきます。
「オーガニック」という言葉を振りかざして優良誤認を誘う業者には、是非お気をつけ下さい。
類似の投稿として、世に伝わる誤情報について以前に書いたブログもございます。
ご一読下さい。
(了)