こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

南茅部高校 2020年夏北海道出張レポート④

前回投稿しました、函館市立磨光小学校の児童との20年に亘る交流。

それには、続きがあります。

 

NHKが平成19年に、番組でこんぶ土居のことを大きく取り上げて下さいました。

毎年夏に浜へ行って漁師さんの手伝いをしている現場の姿など、非常に長い時間取材して放送してくれました。

この番組は全国放送でしたので、北海道でも見ることができたわけです。

 

偶然この番組を見ていた昆布産地の北海道南茅部高校の生徒さんの中で、こんぶ土居へ行ってみたいと思ってくれた人がいました。

ちょうど南茅部高校では、秋の修学旅行で関西へ来るのが恒例で、そのタイミングを利用して、わざわざ校長先生が将来昆布漁師を継ぐ意思のある生徒さんを4名引率して訪問して下さいました。

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来られた生徒さんの中には、小学校時代に三代目による磨光小学校での一日授業を聞いてくれていた人もいました。

 

それ以後、就学旅行時のこんぶ土居訪問は南茅部高校の恒例となり、毎年秋になれば高校生が来てくれます。 

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彼らは大阪で、自分の町で生産された昆布が大切にされ、人の生活に役立っていることを実感するのです。

浜で生活していれば昆布は見なれたものですが、それがどこに運ばれ、誰の何の役に立っているのかを知る機会はありません。

 

彼らが来てくれた時には、6年前の磨光小学校での一日授業のことも必ず尋ねます。

驚くべきことに、彼らは当時のことを例外なく記憶してくれているのです。

非常に嬉しいことです。

私共の取り組みも、無駄にはなっていないようです。

 

おかげで、南茅部へ行きますと、私共のことを知らない人はほとんどいなくなりました。

これこそが、長年の交流で得られた信頼関係だと思います。

今年の出張でも南茅部高校を訪問してきましたが、コロナウイルスの関係で秋の修学旅行自体が無くなってしまう可能性もあるようです。

感染が収束に向かい、今年も生徒さんに会えることを願っています。

 

天然真昆布が危機的な状況にある今、それを回復する取り組みが必要なわけですが、それは漁師さんの協力なしには絶対に成し遂げられません。

そのために、これまで培ってきた関係が非常に役に立っています。

 

下の写真は、美味しんぼ原作者の雁屋哲先生他、様々な方がご協力くださった二年目の様子です。

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この日のことは改めて別日に書きたいと思いますが、雁屋哲氏のブログ「雁屋哲の今日もまた」でも読んでいただけます。

http://kariyatetsu.com/blog/725.php

 

次回のブログの投稿は、磨光小学校でも南茅部高校でもこんぶ土居と関わってくれた、非常に真面目で良い青年漁師についての、嬉しくも悲しいお話です。 

 

 

函館市立磨光小学校 2020年夏北海道出張レポート③

 

白口浜天然真昆布の産地である、北海道函館市の旧南茅部町には、地元の子供たちが通う小学校があります。

磨光小学校です。

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こんぶ土居では、三代目の時代から生産者の方々との信頼関係の構築に努めてきました。

また同時に、次代を担う若者や子供たちにお伝えすべきこともあり、磨光小学校にて五年生を対象に一日授業を平成11年から毎年続けてきました。

 

白口浜天然真昆布は、「献上昆布」の別名が示す通り、江戸時代から最高級の昆布だと知られてきましたが、実は地元での消費は非常に少ないのです。

大部分は昆布文化の特に発達した大阪へ運ばれ、全国的な流通もなかったことから、地元では郷土の産物の価値が正しく理解されていません。

そんな中で、児童の父兄や地域の方々が担う昆布産業の価値を正しく知ってもらうために始めた取り組みです。

 

平成11年から始めましたので、もう21年間続けたことになります。

何でもそうですが、継続には大きな力があります。

初年度に5年生だった児童は、今32歳になっています。

つまり、地域の若年層全員に向けてお話してきたわけです。

 

今年はコロナウイルスの影響で、例年通りのことができるか分かりませんが、先日の出張の際にもご挨拶してきました。

学校の方でも、是非継続して欲しいと言っていただいています。

過去には、漫画「美味しんぼ」の原作者である雁屋哲氏が、私共の取り組みに賛同し、小学生に昆布の価値を話して下さったこともありました。

三代目の引退時には、感謝状をいただいたことも非常に嬉しい出来事でした。

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天然真昆布が危機的な状況にある今、このような取り組みは、必要性を増しているように思います。

一次産業では共通の課題である後継者不足。

後継者の育成にも私共の取り組みは貢献した自負もありますが、彼らが大人になったとき過去と同じように自然の恵みが十分に得られ、浜での生活に問題ないようにしなければなりません。

ある意味責任重大です。

時代と共に移り変わるテーマについて、子供さんと共に考え続けたいと思います。

 

原彰彦北海道大学名誉教授 2020年夏北海道出張レポート②

以前からお伝えしております天然真昆布の危機。

それを救う手立てを模索し、取り組んでおります。

今年の夏の北海道出張の主たる目的は、その道筋を探すためです。

多くの方が協力して下さっているので、それを記録するためにも、主に人物を軸として出張レポートを書きたいと思います。

 

今年は、不思議なご縁で北海道大学水産学部の原彰彦名誉教授とお知り合いになることができました。

大阪に住んでおられるお嬢さんを訪問するために来阪された際に、奇跡的なタイミングで接点を持つことができました。

原先生は魚の方がご専門ですので海藻は畑違いなのですが、他の研究者や行政機関、企業等を紹介して下さったり、本当に有難いことです。

 

今回の出張でも、私が宿泊しているホテルにわざわざ愛車のジムニーで迎えに来て下さって、役に立ちそうな場所を朝から一日かけて次々と案内していただいて、どうしてそこまでして下さるのか不思議なほどです。

特に伝手の無い状態ではなかなか話を聞いてもらえないようなところでも、原先生が間に入って下さると本当にスムースです。

他の方々の反応を見ていても、先生の人望が見て取れます。

 

環境が悪化する中で天然真昆布を救うことは、簡単なことではありません。

ある試みを実現するために多くの方のご協力が不可欠ですが、このような人脈は数珠つなぎです。

私欲のためでなく守るべきもののために動けば、それに賛同して協力して下さる方々は次々に現れます。

 

大変な取り組みではありますが、自分が動き出せば、周りも動くことを実感しています。

それが、やがて大きなうねりとなって物事を動かす力を持つようになることを期待しています。

 

始まったばかりの取り組みではありますが、もはや後ろには引けないような状況です。

協力して下さった方々の期待を裏切らないためにも、粘り強く取り組み、成果を上げたいと思います。

 

2020年夏、北海道出張レポート①

 

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この漁船は、2020年6月27日投稿の「平成16年夏、昆布漁のお手伝い」で書いた、故・吉村捨良さんが使っていた昆布採りのための漁船です。
https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/27/092818

今は誰も使う人がいません。

 

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この斜路を降りて漁に出ましたが、斜路も使わなくなっているので、少し寂しい感じです。


6月27日のブログで書いた昆布漁は、まさにこの前で採取をしたのです。


しかし現在、このあたりには一切昆布は生えていません。
当時とは、全く様変わりしてしまいました。

(7月7日投稿、「天然真昆布の危機」)

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/07/07/094116

 

 

今週は北海道へ出張していますが、過去と同じように昆布漁の手伝いなどをやっている場合ではなくなりました。
危機的な状況にある天然真昆布を救う手をなんとか見つけるべく、様々な方に話を聞いて解決策を模索する日々です。

 

現在の危機的な状況を、誰も良いことだとは思っていません。
元に戻って欲しいと皆が思っています。
ただ、願っているだけでは解決しません。
具体策が必要ですが、あまり有効な取り組みが為されているようには見えません。


本来、こんぶ土居のような零細企業が取り組むべき問題ではなく、業界団体や昆布産地で十分な対策をして欲しいものです。

 

三代目が30年ほど前に、当時の業界としてはタブー的であった漁協との関わりを始めたのは、品質の問題を解決するためでした。
それは、こんぶ土居の製品の品質を上げたいとの思いであったわけですが、そのために川汲浜の天然真昆布の品質全体を上げる必要があったのです。
これはこんぶ土居のためであると同時に業界にもプラスに働くことであったわけです。
本来品質向上の取り組みは、漁業者や業界団体ですべきことだったでしょう。

 

『時代は繰り返す』、そんな気もします。


しかし、テーマは「品質を上げる」から「瀕死の天然真昆布を救う」に変わっています。
遥かに重大で、遥かに困難なテーマになってしまいました。

 

ただ、動き出せば少しずつ何かが見えてきます。
助けてくださる方も多々います。

今日のブログからしばらくは、2020年の昆布産地出張レポートを書くつもりです。


未来に、この活動が実を結ぶよう、粘り強く取り組みを続けたいと思います。

 

 

うまみ調味料の功罪と、昆布屋としての展望

 

家庭で手作りの食事を用意する人が、残念ながらどんどん減ってきているようです。

私共は昆布屋ですので、その価値を理解し使って下さる方が増えることを、当然望んでいます。

知っていただく機会として開催してきた「たぶん日本一のだしの取り方教室」は、今年で14年目です。

今後も、様々な取り組みは続けていきますが、それでも難しさを感じることばかりです。

近い未来に於いて、家庭で昆布だしを常用する方が増えている予想図は、なかなか描きづらいものです。

 

前回の投稿では、うまみ調味料の歴史について少し書きました。

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/07/09/091210

もう、化学調味料が発明されてから100年以上が経過するようですね。

 

その後も、うまみ調味料の業界は進化を続け、様々なタイプのものが登場しました。

化学調味料に代わって多く使われるようになったうまみ調味料の代表格は「酵母エキス」でしょうか。

このうまみ調味料は、化学調味料に比べて味がマイルドであることや、食品添加物でなく食品として扱われることから、多用されるようになりました。

それによって、「化学調味料無添加!」とアピールして販売する構図も非常に多いです。

うまみ調味料のカテゴリーによって変わる原材料表示については、過去投稿をご参照下さい。

「表示を免除されるもの①」

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/05/27/160912

 

うまみ調味料業界の技術は、日進月歩です。

実際に、過去と比べて安価な大量生産品の味覚的な品質は飛躍的に上がっています。

簡単に言えば、今の時代「まずい加工食品」があまり無いと思います。

「おいしくない加工食品」なら、たくさんあります。

ただ、「まずい」と断言してしまえるような製品は、少ないのではないでしょうか。

 

例えば、100円均一のお店へ行けば、様々な食品が並んでいます。

すべて100円ですね。

普通に考えれば、そんな価格で販売できるわけがないのです。

作る側になることを想像すれば分かります。

徹底的な原料や手間のコストカットをしないと、100円などではとても売れないはずです。

ただ、そんな商品であったとしても、吐き出さないといけないようなまずいものがあるでしょうか。

 

今の時代、「60点」の商品なら大量に安く簡単に製造することができるのだと思います。

これらは、本物の素材を使用して作った製品と同じような品質は決して出せませんので、「95点」のものはできません。

過去には、「安かろう悪かろう」という言葉がありましたが、現在は安くても「普通」のものなら手に入るのだと思います。

 

食品の、こういった構造にうまみ調味料は大きく貢献しています。

「自然なもの」「伝統的なもの」を使わずとも、なんとなく味を調えてしまうことが簡単にできるのです。

このような状況ですと、手間とコストをかけて昔ながらの良い原料を使わなくてもいいじゃないかと考える方が出るのは、普通のことだと思います。

ただこれは、伝統的で自然な食品の衰退に関係します。

本物が価格競争に敗れて淘汰されていってしまうのです。

 

昔ながらの伝統的な食品の中には、本当に人を幸せにするような素晴らしく美味しいものが存在します。

言ってみれば「100点に近い」食品です。

人間の工夫によって作り出されたものもありますし、単に自然から与えられるものもありますね。

例えば昆布屋的に申し上げるなら、本当に品質の良い昆布と鰹節があれば、特別な調理技術などなくても素晴らしいだしが誰でも用意できます。

この素晴らしい食品の品質は、いかにうまみ調味料の世界が進化しようと、決して到達できないところにあると思います。

ただ、そのような高品質な本物の食品は、時代と共に、どんどん入手できなくなっています。

 

昆布を例に考えます。

大阪の昆布の業界は江戸時代から続く仕事ですので、先人が多くいます。

過去の昆布を知る方々は、例外なく「昔の昆布の品質は良かった」とおっしゃいます。

これは、昔の記憶を美化して言っているのではなく、実際にそうであるようです。

理由は簡単です。

 

昆布は人間が生み出したものではありません。

それをつくってきたのは、豊かな自然に他なりませんが、それがどんどん破壊され変容しているわけです。

昆布の品質が下がってきたとしても、不思議はありません。

また、過去の投稿でお伝えしたように、例えば真昆布を見れば、昭和40年代に昆布養殖が実用化されるまでは全量が天然昆布だったわけです。

ところが、近年では養殖昆布がほとんどを占めます。

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/07/07/094116

どう考えても、過去と比較すれば品質は下がってきています。

 

つまり、うまみ調味料の品質は日進月歩で向上し、本物の昆布の品質は時と共に低下する。

差が縮まってくるわけです。

このような状況で、うまみ調味料に侵食される伝統的なだしの業界がⅤ字回復することなど、考えられるでしょうか。

 

 私共としても、多くの方に良い食品を理解して使っていただくことが願いです。

ただ、前述のような理由により、それは簡単なことではありません。

不本意ではありますが、本物を理解する経済的にも余裕のある一部の方向けの仕事になってしまうのではないかと危惧しています。

 

しかしこれは健康にも関係している話なので、なんとかその裾野を広げ、できるだけ安価で便利な本物を提供する必要性を感じています。

過去にも書きましたが、「十倍出し」や「しっとりふりかけ」、「ミネラルいりこん」などは、自然素材のだし文化を守り、同時に健康にも寄与すると自負しているので、安くおいしいものを多くの方に買いやすい形で提供し続けたいです。

 

時代が大きく移り変わる中で、自分の仕事の社会的な役割を考える必要があります。

未来の世界において、社会に昆布屋としてどのように貢献できるか、その明確な答えが出せないのであれば私共の仕事も必要ないということでしょう。

 

こんぶ土居ウェブサイトのトップページには

『こんぶ土居では、伝統ある大阪の食文化を守り育て、本物を次代に伝えることが私どもの使命だと考えています。』

と書きました。

http://www.konbudoi.info/main/index.html

 

 

こんな理由もあって私共では、業界の衰退にも関係するうまみ調味料を一切使わないことを自らに課し、伝統的な原料のみを使って製品づくりをしているわけです。

 

一人でも多くの方が本物の価値を理解し、支持して下さることを願っています。

 

「うまみ」という言葉

「うまみ」という言葉は、「UMAMI」として、国際語の地位を確立しつつあると言われます。

それが素晴らしいものであるかのように、もてはやされることも多いと思います。

ただ、こんぶ土居では「うまみ」という言葉を、できるだけ使わないようにしています。

 

まず、「うまみ」という言葉は、そもそもどんな意味でしょうか。

ネット上で見つけた、辞書の説明を引用しますと。

 

うま‐み【▽旨み/▽旨味】 の解説
《「み」は接尾語》

㋐食物のうまい味。また、うまい度合い。おいしさ。「材料の―を生かして調理する」

かつお節・昆布・シイタケなどでとった、だしの味。→旨み調味料

2 技芸などの巧みさ。「汚れ役に―を出す」

3 仕事・商売などで利益やもうけが多いというおもしろみ。「あまり―のない商売」

[補説]1㋑は、明治41年(1908)池田菊苗が、昆布のだしからグルタミン酸を抽出してこの味の主成分であることを発見し、うまみと名づけたもの。近年では、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ、五つめの味覚とされるようになった。→味の素

 

(以上、引用終り)
 
この辞書の説明は非常に的確です。
「うまい」の名詞形ですから、その意味としての1㋐「美味しい」の意味や、2 「上手」の意、3 「利益が多い」、が出てくるのは当然ですね。
 
そして注目すべきは、1㋑と末尾の補足説明↓です。
 
[補説]1㋑は、明治41年(1908)池田菊苗が、昆布のだしからグルタミン酸を抽出してこの味の主成分であることを発見し、うまみと名づけたもの。近年では、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ、五つめの味覚とされるようになった。→味の素

これが、現在食の業界で多用される「うまみ」「UMAMI」の意味ですね。
つまり、この言葉には命名者がいたわけです。
辞書に記述されている通り池田菊苗という人物で、昆布の味を分析する過程でグルタミン酸の分離に成功し、それが発端になっています。
この池田菊苗氏は、1908年にそのナトリウム塩としてのグルタミン酸ナトリウムの製法特許を取得しています。
「味の素」の誕生です。
 
研究として昆布のおいしさについての理解が得られたことは素晴らしいですが、それが化学調味料を生み出すことにつながっていくわけです。
 
  
グルタミン酸は昆布の成分の一つですが、当然ながらグルタミン酸の水溶液と昆布だしの味は同じではありません。
そもそも、化学調味料の主成分はグルタミン酸ではなく、そのナトリウム塩としてのグルタミン酸ナトリウムです。
 
昆布がきっかけで発見されたものだとしても、化学調味料の味と昆布の味を、同じ「うまみ」という言葉で表現されてしまうのは、やはり腑に落ちないのです。
こんぶ土居で「うまみ」という言葉を多用したくないのは、こんな理由によるものです。
 
どんなものにも功罪はありますし、良い部分ももちろんあると思います。
ですが、現在では化学調味料を多用した食品が素晴らしいものだと考える人は、少数派でしょう。
弊害も多々あるものです。
次回の投稿では、うまみ調味料の弊害について書く予定です。
 
 こんぶ土居では今後も、うま味調味料の味ではなく『㋑かつお節・昆布・シイタケなどでとった、だしの味。』を追求します。

天然真昆布の危機

前回の投稿で書きました、「献上昆布」の別名もある北海道の旧南茅部地区で産出する天然真昆布。

この日本を代表する高品質な昆布が、大変な危機に瀕しています。

平成26年が最後の豊作で、以後不作が続き、その程度は年々ひどくなっています。

この件について、最初に大きく報道して下さったのは産経新聞の北村博子記者だと思います。

2019年の12月28日に、一面記事として大きく取り上げて下さいました。

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この記事は、ネット上でも公開されているので、そちらの方が読みやすいかと思います。

https://www.sankei.com/life/news/191228/lif1912280014-n1.html

 

記事内のグラフには、数年間の南かやべ漁業協同組合の天然真昆布の生産量データがでています。

豊作であった平成26年には700トンほどあった漁獲量が、記事上の最新年度である平成30年には27トンになっています。

それが、現在では更に状況が悪化し、今年の生産量予想は、なんと5トンです。

たった6年で700トンが5トンになったわけです。

99%減、壊滅的ですね。

 

北村記者の記事は、ある意味画期的でした。

この昆布の危機が、気づかれにくい構図を含んでいるからです。

それは、養殖昆布の存在です。

 

養殖昆布は決して悪いものではありません。

天然物と品質は違いますが、海中での農業のようなものです。

しかも、栽培中に農薬や肥料を一切やりませんので、とても自然です。

通常、昆布の生産量をおおまかに見るとき、天然昆布も養殖昆布も合算される場合が多いのです。

 

その養殖昆布は、現在も比較的安定した収穫量があります。

前述の南かやべ漁協でも、「天然真昆布」の生産量は激減しているものの、養殖も含めた「真昆布」の生産量はさほど減っていません。

こんなデータを見てしまうと、危機的な状況に気づきにくいのです。

事実、スーパーへ行ってもデパートへ行っても、今でも普通に北海道産の真昆布は販売されているでしょう。

これは、「天然」と明記されていない場合、ほぼ全て養殖昆布だと思います。

 

この状況をどうみるかは、人それぞれです。

天然物がなくても、養殖の昆布があるなら、それでいいじゃないかと考える方もあるでしょう。

ただ、天然ものが採れなくなった原因は、大きく言えば環境問題です。

その環境の変化は、養殖昆布にも決して良いものではありません。

このまま問題を放置すれば、養殖昆布にも大きなリスクが待っていると考えるべきだと思います。

昨年、北海道大学の研究として、このまま温暖化が進行すれば一部の昆布は絶滅の危機にあるとの警告が出されました。

https://www.hokudai.ac.jp/news/191031_repr.pdf

 

こんぶ土居としては、前回の投稿でも書いた通り、江戸時代から脈々と続く大阪の昆布文化を守るためにも、是非解決すべき問題だと考えています。

来週からは、北海道へ出張です。

様々な方の協力を得て、なんとか解決策を見出したいと思います。

 

こんぶ土居インスタグラムも、普段はスタッフが運営してくれていますが、7月13日~16日までは北海道から土居がお届けする予定です。

このブログでも、活動の内容をご報告したいと思います。