こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

木づかい運動

昨年開設しました、大阪の伝統昆布文化を伝える小さな小さな資料館「大阪昆布ミュージアム」。

内装には、国産の無垢板の木を、ふんだんに使用しています。

構造の強度の問題で骨組みについては木造では無いですし、外壁も消防法の関係で耐火建築物にする必要がありで木は使えませんでしたが、内装は木材だらけです。

1階から4階まで、壁面や天井は全て秋田杉。

階段の踏み板や4階の大テーブルは、楠です。

 

 

これは、こんぶ土居の環境への考え方を反映したものでもありますが、三代目の時代から同じ考え方です。

天然真昆布の常態化した大凶作。

林業の衰退は、その遠因とも言えなくもないように思います。

過去と比較すれば、明らかに国産の木材の需要は減少傾向です。

 

山ばかりの国土の日本で、木材利用が少なく、利用されたとしても輸入木材ばかりの現状は、おかしいと思われませんでしょうか。

植林しながら適切に利用すれば、木は完全に持続可能な素材で、環境保護につながります。

おうちや店舗に、国産の無垢板を使ってみませんか?

少し高いかも知れませんが、気持ちが良いものですよ。

 

以下に、三代目が平成20年当時に書いた、当時不定期で発行していた「こんぶ土居通信」を抜粋しておきます。

ご一読下さい。

 

 

こんぶ土居通信№18 平成20年3月発行木づかい運動
 地球温暖化や道南産真昆布の大凶作を目の当たりにして、私どもがかねてから唱えてきた「国産食材と国産木材の使用」の必要性を改めて強く感じます。国産食材のほうは最近の中国製餃子事件や輸入食材の高騰により少し目が向ようになったかに思われますが、国産木材のほうはまだ一部の人しか関心を示していません。では、なぜ国産木材を使用することが地球温暖化や道南真昆布と関係があるのでしょうか。
 林業を営む方々によって適切に管理された山林では、樹木の成長をよくするために間伐が行われ、日光が地表にまで降り注ぎます。そのため、背の高い樹木と共に、地表ちかくでは下草が日光を十分に浴びてバランスを保ちながら茂ることができます。雨が降れば、枯葉や下草がスポンジのように雨水をたっぷり含み、雨が止んでからもチョロチョロと小川に栄養豊富な水を注ぎ込み、水不足に悩まされることは少なくなります。雨水が一気に川に流れ込むのを防ぐ「緑のダム」です。この栄養たっぷりの水は、河川を伝って海へ流れ込み、昆布をはじめとする海藻類を育てます。また、プランクトンによって魚介類が育ち、漁業が栄えます。また、樹木は成長過程において、空気中から二酸化炭素を大量に吸い込みますので、植林をしながら持続的に林業を発展させることは、地球温暖化の防止にも効果的なのです。
 ところが、近年では木造建築が少なくなり、使ったとしても安い輸入木材がほとんどです。そのため日本の木材の価格は下落し、林業の経営が成り立たず山林が放置されていることが多くなっています。鹿児島大学の遠藤日雄教授(森林政策学 農学博士)のお話によると、かつて山林の所有者は子供の学費や結婚資金には木を切って、その費用をまかなっていたのですが、今では木を切って売ると逆に請求書が来るらしいのです。
 このような状況では、木を切らなくなったり、手入れをしなくなるのは当然のことです。手入れされず放置された山林では、木は密生し、日光が地表まで届かないため下草が生えず土が露出し、雨が降ると水は土砂とともに一気に川に流れ込みます。鉄砲水や洪水、又は水不足を引き起こし、結果として農業や漁業をだめにしてしまいます。
 私どもが建築に間伐材を使ったり、ギフト用の木箱に国産(主に秋田県産)杉の端材を使った25年位前はまだ地球温暖化などは、言われておらず単にベニヤ板など新建材が嫌いだっただけなのですが、最近はこのような事情で国産材の使用を強く勧めたいと考えるようになりました。
 微力ですが実行していることは、10年前から始めた昆布の産地の小学生への食育のなかで話す、こんぶ土居通信(№13平成17年8月)などで記述する、17回続けているだし教室で間伐材の割り箸を使用、店頭での販売、包装紙等を非木材紙から国産パルプ70%の紙(間伐ホワイト)への切り替え、燃料としての検討などです。
 また、私どもが参画している「良い食品づくりの会」第33回鹿児島フォーラムで前述の遠藤教授から研究者としてのご講演をお聴きし、自分の考えを検証させていただきました。お話の中で、この問題に事業として取り組んでおられる会社を具体的に教えていただいたり、鹿児島の郷土菓子「あくまき」(注)が木づかい菓子であることなど、いろいろ学んだことを今後の運動発展に繋げたいと思っています。
 結論としましては、私たちが国産木材を使うことにより、林業が経済的に成立つようにならなければなりません。植林のみが注目されていますが、木を使う(買う)ことにより、そこで出た利益でプロが植林をするという、持続可能なバランスの取れた行動が必要だと思われます。
 山梨県の「クリニックいのうえ」院長井上勝六先生が国産間伐材を使った割り箸を早速注文されたり、香川県の久保食品様、鹿児島県のスーパーマーケット タイヨー様が販売されるなどこれらの事柄に理解を示し、敏速に行動される方たちが身近におられるのは心強い限りです。
 今後は、森林ボランティアとして実際に山に入っていくことも考えています。
 
 (注)あくまきは、鰹節を燻すのに使った広葉樹(主に樫)の灰であく汁を作り、
   もち米を漬け、竹の皮に巻いて煮込んだもの。
木つながり 仏師(木彫仏像)久保田唯心先生→南木曾木材柴原薫社長→遠藤日雄教授