会ってみたいと思っていた人と不思議なご縁で繋がる。
最近の私には、こんなことが多いように感じます。
過去にも、素敵な取り組みをしている岡山さんという昆布漁師さんについてこのブログで書きましたが、この時も私が話を伺いに行ってみたいと考えていた矢先に、先方から来て下さったので驚きました。
タイトルに書きました『イシハラ昆布』さん(以下、石原さん)は、利尻昆布の産地である北海道の礼文島で昆布漁師さんをしている方です。
石原さんがある方から私共のことを聞いて下さったそうで、Instagramのこんぶ土居アカウントをフォローして下さったのが、最初の接点です。
そんな流れで私も石原さんのInstagramを見るようになったのですが、何より印象に残るのは『楽しそうな石原さんの暮らし』です。
https://www.instagram.com/ishihara_konbu?igsh=Mng5aGtudnVjeWFo
「こんぶ土居店主のブログ」では、過去から何度も北海道の昆布生産の現場に山積する問題について書いてきました。
その主な内容は自然環境の悪化に関することでしたが、実は近い将来に、それ以上の大問題が控えているのです。
それは、『昆布漁師さんの後継者不足による生産者の減少』です。
その減少スピードは異常に早く、10年後には昆布漁師さんの数は「半減に近い」と予想されています。
これは、私共の目前に迫る「大問題」です。
昆布文化は、社会的な要因からも危機的状況にあるわけです。
では、なぜこんな状態になってしまうかと言えば、端的に言えば「生産者の方々が昆布漁師という仕事を魅力的だと考えていない」からです。
その背景にある具体的理由としては、
〇そもそも仕事が非常に大変であったり
〇「昆布を生産する」という仕事の意義が過小評価されていたり
〇北海道では昆布の利用の文化が浅いので、その真の価値が理解されていなかったり
〇労働環境を改善するイノベーションが起きにくい気風であったり
〇「浜での暮らし」に魅力を感じない人が多かったり
こんなところでしょうか。
この諸問題を解決していく必要があるのですが、最後に書きました「浜の暮らしの楽しさ」も非常に大切だと、昔から考えていました。
この「昆布漁師の浜での暮らしの楽しさ」の観点において、私は石原さんに、ある種の理想を見たのです。
石原さんのSNSでの発信から見えることは、ある意味単純です。
「自分の住む浜の自然」「そこで産する昆布」「その昆布を採って製品化する仕事」「自分の昆布が誰かの食生活に貢献していること」「浜での暮らし」、これらの全てを愛しているように見えることです。
実際にお会いした石原さんは、私の想像した通りの方でした。
楽しそうにご自分の仕事について話してくれました。
その「楽しさ」の背景に何があるのかを考えた時、石原さんの仕事への姿勢も関係しているようにも感じました。
「自分の考える昆布漁業の理想の追求」でしょうか。
「昆布漁師の仕事」を、単にお金を生む手段と考えているわけでないからこそ、「自分の昆布のあるべき姿」、「そのための正しい方法」に考えが及ぶのでしょう。
それは、イシハラ昆布さんのサイトを見れば説明されている通り、「干場への除草剤不使用」や「完全天日干し」といった具体的な取組に帰着しています。
「仕事の正しさ」と「仕事のやりがい」には、強い関係性があるはずです。
「自分は正しいことをしているんだ、という自負に溢れた人」と、「より正しい取り組みへ進む意志の弱い人」、この両者を比べれば、前者の方がやりがいを強く感じるはずで、これこそが「仕事の楽しさ」にも直結しているように思うのです。
昆布漁業の現状を考えると簡単なことでは無いとは言え、これだけ温暖化による気候変動によって昆布の生育に問題が出ているわけですから、昆布漁師さんも、できるだけ二酸化炭素の排出が少ない生産方法に関心を持つべきでしょう。
そうなれば、石原さんのような「天日干し」を可能な限り取り入れることにもつながっていくはずです。
「除草剤不使用」とて同じで、自分の暮らしの糧となる昆布が育つ海、それを除草剤で汚染することなど、避けられるべき事柄であるのは当然です。
正しさに向かう姿勢が弱いからこそ仕事への自負心が生まれづらく、昆布漁業を「お金を稼ぐための単なる労働」として見てしまうのではないか。
石原さんとのお話しの中で、そのようにも感じました。
こんぶ土居へ石原さんが来てくれた1月15日は、たまたま函館市役所の方々が私共を訪問してくれる日でした。
1月21日の函館市主催の下記のイベントに、私をスピーカーとしてお招きいただいているので、その打ち合わせです。
実は石原さんからご連絡をいただいたのは、来られた日の前日で、非常に急なことだったのです。
函館市のご予定は前々から決まっていたわけですが、私はそこへ石原さんも同席していただきました。
函館市さんには、当日にその旨をお伝えしたのですが、幸いにして快諾して下さいました。
行政の方にも、「楽しい昆布漁師の暮らし」の実例を、是非見ていただきたかったのです。
結果として、非常に良かったと思います。
いつか私も、石原さんの住む礼文島の元地を訪ねたいと考えています。
石原さんのお仕事現場を見て、「正しく楽しい昆布漁業」を広めるための方法について考えたいと思っています。
(大阪昆布ミュージアム4階にて、石原さんと函館市役所の方々と懇談)
(了)