こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

年始に、2021

明けましておめでとうございます。

本年も、良い食品づくりに努めて参ります。

宜しくお願い申し上げます。

 

こんぶ土居では、毎年メッセージを込めた年賀状を書いています。 このブログにも載せておきたいと思います。

(住所をお伺いしていない方には届いていないかと思います。申し訳ありません。)

 

 

(テキストは下部に別記)

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昨年を振り返ってみますと、大変な世相の中で新しい試みに意欲的に取り組んだ一年であったように思います。新製品もたくさん生まれました。春には緊急事態宣言下の「巣ごもり」を背景に「たぶん日本一安心な のり弁当」を開発していたのを思い出します。弁当を販売するには飲食店営業許可が必要で、その取得、レシピ開発などを始めました。事情により販売には至りませんでしたが、こんぶ土居の考えを盛り込んだ製品を目指したものです。販売を開始した新製品としては「昆布豆」「えびしお昆布」、内容一新の「にしん昆布巻」、そして、北インドの古典民族楽器シタール演奏家の石濱匡雄さんのご協力で製品化した栄養スナック「ミネラルいりこんスパイシー」は大好評で受け入れられ、作っても作っても売り切れ、嬉しい悲鳴を上げることとなりました。

 お客様への情報提供の目的で始めた「公式インスタグラム」「こんぶ土居店主のブログ」、10月末から稼働した「こんぶ土居オンラインストア」等、新しい取り組みから私共が学ぶことも多い一年でした。

 コロナ禍で大変なご苦労された方も多いとお察し致しますが、私共への負の影響も小さくありません。同時に、常態化した原料昆布の不漁による調達困難と原料価格の高騰、よくこれだけ逆風が吹くものだと呆れますが、支持して下さる方々に支えられ営業できているだけでも有難いものです。

 天然真昆布の危機については、昨年は何度も北海道を訪問して多くの方の意見をお伺いし、問題解決の方向性を模索しましたが、やはり大きなうねりを作り出すことの必要性を感じます。2025年の大阪・関西万博のテーマは「SDGs」です。この年をひとつの着地点として見定め、大阪と北海道の力を合わせ、行政も学術界も漁業者も昆布業界も大きく巻き込んで、天然真昆布の資源回復を目指します。

 

 

 

やはり天然の魚を大切にしたい

 

 先日、調理法について、ひとつの検証する必要があり、鶏肉を焼いてみました。

近所のスーパーで普通の鶏肉を買ってきて、軽く塩コショウだけして焼いたのですが、鶏肉がおいしくありませんでした。

どうまずいのか表現しづらいですが、とにかく良くなかったのです。

 

所謂、ブロイラーでしょうか。

調味料で強く味をつけたのならあまり問題ないのかも知れませんが、非常にシンプルな調理にしたものですから、鶏の個性がそのまま出て気になりました。

こういった経験をしてしまうと、やはり安い鶏肉に対して気持ち悪い感覚が芽生えてしまうものです。

 どんな環境でどんなエサで育った鶏であるのか、私たちには知ることができません。

 

 

こんな構造は、豚肉でも牛肉でも同じです。

牛肉については機会を改めて、牧草肥育牛(グラスフェッドビーフ)について書きたいと思います。

 不自然な肉の味は、不自然な飼育に起因するのは言うまでもありません。

 家畜は人間が育てる以上、その飼育方法で品質が変わるのは当然で、中でも飼料が及ぼす影響は非常に大きいでしょう。

 

 

話を魚に移します。

世界人口が増え続ける中で、水産資源は枯渇傾向にあります。

1980年頃までは、天然魚の漁獲量は年々増えていたのですが、そこから横ばいです。

時期を同じくして、代わりに養殖魚が徐々に増え、現在では養殖魚の漁獲量の方が天然を上回っています。

こうなれば、もはや魚も家畜同然です。

 

養殖が悪いというわけでは決してありません。

むしろ今の時代には、必要性が増しているとさえ言えるでしょう。

しかし、人間が管理して人間がエサをやって育てる以上、品質は様々です。

つまり、良い養殖魚と良くない養殖魚が、あるのだと思います。

 

私共の製品の「十倍出し」。

だしを取った後の昆布や鰹節や煮干しは、「しっとりふりかけ」や「ミネラルいりこん」として再加工していますが、それでも全量使い切れず、実は業者さんに引き取っていただいているものもあるのです。

その引き取り先での用途は、飼料です。

十倍出しのダシガラは飼料として何も問題ないとは思うのですが、その一方で暑い季節にはダシガラが悪くなるのも早く、飼料として加工されるまでに雑菌が繁殖したりしないか、勝手に心配になったりもしています。

 

当たり前ですが、養殖魚のエサの素性を私たちが知ることはできませんし、品質が必ずしも良いものとは限りません。

質の低い飼料で育てると魚の健康に問題が出ますから、その対策として薬品が多用されることにもつながるかも知れません。

  

 

難しいのは、前述のブロイラーとて質の劣る養殖魚とて、表面的なとらえ方をすれば高く評価されてしまう可能性があることです。農産物も同じです。

 

例えば、

 

〇味が薄く変な風味があり身がブヨブヨのブロイラーがあったとしても、それは言い換えれば「やわらかくてジューシー」であり、

〇不自然なにおいのするメタボ的養殖魚があったとしても、「天然の魚より、あぶらが乗っている」と評されたり

〇本来備えている味や香りが弱く、力のない野菜だとしても「糖度が高い」ことが評価されたり

 

このような事例は多々あるものです。

ここが難しいところで、「やわらかさ」「水分量」「あぶら乗り」「糖度」といった幼稚な感覚しか持ち合わせていない場合は、問題に気づくことができません。

私たちは、ずっとこんな食品に囲まれて生活しているわけですから、それが当たり前になって問題に気づけなかったとしても、無理のない話です。

 

 

 

その一方、やはり天然の魚は素晴らしいと思います。

肉で言えばジビエですね。

私たちが日常にジビエを食べる機会など多くはないわけですが、魚であれば、自然の中で自然なエサで育った魚を食べることができるのです。

肉を食べても本来の食性と違ったおかしな肉、野菜を食べても農薬まみれ、その中で天然の魚は最後の砦だと言えるかもしれません。

ぜひ天然魚をいつまでも食べられる世の中であってほしいと思います。

 

 

昆布屋としての私共の仕事で魚について配慮すべきなのは、製造原料として使う鰹節でしょうか。

資源問題についての注目点は、漁獲方法です。

 

「混獲」という言葉がありますが、漁業の際に、対象の種とは別の種を意図せずに漁獲してしまう、もしくは同種間においても、意図していたよりも小さい個体や、幼体を捕獲してしまう状況のことを指しています。

鰹節の原料魚の漁獲方法は「一本釣り」と「巻き網」の二種類ですが、混獲が起きやすいのは巻き網です。

こうして、非常に小さな子供のカツオが鰹節に加工されてしまうこともあるようです。

鰹節があまりに小さく細くなるので、「ペンシル鰹」などと呼ばれることもあるようで、漁業資源を守る上で大きな問題です。

こんな鰹節が、大量に販売されるめんつゆやダシパック、顆粒調味料の原料として使われているかも知れません。

 

私共の製品「本格十倍出し」に使用する鰹節の原料魚は、100%日本近海での一本釣りです。

「標準十倍出し」も、よほどの悪条件にならない限り一本釣りの原料魚です。

もともとは、おいしさを求めて一本釣りを選んだわけですが、今となってはそれ以上に、資源保護の観点から過去の選択が間違っていなかったことを実感します。

 

日本では、少し取り組みが遅れているようですが、水産物の持続可能性に配慮した水産物の認証制度(水産エコラベル)なども、各国で始まっているようです。

普通のスーパーなどで見かけることはまだ稀ですが、もし見かけたら積極的に購入するなど、天然魚の持続的な利用のために是非ご支持をいただきたいと思います。

 

 

(ご紹介)

冒頭で鶏肉について書きましたが、良い生産者の方も当然たくさんおられます。

こんぶ土居のお客様でも、養鶏農家がおられ、素晴らしい飼育をされています。

実際に現場を見せていただきましたが、100%国産の安全な飼料で、飼育環境も良く元気に鶏が走り回っていたのが印象的でした。

たまごも鶏肉も販売されています。

ご興味あれば取り寄せてみてください。

たまごについては、黄身の色にご注目。

鶏肉については、スーパーで安く手に入る肉と、同じ調理をして味比べをしてみて下さい。

驚かれると思います。

特に親鳥がおすすめです(肉質は非常に硬いですが)。

 

【いまい農場】

imaifarm.jp

 

今井さんの鶏も、言ってみれば良い飼料と良い環境で育てられた「養殖鶏」です。

他の家畜でも魚でも、良い養殖ものがあるのなら積極的に選びたいです。

 もし良い生産者を御存知なら、コメント欄などで教えて頂けると嬉しいです。

 

 

 

名に恥じぬ「PFCミネラルいりこん」

 このブログでも度々触れている、私共の製品「ミネラルいりこん」と、今年から新たに販売を開始した「ミネラルいりこんスパイシー」。

現代人が不足しがちな栄養素を手軽に補給していただくための、大豆と煮干しと昆布を主原料とした健康スナックです。

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特にスパイシーの方は、レシピ監修をして下さった石濱匡雄さんの力もあって、大好評で受け入れられ、作っても作っても売り切れる異常事態となりました。f:id:konbudoi4th:20201218155735p:plain

美味しく召し上がっていただき、それが健康増進にもつながるのであれば、本当に嬉しいことです。

しかし、本当に健康に役立つミネラル分が豊富であるのかは、成分分析をしないと何とも言えません。

 

 

ある栄養成分を含むこと、または、それが豊富であることを食品パッケージに書く場合、それは「栄養強調表示」と呼ばれます。

栄養強調表示は、メーカーが恣意的に書いて良いものではなく、定められた量をクリアしている必要があるのです。

 

基準については、こちら↓の資料の6ページをご参照下さい。

消費者庁作成資料『栄養成分表示及び栄養強調表示とは』

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/business/pdf/food_labeling_cms206_20201001_01.pdf

 

この基準に従い、検査機関に依頼して得たいりこんスパイシーのミネラル含有量を、上記資料の基準値と比較してご紹介します。

 

 

 

(単位:ミリグラム)(100ℊあたり)

 

亜鉛

〇強調表示基準 (高い旨)2.64(含む旨)1.32

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量3.5

 

カルシウム

〇強調表示基準 (高い旨)204(含む旨)102

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量959

 

〇強調表示基準 (高い旨)2.04(含む旨)1.02

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量5.7

 

〇強調表示基準 (高い旨)0.27(含む旨)0.14

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量0.54

 

マグネシウム

〇強調表示基準 (高い旨)96(含む旨)48

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量224

 

 

 

いかがでしょう。

多くのミネラル成分において、ミネラルいりこんスパイシーの含有量は、消費者庁基準など遥かに突破しているのがご理解いただけるかと思います。

この結果を見て、本当に嬉しくなりました。

タイトルにも書きました通り、名に恥じぬ「ミネラルいりこん」です。

 

 

そして、もうひとつご紹介したいことがあります。

 

実は先日から、商品名の改名をしております。

「ミネラルいりこん」から「PFCミネラルいりこん」に変えました。

「PFCバランス」という言葉を御存知ない方があれば、是非覚えていただきたいと思います。

栄養素を過不足なく摂取するための基本中の基本です。

 

Pは、ProteinのP、たん白質。

Fは、FatのF、脂質。

Cは、CarbohydrateのC、炭水化物。

 

所謂、三大栄養素のバランスのことを指しています。

日本人の多くは、たん白質の摂取が足りず、代わりに脂質の摂取量が推奨値より多い傾向にあります。

厚生労働省がその理想として提示している割合としては、ざっと「P:F:C」が、「1:0.6:3」です。

 

ミネラルいりこんスパイシーの100gあたりの三大栄養素量の分析値は、「Pが42.3g、Fが15.7g、Cが30.3g」でした。

同じ観点で割合を出しますと、「1:0.37、0.72」です。

 

日本人が不足しがちなたん白質を大量に含み、それに比べれば、脂質や炭水化物は少ないという栄養成分値になっているかと思います。

たん白質が多いのは、煮干しと大豆が原料の多くを占めるので当然と言えば当然ですね。

 

 

また、前述の「栄養強調表示」は、たんぱく質についても基準値を設けています。

〇強調表示基準 (高い旨)16.2(含む旨)8.1

〇ミネラルいりこんスパイシーの含有量42.3

 

やはりミネラル同様、圧倒的に高い数値が出ています。

改名通り、三大栄養素の観点からも良いと言えるのではないでしょうか。

 

「ミネラルいりこんスパイシー」は、おいしさ故、一度袋を開けたら全て食べきってしまうとのお声が続出していますが、それが健康にもつながるのであれば、本当に素晴らしいことです。

 

例えばミネラル成分のカルシウム。

特に子供さんの健康な成長には欠かせないイメージがあるかと思います。

中でも、牛乳はカルシウム補給源の代表格のように扱われてきました。

昔は「完全栄養食」などと言われ、その特殊な効果を刷り込まれてきました。

その流れを引きずり、今でも学校給食ではカルシム摂取のためだと言って、牛乳が出続けています。

乳製品は素晴らしい食品ですが、その弊害も指摘されることが多くなった昨今、言わば嗜好品としてお考えになれば良いのではないでしょうか。

 

ミネラルいりこんがあれば、牛乳など飲まなくても、カルシウム欠乏状態にはなりません。

本来これは、「ミネラルいりこん」の価値と言うよりも、小魚や海藻を多用した日本の伝統食文化の優秀さを証明するものだと言えるかと思います。

 

ウニと昆布の困った関係

 

報道されることも多くはないので、あまり気づかれないかも知れませんが、日本を取り巻く海の状態は、大きく変化してきています。

磯焼けのような現象は、北海道から沖縄まで、非常に広範囲に進んでいます。

天然真昆布の危機的な状況については以前から書いている通りですが、これは「藻場」が衰退していることの一側面であると見るのが妥当でしょう。

 

本日は、海藻とウニの関係について記したいと思います。

ここ数十年間、昆布の漁獲量が大きく減っているのと同様に、ウニの漁獲量も減っているのです。

この30年で、3分の1ほどになってしまいました。

昆布の状況とそっくりです。

 

ご存じの方も多いと思いますが、北海道のウニは昆布を食べます。

おいしい昆布を食べて、おいしいウニが育つのです。

過去においては、この共存に何も問題ありませんでした。

北海道の昆布産地でも、昆布漁師さんが時期になれば、言わば副業のような形でウニも採っていました。

 

ところが、今はウニが非常に痩せていて、採って割ってみても、卵巣が未成熟で売り物にならないものばかりだそうです。

理由は簡単、エサとなる海藻が不足しているからです。

こうなると、漁師さんも採りません。

放置され、ウニの個体数は減りません。

 

これは、負の循環を生みます。

〇『海藻がない』⇒『ウニのエサが足りない』⇒『ウニの卵巣が成熟しない』⇒『漁師さんが採らない』⇒『個体数が減らない』⇒『多数のウニが少ないえさを取り合う』⇒『わずかに残った未成熟な海藻まで食べられる』⇒『磯焼け

 (この繰り返し)

 

 

この恐ろしいループ。

現在北海道の昆布産地で起きていることは、まさにこれです。

ウニは飢餓状態に非常に強いらしく、エサがなくても簡単には死にません。

そのため個体数が多い状態が保たれてしまうわけです。

 

私共の原料昆布の主な産地である道南地方では、平成26年までは豊富に昆布が採れました。

そのため、当時は現在のような危機意識がなく、行政が支援する大規模な補助事業として、ウニの増産対策が為されてきた経緯があります。

 

行政の取り組みとして一度動き出したものを簡単に止められないのか、実は現在でも稚ウニの放流は続けられているのです。

天然真昆布大減産の中、売り物にならない稚ウニを育てて放流する。

なんとも皮肉な話です。

函館市も昆布の現状に問題意識は持っているので、近いうちに改善される可能性は高いですが、現状はそんな感じです。

 

昆布の不作の原因は様々ですが、一因としてウニ問題があるのは間違いないようです。

このような背景で、私もどうにか対策が取れないかと思い、北海道大学水産学部でウニを専門に研究されている浦和寛教授にご相談に伺ったりしておりました(2020年7月18日にブログ投稿しました原彰彦北海道大学名誉教授のお口添えで話が非常にスムースでした)。

 

そんな活動が、ひとつの面白い動きにつながるかも知れません。

 

 

先日、浦和寛教授のご紹介で、ある方から私宛に、ご相談のメールが届きました。

愛媛大学の井戸篤史客員准教授からです。

ご相談の内容は、ウニの飼料についてでした。

 

井戸先生は、ウニを畜養して製品化するための研究をされているのですが、ウニを育てるためには、当然エサが必要になるわけです。

ウニのエサに海藻は不可欠ですが、現在はカナダから海藻の粉末を輸入して利用されているとのことでした。

ただ、やはり様々な意味で国産飼料が良いのは当然ですので、その道を模索しておられます。

 

昆布は、食品になる葉体と、岩盤に着生する付着器官で構成されています。

後者は昆布産地では「ガニアシ」と呼ばれています。

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このガニアシは、その形状故に夾雑物も多く食用にはなりませんが、ウニのエサとしては活用可能です。

しかし、ガニアシは固いため、そのままではウニが食べないらしく、乾燥粉末化してウニが好んで食べるようペレット加工する必要があるとのことです。

つまり井戸先生が必要とされているものは、「ガニアシ粉末」なのです。

 

原料のガニアシの調達や、乾燥粉砕加工ができる業者さんの選定についてのご相談のため、私共を訪問して下さいました。

こんぶ土居では三代目の頃から昆布産地との交流を続けていますが、それを知った井戸先生が私共に期待して下さったのでしょう。

 

ウニは、幼生の状態から育てる完全養殖ではなく、ある程度大きくなってきたウニを捕獲してきて太らせる畜養の方が、遥かにコストが少なくて済むようです。

 

私が目指すのは、井戸先生のお取組みが実を結び、昆布漁師さんによる畜養のためのウニ捕獲が盛んになることです。

その捕獲したウニにエサを与えて品質を向上させ出荷することができれば、現在昆布とウニの間で起きている負のスパイラルを断ち切ることができるかも知れないと考えているわけです。

 

井戸先生の事業の成功は、天然真昆布の再生にもプラスになります。

なかなか面白いテーマを与えられたものです。

 

暗中模索で始めた天然真昆布再生の取り組みですが、動き出すことで新たに見えてくるものが多々あるのを実感しています。

井戸先生の事業の成功のため、お役に立てるよう努めたいと思います。

 

 

(余談)

井戸先生に、私共のことを最初にどこで知って下さったのかお尋ねしました。

きっかけは、滋賀県で麹づくりをされているハッピー太郎醸造所の池島さんだとのことで、非常に驚きました。

池島さんのことは、またいつか機会があればこのブログでも書きたいと思います。

 

 

経験からの、うまみ調味料の問題点

こんぶ土居の製品「十倍出し」。

「使い方を教えてほしい」と仰るお客様が多いので、YouTube上でレシピ動画を公開しています。

 

www.youtube.com

 

寒い季節になりましたので、鍋料理も良いかと思い、12月7日に「ごま豆乳鍋」のレシピ動画を公開しました。

 

このレシピを作成するにあたり、一般スーパーで売られている商品がどのような方向性なのかを確認するため、最寄りのスーパーで山積みに売られていたM社の「ごま豆乳鍋」液体スープを購入してみました。

 

味を見て、、こう言っては何ですが、本当に驚きました。

どう表現して良いのか分かりませんが、本当に不自然で強烈なうまみが舌に纏わりつきます。

 おいしいとかまずいとか、もはやそんな話ではなく、十倍出しを使用した「ごま豆乳鍋」とは全く「異質」です。

これは自分で納得いく素材でだしを取り、純正な調味料で味をつけたものと比べても、当然同じ感想になるはずです。

 

しかし、スーパーで山積みで売られているということは、美味しいと感じている人が多いと言うことです。

また、ネット通販のレビューなども参照しましたところ、非常に良いコメントが並んでいます。

こう考えると、「不自然で強烈なうまみ」だと思った私の感覚の方が、もはや普通でないということかも知れません。

多くの方は、これに何も疑問を感じずに、召し上がるのでしょう。

どなたかが喜んで食べているものを、私がまずいということなど、非常に失礼なことであるのは重々承知しています。

 

しかし、やはりこれは良くない状態だと思います。

 

簡単に言えば「本物の味が分からない人」が増えているのでしょう。

「本物の味が分かる」ということは「本物でないものに違和感を感じる」ということです。

M社の製品が好評なのであれば、それ即ち「本物でないものに違和感を感じていない」ということでしょう。

 

 

M社製品の原材料は下記の通りです。

 

『豆乳、すりごま、砂糖、チキンエキス、食塩、ねりごま、ごま油、大豆粉末、アミノ酸液、豆乳粉末、みそ、こんぶだし、調味料(アミノ酸等)、レシチン、炭酸カリウム

  

私が感じた「不自然で強烈なうまみ」の元は、原材料表示に記載されている、

『チキンエキス、アミノ酸液、調味料(アミノ酸等)』

によるものでしょう。

最近では、あまりアミノ酸液など使われなくなりましたが、この製品には含まれています。

 

やはりうまみ調味料のひとつの問題点は、依存性です。

今の時代は、うまみ調味料によって安価にどのようにでも強力なうまみを付与することができるので、そんな製品が氾濫するのも無理のないことです。

 つまり、常食すると舌がそれに慣らされ、自然な淡い味では満足できなくなるということです。

味覚の麻痺、です。

 

 

是非おすすめしたいことは、やはり「良い素材を選んできて自分で料理をする」ということです。

自分で作れば分かるのです。

 一般市販品と自分が丁寧につくったものが、どれだけ違うのか。

 

 

ちなみに、M社の製品、販売価格は298円でした。

内容量は750gです。

十倍出しレシピチャンネルでご紹介したものは、80ccの十倍出しを使って1000ccできあがるレシピですので、M社と同じ750g換算で言えば60ccの十倍出しが必要です。

標準十倍出しは400cc入りのものが1100円ですので、60cc分の価格は165円です。

豆乳とごまペーストは別途用意する必要があるとは言え、うまみ調味料で構成されたM社製品が298円に対し、十倍出し165円です。

この価格をどのようにお感じになりますでしょうか。

 

 世の中には、こんな事例がたくさんあるように思います。

本質をつかみ、表面的なものに流されないように注意したいものです。

 

本物を見分ける目を養うためにも『自分で料理をする』ことは、とてもとても大切ですが、「なべのもと」を買ってきてつくる鍋料理、果たして料理をしたことになるのでしょうか。

 

 

 

日本人がミネラル不足になる理由

以前の投稿で、こんぶ土居製品「ミネラルいりこん」開発の経緯を書きました。

 

 2020-06-23投稿「ミネラルいりこんの役割」

https://konbudoi4th.hatenablog.com/entry/2020/06/23/091125

 

商品コンセプトは単純。

カルシウムやマグネシウムなどのミネラル不足の傾向にある日本人のための、海産物から「おいしく栄養補給できる健康スナック」です。

 

実際に日本人は、ミネラルが不足しているのです。

それは、厚生労働省の資料を二つ参照すれば分かります。

〇「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

 〇「 国民健康・栄養調査結果の概要」

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000681198.pdf

 

日本人がミネラル不足になってしま理由については、ひとつは「水」が関係しているのではないかと思っています。

ここ大阪を含む特に関西は日本の中でも軟水傾向で昆布のだしに適している、などという話をよく聞きます。

それは実際に正しく、ミネラルの多い硬水では昆布の味が十分にでません。

特に海外では困ることも多々あります。

 

日本国内であれば地方がどこであろうと、世界的に見ればだいたい軟水だと言えます。

海外には、水道配管に石灰質が蓄積したりするほど、カルシウムが多い地域もあるようです。

 

市販されている国内外のミネラルウォーターを例に、ミネラル含有量を比較してみたいと思います。

①「南アルプスの天然水」(日本)

②「い・ろ・は・す」(日本)

③「コントレックス」(フランス)

④「ゲロルシュタイナー」(ドイツ)

 

それぞれ100ccに含有するカルシウム量をご紹介しましと

①0.6~1.5mg

②0.62~0.95mg

③45.8mg

④36mg

となります。

 

カルシウム豊富な食品の代表のように扱われる牛乳のカルシウム量は約110mgですから、③と④は、水であるのに非常に多量のカルシウムを含むことが分かります。

それに対して日本の水の①と②には、皆無と言って良いぐらいのカルシウム量しかありません。

 

③や④のような水を常飲する民族と比較すれば、日本人がミネラル不足になることなど、当たり前のようにも感じます。

つまり、日本の水は衛生的で口当たりも良くおいしいわけですが、栄養成分の観点では貧弱なのでしょう。

 

また、海外で野菜を食べると日本のものと比べて驚くほど力強い味を持っていることがあります。

そんな国の野菜をしばらく食べて日本に戻ってくると、味が薄くスカスカであることに驚きます。

そういった野菜を活かす調理が日本料理として発展してきたのだと思うので、良い部分もあるのでしょうけれど、海外のミネラル豊富な水を吸って育つ野菜と、日本の軟水を吸って育つ野菜とでは、その野菜の栄養成分にも大きな違いが出てくるものと思われます。

特に最近では、野菜も果物も糖度ばかりが高くて、味に力のないの作物が多くなっているように感じます。

水耕栽培の野菜などは、見た目は立派でも味も香りも弱いのが通常です。

ミネラル豊富なはずがありません。

 

水を飲んでも野菜を食べてもミネラルが少ない。

こんな理由によって日本人はミネラル不足になるのではないかと思います。

 

 しかし私たちの先祖も、そんな軟水国土で生きるにあたり、ただ手をこまねいていたわけではありません。

水や土にミネラルがないのであれば、別の場所から補給していたのです。

それは、海です。

 

特に、世界にも類を見ない海藻食文化は、考えてみれば少し不思議なものです。

まず、食べることの最大の意義は、カロリー摂取でしょう。

しかし通常、海藻にはほとんどカロリーなどないのです。

それでも日本人は昔から、あらゆる海藻を食べてきました。

これは、海藻を食べることの健康への意義を経験的に感じていたのではないかと思います。

ミネラル欠乏国土で生きるにあたって、成分分析などできない時代から、経験的に海藻食の重要性に気づいていたとしたら、昔の人の能力もすごいものです。

 

しかし、現代人はどうでしょう。

中には、栄養的に大問題がある食生活の方もおられるように思います。

 

過去に、「ヨウ素と海藻食」の投稿で沖縄の伝統食について触れましたが、伝統食文化は決して侮れません。

戦後からずっと、牛乳はカルシウム豊富で「完全栄養食」だなどと刷り込まれて来ましたが、近年ではその弊害も指摘されることが多くなりました。

日々、昆布と煮干しなどで出しを取ってみそ汁を作り、その具材がワカメだったりする。

そんな日本の伝統食の力をもう一度見直してみたいものです。

 

映画『タネは誰のもの』の感想

つい先日12月2日の参院本会議で、品種改良によって生まれた農作物の種や苗木の海外への流出を防ぐ仕組みを強化した、「改正種苗法」が可決されました。

近年では、海外へ日本の独自品種が無許可で流出する事例が多いようで、その防止策として「育成者権」を保護するためものです。

 

まず、農作物の種には「一般品種」と「登録品種」があります。

登録品種とは、簡単に言えば個人や団体が開発した独自品種です。

農林水産省に申請して、認可されれば登録品種となります。

今回の改正種苗法は、登録品種に向けたものであり、一般品種には及びません。

 

この登録品種は、言ってみれば誰かの著作物のようなものですから、それが「コピー」されていくようなことがあっては、育成者の権利が侵害されていると見ることもできるわけです。

 

コピーとは「種を取る」ことです。

育成者から種や苗が農家に有償で販売されたとして、それを育てて種を採取するのなら、言ってみれば農家で増殖させることが可能だと言うことでしょう。

そうなれば、もう農家は再び種や苗を買うことはないはずで、場合によっては、それを他者に分け与えることも可能だと思います。

こうなると、その種を育成した人へは利益が入らず、困ったことになりますね。

 

改正種苗法は、農家が独自に登録品種の種を取ることを禁じた法律で、その延長線上に、日本独自の登録品種の海外流出を阻止しようという狙いがあります。

 

繰り返しますが、農作物には「登録品種」と「一般品種」があり、改正種苗法は登録品種についてのものです。

ですから、今後も一般品種から種を取ることは全く制限されません。

登録品種は、全品種の中で一割ほどに過ぎず、一般品種がほとんどを占めます。

であるならば、やはり育成者権保護の観点から、改正種苗法は良い方向だと見ることもできそうです。

実際に、農家に種を自由に増殖されては、新品種の開発者としては、たまったものではないでしょう。

 

理屈の上で言えば、改正種苗法は正しい方向かと思います。

私自身、そのように考えていました。

以前から、ネット上の情報や、SNSで流れてくるもの、マスコミの報じるものであっても『種苗法で農家さんが種を取れなくなったら大変なんだ!!みんなで阻止しよう!!』といった、ある種の正義感を振りかざしたような情報が非常に多かったのです。

こういった場合、「登録品種に関して」の部分が表現されず、いたずらに危機感を煽り立てるようなものをたくさん見かけました。

そんな情報に触れるたびに、何やら嫌な気分になっていたものです。

 

 

先日、タイトルに書いた「タネは誰のもの」という種苗法に関する映画を見る機会がありました。

それを見て、少し考えが変わった部分がありますので、今日の投稿は、そのお話です。

 

 

結論として、「個人の権利の保護」と「国全体の未来の利益」という大きな話に関係しているように思いました。

前述のように、登録品種の育成者の権利は、当然保護されないといけませんね。

海外流出を防ぐことも大切でしょう。

その一方で登録品種を栽培する農家は種や苗を買い続ける必要が生まれ、コストが増すことになります。

 

つまりこれは、「農家」と「育成権者」の利害が対立しているということです。

ですから、どちらかを立てれば、もう一方が泣くことになります。

 

つまり焦点は、「どちらを泣かせるべきか」ということなのでしょう。

正しいとか正しくないとか、そんな話とも少し違うように思います。

たとえ理屈の上では正しいとは言えないとしても、より大きなものを守るために為すべき事もあるでしょう。

「今後の日本の食糧生産を、どうするか」という視点で考え、その方向性に合致する方を選ぶべきなのだと思います。

 

①農家を保護して農業を活発にする(育成権者が泣く)

②育成権者を保護する(農家が泣く)

このそれぞれについて考えます。

 

①については、現在の日本の食糧自給率と農業従事者の減少を抜きには語れません。

自給率が非常に低い日本、目下急速に農業人口が減少する中で、自給率は今後更に低下していくのでしょう。

個人的には、やはりこれはあまり好ましいことではないと思います。

日本の経済の先行きが非常に怪しい中で、『食べるものはお金を出して外国から買う』というスタンスは、やはり無理があるかと思います。

そうなれば、農家に有利な策を講じて、農業従事者の数を増やす必要があるのでしょう。

 

②については、育成者権は最大限保障されるべきだとは思うのですが、①の意義と比べてどちらが大事かと言えば、未来の日本を考えた場合個人的には①がより大切なのではないかと思います。

仮に理屈としては②の方が正しくても、それによって日本の未来に問題が発生するのであれば、育成者を泣かせる①の選択をすべきなのかも知れません。

 

 

映画を見て印象的だったのは、沖縄のサトウキビ農家の話です。

前述のように、全体で見れば登録品種は一割に過ぎません。

しかし、サトウキビに限って言えば、9割が登録品種だということです。

当然これまでは、沖縄のサトウキビ農家は、その登録品種を自家増殖しているのです。

今後は、それができなくなるのでしょうか。

 

私共でも昆布加工製品を製造するのに、種子島の粗糖と波照間島の黒糖も使用します。

共に原料は、地元のサトウキビです。

日本のサトウキビ農家が減って、伝統的な日本の砂糖が入手困難になると困ります。

代わりに何を使えば良いのでしょうか。

 

ひょっとすると、砂糖の需要は昔より減っているのかも知れません。

加工食品の原材料表示に「ぶどう糖果糖液糖」などと表示されているのをご覧になったことは無いでしょうか。

酵素やアルカリ処理によって果糖の割合を増した「果糖ぶどう糖液糖(異性化糖)」は砂糖と同等の甘さを持ち、清涼飲料水などにも多用されます。

これは、英語では「high fructose corn syrup」と呼ばれています。

corn syrupですから、原料はトウモロコシです。

そのトウモロコシは国産品であろうはずがありませんし、遺伝子組み換え作物の可能性も高いでしょう。

 

そんな新しい甘味料以外でも、例えば水あめを作るとしても同じことが言えます。

 こんぶ土居でも製品に甘味をつけるため水あめも使用することがありますが、その原料は国産のサツマイモの澱粉と国産の大麦麦芽です。

しかし、一般の安価な水あめや還元水あめと表示されるものの原料は、おそらく輸入のコーンスターチだろうと思います。

何しろ、こういった甘味料はコストが安く、私たちの周りの加工食品に、砂糖の代わりに使われることがどんどん増えているように思います。

アメリカでは加工原料のトウモロコシの収穫が多く、余ってきているという話も聞きます。

そんな事情とも関係あるかもしれません。

 

映画の中で表現されていて興味深かったのは、サトウキビが多く栽培される南西諸島には、産業と言えるものは砂糖ぐらいしかないということです。

つまり、サトウキビ栽培が廃れるのであれば、南の島から急速に人がいなくなるのでしょう。

場所によっては無人島化するかも知れません。

それは国防上の問題にもつながる可能性があります。

海外の一部の国にとっては、とても都合が良いのかも知れませんが。。

 

今回の種苗法は、2018年4月に廃止された「種子法」という法律とも密接に関わっています。

以前は、種は言わば国民の共有財として守られてきました。

新しい品種を開発するにしても、それは農業試験場などの公的機関に予算が与えられる形で進み、良質な種苗を農家に提供してきた経緯があるようです。

その背景になっていたのが種子法であったわけですが、それが廃止され、新しい種の開発が民間に移っていくことになります。

また過去からの公的な知見を、民間の育成者に無償で開示する方向になっているようです。

どちらかと言えば、この種子法の問題が、より大きいのかも知れません。

 

 

現場を知り、大きく長期的な視点で利益を考えることの大切さに改めて気づかされた映画でした。

何事も、頭の中の理屈だけで考えていてはいけませんね。

 

もしご興味あれば「タネは誰のもの」、ご覧になってもよろしいかと思います。

DVD化はされていないようですが、たまに小規模で上映会が開催されていたり、オンライン上映会などもやっていることがあるようです。

一時間ほどの短い映画ですが、なかなか面白い内容でした。