こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

『完全メシ?』なワケがない。機能性食品の弊害。

 

スーパーやコンビニ等で、機能性食品を見かけますが、やはりよく売れるようです。

その代表格である特定保健用食品、略して「トクホ」は、メーカーが巨額の費用を投じて、国のお墨付きを取ります。

時間とお金をかけても、それを十分回収できるだけの利益を見込んでいるということでしょう。

 

逆に言えば、『健康に悪いかも』というイメージで見られることを、食品メーカーは何より恐れているのかも知れません。

インスタントラーメンを『からだに悪いんだろうなぁ』と感じながら食べている人も多いように思いますが、そうであればメーカーは、その悪いイメージの払拭に取り組むわけです。

本日は、主にインスタントラーメン業界のトップランナーである『日清食品』の取り組みを元に、栄養機能食品を考えてみたいと思います。

 

 

話題の主に据えるのは、日清食品が展開するブランド『完全メシ』です。

www.nissinkanzenmeshi.com

 

日清食品の公式サイトから抜粋しますと。

 

33種類の栄養素が理想的なバランスで摂れる商品設計

「完全メシ」は、「日本人の食事摂取基準」で設定された33種類の栄養素をバランスよく摂取できるように設計されています。たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素のバランスがパーフェクトで、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸もバランスよく摂ることができます。

 

とのことです。

これ、基本的には良いことですね。

同一カテゴリーに属する他製品より、栄養的に優れているのであれば、良いに決まっています。

 

しかし、懸念事項もありまして。

 

①「サプリメントを混ぜただけ」に近い。

②それに頼り、正常な食に関心が薄れる懸念。

③たん白質量のカラク

以上3点について考えたいと思います。

 

まず、

サプリメントを混ぜただけ」に近い。

 

ここで言われる33種類の栄養素とは、以下の通りです。

 

様々なビタミンとミネラルが挙げられています。

Amazonで「完全メシ」と商品検索したところ、「カレーメシ 欧風カレー」という製品がトップに出ましたので、これを例にご紹介しますと、原材料は下記の通り。

 

ライス(米(国産)、食物繊維、コラーゲンペプチド、乳化油脂、食塩)、味付けの素(コラーゲンペプチド、植物油脂、オニオンパウダー、砂糖、トマトパウダー、乳等を主要原料とする食品、ドロマイト、小麦粉、香辛料、食塩、カレー粉、香味調味料、ココアパウダー、酵母)、味付豚ミンチ、フライドポテト、にんじん/カラメル色素、調味料(アミノ酸等)、グルコン酸K、増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、リン酸塩(Na)、トレハロース、塩化K、酸味料、乳化剤、香料、V.C、トリプトファン酸化防止剤(V.E)、ナイアシンピロリン酸鉄、V.B6、甘味料(スクラロース、アセスルファムK)、V.E、パントテン酸Ca、V.B1、香辛料抽出物、V.A、V.B2、くん液、葉酸、V.K、V.D、V.B12、(一部に小麦・卵・乳成分・牛肉・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む)

 

まず、「にんじん」、の後の/以後は、全て食品添加物ですから、まぁ添加物だらけです。

そこに様々なビタミンの名称が出てきていますから、この製品がビタミン豊富であるのは、添加しているからであることが分かります。

一方ミネラル類については、原材料表示を見てもあまり見当たりません。

その役割を担っていあるのが、原材料表示欄に読み取れる「ドロマイト」です。

これについては後述します。

 

 

この製品には、事実としてビタミンもミネラルも必要量が含まれているのでしょう。

それ自体は、良いことだと思います。

しかし、項目タイトルとして書いたとおり、これはサプリメント的です。

サプリメントに自然の食品に含まれるビタミンミネラルと同じ健康効果が期待できるのかどうかは、個々人で判断していただければ良いかと思います。

しかし仮にそうであるのなら、そもそもこんな食品は必要無いのです。

ビタミンミネラルを得る目的なら、『好きなもの食べて、サプリメントの錠剤さえ飲めば問題なし』ということになるのですから。

そう考えると、「こんな製品に意味ある?」と思ってしまうのです。

 

 

②それに頼り、正常な食に関心が薄れる懸念。

 

さて、前段で少し触れました「ドロマイト」。

これは言ってみれば、鉱物のようなもので、カルシウムとマグネシウムを豊富に含んでいます。

これが原材料に使われているから、カルシウムもマグネシウムも含有量が多いということになるわけです。

 

下の画像は、ある方が入院した際に、病院の朝食に付いていた「ふりかけ」ですが、こちらでも原材料表示のトップに出てきます。

f:id:konbudoi4th:20230627203555j:image

 

 

パッケージのおもて面にも、「カルシウム&マグネシウムが豊富!」と謳われていますね。

f:id:konbudoi4th:20230627202944j:image

 

これを見て、どのように感じますでしょうか。

昔は、病院の栄養士さんが、入院患者の栄養バランスを考えて様々な食材を駆使して入院食の献立を考えたものだと思います。

例えば、カルシウムが必要であれば煮干し等の小魚を入れてみたり、乳製品を使ってみたり。

マグネシウムが必要であれば、小エビや貝類を入れてみたり。

昆布等の海藻であれば、どちらの補給にも良い効果を発揮します。

しかしそんなことをせずとも、このドロマイトのふりかけさえあれば、何も考えることなく必要量をクリアできるわけですから、「献立を工夫する必要もない」という認識になってしまうのでしょうか。

 

こうなれば「機能性食品があるからこそ、様々な自然素材を使って調理された料理から遠ざかる」とすら言えなくもないように思います。

これで、本当に健康につながるのでしょうか。

 

下記の過去投稿でもご紹介した通り、私共の製品「しっとりふりかけ」も、カルシウムやマグネシウムが豊富です。

当たり前ですが、ドロマイトなど使っていません。

konbudoi4th.hatenablog.com

私共の製品のように自然の産物でのみ構成された食品と、サプリメント的に補われた栄養素。

「違い」のエビデンスを出せと言われれば、出せません。

しかし、それらに同じ価値があると評価する人は、そう多くないと思うのですが。

いかがお考えでしょうか。

そもそも、「日本人の食事摂取基準」で規定された33種類の栄養素だけで完結するほど、私たちの体は単純にできていません。

無数の栄養成分について健康情報が日々発信されていることは、多くの方の知るところでしょう。

 

 

③たん白質量のカラク

さて、冒頭の「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」の話題に戻りまして。

商品紹介ページには、「理想的なPFCバランス」とも書かれています。

PFCとは三大栄養素のこと、つまり、たん白質と脂質と炭水化物です。

 

製品パッケージには、たん白質が豊富であることが謳われていますが、肉や魚、大豆等からも摂取できることはご存知の通り。

しかしこの商品は、言ってみれば「カレーライス」の類です。

カレーの素材を思い浮かべてみて下さい。

肉類をたくさん使わないのなら、たん白質が豊富ということは、普通ないでしょう。

この製品も、肉がゴロゴロ入っている豪華仕様ではないはずです。

それなのに、たん白質が栄養成分的に多いのは、一体どういった理由によるものでしょうか。

 

原材料表示を順に見て、たん白質に関係しそうなものを探しますと、それに該当するのは「コラーゲンペプチド」です。

「コラーゲンペプチド」とは、ゼラチンと同じようなものですが、低温下でゲル化するゼラチンと違い、分解して分子量を下げてゲル化しにくくしたものです。

 

ゼラチンの栄養素は、ほとんどがタンパク質で、脂質も炭水化物も、ほぼ皆無です。

これが使われているからこそ、たん白質含有量の多い製品になるわけです。

しかし、ここで要注意なのが、たん白質の栄養価を示す指標である『アミノ酸スコア』。

 

残念ながら「コラーゲンペプチド」のアミノ酸スコアは、ゼロです。

必須アミノ酸の「トリプトファン」を一切含まないことによるものです。

一般論として、コラーゲンぺプチドをたくさん入れれば、表面的な栄養成分では「タンパク質豊富」となるわけですが、効果が非常に低い可能性があるわけです。

アミノ酸スコアについては、下記の過去投稿でも触れていますのでご参照ください。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

こんなことを想定してか「カレーメシ 欧風カレー」については、原材料の中に「トリプトファン」が入っていますね。

ここは、さすが日清食品、抜かりのないところ。

しかし、「自然のたん白質豊富な食品」と、「コラーゲンペプチドとトリプトファンの混合物」、この両者が本当に同じ価値があるかも、よく考える必要のあるところです。

 

ちなみに、筋肉をつけるのに十分なタンパク質摂取が必要なことは、周知の事実です。

ボディビルダー等、その道の方で、「プロテインシェイクをたくさん飲んでいるから、それでタンパク質摂取はOK」と考えている人は、誰もいません。

誰もが「REAL FOOD」からの栄養摂取の大切さを知っています。

人間のからだは、そんなに単純でないのです。

 

【まとめ】

サプリメント的にビタミンを補給し、ドロマイトでミネラルを補い、ゼラチンとトリプトファンでたん白質。

私はこれが「完全なメシ」だとは全く思いません。

こんなネーミングが許されること自体、問題だと思います。

 

こんな製品に頼るより、やはり自分で良い素材を使って料理をする方が良いのは間違いないでしょう。

他社製品でも、類似の「機能性食品」が次々に出現していますが、利用するにしても「それに頼りすぎない」という視点だけは、絶対に必要だと思います。

是非、お気をつけください。

 

更に別の弊害として、「それに頼り、自分で料理をしなくなる」ということにもつながると考えています。

前回投稿『現代人は、味覚がおかしくなっている』も、ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

(了)