こんぶ土居店主のブログ

こんぶ土居店主によるブログです。お役に立てれば。

『完全メシ?』なワケがない。機能性食品の弊害。

 

スーパーやコンビニ等で、機能性食品を見かけますが、やはりよく売れるようです。

その代表格である特定保健用食品、略して「トクホ」は、メーカーが巨額の費用を投じて、国のお墨付きを取ります。

時間とお金をかけても、それを十分回収できるだけの利益を見込んでいるということでしょう。

 

逆に言えば、『健康に悪いかも』というイメージで見られることを、食品メーカーは何より恐れているのかも知れません。

インスタントラーメンを『からだに悪いんだろうなぁ』と感じながら食べている人も多いように思いますが、そうであればメーカーは、その悪いイメージの払拭に取り組むわけです。

本日は、主にインスタントラーメン業界のトップランナーである『日清食品』の取り組みを元に、栄養機能食品を考えてみたいと思います。

 

 

話題の主に据えるのは、日清食品が展開するブランド『完全メシ』です。

www.nissinkanzenmeshi.com

 

日清食品の公式サイトから抜粋しますと。

 

33種類の栄養素が理想的なバランスで摂れる商品設計

「完全メシ」は、「日本人の食事摂取基準」で設定された33種類の栄養素をバランスよく摂取できるように設計されています。たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素のバランスがパーフェクトで、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸もバランスよく摂ることができます。

 

とのことです。

これ、基本的には良いことですね。

同一カテゴリーに属する他製品より、栄養的に優れているのであれば、良いに決まっています。

 

しかし、懸念事項もありまして。

 

①「サプリメントを混ぜただけ」に近い。

②それに頼り、正常な食に関心が薄れる懸念。

③たん白質量のカラク

以上3点について考えたいと思います。

 

まず、

サプリメントを混ぜただけ」に近い。

 

ここで言われる33種類の栄養素とは、以下の通りです。

 

様々なビタミンとミネラルが挙げられています。

Amazonで「完全メシ」と商品検索したところ、「カレーメシ 欧風カレー」という製品がトップに出ましたので、これを例にご紹介しますと、原材料は下記の通り。

 

ライス(米(国産)、食物繊維、コラーゲンペプチド、乳化油脂、食塩)、味付けの素(コラーゲンペプチド、植物油脂、オニオンパウダー、砂糖、トマトパウダー、乳等を主要原料とする食品、ドロマイト、小麦粉、香辛料、食塩、カレー粉、香味調味料、ココアパウダー、酵母)、味付豚ミンチ、フライドポテト、にんじん/カラメル色素、調味料(アミノ酸等)、グルコン酸K、増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類)、リン酸塩(Na)、トレハロース、塩化K、酸味料、乳化剤、香料、V.C、トリプトファン酸化防止剤(V.E)、ナイアシンピロリン酸鉄、V.B6、甘味料(スクラロース、アセスルファムK)、V.E、パントテン酸Ca、V.B1、香辛料抽出物、V.A、V.B2、くん液、葉酸、V.K、V.D、V.B12、(一部に小麦・卵・乳成分・牛肉・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む)

 

まず、「にんじん」、の後の/以後は、全て食品添加物ですから、まぁ添加物だらけです。

そこに様々なビタミンの名称が出てきていますから、この製品がビタミン豊富であるのは、添加しているからであることが分かります。

一方ミネラル類については、原材料表示を見てもあまり見当たりません。

その役割を担っていあるのが、原材料表示欄に読み取れる「ドロマイト」です。

これについては後述します。

 

 

この製品には、事実としてビタミンもミネラルも必要量が含まれているのでしょう。

それ自体は、良いことだと思います。

しかし、項目タイトルとして書いたとおり、これはサプリメント的です。

サプリメントに自然の食品に含まれるビタミンミネラルと同じ健康効果が期待できるのかどうかは、個々人で判断していただければ良いかと思います。

しかし仮にそうであるのなら、そもそもこんな食品は必要無いのです。

ビタミンミネラルを得る目的なら、『好きなもの食べて、サプリメントの錠剤さえ飲めば問題なし』ということになるのですから。

そう考えると、「こんな製品に意味ある?」と思ってしまうのです。

 

 

②それに頼り、正常な食に関心が薄れる懸念。

 

さて、前段で少し触れました「ドロマイト」。

これは言ってみれば、鉱物のようなもので、カルシウムとマグネシウムを豊富に含んでいます。

これが原材料に使われているから、カルシウムもマグネシウムも含有量が多いということになるわけです。

 

下の画像は、ある方が入院した際に、病院の朝食に付いていた「ふりかけ」ですが、こちらでも原材料表示のトップに出てきます。

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パッケージのおもて面にも、「カルシウム&マグネシウムが豊富!」と謳われていますね。

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これを見て、どのように感じますでしょうか。

昔は、病院の栄養士さんが、入院患者の栄養バランスを考えて様々な食材を駆使して入院食の献立を考えたものだと思います。

例えば、カルシウムが必要であれば煮干し等の小魚を入れてみたり、乳製品を使ってみたり。

マグネシウムが必要であれば、小エビや貝類を入れてみたり。

昆布等の海藻であれば、どちらの補給にも良い効果を発揮します。

しかしそんなことをせずとも、このドロマイトのふりかけさえあれば、何も考えることなく必要量をクリアできるわけですから、「献立を工夫する必要もない」という認識になってしまうのでしょうか。

 

こうなれば「機能性食品があるからこそ、様々な自然素材を使って調理された料理から遠ざかる」とすら言えなくもないように思います。

これで、本当に健康につながるのでしょうか。

 

下記の過去投稿でもご紹介した通り、私共の製品「しっとりふりかけ」も、カルシウムやマグネシウムが豊富です。

当たり前ですが、ドロマイトなど使っていません。

konbudoi4th.hatenablog.com

私共の製品のように自然の産物でのみ構成された食品と、サプリメント的に補われた栄養素。

「違い」のエビデンスを出せと言われれば、出せません。

しかし、それらに同じ価値があると評価する人は、そう多くないと思うのですが。

いかがお考えでしょうか。

そもそも、「日本人の食事摂取基準」で規定された33種類の栄養素だけで完結するほど、私たちの体は単純にできていません。

無数の栄養成分について健康情報が日々発信されていることは、多くの方の知るところでしょう。

 

 

③たん白質量のカラク

さて、冒頭の「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」の話題に戻りまして。

商品紹介ページには、「理想的なPFCバランス」とも書かれています。

PFCとは三大栄養素のこと、つまり、たん白質と脂質と炭水化物です。

 

製品パッケージには、たん白質が豊富であることが謳われていますが、肉や魚、大豆等からも摂取できることはご存知の通り。

しかしこの商品は、言ってみれば「カレーライス」の類です。

カレーの素材を思い浮かべてみて下さい。

肉類をたくさん使わないのなら、たん白質が豊富ということは、普通ないでしょう。

この製品も、肉がゴロゴロ入っている豪華仕様ではないはずです。

それなのに、たん白質が栄養成分的に多いのは、一体どういった理由によるものでしょうか。

 

原材料表示を順に見て、たん白質に関係しそうなものを探しますと、それに該当するのは「コラーゲンペプチド」です。

「コラーゲンペプチド」とは、ゼラチンと同じようなものですが、低温下でゲル化するゼラチンと違い、分解して分子量を下げてゲル化しにくくしたものです。

 

ゼラチンの栄養素は、ほとんどがタンパク質で、脂質も炭水化物も、ほぼ皆無です。

これが使われているからこそ、たん白質含有量の多い製品になるわけです。

しかし、ここで要注意なのが、たん白質の栄養価を示す指標である『アミノ酸スコア』。

 

残念ながら「コラーゲンペプチド」のアミノ酸スコアは、ゼロです。

必須アミノ酸の「トリプトファン」を一切含まないことによるものです。

一般論として、コラーゲンぺプチドをたくさん入れれば、表面的な栄養成分では「タンパク質豊富」となるわけですが、効果が非常に低い可能性があるわけです。

アミノ酸スコアについては、下記の過去投稿でも触れていますのでご参照ください。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

こんなことを想定してか「カレーメシ 欧風カレー」については、原材料の中に「トリプトファン」が入っていますね。

ここは、さすが日清食品、抜かりのないところ。

しかし、「自然のたん白質豊富な食品」と、「コラーゲンペプチドとトリプトファンの混合物」、この両者が本当に同じ価値があるかも、よく考える必要のあるところです。

 

ちなみに、筋肉をつけるのに十分なタンパク質摂取が必要なことは、周知の事実です。

ボディビルダー等、その道の方で、「プロテインシェイクをたくさん飲んでいるから、それでタンパク質摂取はOK」と考えている人は、誰もいません。

誰もが「REAL FOOD」からの栄養摂取の大切さを知っています。

人間のからだは、そんなに単純でないのです。

 

【まとめ】

サプリメント的にビタミンを補給し、ドロマイトでミネラルを補い、ゼラチンとトリプトファンでたん白質。

私はこれが「完全なメシ」だとは全く思いません。

こんなネーミングが許されること自体、問題だと思います。

 

こんな製品に頼るより、やはり自分で良い素材を使って料理をする方が良いのは間違いないでしょう。

他社製品でも、類似の「機能性食品」が次々に出現していますが、利用するにしても「それに頼りすぎない」という視点だけは、絶対に必要だと思います。

是非、お気をつけください。

 

更に別の弊害として、「それに頼り、自分で料理をしなくなる」ということにもつながると考えています。

前回投稿『現代人は、味覚がおかしくなっている』も、ご一読下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

(了)

現代人は、味覚がおかしくなっている(料理の大切さ)

 

さて師走、鍋物が恋しい季節になってまいりました。

そこでも大活躍、こんぶ土居製品「十倍出し」。

konbudoi.shop-pro.jp

この製品は、鍋物にも便利にお使いいただけますが、レシピ動画をYouTube上で公開しています。

 

二年前には、こんな簡単なレシピをご紹介しました。

youtu.be

この動画を作成した当時のことは、非常に印象に残っています。

ひどい話に聞こえてしまうかも知れませんが、「世間には、味覚がおかしい人が多いのでは?」と感じたのが、この時だったからです。

本日の投稿は、そんな内容です。

 

 

寒い時期になれば、どこのスーパーへ行っても大量に販売されているのが「なべのもと」。

調味済みの液体がパックされていて、鍋に注いで具材を煮れば、なべ物のできあがりというタイプの製品ですが、私が子供の頃にはあまり見かけなかったと記憶しています。

こういった製品なしでは、どうやって鍋料理をつくれば良いのかが分からない人が増えているのでしょう。

 

 

前述の「十倍出しレシピ」の動画をつくるにあたり、比較品として大手メーカーの「なべのもと」を買ってみたのですが、その味が「おかしかった」のです。

「おかしい」なんて書けば、「それはお前の主観だろう」と突っ込まれそうですが、

こう考えるのには理由があります。

 

私が「おかしい」と表現する内容とは、『自分で自然素材からつくれば、こんな味に決してならない』、ということです。

より具体的に言えば、「自分でダシを取って伝統調味料で味をつければ」ということです。

ただ、この「おかしさ」を感じられるかどうかは、普段の食生活次第なのかも知れません。

誰もが私のように「味がおかしい」と感じるのなら、そもそもそんな製品は売れないはずですから。

 

 

「普段から、自然素材で料理をしている人」と「あまり料理をせず、加工食品をよく食べる人」、両者に分けた場合、前者の多くは私の申し上げていることを理解して下さると思います。

逆に言えば、後者の方には分かっていただけないかも知れません。

良い自然素材で調理したものの味が、自らの「基準」として存在しないからです。

これは、非常に危険なことだと思います。

下記のような負のスパイラルが発生しかねません。

 

「料理をしない」

食品添加物やうまみ調味料が多用された、人工的で強い味の加工食品に頼る」

「その味に慣らされる」

「自然の、淡い本物の味が分からなくなる」

「本物の料理をつくってみても、美味しいと感じない」

「ますます料理をせずに加工食品に依存する」

 

 

こんな流れが想定されませんでしょうか。

私がここで言う料理とは、「自然素材と良い基礎調味料でつくること」です。

「なべのもと」のような加工食品を買ってきて、それで具材を煮ることではありません。

 

 

加工食品に使われる原材料は、どんどん変化してきています。

古い時代の加工食品は、家庭での調理作業を業者が代行しているようなものであったはずです。

使う素材が大きく違うなんてことは無かったでしょう。

しかし、今は、加工食品メーカーの工場で使われる素材は、家庭の台所で伝統的に使われてきたものと大違いです。

それは、原材料表示を読めばわかります。

このような背景で、「家庭でつくられる本物の料理」と「加工食品」との差異は、大きくなる一方でしょう。

手前味噌ですが、冒頭にご紹介した私共の製品であれば、分類としては加工食品的であっても、原材料が家庭の台所でも使われるものばかりですから、「おかしな味」にはなりません。

こんな製品が普通であれば良いのですが、スーパーなどではほとんど見つからない悲しい現状です。

 

「料理をしない人が増えている」。

日本のこの現状は、本当に嘆かわしいことだと思います。

健康悪化に、確実につながります。

何も難しい料理をする必要はないのです。

簡単でいいから「生鮮食品や乾物等の素材と、伝統調味料でつくられたもの」が、日常食であることが大切だと思っています。

 

ところが、残念ながら現実は逆行気味。

前述の負のスパイラルを進んでいるような気がしています。

多くの方が料理をすることの大切さを理解し、より良い健康的な食生活になるような未来は、無いものでしょうか。

 

高知大学の名誉教授であった志水寛先生(故人)は生前に、「食に携わる者は、聖職者である」と言われたそうです。

これからもこんぶ土居は、ナゾの食品添加物やうまみ調味料を使用することなく「健康に資する本物の食品」をつくり続けたいと思います。

それを理解して下さる方が増えて欲しいので、情報発信も続けます。

 

さぁ皆さん、料理をしましょう。

料理は、私たちの日常に残された「最後の創造行為」です。

本当に大きな価値があると思っています。

 

(了)

 

 

昆布の異物混入、ゼロは難しい

「異物混入」。

これは、食品関係の事業者が常に頭を悩ませる問題です。

新聞やテレビ等の報道でも、加工食品メーカーや外食産業での異物混入事故のニュースを、たまに耳にします。

私共も、食品を扱う者として他人事ではありません。

 

納入されてくる昆布にも異物が含まれていることがあり、お恥ずかしながら、過去にこんぶ土居製品でもご指摘を受けたことがございます。

 

昆布だけを例に取っても、様々なリスクがあります。

海中に生えているものですから、他の様々な生物と共棲しているわけで、例えば表面に他の海藻が貼りついていたり、海底の砂が付着していたり、エビの赤ちゃんのようなものが付着していたり。

エビの類は、甲殻類にはアレルギーをお持ちの方も多いので、特に気になります。

しかしこれらの生物は、昆布の海域にいるわけですから、付着リスクが存在するのは当然のことです。

天然昆布は、水揚げ後に水洗いすることは通常ありませんで、そのまま干します。

 

自然のもの以外では、やはり近年マイクロプラスチックの付着も多くなっているような気がします。

マイクロプラスチックとは5ミリ以下のプラスチック片のことを指すようですが、昆布の表面についていることがあります。

これとて、海中に浮遊しているものですから、昆布に付着リスクがあるのは当然で、防ぎようがありません。

私共での昆布の選別時に、注意して目視で取り除くしかありません。

 

 

更には、「タバコシバンムシ」という虫の幼虫がいることもあります。

こちらも、昔より増えたような気がします。

暖かい環境を好む虫なので、昆布産地の北海道では少ないはずなのですが、温暖化で状況も変わってきているのでしょう。

水分も無い、食べるものも昆布だけ、こんな状況ですので繁殖することはないのですが、昆布の表面でしぶとく生きています。

この虫は、冷凍すると死ぬようですから、昆布をケースごと冷凍する対応などもあるようですが、これは結局死骸が残るわけですし、根本的には意味が無いようにも思います。

 

 

様々な異物混入リスクの事例をご紹介しましたが、これらを完全に排除する方法は、ありません。

当然私共は、消費者の方々が不快に感じられないよう努力するわけですが、難しさを痛感します。

 

昨年も、ある大手昆布製品メーカーにて、だし昆布に「チャタテムシ」という虫が混入していたとのことで、製品回収のニュースがありました。

こんなニュースを目にするにあたり、「回収」が正しい対応であるのか、疑問に思うところもあります。

語弊があるかも知れませんが、完全にリスク排除はできないわけですから「入っていることもある」ということをご理解いただくことは難しいのでしょうか。

幸いにして、「チャタテムシ」にしても「タバコシバンムシ」にしても、病原菌を媒介したりすることは無いようで、健康問題を引き起こすリスクはありません。

問題のある製品を手にされた方には、お詫びと良品との交換をするのは当然のことですが、「該当製品を全量回収にかかる」というスタンスが正しいのかどうか。

 

無農薬栽培のキャベツにアオムシがいる、といったような事例は、言わば当たり前のことです。。

それを防ぐには、薬品まみれにするしかないでしょう。

そんなことが、本当に消費者のためでしょうか。

 

他メーカーの製品回収について触れましたが、仮にこんぶ土居製品で同様のことが起きた場合、個別の対応は当然させていただきます。

しかし健康に問題を起こすリスクが無いのなら、全量回収はしないつもりです。

前述のメーカーが回収した昆布、どうなるのでしょうか。

問題があるとして回収したものですから、廃棄する他ないようにも思いますが、そんなことが本当に社会的に正しいのでしょうか。

 

食品は「自然の産物」。

その背景をご理解いただけますと、非常に助かります。

 

(了)

野菜ダシって、おいしいの?(昆布自慢)

過去にもこのブログでご紹介した、私共の新しい製品として開発中の「純植物性十倍出し」。

長い名前ですので、「野菜だし」と呼ぶ方もあります。

世にそういった製品が多いので無理もありませんが、この製品は野菜が主ではありません。

昆布屋がつくる製品ですから、当然に昆布が最大配合割合を占め、次に多いのが干し椎茸です。

野菜は、昆布や干し椎茸の比較すると、ほんの少ししか使用していません。

 

 

そもそも、「だし」は所謂、「うまみ」を得るためのものでしょう。

私は、味を成分名で語るのがあまり好きではありませんが、各だし素材に、どんなうまみ成分が含まれているのかは知られており、以下の通りです。

 

昆布:グルタミン酸

鰹節、煮干し:イノシン酸

干し椎茸:グアニル酸

貝類:コハク酸

 

各うまみ成分は、混ぜ合わせることで『相乗効果』も期待できます。

では、「野菜」のうまみ成分とは、何でしょうか。

白菜、トマト、アスパラ、ブロッコリー、トマトなどには、グルタミン酸が含まれていることが知られています。

それでも、昆布に比べれば圧倒的に低濃度です。

そもそも私共は昆布屋ですから、グルタミン酸の供給源として野菜に期待するものはありません。

野菜の『甘み』は強いです。

しかし『うまみ』は薄いと感じます。

このように考えると、ダシという観点からは、野菜の果たす役割は大きくないと考えています。

 

家庭で料理をする際に野菜の皮を剥いたとして、それを有効活用ために煮出してダシとして利用する、といったことは素晴らしいですが、昔から日本人が広く使ってきた昆布や鰹節や煮干し等と同等に考えるのは無理があるでしょう。

誤解を恐れずに書けば、野菜だしって、それほど美味しいものでは無いのでは?ということです(使う料理にもよりますが)。

 

 

それでも、時代の要請として「野菜だし」が注目され、多くのメーカーが製品を出すようになりました。

しかし、前述のように、そもそも野菜にはうまみ成分が豊富なわけではないので、本来さほど美味しくないはずです。

にも関わらず製品が成立するのは、やはりうまみ調味料によるところが大かと思います。

必ずと言って良いほど使われるのが、うまみ調味料の一種『酵母エキス』です。

 

『うまみ』を得るための『だし』。

その、主役たる『うまみ』を、野菜でなくうまみ調味料で得ておきながら『野菜だし』と呼ぶのが相応しいのか、そこにも疑問が残ります。

 

我田引水になりますが、やっぱり昆布ってすごいなぁ、と思います。

植物性のダシ製品、他社製品もたくさん試しましたが、うまみ調味料入りの製品は、当然に強烈な『うまみ』を発揮します。

しかし、自然素材のみで構成され、様々な料理に広く使えるのは、私共の製品が断然に優れていると自負しています。

これは間違いなく昆布の力です。

 

 

ちなみに、こんぶ土居製品『純植物性十倍出し』に、少量とは言え野菜類を使っている理由は、風味のバランスを取るためです。

簡単に言えば『干し椎茸の香りを抑えたい』のです。

昆布と干し椎茸だけで製造すると、やはり椎茸の香りが前面に出ます。

そこで、適切な割合で野菜だしを併用すると、うまく調和の取れた香りになり、あらゆる料理に汎用性のある、良い意味で『特徴のない味』にすることができます。

椎茸ぎらいの方も少なくないですが、そんな方にもお試し頂きたいです。

 

改めて、昆布の果たす役割は素敵。

出しゃばらず、縁の下の力持ち。

味の底支えで、あらゆるジャンルの料理に使える。

世界に誇る、唯一無二の食材です。

 

(了)

 

良いスポットワーカーさんがいると嬉しい(松下純子さんと福田洋子さん、ご協力者のこと)

 

さて、間も無く師走。

昆布屋は不思議な仕事で、なぜか年末が大忙しなのです。

1月から11月までは、さほど仕事量に変化が無いのですが、12月だけは他の時期と大きく様相が変わります。

所謂「書き入れ時」であるわけですが、スタッフも大忙しになって大変ですし、なかなか辛い時期です。

そんな状態ですから、年末だけ来ていただける短期アルバイトさんを募集することがあります。

 

今後を考えると、課題山積の業界を改善すべく、私がこんぶ土居の店舗から外に出て働かねばならないことが増えてくるかと思います。

そんなときに、一時的に助っ人をして下さる良い方と繋がりができると嬉しいなぁ、と思うようになりました。

こんな風に思うようになったきっかけ、思い出話を、本日は書きたいと思います。

(こんぶ土居でスポットワーカーとして働いてみたい、とお考えの方への「ご案内」は、本投稿末尾にて。)

 

 

【松下純子さんのこと】

こんぶ土居からすぐ近く、ご自身のアトリエ『Rojiroom(ロジルーム)』にて、『Wrap Around R. (ラップアラウンドローブ)』というブランド名で、主に古い着物をリメイクする服飾デザインの仕事をしておられる、松下純子さん。

これまでの著書は20冊以上、NHKにもしょっちゅう出演されていたり、大活躍です。

w-a-robe.com

 

 

ランドスケープデザイナーのご主人の岳生さんと共に、私の20年来の友人ですが、最初の接点は私共が開催している「だしの取り方教室」に参加してくれたことでした。

以後3人で一緒に、茶道を習っていた時期があったり、覆面YouTuberをしていたことまであったり(現在休眠中)、そんな間柄です。

ずっと、こんぶ土居へお買い物に来てくれているので、私共の年末の忙しさも、よく知ってくれています。

 

松下さんが続けている「着物リメイク教室」には生徒さんがたくさんおられるわけですが、過去にもその中から年末の助っ人アルバイトさんを紹介してくれることがありました。

実は今年2023年も、生徒さん2名が年末の私達を助けて下さっています。

 

こういったご縁の年末アルバイトさんが本当に有難いのは、基本的にこんぶ土居のことを理解して下さっているからです。

不特定多数の方に向けて募集すると、当然ながら、単にアルバイトをしたい方が応募して来られます。

それはそれで良いのですが、私共を応援するような気持ちで来て下さる方の有難さは、特別なものがあります。

 

昨年から運営を開始しました、「大阪昆布ミュージアム」。

4階は、ワークショップスペースになっていますが、外部の方に使っていただくことも想定していました。

松下さんは9月に、この場所を使って着物リメイク教室を開催してくれたのですが、その日は私の大阪昆布ミュージアム案内とセットで開催されました。

新たに今年、年末の助っ人として来てくれている方は、この時のご参加者の中のお一人で、「こんぶ土居でアルバイトしてみても良いかな」と思って下さったようです。

 

余談ですが松下さん、大阪昆布ミュージアムの開設にあたっても、協力してくれています。

例えば3階の「公開型昆布熟成庫」にて、昆布の下に下がっている布。

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この布の奥には、備品等の特に人の目に触れるべきでない物が入っているのですが、その目隠しです。

これにはアドバイスのみならず、生地選びから、その調達までやってくれました。

4階でも、私の母親が持っていた古い布を活用して、椅子の素敵な貼り布をつくってくれたのが松下さんです。

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振り返れば、「なんだかんだとお世話になっているなぁ」と感じるこれまで。

本当に有難いことです。

 

 

【福田洋子さんのこと】

こちらはまだ、私が昆布屋の仕事を始める前、三代目の時代です。

信じられないような話ですが、過去のこんぶ土居には、ボランティアスタッフさんがおられたのです。

それが、福田洋子さんです。

福田さんは、ご主人がNHKの局員さんで、転勤で大阪にお住いの時期があったのです。

その際のご自宅が、こんぶ土居のすぐ近所で、度々昆布を買いに来て下さっていたそうです。

そんな中で、徐々に私の母親と親しくなるにつれ、仕事を手伝うようになってくれたとのこと。

年末の忙しい時期に一か月ほど、それが大阪におられた三年間続いたそうです。

なんと驚くべきことに、そこに賃金は発生していません。

福田さんは、楽しんで手伝ってくれていたとのことです。

大阪赴任を終えて東京に戻られてからも、今日までずっと昆布を通販でお求め下さっていますし、大阪へ来られるときは、私の両親と親しく関わって下さっています。

 

 

実は私も近頃、現在構想中の「こんぶ土居YouTubeチャンネル」での、「土居のハナシ聞き役ボランティア」さんを探したいと考えていたのです。

この「こんぶ土居店主のブログ」も、多くの方への情報発信の手段として書いているものですが、やはり昆布の専門的な話など、動画を活用したいと考えるようになりました。

幸いにして、松下夫妻との覆面YouTuberの経験もあり、私は簡単な動画編集ができます。

そういえば、当時の経験が、既存チャンネル「こんぶ土居 十倍出しレシピ」にも大いに活きました。

www.youtube.com

 

 

【さて本題に戻り、ご案内】

というわけで、過去の私の素晴らしい経験を書きましたが、タイトル通り「スポットワーカーさん求む」であります。

「こんぶ土居を応援してやっても良い」と考えて下さる奇特な方。

おられませんでしょうか。

お気軽に、お電話やこんぶ土居InstagramのDMなどで、お知らせ下さい。

www.instagram.com

今年の年末の助っ人さんは、松下さんのご協力で充足しましたから、今すぐに店舗の手伝いをしていただきたいというわけではありません。

ただ、意欲を持って下さる方とお知り合いになって、あるタイミングでオファーを出し、ご都合が合えばお仕事をお願いしたいと考えているのです。

雇用形態や条件等については、ご要望もお聞きして決定したいと思います。

 

そういった形でなくても、ご自身の特技を活かして「こんぶ土居で、こんな活躍をしてみたい」といった自発的なご希望も大歓迎です。

実は、来年以後の計画として「店舗マネージャー」も募集したいと考えています。

 

自薦他薦は問いません。

ご興味ある方は、ご遠慮なく。

良い方とのご縁に恵まれることを、願っています。

なにしろ結局、企業は「人」ですから。

『応援してあげたい』と誰かから思って頂けるような社会的意義のある仕事をすることが、『スポットワーカーさんプラン』実現への鍵であるように思います。

さてさて、今のこんぶ土居が、そう思って頂けるに足るものかどうか。

今後も、それを目指して精進したいと思います。

 

(了)

 

本物とイミテーションの違い、「食と住」

 

こんぶ土居へのご来店客様の中で、「良い雰囲気のお店ですね」と言って下さる方があります。

特別に凝った内装デザインにしているとか、そんなことは一切ありません。

普通の店舗内装です。

しかし、敢えて多くの他店舗と違いを探すなら、ほとんどが自然素材で構成されていることかと思います。

逆に言えば、世の多くの店舗や住宅は、自然素材ではないということです。

 

室内空間は、基本的には「床と壁と天井」で構成されています。

一般住宅の内装で最も多いのが、「白い壁と天井に、木質フローリング」といった組み合わせでしょうか。

これが、「自然素材」ではないわけです。

白い部分は、ビニールクロスが貼られているのが一般的ですし、多くのフローリング材は、無垢板で出来ているわけでなく、言ってみれば「木のように見える何か」です。

仮に無垢板をベースにした材であっても、ウレタン塗装等が施されている例が多く、これでは「ウレタンの向こうに木が透けて見えているだけ」であって、機能としては「ウレタンの床」と同じでしょう。

 

この「白いビニールクロスと、木質フローリング」を、自然素材に置き換えるなら、「白い漆喰と、無垢板フローリング材に自然塗装」ということになるかと思います。

 

この両者を比較したとき、その機能の違いを言葉で説明することは簡単ではありません。

しかし誰の目にも、「印象の違い」は明らかなのです。

「説明」しづらいだけで、確実に違いは存在する。

「そっくりだけど何かが違う」のです。

 

これを、昆布に関する話で置き換えますと、

「白い漆喰壁と、無垢板」が「本物の昆布だし」

に相当し

「白いビニールクロスと、木質フローリング」が「うまみ調味料」

なのだと思います。

確実に違うのだが、「その違いを言葉で分かりやすく説明しづらい」ところが、そっくりです。

 

やはり、機能を単純化してしまうと、同一視に近づくのだと思います。

「昆布のだし」も「うまみ調味料を駆使した、だしのもと」も、『うまみ』という観点に立てば、ほとんど同じなのです。

「漆喰壁」も「ビニールクロス」も、『真っ白な壁』ということで言えば、同じようなものです。

 

ここで注意が必要なのは、後者の方が圧倒的にコストが低い、ということです。

こんな背景で、あらゆる食品が、後者「イミテーション側」に移行してきたのだと思います。

そうなれば、健康にも問題が出てくるリスクが考えられると思います。

近年は、原因不明の健康問題に直面する人の割合が、増えているように感じませんでしょうか。

私が子供の頃は、アレルギー体質の子供など、ほとんどいませんでしたが、今は一変しています。

新生児の先天異常も多くなっていると聞きます。

下のリンクの環境省のサイトを見ると恐ろしくなりますが、これが食品問題と無関係だと言えますでしょうか。

https://www.env.go.jp/council/content/i_02/900415577.pdf

 

 

「何が違うのか明確に説明できない」。

この状況を以て取ることのできるスタンスは、2つに分かれます。

 

「違いを明確に説明できないのだから、同じだろう」

という考え方と、

「明確に説明できなくとも、何かが違っているようだ」

という見方です。

 

前者は、「感じる力」が足りないのかも知れません。

「物事を単純化しすぎない」、「エビデンスの有無に頼りすぎない」ということが、とても大切だと思います。

何事も複雑で、人間の浅知恵で全てが理解できるほどシンプルにできていないと思います。

過去にも、このブログで「昆布とうまみ」が関連づけて語られる文脈に、反対してきましたが、単純化されたもの以外の要素に目を向けていないから同一視が起き、昆布文化も衰退するわけです。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

うまみ調味料が多用されることの、問題点についてご説明したものは、この過去投稿で。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

下の写真のような感じが、住宅の内装として一般的ですよね。

これを自然素材に置き換えると、雰囲気は一変します。

少なくとも私は、そう感じます。

ただ言葉で表現したならば、どちらでも「白い壁と、木材的な床」です。

その「説明しづらい違い」にこそ、目を向けていただきたいと思います。

建材ですら、人間の健康に違う影響があったりして。

日々、人のからだの中に入る食品ならば、尚の事です

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最後に、こんぶ土居の三代目である土居成吉が、平成17年8月に書いた「こんぶ土居通信 №13「建築について」を載せておきます。

 

蜆橋(現在の梅田新道)で昆布屋を営業していた当店の創業者 土居 音七は明治42年の北の大火で罹災し、空堀へ移転することになりました。こんぶ土居では、それ以来当時の建物を改修しながら使ってきましたが、老朽化がひどく建て直しを考えていました。健康な生活を送る上で最も大切なものは食べ物で、次は住居だと考えておりますので、かねてから住宅に関する本を読むなどして、情報を集めておりました。新しい工法や、近年脚光を浴びる外断熱工法も検討致しましたが疑問点もあり、最終的には伝統工法が最良であるとの結論に達しました。
しかし、狭小地をいかに有効的に使うかに頭を悩ませておりましたところ、五軒となりの閉鎖された信用金庫の建物を使わせていただけることになりました。築50年の鉄筋コンクリート造ですが、これまであたためてきた建築への理想を込めて、リフォームすることに致しました。
一般に広く使用されている建材は、食べ物と同じく、にせものやごまかしに満ちています。
洋室によく使用されるフローリング材などは、南洋材を薄く切ったものを何枚か接着剤で張り合わせ、表面だけごく薄いきれいな木目の板(フィルムと言ったほうが良いかもしれません)を貼り、ウレタン塗装等をしたものが大半です。これらは最初は美しいのですが、時を経るにつれてだんだんと見苦しくなっていきます。また、木材とはいえ内部は合成樹脂などが多く含まれていますから、本来の木の質感や、香り、吸放湿などの諸効果は全く望めません。また、原料の木材もほとんどが輸入物ですので、このような建材を多用することは、日本の林業を衰退させ、また経済力に物を言わせて外国の資源を枯渇させることにもつながります。和室に目を向けても、畳表のイグサはほとんどが中国産で、日本では許可されないような農薬が使われているかもしれません。知人が、最近新しくした畳で皮膚がかぶれると言っていました。また、畳の内部は伝統的には藁の床ですが、最近では発泡スチロールやベニヤ板で作られるようです。
その他、一見土壁に見えるビニールクロス、天井はプリント杉板など、このようなコピー建材では和室のくつろぎは望めません。本物の建材を使えば、多少のコストアップにはなりますが、少し長い目で見ればどちらが得か明らかです。住宅も本物をできるだけ長く使い、再利用も考えてできるだけ資源の有効利用に努めたいものです。
私共のリフォームにあたっては、当店の商品づくりと同じように、化学的なものをできるだけ排除し、自然素材の良さを活かし、人と環境への優しさを重要視しました。
有害な物質を含んだ建材や塗料を使用しない

床板や腰壁などの木材は国産の無垢材を使う

壁は上塗りであっても土壁にする

蛍光灯は極力使用しない

一部屋でも和室を作る

小さくても庭を作る

これまで使ってきた家具や陳列什器をできるだけ再利用する

屋上を緑化し雨水を活用する、

などを基本的な考えとしています。
具体的には、店舗床は厚さ3cm の国産松材、腰壁は国産の杉板、塗料は木の呼吸を妨げないよう柿渋とベンガラを墨で調色したもの、外壁は一般的な吹き付け塗装をしてあった上から本しっくい塗り(厚さ約1cm)、内壁はビニールクロスをはがして土佐しっくい塗り、天井も既存のものを撤去してしっくい塗り(京壁 佐藤左官様施工)、メインの照明は、目に優しくあたたかい光のコクヨ製船舶用耐震白熱電球(レストラン 豚玉様に教えていただきました)、陳列什器・看板・建具やエアコンまでも従来使っていたものを再利用、夜間金庫跡には旧店舗の石燈篭を使った坪庭、という具合です。唯一あたらしく作ったものは、店舗外側に楠の丸太をくりぬいて、メダカが泳ぐ、植栽空間です(藤井植物園様の設計・施工)。この植栽空間は当店の前を通行される方々の無料休憩所にもなっています。この長い空堀商店街には、ちょっと腰を掛けられる場所が意外に少ないので、少しはお役に立てているのではないかと思っています。
来店されたお客様から「なんだか気持ちがいい」と言われると、食べ物も建築も自然が一番、伝統・国産を大切に、との思いがいっそう強くなります。 

 

(了)

2023真昆布フォーラム@北海道南茅部高校、「開催レポート」

 

さて、過日の投稿でお知らせしました「2023真昆布フォーラム@北海道南茅部高校」。

概要は、下記の前回投稿をご参照下さい。

konbudoi4th.hatenablog.com

 

さて、様々な方のご協力のおかげもあり、無事に終えることができました。

本日は、その概要をご報告するレポートです。

 

「真昆布フォーラム@北海道南茅部高校」の主目的は、未来を担う次世代に向けて、

『郷土の昆布漁業の価値を理解してもらい、仕事への誇りにつなげること』

です。

 

ここでやはり大切なのは、聴いて下さった中高生の皆さんが、どのように受け止めてくれたかという結果です。

結論から申しますと、想定以上に良い結果です。

そう感じられるのが、南茅部高校さんが用意して下さった「事後アンケート」。

生徒さん達が書いて下さった内容を拝読すると、こちらの伝えたかったことを十分受け止めてくれているように感じられるのです。(個人情報を含みませんので、本ブログ投稿に全文を掲載します)

イベントを行った者としては、「頑張って開催してよかった!」と思える内容で、非常に嬉しいです。

実は、毎年秋に南茅部高校さんの2年生修学旅行があり、その際に「こんぶ土居訪問」が恒例行事になっているのです。

今年は11月8日でしたが、その日も彼らから直接に感想を聞くことができました。

 

 

こんぶ土居では、三代目の時代から30年以上に亘って、大人子供問わず産地の方々に昆布の価値を伝えつづけてきました。

しかし今回ほど、良い形で伝わった感想を得たことは過去にありません。

 

それがなぜかと考えたとき、やはりお二人の料理人さんのご協力以外に理由が見当たりません。

「柏屋」松尾英明さんと、「雲鶴」島村雅晴さん。

お二人の多大なる善意のご協力によって、成し遂げられた結果であるのは間違いありません。

松尾さんと島村さんは、11月8日の修学旅行時にも、改めて彼らに会いに来て下さいました。

本当に有難いことです。

 

 

これまで、真昆布を生み出す「産地の昆布漁師の方々」と、昔からそれを珍重し使ってきた「大阪の昆布屋と消費者」。

この両者の距離が遠すぎました。

後者の代表格が、今回のお二人のような一流料理人であるわけですから、本当に大きな意義があったと思います。

 

 

まだまだ問題山積の昆布の生産現場ですが、今回の参加者から、未来の昆布漁業を変革させる力を持つ人が現れてくれるのを願うばかりです。

今後も、微力ながら続けていきたいと改めて感じています。

 

(了)

(以下、当日の模様を撮影したYouTube動画と、末尾に生徒さんの感想文)

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

▽アンケート▽ 記入者: 南茅部高校生徒

第2回 真昆布フォーラム ~ 体感! 真昆布の力 ~

『未来を担う次世代のために、世界に誇る真昆布の楽しい勉強会』

 

1.第1部『真昆布の価値と現状を知る』について

(1)真昆布の価値について、感じたことを記入しましょう。

 

改めて真昆布の大切さや価値を聞いて南茅部の昆布の大事にしないといけないと思った

昆布の大切さを改めて実感した

価値が高く貴重な食品だと思った

今、真昆布の収穫量が少ないので貴重です

大阪で多くの料亭などで使われていてそれだけ重要なものなのだなと思った

貴重な食品だと思った

南茅部でとれる真昆布はずっと昔から最高級だったこと

これからも大切に守っていかないと駄目だと感じた

古い時代から美味しいとされていたという話を聞いて価値について深く考えさせられました。

日本各地から昆布は愛されてるんだなと感じた。

今まで何気なく手伝ってた昆布はとても貴重品っていうのを改めて知れた。

あまり価値について考えたことはなかったけど、土居さんだったりが説明してくれたおかげで、凄いものなんだと改めて思った

料理が昆布によって高級感が出て全部美味しかった。他の地域では真昆布は重宝されているんだなと感じた。

大阪の料理人に使われるということは価値があると感じた。

様々な昆布がある中真昆布しか使わないというお店があったり、最高級品と言うだけあって凄い価値があるんだなと改めて感じた。

南茅部の昆布が大阪の料理店で最高級品として使用され、昔から凄い価値があったことを実感しました

昆布のだしのうまみで料理をするのは日本独自の食文化で、さらにその食文化で使われている昆布の中で自分たちの町の昆布が昔から1番重宝されているというのは本当に誇りに思う。

真昆布はただの高級品ではなく最高級品だったのは驚きました。

思っていたよりも真昆布の価値が高かったことに驚いた

昔から認められている代物ということや、味はもちろん、生産量や品質も日本一と言っていいほどの物ということ知り、守るべきものだと感じた

日常でも昆布を見ているのであまり価値のあるものだと実感してませんでしたが改めて話を聞いて昆布の価値を実感出来ました

 

(2)真昆布の現状について、感じたことを記入しましょう。

 

10年前と比べて急激に減っていきほぼ壊滅状態になってると聞いて悲しい

天然は減っていて促成が9割だと思い年々減っていることについてしれた

とても大切に扱ってほしい

温暖化などで天然が取れてないから良くないと思った

天然昆布が少ない

時代の進化につれ、変わっていく現状を受けて、新たなアイデアが必要だと思った

天然物がかなり少なくなっていることが危機だと感じた

漁師さんも減ってきているなか昆布も1年ものが増えています。天然昆布が復活するようにもっと工夫が必要だと思いました。

天然があまり取れない。形状が悪い。

親とかの話によると天然昆布が採れない海ってことはそのうち養殖もダメになるんじゃないかって言われてて、町の人は結構危機感を持ってると思う。だけど、それをどうにかしてでも守っていかないと行けないと思うから、私たちが考えてそれを実際に試したりしていかないと行けないのかなって思った。

水温の問題で取れなくなっているので恐ろしいと感じでいる

自分たちはこれからも昆布の手伝い頑張らなきゃと感じた。

養殖の昆布しかとれなくなって、あまり使われていないことに驚いた。

南茅部の昆布は最高級品など言われていてすごいんだなと思っていたけど、それは天然の真昆布を指すもので天然昆布が少なくなっている今真昆布から離れる人が出ている事が残念に思えた。

南茅部では天然昆布が採れなくなっていて養殖昆布がほとんどになっているので天然昆布が採れるように取り組まないといけないなと感じました

自分が小学校高学年か中学校に上がったあたりからなんか昆布とり少なくなったなーとは思っていたけど、想像していた以上に深刻な状況なんだと思った。今ある食文化を衰退させたくないと思った。

真昆布は昔、私の家でも取っていたのですが今では周りの漁師も取っているとあまり聞きません。南茅部はやはり真昆布漁が衰退してきていると肌でも感じます。

どんどん少なくなっているんだなとおもった

後継者不足や、収穫量の減少など難しい問題ばかりだが、それについて熟考していきたいと感じた

そんなに少ないのが驚きました

 

(3)真昆布について、土居さんにもっと聞いてみたいことがあれば記入しましょう。

 

昆布に興味を持ったきっかけはなんですか

昆布は大阪にとってどれぐらい大事なんですか?

大人の方にも昆布について伝えていくべきだと思うのですがそのような場は今後考えて見ているのでしょうか。

真昆布のどこを主に出汁に取っているか気になる。

もし、真昆布が使えなかったら、どうするのか。

南茅部では天然昆布が採れなくなっているので養殖昆布を使っていると思いますが、南茅部以外の地域の天然昆布と南茅部の養殖昆布ではどちらが品質がいいのでしょうか

昆布はやっぱり乾燥してあるから特に保管方法に気をつけなくても品質が保たれますか?

 

2.第2部『天然真昆布を使った料理の調理実演と生徒向け試食会』について

(1)試食した料理の感想を記入しましょう。→①椀もの  ②お造り  ③昆布菓子

 

美味しかった

1 柚の匂いがすごくしてた 2 ブリは少し臭みがあったが他の刺身は美味しかった"

とても美味しかったです。

どれも美味しくて貴重な体験だった

① 昆布の出汁がきいていた ②醤油も美味しくて刺身も美味しかった ③美味しかった"

① そもそもお吸い物が好きではないのですが、とても美味しかったです。

➀出汁がきいていて美味しかった ②地域の魚を味わえてよかった

③昆布を使った菓子は初めてだったので良かった"

①体に染み渡るような温かい温度で、たくさんの素材を活かした味と、上品で透明なお汁が美味しかったです。

②わさびとお醤油の味をつけているのに魚の香りと味が深くする美味しいお刺身でした。

③ツルツルとした舌触りと、昆布のザラザラとした舌触り、そして昆布の香りがしても甘いお菓子が不思議でした。

①柚っぽいものがアクセントになっていて美味しかった。

②魚はあんまり好んでなかったけど食べてみたら克服できた。

③みんなは好んでいなかった気がしたけど私は好きでした。全部美味しかったです。"

昆布菓子が特に美味しかった。最初の1口目で昆布の味が感じられて、あんことか絶妙にマッチしてた。私はくるみが好きだから特に美味しかった。

①とてもおいしかった ②昆布が使われた醤油がとてもおいしかった ③甘くてとてもおいしかった"

お造りの刺身を松前醤油につけて食べてみると、刺身に醤油のうまみがあわさっておいしかったです。

①香りも見た目も澄み渡っていて、すっと受け入れられる味で美味しかった

②お刺身に弾力があって美味しかった。神経じめの大切さがわかった

③昆布とお菓子の相性ってどうなんだろうと思ったらクルミとも相性が良くて美味しかった"

①昆布の出汁が凄く美味しくて全部食べました。②とても新鮮な状態で食べることが出来て美味しかったし醤油も凄く美味しかった③羊羹に近いようなお菓子で凄く美味しくてもう一個食べたいくらいでした

①昆布のだしと柚子ってかけあわせていいんだ……!と思った。すごく香りが良くて味が澄んでいて心から美味しいと思った。繊細な味を楽しめるようになった気がする。

②ヒラメの刺身なんて普段自分から食べないから初めて食べたけどすごい美味しくて、これからは食べようと思った。醤油がほんとに美味して、病みつきになった。家用に買おうと思う。

③昆布と和菓子の組み合わせは意外だった。優しい甘さで上品な味だった。和菓子苦手だけど、この優しい味はすごく好みだった。"

出汁がとてもいい香りでゆずがその香りを引き立たせていました。刺身は醤油とワサビがとてもおいしかったです。南茅部の魚はいつも食べているのですが、醤油でかなり味わいが変わりました。昆布菓子はくるみの風味が良い感じを出していて何層にもある味がとても良かったです。

どれも美味しくあまり食べたりしていないものを食べれて楽しかった。

お造りにつける醤油がものすごく美味しかった

とても強い昆布の香りと、とろみが刺身に合うなぁと感じた"

椀物「ゆずの香りと昆布の香りが良かったですし出汁がきいて美味しかったです」お造り「タコがとてもコリコリしていて美味しかったですブリは歯ごたえあって美味しかったですヒラメはしっとりしていて美味しかったです」菓子「寒天?でしたっけ私はちょっと苦手だったんですけどクルミの味とマッチしていて美味しかったです」

 

3.第3部パネルディスカッション『大阪の食文化と真昆布』について【高校生のみ回答】

(1)大阪の食文化と真昆布について、感じたこと・考えたことを記入しましょう。

 

大阪府と真昆布の関係を聞いて改めて真昆布の大切さがわかった

私たちの昆布を大切につかってくれてる   大阪と真昆布は、とても大事な、関係だと思いました

色んな形で関係しているのだなと改めて感じた  真昆布は食にとっては大事だと思った

とても大切に扱ってもらっていることが伝わって、これまで頑張ったことが良かったと思いました

深く繋がっていると感じた   大阪の方に大変大きく評価されていた事が驚きました。

大阪と深く関わっているんだなと感じた。

大阪とこの真昆布はすごく特別な関係を持っていると思った。その関係を保つために真昆布を守らなくてはならないなと感じた。

だしが色んな料理に使われてるんだと思った

真昆布が大阪の食文化を支えていることが分かって、真昆布の需要があるということがわかった。

たこ焼きや高級料理にも昆布の出汁が使われていて、大阪の味の根底を支えてると思うと南茅部で昆布漁に携わっていることが自慢に思えるなと感じた。

南茅部では昆布の出汁を取ったら昆布は捨てますが大阪では出汁を取り終わった昆布も佃煮にしたり、あんこにしたりして食べることが分かりました。南茅部に住んでいるのであまり考えたことがありませんでしたが、南茅部の昆布と他の地域での昆布を食べ比べて味の違いを感じたいと話を聞いて思いました

天下の台所と呼ばれる大阪の食文化と真昆布は、自分が思っている以上に深い繋がりがあって、こんなに離れているところで確かに繋がっているのを感じて本当に誇りに思うし、真昆布の美味しさを引き出す料理をしてくれてる方々に感謝しかない。やり方次第でこんなに素晴らしい味わいになるんだと感動した。働いてお金が貯まったら絶対自分で食べに行きたい。

私たちの真昆布が大阪の食文化にとって大きな関わりがあること。それが危機的状況なのは分かりました。でもやはり真昆布を取るにはウニの影響が大きく大量に取るのは難しいのが現状だと思っています。

話を聞いている時そんなに南茅部の昆布が美味しくて価値があるのかと思いました。特に江戸時代から美味しいと伝わっていたのがびっくりでした

 

4.真昆布フォーラム2を通して、南茅部産真昆布について初めて知ったことやあらためて考えたことを自由に記入しましょう。

 

南茅部茅部の昆布をどうやったら前みたいに再生出来るのかをこれから考えたいと思います

真昆布は大切ってことを学んだ

高級料理で使われるほど、いい食材が地元にあることをこれからは誇りに思っていきたいと思います

大切にしていかないといけない     美味しかったです

あんこと昆布が合うことを知った。その他にも出汁をとった昆布の使い道などを知れたので良かった。

真昆布がどれだけ大阪の食文化を支えているかが分かって、あらためて真昆布の重要性が分かった。

南茅部の真昆布が日本にとって大切な食材であることと、昆布漁をしている漁師の数と天然昆布の減少の現状を見るとかなり重大な問題だなと改めて感じることが出来た。

南茅部の地域に住んでいて身近に昆布があるので深く考えていませんでしたが南茅部産の昆布が最高級品で大阪の人に愛されているということを改めて考えました。昆布の手伝いが嫌だなと思っていましたがやりがいがあるなと考えました。

家で使うときは、せっかく日本一の昆布なんだから出汁をとったあとも捨てずに他の形で料理に加えようと思った。     真昆布に長い歴史があることを知った

昆布に精通している団体から、最高級と評されるものだとは知らなかった

改めて昆布を大切に昆布の手伝いを面倒臭がらずやっていこうと思いました