こんぶ土居の店頭では、量り売りで3センチ角ほどの四角形に切った昆布を販売しています。(オンラインストアでは販売していません)
お客様から、「これは何に使うのですか」とお尋ねいただくことが、多々あります。
大阪では古くから昆布の佃煮が名物でした。
昆布自体の産地は北海道なのに、「大阪名物」なのです。
今は下火になりましたが、特にご高齢の方には大阪土産の定番と認識されているのは間違いありません。
いかに昆布文化が大阪に深く根差したかが、分かる事例です。
こんな土地柄ですので、家庭で昆布の佃煮を炊く方も多かったのです。
つまり、前述の角切りの昆布は、ご自宅で昆布の佃煮を炊くための材料としてご用意しているものです。
家庭の鍋と熱源で、何の問題もなく炊くことができます。
調味料の配合などは、お好みで変えていただければ良いのですが、家庭の鍋で作りやすい量でシンプルなものを載せておきます。
昆布 200g
濃口醤油 200cc
みりん 50cc
水 800cc
(醤油もみりんも、ぜひ伝統製法の本物をご用意ください。)
だいたい昆布の5倍量の調味液で炊くとお考えいただければ良いと思いますが、鍋のフタの密閉性や、火の強さで変わります。
炊き方は、とても簡単
①角切りの昆布をさっと洗ってざるにあげておく。
②水と調味料を全て鍋に入れて、沸騰させる。
③沸騰後、アクが出てきたら、取り除く。
④昆布を投入し、強火のまま再沸騰させる。
⑤火力を、なんとか沸騰を維持できる程度の極弱火に落として、蓋をして約二時間ほど加熱する。(たまに、底から混ぜて下さい。味見をして固ければ時間を延長して下さい)
⑥調味液のほとんどが昆布に吸い込まれたらできあがり。
これだけのことです。何も難しいことはありませんね。
タイトルに、「昆布の佃煮を炊いてみて下さい」と書きましたが、理由はかんたん。
本当に素晴らしくおいしいからです。
甘さに頼ることなく、ほとんど醤油だけで炊いているにも関わらず、しみじみと力強い美味しさを感じていただけるはずです。
改めて昆布は、すごい海藻です。
上記の分量でも、けっこうたくさんできますから、おすそ分けも良いと思いますし、冷蔵庫では長期間保存することができます。
あまり少ない量で炊くと、上手に仕上げるのが難しくなるかもしれません。
そして、ここから得られる「学び」がひとつ。
ご自分で最高の原料を揃えて炊いた自家製昆布佃煮と、市販品との味が、全く異質なことにお気づきになるはずです。
美味しいとかまずいとか、そういった話ではなく、『異質の味』なのです。
例えばデパートなどで、贈答品として高級そうに売られているものとて同じです。
これはつまり、市販品は「原材料の何かが違う」ということです。
原材料表示には抜け道がありますから、人工的なものが何も入っていないように見える製品があるかも知れません。
しかし、隠れている物の存在を、味の違いが示してくれます。
(原材料表示の抜け道に関しては過去投稿をご参照ください)
2020-05-27投稿 表示を免除されるもの① 原材料の原材料
2020-05-28投稿 表示を免除されるもの② キャリーオーバー
2020-05-30投稿 表示を免除されるもの④ 栄養強化目的
その一方で、もしよろしければ、こんぶ土居がつくる昆布の佃煮の味も見て下さい。
家庭で上手に炊けたものと、同じ傾向の味がするはずです。
こうなる理由を、ぜひ想像して頂きたいところです。
やはり、自分で料理することは本物を知るために、とても大切です。
昆布の佃煮を炊いて体験することで、食品業界にありがちな裏側も、なんとなくご理解いただけるようになるかと思います。
だしの用途だけでなく、天然真昆布は、佃煮にしても最高です。
天然物と養殖物は、味だけでなく食感も大きく違うのです。
だしをとる際には、味の違いは感じても食感の違いはわかりませんね。
不作続きの天然真昆布。
本当においしい昆布の佃煮が食べられるのは、今のうちかも知れませんよ。
是非お試し下さい。
(余談)
昆布の佃煮は、大阪では「塩昆布」と呼ばれます。
しかし今は、細切りになって乾燥した状態のものを、そう呼ぶことが多いようです。
これは私共の認識では「塩ふき昆布」です。
つまり、濡れている状態の佃煮が「塩昆布」であり、乾燥して表面に粉が浮き上がっているものが「塩ふき昆布」です。
この本来の呼び方を続けたいですが、世間の認識が変わってきているので、少し悩みます。