こんぶ土居店主のブログ

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自然塩のミネラルと、減塩の必要性

 

調味料としての塩にも様々なタイプがあり、味も大きく異なりますから、面白いものです。
どれを取っても悪いということは無いのですが、こんぶ土居ウェブサイト上の「原材料について」のページには、以下のように書いています。

 

食塩
製造方法は大きく分けると
1. 物理的な方法で海水から水分を蒸発させ、結晶させたもの
2. イオン交換膜で電気的にろ過したもの
に分類されます。
1の中では太陽や風の力で結晶させ、作り手の顔が見えるものが最高ですが、輸入天日塩を海水で溶かし不純物を除いて再結晶させたものも比較的安価でよいと思います。2はミネラルバランスがどうしても偏ります。専売制時代の名残の、ほぼ塩化ナトリウム100%の塩は、やはり食品として少し不自然であるように思いますし、味覚的にも健康面でも良いものでは無いでしょう。

 


所謂、「自然塩」と呼ばれるものが存在しますが、ほぼ塩化ナトリウム100%の塩との差別化の呼び方でしょう。
こんぶ土居でも、ずっと以前からお取引のある「土佐のあまみ屋」さんの完全天日塩を販売しています。


●土佐の海の天日塩 あまみ

 この塩に限らず、専売制の時代と違い今は良い塩づくりをしている方がたくさんおられますので、選択肢は豊富です。

自然塩と呼ばれるものの特徴のひとつに、ミネラル分の含有量があります。


前述の「あまみ」を例に取ると、パッケージには下記のような栄養成分表示が記載されていました。
マグネシウム:360mg
カリウム:100mg
カルシウム:720mg
(100gあたり)

 

所謂「精製塩」には、上記のようなミネラル分がほとんど入っていませんから、美味しさだけでなく栄養的観点から見ても自然塩は良いでしょう。
ただ、過信は禁物です。

 

まず、日本人は、そもそも食塩を摂りすぎています。
食塩の摂りすぎは、高血圧を引き起こすことがあり、その結果として腎不全や循環器の疾患につながります。
どこの国でも、一日の摂取推奨量を6gぐらいに設定していますが、多くの日本人は平均10gほど摂取していますから、大幅に摂りすぎているわけです。
つまり、減塩が必要なわけですね。


同じ食塩を摂取するにしても、「精製塩」と「自然塩と呼ばれるもの」は塩化ナトリウムの含有量が違いますから、そいういった意味でも自然塩が減塩につながるのかも知れません。
それはそうなのですが。
世間には不思議な説を唱える方が意外に多くいます。

 

それは、
「精製塩を使うから健康に問題が出るのであって、自然塩を使えば減塩は必要ない」といったものです。
普通にネット検索していただければ、この手の話はいくらでも出てきます。
結論から申しますと、この考えは誤りです。

 

 

こういった説を唱える方は、自然塩に含まれるミネラル分に言及されます。
例えば、「自然塩の中には塩化ナトリウムだけでなくカリウムなども含まれるから、カリウムの血圧を下げる作用によってバランスが取れて問題ない」と言ったものです。

確かにカリウムは体内でナトリウムを排出する作用がありますし、良い効果を見せるのは間違いありません。
しかし、自然塩の中に、どれぐらいのカリウムが含まれているのかを把握しなければなりません。

 

そもそも、私たちは一日に、どれぐらいのカリウムを摂取することが推奨されているのでしょうか。
厚生労働省の資料「日本人の食事摂取基準」では、現在の日本人の摂取量を考慮した、高血圧の一次予防のための目標量として、18歳以上の男性では、3,000㎎、18歳以上の女性では、2,600㎎が設定されています。

 

では、前述の「土佐の天日塩あまみ」の成分を振り返ってみましょう。
100g中のカリウム含有量は、100mgでした。
私たちの食生活で塩分(ナトリウム)はあらゆるものに含まれていますから、食塩ばかりから摂っているわけではありません。
ここでは仮に、日本人の一日の平均摂取量10gの半分、つまり5gを天日塩から摂取したと仮定しましょう。
前述の成分値から計算しますと、完全天日塩あまみ5g中のカリウム含有量は5mgになります。
男性の推奨量の3000mgと比較しますと、わずか0.16%にすぎません。
つまり、残りの99.8%は他の食品から摂るのです。
こんな状況で、自然塩に含まれるカリウムの健康効果を評価できるでしょうか。

 

 

「自然塩にはカリウムが含まれているんだ!」と言われれば、それ自体は誤っていません。

しかし、それによって減塩が不要だなんて、どう考えてもおかしな話です。

美味しさの面でもカリウム以外のミネラル分の観点からも、できれば良い塩を選ばれることをお勧めしたいですが、しかしその一方で「自然塩だから減塩不要」という誤情報に惑わされることなく、健康を保つために適切な減塩をしていただくのがよろしいかと思います。

 

昆布屋的に申しますと、たった1gの昆布にもカリウムは61mg含まれていますし、他のミネラルも多いので、前述の塩と比べると遥かに血圧を下げる効果は高いでしょう。

しかし、これとて過信は禁物だと思います。

そんな考えもあって、これまで私共では、昆布の降圧効果を強調した販売は一切してきませんでした。

 


塩の話に限らず、いい加減な健康情報は本当に多いものです。

流されることなく、正しく評価したいものです。